静かに流れるBGMとほの暗い照明、そして、ふたりっきりの空間。
今夜二人はニューヨークメープルの最上階のレストランにいた。そこはプライベートなパーティー用の個室だ。食事を済ませ、デザートとコーヒーを味わう時間が流れていた。
まったく、バカほど高い所に登るって言うけど・・
おっとこんな事アイツに聞こえたら大変だ。
「あ?誰がバカだって?」
あ、聞こえてた?
「あははは~アンタ耳いいんだね?」
「・・・・」
「そ、それはそうと、あ、あたし達、ほらなんて言うのかなぁ、その、今後の事とか話し合わないといけないと思うんだよね?ほ、ほら、あの契約書・・・とか・・」
「・・・・」
「そ、それでね、どうなのかな、あの件について・・・と、とにかくあたしが言いたいのは・・・だから・・その・・性的な関係のことなんだけど・・・」
「・・・・」
「ちょっと!さっきから黙ってないで何か言いなさいよ!」
司は食後のコーヒーを飲みながらただ、黙ってつくしの方を見ている。
「性的な関係ってセックスのコト言ってんの?なに?誘ってんのか?」
ニヤリと微笑みながら椅子の背にもたれている男から向けられた視線は、からかうような表情だ。
「ちょっと声が大きいから。そ、それに誘ってなんかないから!」
つくしはデザートの最後の一口を押し込むとコーヒーで流しこんだ。
司のほうを見なかったが視線は感じていた。
「もういいから、あたしの言ったことは忘れて!」
「おまえの方がよっぽどデカい声だ」
司は飲んでいたコーヒーカップをテーブルに戻し、ナプキンで口を拭うと、テーブルに肘をつき身体を前に乗り出した。そしてテーブルの上に置かれていたつくしの手を取り、自分の口へと持っていき、いきなり指を口に含んで舐め出した。
つくしは口を開いたが言葉が出なかった。それどころか息が詰まり、脈が速くなるのがわかる。指を引き抜けばいいのに、それすら出来ないでいた。
道明寺が指を一本ずつしゃぶりながらあたしの目を見つめている。
男性が女性の手や足の指をしゃぶると言う話は知っていたが、まさか道明寺にこんなことをされるなんて思ってもみなかった。道明寺はまるでアイスキャンディーをしゃぶるようにあたしの指をしゃぶっている。あたしは相変わらずその手を引くことも出来ずにただ呆然と見ていて、どのくらいその行為をされていたのかも分からないほどだ。道明寺がその行為を止めたのは、ウエイターが入ってきたからだ。
道明寺・・酔ってるの?
いや。この男が酔っぱらうなんてことはない。
つくしは自分の手を奪い返し、先程まで司の口の中にあった自分の指をしげしげと眺めた。 道明寺はビジネスと同じ様にじっくりと責めるやり方を心得ているのか、あたしの気持ちを自分の持ち手の駒のように手の中で転がしていく。
しっかりしなくては!この男のペースに巻き込まれている場合じゃない。
「あ、あたし達、話をしてる途中だったよね?」
道明寺があたしの指に何をしたにしても、今はそんなことはどうでもいい。
ただ指を舐め回すことが、その先の行為につながるための前哨戦だとすれば、無理だと伝えなければいけない。
「あ、あの、あたしは・・」
「あ?」
「あ、あたしは!」
と言うなり黙り込むつくし。そしてボソっと
「・・・ないの」
「はあ?何がないんだよ?相変らず意味わかんねぇ。はっきり言えよ」
「だからっ、あ、あたしにはセックスの経験がないのよ。だからその・・」
アプローチされても困ると言いたいのだが、その言葉は司に遮られた。
「・・んなこと、分かってるよ。見りゃ分かる」
「はあ? 何が分かるのよっ?」
司は突然怒り出したつくしを見ながら、緩みそうになる頬を引き締めた。
さっきはコイツを脅かしてやろうと指を舐めてやったが、そんなことくらいでこの反応じゃ、言われなくても分かってる。
しかしコイツは騒々しい奴だな。
俺は昔、本当にコイツに惚れて追いかけまくっていたのか?
あーもう訳わかんねえ女だな、まったく!
「でもね、道明寺。あたしは決めたから!」
バアーンとテーブルに手を付きコイツはデカい目で俺を睨んできた。
今朝は今にも泣きそうな顔して、でけぇ目見開いていたコイツだったがあれから何か変わったのか?つまり何だよ?言ってみろよ?
「あたしはアンタと一緒に生きて行くって決めたから、もう迷わない事にした!」
へえー開き直ったか?
投げやりになったか?
それでもコイツが真っ赤な顔をして、必死な形相で話す様はなんか可愛いと思った。

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今夜二人はニューヨークメープルの最上階のレストランにいた。そこはプライベートなパーティー用の個室だ。食事を済ませ、デザートとコーヒーを味わう時間が流れていた。
まったく、バカほど高い所に登るって言うけど・・
おっとこんな事アイツに聞こえたら大変だ。
「あ?誰がバカだって?」
あ、聞こえてた?
「あははは~アンタ耳いいんだね?」
「・・・・」
「そ、それはそうと、あ、あたし達、ほらなんて言うのかなぁ、その、今後の事とか話し合わないといけないと思うんだよね?ほ、ほら、あの契約書・・・とか・・」
「・・・・」
「そ、それでね、どうなのかな、あの件について・・・と、とにかくあたしが言いたいのは・・・だから・・その・・性的な関係のことなんだけど・・・」
「・・・・」
「ちょっと!さっきから黙ってないで何か言いなさいよ!」
司は食後のコーヒーを飲みながらただ、黙ってつくしの方を見ている。
「性的な関係ってセックスのコト言ってんの?なに?誘ってんのか?」
ニヤリと微笑みながら椅子の背にもたれている男から向けられた視線は、からかうような表情だ。
「ちょっと声が大きいから。そ、それに誘ってなんかないから!」
つくしはデザートの最後の一口を押し込むとコーヒーで流しこんだ。
司のほうを見なかったが視線は感じていた。
「もういいから、あたしの言ったことは忘れて!」
「おまえの方がよっぽどデカい声だ」
司は飲んでいたコーヒーカップをテーブルに戻し、ナプキンで口を拭うと、テーブルに肘をつき身体を前に乗り出した。そしてテーブルの上に置かれていたつくしの手を取り、自分の口へと持っていき、いきなり指を口に含んで舐め出した。
つくしは口を開いたが言葉が出なかった。それどころか息が詰まり、脈が速くなるのがわかる。指を引き抜けばいいのに、それすら出来ないでいた。
道明寺が指を一本ずつしゃぶりながらあたしの目を見つめている。
男性が女性の手や足の指をしゃぶると言う話は知っていたが、まさか道明寺にこんなことをされるなんて思ってもみなかった。道明寺はまるでアイスキャンディーをしゃぶるようにあたしの指をしゃぶっている。あたしは相変わらずその手を引くことも出来ずにただ呆然と見ていて、どのくらいその行為をされていたのかも分からないほどだ。道明寺がその行為を止めたのは、ウエイターが入ってきたからだ。
道明寺・・酔ってるの?
いや。この男が酔っぱらうなんてことはない。
つくしは自分の手を奪い返し、先程まで司の口の中にあった自分の指をしげしげと眺めた。 道明寺はビジネスと同じ様にじっくりと責めるやり方を心得ているのか、あたしの気持ちを自分の持ち手の駒のように手の中で転がしていく。
しっかりしなくては!この男のペースに巻き込まれている場合じゃない。
「あ、あたし達、話をしてる途中だったよね?」
道明寺があたしの指に何をしたにしても、今はそんなことはどうでもいい。
ただ指を舐め回すことが、その先の行為につながるための前哨戦だとすれば、無理だと伝えなければいけない。
「あ、あの、あたしは・・」
「あ?」
「あ、あたしは!」
と言うなり黙り込むつくし。そしてボソっと
「・・・ないの」
「はあ?何がないんだよ?相変らず意味わかんねぇ。はっきり言えよ」
「だからっ、あ、あたしにはセックスの経験がないのよ。だからその・・」
アプローチされても困ると言いたいのだが、その言葉は司に遮られた。
「・・んなこと、分かってるよ。見りゃ分かる」
「はあ? 何が分かるのよっ?」
司は突然怒り出したつくしを見ながら、緩みそうになる頬を引き締めた。
さっきはコイツを脅かしてやろうと指を舐めてやったが、そんなことくらいでこの反応じゃ、言われなくても分かってる。
しかしコイツは騒々しい奴だな。
俺は昔、本当にコイツに惚れて追いかけまくっていたのか?
あーもう訳わかんねえ女だな、まったく!
「でもね、道明寺。あたしは決めたから!」
バアーンとテーブルに手を付きコイツはデカい目で俺を睨んできた。
今朝は今にも泣きそうな顔して、でけぇ目見開いていたコイツだったがあれから何か変わったのか?つまり何だよ?言ってみろよ?
「あたしはアンタと一緒に生きて行くって決めたから、もう迷わない事にした!」
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投げやりになったか?
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