つくしは自分が担当しているスーパーに設けられたバレンタイン催事場にいた。
だがそこには時々顏を合わせるライバルである食品会社の営業担当の男と、どこかのモデル事務所から派遣されたと思われる男性が自社のチョコレートをアピールしていた。
「いかがですか?こちらの商品をお買い上げいただいたお客様は彼と写真を撮ることが出来ますよ!とっても素敵な彼と一緒に写真を撮りませんか?」
ライバル会社の販促は男性モデルと写真を撮ること。
つくしはその様子を眺めていたが、モデル男は女性の扱いに慣れた様子でチョコレートを買った女性客の肩に手を回し、にこやかな笑顔をカメラに向け撮影に応じていたが、一段落ついたところで、つくしが自分を見ていることに気付くとこちらに視線を向け、彼女と視線を合わせると笑った。
そして、つくしの方へ向かって歩いて来ると彼女の前で立ち止まり「久し振り」と言った。
つくしは久し振りだと言われてもモデル男に知り合いはいない。
けれど男は、つくしの戸惑いをよそに「やだな。俺のこと忘れちゃった?」と、真面目くさった顔つきで言った。
だがオレオレ詐欺じゃあるまいし、名前も名乗らず俺と言われてもピンとこなかった。
だから無視していたが、男は相手が自分を覚えているかどうかなど関係ないといった態度で「俺だよ。本当に分かんない?」と言葉を続けた。
だから「分かるもなにも私はあなたのことを知りませんけど?」と冷たく答えたが、モデル男はそれでも躊躇することなく自信に溢れた態度でつくしの前から離れようとしなかった。
それは多分つくしの素っ気ない態度が、モデルである男の何かを煽ったのだとしても、これ以上他社の商品の販促のために呼ばれたモデル男に係わりたくなかった。
それに新手のナンパならお断りだ。
だから、「すみません。あなたは向うの会社の販売促進ために雇われた方ですよね?だからうちの商品の前に立たれたら迷惑なんですけど?」と言った。
するとモデル男は「あ、悪い。でも本当に俺が誰か分からないんだね?牧野さん」
名前を呼ばれたつくしは、胸元から下げている入店許可証に名前でも書いてあったかと思い許可証を見たが書かれてなどいない。
それなら何故モデル男が自分の名前を知っているのか。
つくしは怪訝な顏をして男を見た。
「そんな顏しないでよ。俺だよ、俺。順平。織部順平だよ」
「….織部順平…..?」
織部順平はひとなつっこい笑顔を、つくしに向けた。
織部順平は、かつて英徳学園でつくしのひとつ下にいた男で、慕っていた知人に重傷を負わせた道明寺司に復讐を抱き、つくしを利用して司を傷つけた男だ。
「友達いらない?」と言って学園中からシカトされていたつくしに友達になろうと言った。
そして自分がモデルをしている雑誌の表紙をつくしと一緒に飾り司を挑発した。
それを見た司は彼女を責めた。だがあの頃のつくしは司から離れたかった。なんとかして逃れようとする思いが強かった。好きだという思いはなかった。
あんたといると窒息しそうになる。構わないでほしいと言って彼から離れようとしていた。
だがそんなつくしに対し司は言った。
好きだ。
俺が欲しいのはお前だけだ。
お前が逃げるなら追いかける。
地獄だろうが、どこだろうが追いかけてつかまえてやる。
そう言った司に対し織部順平はつくしを守ると言った。
けれどそれは偽りであり、友達になったつくしを囮にして司を呼び出し肋骨を折る怪我をさせた。
だが、順平は司の過去の行いがそうさせたのだと言った。
そう言われたとき、全く否定できない自分がいた。けれど、人に大怪我を負わせることは許されることではない。だから謝られた時も許すという言葉が出ることはなかった。
だがいつかは許せる。そんな思いを抱いていた。
そんなことを思い出しながら、目の前に立った織部順平を見ていたが、順平はつくしよりひとつ年下だから27歳。当然だが10代のあの頃よりも大人びた顔つきに変わっていた。

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だがそこには時々顏を合わせるライバルである食品会社の営業担当の男と、どこかのモデル事務所から派遣されたと思われる男性が自社のチョコレートをアピールしていた。
「いかがですか?こちらの商品をお買い上げいただいたお客様は彼と写真を撮ることが出来ますよ!とっても素敵な彼と一緒に写真を撮りませんか?」
ライバル会社の販促は男性モデルと写真を撮ること。
つくしはその様子を眺めていたが、モデル男は女性の扱いに慣れた様子でチョコレートを買った女性客の肩に手を回し、にこやかな笑顔をカメラに向け撮影に応じていたが、一段落ついたところで、つくしが自分を見ていることに気付くとこちらに視線を向け、彼女と視線を合わせると笑った。
そして、つくしの方へ向かって歩いて来ると彼女の前で立ち止まり「久し振り」と言った。
つくしは久し振りだと言われてもモデル男に知り合いはいない。
けれど男は、つくしの戸惑いをよそに「やだな。俺のこと忘れちゃった?」と、真面目くさった顔つきで言った。
だがオレオレ詐欺じゃあるまいし、名前も名乗らず俺と言われてもピンとこなかった。
だから無視していたが、男は相手が自分を覚えているかどうかなど関係ないといった態度で「俺だよ。本当に分かんない?」と言葉を続けた。
だから「分かるもなにも私はあなたのことを知りませんけど?」と冷たく答えたが、モデル男はそれでも躊躇することなく自信に溢れた態度でつくしの前から離れようとしなかった。
それは多分つくしの素っ気ない態度が、モデルである男の何かを煽ったのだとしても、これ以上他社の商品の販促のために呼ばれたモデル男に係わりたくなかった。
それに新手のナンパならお断りだ。
だから、「すみません。あなたは向うの会社の販売促進ために雇われた方ですよね?だからうちの商品の前に立たれたら迷惑なんですけど?」と言った。
するとモデル男は「あ、悪い。でも本当に俺が誰か分からないんだね?牧野さん」
名前を呼ばれたつくしは、胸元から下げている入店許可証に名前でも書いてあったかと思い許可証を見たが書かれてなどいない。
それなら何故モデル男が自分の名前を知っているのか。
つくしは怪訝な顏をして男を見た。
「そんな顏しないでよ。俺だよ、俺。順平。織部順平だよ」
「….織部順平…..?」
織部順平はひとなつっこい笑顔を、つくしに向けた。
織部順平は、かつて英徳学園でつくしのひとつ下にいた男で、慕っていた知人に重傷を負わせた道明寺司に復讐を抱き、つくしを利用して司を傷つけた男だ。
「友達いらない?」と言って学園中からシカトされていたつくしに友達になろうと言った。
そして自分がモデルをしている雑誌の表紙をつくしと一緒に飾り司を挑発した。
それを見た司は彼女を責めた。だがあの頃のつくしは司から離れたかった。なんとかして逃れようとする思いが強かった。好きだという思いはなかった。
あんたといると窒息しそうになる。構わないでほしいと言って彼から離れようとしていた。
だがそんなつくしに対し司は言った。
好きだ。
俺が欲しいのはお前だけだ。
お前が逃げるなら追いかける。
地獄だろうが、どこだろうが追いかけてつかまえてやる。
そう言った司に対し織部順平はつくしを守ると言った。
けれどそれは偽りであり、友達になったつくしを囮にして司を呼び出し肋骨を折る怪我をさせた。
だが、順平は司の過去の行いがそうさせたのだと言った。
そう言われたとき、全く否定できない自分がいた。けれど、人に大怪我を負わせることは許されることではない。だから謝られた時も許すという言葉が出ることはなかった。
だがいつかは許せる。そんな思いを抱いていた。
そんなことを思い出しながら、目の前に立った織部順平を見ていたが、順平はつくしよりひとつ年下だから27歳。当然だが10代のあの頃よりも大人びた顔つきに変わっていた。

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ふ*******マ様
来る!(笑)きっと来る!(≧▽≦)
歌ってしまったじゃないですか!
織部君。懐かしい人が出て来ましたがスーパーの催事場は修羅場と化すのか?(笑)
さて。どうでしょう(笑)
短編ですので明日で終わります!
え?アカシアの傾向と対策?(^^;)
怖いですねえ(笑)
コメント有難うございました^^
来る!(笑)きっと来る!(≧▽≦)
歌ってしまったじゃないですか!
織部君。懐かしい人が出て来ましたがスーパーの催事場は修羅場と化すのか?(笑)
さて。どうでしょう(笑)
短編ですので明日で終わります!
え?アカシアの傾向と対策?(^^;)
怖いですねえ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2020.02.13 23:17 | 編集

司*****E様
おはようございます^^
ライバル会社の販促はイケメンモデル(織部順平)と写真撮影。
え?J君と写真撮影が出来るならチョコ買いますか?
つまりJ君がそこにいるなら買うんですね?(≧▽≦)
そして順平とつくし。
懐かしい昔ばなしになるのか。それとも....?
続きは明日です!
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
ライバル会社の販促はイケメンモデル(織部順平)と写真撮影。
え?J君と写真撮影が出来るならチョコ買いますか?
つまりJ君がそこにいるなら買うんですね?(≧▽≦)
そして順平とつくし。
懐かしい昔ばなしになるのか。それとも....?
続きは明日です!
コメント有難うございました^^
アカシア
2020.02.13 23:22 | 編集
