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2015
11.29

まだ見ぬ恋人38

司は長い間抑えていた欲望が頭をもたげるのを感じていた。
ありったけの情熱を込めたようにつくしの唇に口づけをしていた。
つくしの小さなため息さえも許さないように彼女の唇をむさぼった。


「道明寺は・・私は・・経験がないの・・」
つくしは顔を赤くしてうつむいた。
「わかってる」
「どうしていいかわからないの・・・」
本気でそう思っている口調だった。
「自然にわかるだろ・・俺だって・・」
司は穏やかに言葉をいい添えた。
「牧野、本当にいいのか?」
「うん、本当にいいの・・」



司はつくしを抱きしめるとそのままベッドへ誘った。
「怖いか?」
つくしは顔を赤くして首を振った。
だが、これから起こることに戸惑いと不安を感じているのは明らかだった。


「少しだけ・・怖いかも・・」
「俺も・・」
二人は互いの顔によぎる感情を探ろうと見つめ合った。

「道明寺は・・・その・・どれくらい・・」
「牧野・・そんなこと俺に聞くな・・」
「俺は心から愛した女とじゃねえと、こんなことは出来ない。
俺が心から愛した女はおまえが初めてだ・・つまり・・」


つくしは吐息を漏らした「じゃあ・・」
「・・そうだ」
司はつくしの手を取ると自分の頬にあてがった。
そして優しく囁いた。
「俺は待ってたんだ・・いつか心から愛せる女に出会えるってな・・」


「牧野、ショックを受けるなよ?」
司はつくしをベッドの端に座らせた。
そして彼女の目の前で生まれたままの姿になっていた。



司はつくしの前で惜しげもなく自分の身体をさらしていた。
つくしはどこに目のやり場を定めればいいのか分からなかった。
でも、きれいな身体だと思った。
思わず手を伸ばして触れてみたいと思わせるような身体だった。

司はまるでつくしのその思いを感じたかのように言った。
「牧野・・触れてくれ・・触ってくれ・・」

司はつくしが欲しくて気が狂いそうだった。
つくしは目の前に立つ雄々しい身体に手を伸ばすと指先だけでそっと触れた。
そして、その指先をそっと動かした。
司の呼吸はそれだけですでに乱れていた。
そして股間は激しく脈打っているのが感じられた。
「ま・・きの・・」

女は生まれながらの本能で男を誘惑するすべを知っているんだな・・
アダムが裸で歩き回っているとき、イブに誘惑されたように・・
司はつくしをいとおしむ気持ちと自分の欲望の狭間でどうにかなりそうだった。

つくしは初めての経験に戸惑いを隠せないでいた。
司の息遣いが早くなるのが感じられていた。
わ、わたしも服を脱いだほうがいいの・・?
視線を定める余裕もなくただ、司の身体に触れていたつくしだったが司に腕をとられ、立ち上がるとブラウスのボタンをゆっくりと外されていくのがわかった。
膝から下が崩れ落ちそうだった。
そしてブラウスが床に落とされ、スカートのファスナーに手をかけられ取り払われたとき、つくしの身体はベッドのうえへと横たえられていた。


「本当にいいのか?」
「今夜は眠れないかもしれない・・俺も・・おまえも・・」
上から見下ろされ、影になった司の顔は欲望に暗く歪んで見えた。
司はつくしの身体にまたがるとまるで子供の頃に貰ったクリスマスのプレゼントを開ける嬉しさを再び味わうようにゆっくりとつくしの胸を覆い隠していた下着を取り去っていった。


司はつくしの胸へと手をすべらせていくと、その頂きをそっと口に含んでいた。
はじめはやさしく吸っていた司もつくしがあげる声に次第に強く、舌と歯を使ってなぶるように強く吸い始めた。
そうしながらも司の手はつくしの柔らかい身体のすべてを知りたいと容赦がなかった。
「力を抜くんだ牧野。そんなに堅くなってたらおまえが辛い思いをするらしいぞ?」


自分でも抑えきれない何かがつくしの身体のすべてをむさぼっていた。
司はつくしの膝を開くとそこに隠されている自分だけのものを手に入れるため指を滑らせた。
下生えに覆い隠されたそこは、まだだれも足を踏み入れたことがない神秘の泉のように侵入者を拒んでいた。
やがてその泉の奥底から溢れ出て来た潤いは司の渇きを癒した。
溢れ出て来るそのすべてを飲み干すかのように夢中で味わっていた。
そしてその泉が底なしの沼のように変わると司の欲望のすべてを呑み込んでいた。




すべてが取り払われたときは互いの身体に優しく触れ合わせていた手も、やがて力強さを増すと、声をあげ、互いを求め、励まし合いながら二人で未知の世界へと旅立っていった。
そして生まれたままの姿であげた叫び声が今まで知らなかった世界への扉を開いていた。







****




翌朝、つくしはおいしいコーヒーを飲む贅沢を味わっていた。
そして、しぶしぶながら煙草の香りとコーヒーの取り合わせが嫌いではなくなっている自分に気づいた。


カップから立ち昇る豊かな香りはつくしが普段口にしているコーヒーとは雲泥の差だった。
このコーヒーは司が自ら淹れてくれたコーヒーだ。
ジャマイカのブルーマウンテン山脈のコーヒーの木から採取される豆を使ったものだけが名乗ることを許されるブルーマウンテンコーヒー。
コーヒーの王様と呼ばれるこの豆のほとんどは日本向けだった。
が、近年は収穫量が減り店頭で見かけることがなかった。
見かけたとしても高値で販売されており、つくしの日々の生活には許される価格ではない。
そんなコーヒーの王様と呼ばれる香りがつくしのキッチンに漂っていた。


朝、つくしが目覚めたとき、そこにはすでに朝の身支度を整えた司がいた。
「おはよう・・」
「お、おはよう・・つ、つかさ・・」
司はつくしの反応を見ていた。
自分の腕の中で一夜を過ごしたつくしの表情のなかに、以前の不安と戸惑いは感じられなかった。
「つくし・・おまえはもう少しゆっくりしてからでいいから・・」
つくしは普段の朝より長くベッドのなかにいた。

「俺は下に西田が迎えに来ているから先に出るが・・」
「一緒にコーヒーを飲まないか?」
「ど、どうしたのこれ?」
「ああ、メープルから届けさせた」
そこにはペーパードリップ用のドリッパーや細口ポットが用意されていた。
そしてもちろんブルーマウンテンの粉もあった。
「おまえには悪いが、あのコーヒーは飲めねぇな・・」
と昨日つくしが淹れたコーヒーを思い出して笑った。
「いいか?これから俺がおまえにブルマンの旨い淹れ方を教えるから今度からはおまえが俺のために淹れてくれ」


司はつくしを自分とキッチンのテーブルのあいだに立たせると背後から手を伸ばし、つくしの身体を抱き込むようにして実演を始めていた。
「いいか?粉をいれたら・・平らに整えて・・コーヒーの粉だけに湯をかけろ。ペーパーにはかけるなよ?まずくなるからな。で、20秒くらいおいて蒸らすんだ」
「あとは・・・残りの湯を三回くらいに別けて・・こうして・・粉の中心から小さな円をかく・・」
「ひらがなの「の」の字をかく要領だ」
司は慣れた手つきでポットを動かしていた。

「道明寺上手だね」
「フン、男のひとり暮らしを舐めんなよ?」
「変なところで自慢しちゃって・・」
司はつくし反応を楽しんでいた。
「おい、いま俺のこと道明寺って呼んだだろ?さっきみたいに司って呼べよ」
「ほら、ねぇ手元みて、ポットが・・」
「心配するな・・」
司はゆっくりと言った。
「ポットの心配より・・」
司はポットをテーブルのうえに置いた。

「俺の心配をしてくれよ・・つくし・・」
司がつくしを振り向かせるとつくしは恥じることなく司の要求に答えていた。







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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2015.11.29 06:52 | 編集
ka**i様
いつもご感想を有難うございます。
素敵な夜と感じて頂けて良かったです。
初々しさと大人の部分とブレンドしてみました。
大人の雰囲気も出ていましたか!
有難うございます!なるべく直接的な表現は抑えてみました。
皆様の想像力にお任せすると言うことで・・(笑)
司はコーヒーを淹れることは得意分野のようですので
これからもつくしちゃんだけに美味しいブルマンをごちそうしてあげると思います。
私もブルマン好きなんですが、本当に入手困難でブルマンブレンドで我慢しています(笑)
が、それさえも入荷日を聞いて予約して買うという状況です。
司にお願いして分けてもらいたいです。(笑)
ちなみにブラック派です←飲み過ぎ注意ですよね?(^^)
コメント有難うございました。
アカシアdot 2015.11.29 22:29 | 編集
た*き様
いつもご感想を有難うございます。
二人の初めてに感動の言葉を有難うございます。
直接的表現はせず、比喩表現の部分は皆様の想像力にお任せしてみました。
司のイメージとしてコーヒーと煙草は切り離せないと思います。
が、嗜好品として煙草は健康に良くないので海外出張先のかの国で禁煙に成功出来ればと思いましたが、無理でした(笑)一年程むこうに居れば成功できるかもしれませんが(笑)私も毎日ブルマンが飲みたいです。
コメント有難うございました。
アカシアdot 2015.11.29 22:48 | 編集
い*様
ご訪問有難うございます!
そしていつもお読み頂き有難うございます!
可愛い二人に和んで頂けて嬉しいです(^^)
え?初めての二人にドキドキして頂けたのですか?
嬉しいです。い*様のその言葉に私の方がドキドキしました。
明日もキュンして頂けるといいのですが・・(笑)
い*様、私にも胸のときめきをお願いします(切望)
切ない思いを抱えてお待ちしておりますm(__)m
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2015.11.29 23:00 | 編集
L**A(坊ちゃん溺愛)様
有難うございます!
そう感じて頂けてとても嬉しいです。
二人とも初めてでしたので手探りで照れながらだったと思います。
ぎこちなかった二人も時間と共に愛を深めて行けたら・・と思いました。
きっとこれからの二人は愛し合うのに躊躇はないはずです。
司、良かったね(´Д⊂ヽ
コメント有難うございました(^^)
アカシアdot 2015.11.30 21:46 | 編集
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