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2015
12.03

まだ見ぬ恋人41

つくしがマンションに帰ってみるとなんとなく何かが違うと感じられた。
納得した。玄関には見慣れた靴があった。
でもおかしい・・まだ海外に出張中じゃなかった?
つくしはいつもより早めに帰宅していた。

「司、いるの?お帰り!」
と声を掛けると奥の方から低い声で返事をする声が聞こえてきた。



同棲か・・・
司のお母さんが知ったらまた二人とも怒られそうだ・・・
もしかしたらもうご存知かもしれないけど。
お母さん、なんだかお姉さんが司にお説教をしていたのとそっくりだとつくしは思った。
率直な物言いはこの家族の特徴なのかもしれない。


今の司はほとんどが海外で日本にいることの方が少なくなっていた。
だから自分のマンションに帰るよりもここで暮らす方がお前と会えるからいいんだと言った。
まだ慣れないせいか、自分の部屋に彼がいることが妙に感じられる。



クローゼットの半分には彼の上等なスーツが何着か掛けられている。
決して広くはないベッドの右側と左側、どちらに寝るかなんてことも決めた。
携帯電話の充電器だって私と司のと二つ並べて置いてある。
つくしは司がいない間も彼がここにいることを色々と想像していた。
その彼はいま、目の前にいてキッチンのテーブルのうえで何やら書いている。


「あれ?司どうしたの?まだニューヨークにいるんじゃなかったの?」
「なんだよ、帰って来たら悪いのかよ?あんまり嬉しそうじゃねぇな」
「そ、そんなことないわよ。ただびっくりしただけ」
つくしはキッチンの椅子に無造作に掛けられていた上着を手に取るとハンガーにかけていた。



司がニューヨークから早めの帰国をしたのには理由があった。
ニューヨークの母親からあなたには欧州統括支社長としてロンドンへ行ってもらいますと
言われたからだ。
いよいよイギリスの鉄道インフラ事業が本格的に始動することになり、司のオペレーションが必要となったのだ。
司はつくしを同行すると決めていた。
そしてその為の準備は早ければ早い方がいい。
早く帰国してきたのもその為だった。
だから明日のスケジュールは完全な空白。


司はつくしの背中に声をかけた。
「つくし、コーヒーを淹れてくれないか?」
つくしはそう言われコーヒーカップを用意していた。


「年が明けたらロンドンに行くことになった」と司は切り出した。
「ロンドン?どれくらいの出張なの?」
つくしは顔をあげることなくコーヒーを淹れるための準備を続けている。


「・・・出張じゃない。ロンドンで欧州統括支社長として勤務する。ニューヨークでババァから言われた」


つくしは挽いたコーヒーの粉をテーブルのうえに撒いてしまった。


「・・ロンドン?」
「 ああ 」
つくしは下を向いたままテーブルのうえに撒いてしまったコーヒーの粉を集めていた。
そして胸の鼓動が早くなっているのが感じられていた。

司は椅子から立ち上がるとつくしの後ろに立った。
彼はつくしが動かしている腕に手を添えると後ろから抱き寄せた。
そして彼女の頭のうえに顎を乗せた。
久しぶりに司の身体の熱を感じ、つくしは自分の身体も熱くなるのを感じていた。


何か言わなければと思っていたが思わず口をついて出たのは
「こ、コーヒーが飲みたいの」つくしはそう言って自分の腕に添えられていた司の手をつかんだ。
そして身体を半回転させて司を見あげると「お願い。司のコーヒーが飲みたい」と再び口に出していた。



思わず口に出た。
本当にコーヒーが飲みたいと言うわけではなかった。
いや、でもつくしはコーヒーが飲みたくてたまらなかった。
気持ちを・・自分の気持ちを落ち着かせるために飲みたいと思った。
最近では司に負けず劣らずのコーヒー好きになっていた。
でも、それだけじゃない・・・
ただ・・いまの自分ではコーヒーを淹れるという日常の行為が、司の好きな美味しいコーヒーが淹れられる自信がなかった。


「なあつくし、なんで俺がお前にコーヒーを淹れなきゃなんねぇんだ?頼んだのは俺だぞ?」
「いいじゃない。司が淹れてくれた方が美味しんだもの」
そういわれ司はやむなくつくしを腕の中から解放した。



男のひとり暮らしを舐めるなと言った司は身から出た錆と思いながらもつくしにコーヒーを淹れることを楽しんでいた。
だが今はつくしがロンドンへの異動の話しで動揺しているのがわかっていたからコーヒーを淹れるための一連の動作もいつもより少しだけ時間をかけた。
だからこのコーヒーはいつもよりも雑味が多いかもしれない。

司はコーヒーカップをつくしの視線の目の前に差し出した。

つくしはひと口のむと「やっぱり私が淹れたのより司が淹れてくれたほうが美味しい」と言った。
そう言われて嬉しくない訳がない。


「落ち着いたか?」
「うん。ありがとう」カップを両手で抱え込んだままで答えた。
「・・司、ロンドンだけど・・ひとりで・・」
つくしの言葉は最後まで聞かなかった。
「バカ。おまえ俺がひとりで行くと思ったのか?おまえを残して俺だけが行ってどうするんだよ?俺がおまえを残して行くなんてどうしたら考えられるんだ?年明けからはおまえもロンドンだ」
司は得意技の強い視線でつくしを見た。
嫌だなんて言ったらジェット機の椅子に縛り付けてでも連れて行くからな!
「でも・・」
なに言ってんだこいつは。今更逃がすわけないだろ?
「いいか?向うへ行くまでに入籍だけは済ませるからな!」
司はそう言ってから軽く自分を罵っていた。

「まったくタイミングが悪りぃよな・・台無しだな」
「・・司?」
「俺が考えていたのはもっとこう・・」
「・・ねえなにを考えていたの?」
「だから!籍を入れることについて・・もっとロマンチックな方法で言おうと思っていたのによ・・」
「取りあえず入籍だけは先にするけど、つくしはそれでもいいか?」
そう言って目の前に出されたのは婚姻届だった。

「おまえが帰ってくるまでに準備しておこうと思ってさっき書いたんだ」
と照れくさそうに笑った。

「俺にはおまえが必要だ」
「俺はおまえを愛してる」
「俺は死ぬまでおまえと離れない」
「いや、死ぬときもおまえと一緒じゃないとダメだ」
だから今後は常に一緒にいると言った。
そして「俺と結婚してくれ」と言われた。

つくしはクスクスと笑った。
彼が仕事をしている姿はうっとりとするほど魅力的だと最近気がついた。
でもこうして一緒に生活をするようになって気づいたことがある。
この人は生き急いでいる人だって・・それは情熱の裏返し。
だから私がこの人の傍にいてあげてその情熱を受け止めてあげる。
恋をするのに理由は要らないって言われたとき、私はまだ恋について理解していなかった。
でも、今は愛する理由なら分かる気がする。

「そうね・・わたしたち・・・」
司は私を愛してる

そんなこと言われなくてももう十分わかっていた。
だから私は自分から彼に近づくと口にキスをした。

タイミングなんて関係ない・・・これ以上のタイミングなんてなかった。 








12月3日西門総二郎様 お誕生日おめでとうございます。
いつも友情出演を感謝しております。

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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2015.12.03 08:51 | 編集
H*様
えーっ!司が家で待っていたらスキップどころじゃないですよ!(笑)
速攻で帰ります!残業は一切お断りです。
仕事帰りに何を買って帰えろうかとか、夕食は何にしましょうか・・・なんて考えなくてもお手伝いさんがいらっしゃるでしょうね。たまには人に作って頂いたものを食べたいと願うのは庶民の感覚でしょうか(笑)
寒くなるとお鍋という便利な料理がありますので、つくしちゃん得意の鍋料理で冬を乗り切りましょう!(笑)
拍手コメント有難うございました。
いつもお読み頂き有難うございます(^^)

アカシアdot 2015.12.03 23:08 | 編集
も*ち★様
はい、やっとここまで来ました。
そろそろその時を迎えそうです。
フフフ・・微笑みの謎。大したことはないですよ?
期待しないで下さいね。
友情出演!ギャラ無ってことでF3の皆様にはご協力を頂いています(笑)
本日は総二郎さんのお誕生日でしたので、ひと言お礼をと思いました。
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2015.12.03 23:17 | 編集
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