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2019
06.28

理想の恋の見つけ方 151

男性から結婚してくれと言われたことは今までなかった。
そしてその男性の母親からも同じことを言われるとは思いもしなかった。
つくしは脚に大きな傷を負ったとき人生計画というものを立てていた。
それは、ひとりで生きていくこと。
だから正直なところ、こういった幸せが訪れるとは思ってもいなかった。
そして婚約者となった男性は脚の傷跡を気にすることはないと言った。それに彼自身も気にしていないと言った。けれど、つくしがこれから向かうのは外科医の所だ。

恋人と結婚することになり外科医の診察を受けることを決めた。
その人は以前つくしが図書館の書庫に閉じ込められ足を捻挫した時に見てくれた道明寺系列の病院の女性医師。
そして医師に訊きたいことはただひとつ。それはこの傷跡を治すことが出来るかということ。
だが何故診察を受けることにしたのか。それはいくら夫となる人が気にしないと言っても、つくしが気にしていたからだ。
すると、医師から形成外科手術が出来ると言われた。

「傷は治癒して何年も経っているわ。だからあなたの脚にある傷跡を消す事は出来る。でも完全にという訳にはいかない。全く痕跡が無いとは言えないわ。だから手術を受けるならそのことを承知して欲しいの」

そして女性医師は少しの沈黙の後、自分の顏を真っ直ぐに見つめるつくしに優しい笑顔を浮べ言葉を継いだ。

「牧野さん。彼のためにという思いがそうさせるのかしら?でも道明寺副社長はあなたの脚の傷を気にしてはいないはずよ?それでも手術を受けたいと思うのね?だったら彼に相談した方がいいわ。だって二人は婚約をした。だから彼に自分の考えをきちんと伝えてからの方がいいわ。それにこれから先もだけど大事なことは二人で決めていくことになるんでしょ?だったら尚更自分が何をしたいのか。どうしたいのかをちゃんと伝えた方がいいわ」

それはもちろん分かっている。
だから女性医師の言った通り、自分の考えを伝えるつもりだが、その前に手術が出来るかどうかを確認する必要があった。
そして愛されていることが分かっているから診察を受ける決心がついた。
それは女性なら誰でもが思う好きな人のために綺麗になりたいという思いがそうさせた。

つくしは診察室を出ると会計を済ませる前に喉を潤そうと思い、自動販売機が置かれている場所へ向かった。そこは長い廊下の端にある休憩コーナー。そこでコーヒーを飲もうと考えていたが、そこにはスーツ姿の先客が1人だけいて、取り出し口から湯気の立つ紙コップを取り出そうとしていた。
だから少し離れた後ろで待っていたが、紙コップを手に振り向いたのは大学時代に付き合い脚の傷跡を理由に別れた四宮圭一だった。

「つくし?」

「四宮君?」

二人同時に口を開いたが、つくしとは別の大学の学生だった四宮圭一とは別れて以来一度も会うことがなかった。
そして彼があれからどうしているか知らなかったが、まさか病院で会うとは思いもしなかった。
だが何を話せばいいのか。そう考えたところで話すことなど何もなかった。
だからつくしは黙っていたが、四宮圭一は睨みつけるような眼差しで口を開いた。

「大学准教授、牧野つくしか....。お前道明寺司と婚約したそうだな。お前はあの男に俺たちが昔付き合っていたことがあるって言ったのか?お前の傷跡が元で俺たちが別れたって言ったのか?俺に傷つけられたって言ったんだろ?なあ、そうだろ?だから道明寺司は俺が纏めた契約を、契約寸前までいった保険契約を反故にした!あの契約は補償額が百億を超えるがそれだけ大きな契約だったんだぞ?その契約を失った俺はニューヨークにいられなくなった!」

つくしはいきなり捲し立てられるように言われ圭一が何を言っているのか意味が分からなかった。
だが目の前にいる男は湯気の立つ紙コップを握り締めたままつくしに近づいて来た。
香るのは淹れたてのコーヒーの匂い。

「四宮君?何の話をしているのか私には_」

「黙れ!俺は道明寺司にお前が気に入らないって言われた理由が全く分からなかった。けどお前があの男の婚約者だって知ってその理由が分かった。今の俺だって経済誌くらいは読む。いいか?俺は海外事業部で、ニューヨークで大きな契約を纏めることが出来れば昇進は確実だった。それなのに今の俺はただの営業部門で契約者の保険手続きの仕事をさせられている。俺が保険会社に入社したのは、こんな仕事をするためじゃない。俺はあの契約失ったおかげで左遷されてこのざまだ!何で俺が営業所で生保レディの仕事をやらなきゃなんねぇんだよ!今日も入院してるじいさんの契約の説明に呼び出された!」

今つくしの目の前にいる男は、相手に話す隙を与えず話し続け、つくしに対して怒鳴り立てていた。
そしてその話の内容から、四宮圭一が保険会社に勤めていると知ったが、道明寺司の名前が出たところで婚約者が、かつてつくしの心を傷つけた男に報復をしたことに気付いた。

「いいか?俺がこうなったのはお前のせいだ!お前が道明寺司に俺のことを告げ口したからだ!」

そこまで言った圭一は笑みを浮かべた。
だがそれは怒りに満ちた笑み。

「それにしても道明寺司は脚に醜い傷跡を持つ女でもいいって?あの男ならどんなに綺麗な女でもモノに出来るってのに何でお前みたいな女を好きになった?確かにお前は頭がいい。けど男は頭の良さより身体だ。内面が第一で外見がどうでもいいなんてのは嘘だ。抱く女の身体に醜い傷跡があってもそれで良いって?あの男は世間の噂とは違って変わった趣味の持ち主か?」

「四宮君、あのね私は何も言ってない_」

「うるさい!黙ってろ!」

つくしは口を挟ませてもらえなかった。
そして圭一の口調から恐怖を感じた。
だから近づいて来る男から遠ざかろうと後ろへ下がったが、背中が当たったのは壁だった。

「俺の将来はお前が壊した。そうだろ?お前が、お前が俺のことを悪く言ったからだ!」

「あの四宮君__」

「黙ってろって言ったのに分かんねぇのかよ!」

ただでさえ鋭い口調になっている男性に、平静とは程遠い表情をした男性に冷静さを求める方が無理なのかもしれない。
つまり、これ以上何か言ったとしても、いや。何か言おうとしても聞き入れてもらえないと分かった。と、同時に今の自分が非常に危険な状態に置かれていることに気付いた。
背中に感じられるのは壁。目の前はかつて付き合っていた男性だが、その男性は冷静さを失っていて、その感情は、はらわたが煮えくり返るような怒り。
そしてその時、圭一の顏に浮かんだのは黒い影。
その影が握っていた紙コップの中身をつくしに向かって放った。
だが熱く黒い液体がつくしにかかることはなかった。
彼女の前に飛び込んで来たのは背の高い男性。その男性が熱いコーヒーからつくしを守った。
そしてつくしの目の前に立つその男性が圭一を殴ったことが分かったのは、ドサッと音がして呻き声が聞こえたからだ。









「俺の女にコーヒーをかけるとは随分といい根性してるな」

司が大学に電話をかけて三条桜子と話をしたのは1時間前。
講義と講義の間に出掛けて来ると言った女の行く先が病院だと訊いて何かあったのかと心配した。だがそうではないと訊かされた。けれど、どういった理由で病院を訪れることになったのかは訊かされなかった。だから司は自ら病院に出向いて来た。そして自らの立場を利用してつくしが外科医の元を訪れたことを知ると診察を終えた彼女を探した。
すると廊下の端から男の怒鳴り声が聞こえ、そこへ向かったが、よもや道明寺系列の病院で四宮圭一の顔を見るとは思っていなかった。
そして男と一緒にいるのが婚約者の女性だと分かると、男がその手に握った紙コップでしようとしていることを察知し、目に怒りの炎を燃やして駆け出し二人の間に入った。

スーツの背中に熱さを感じることはなかった。
だがもし司が二人の間に入らなければ、牧野つくしは熱いコーヒーを浴びせかけられていた。そして火傷を負うことになったはずだ。
心を傷付けた男から身体に火傷という傷を負わされる。
だから司の怒りの塊は固めたた拳で男を殴っただけでは済まなかったが、目の前に倒れた男の顏は青ざめ敵に回してはいけない男を敵に回し、本気で怒らせてしまったことを知って恐怖に怯えていた。

ビジネスに天性の才能がある男は、暴力に対しての才能もある。
だが彼女が見ているここでその才能を発揮する必要はない。
ただ、自分の言動を抑えることが出来なかった四宮圭一の人生は、この時点で終わったと言えた。



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コメント
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dot 2019.06.28 06:16 | 編集
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dot 2019.06.28 07:18 | 編集
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dot 2019.06.28 08:57 | 編集
司*****E様
まさかここで四宮圭一が‼
ニューヨークで道明寺HDとの大きな契約を逃した男。
日本に戻され営業所で仕事をしていましたが病院でつくしに会ってしまいました。
彼のつくしに対する行動は司が現れ阻止することが出来ました。
四宮くん。残念ですがあなたの過去の行動と今の行動があなたの未来を奪ったのです。
そして司は、愛する人を守ることが出来て満足ですね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.29 22:59 | 編集
ふ*******マ様
おはようございます^^
手をグーにして読み終わったんですね?^^
四宮圭一。最低ですね?
司は背中を火傷していないか。ん~大丈夫でしょう(笑)
四宮圭一は司から抹殺されても仕方がない。ええ、そうです。
きっとそうなったはずです。彼の未来は閉ざされたはずです。^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.29 23:06 | 編集
童*様
つくしにしてみれば四宮圭一との再会は驚き以外の何ものでもありません。
そして、つくしがあずかり知らない話を怒鳴り立てられるように言われ怒りをぶつけられる。
コーヒーを浴びせかけられる寸前に司が間に合ったことは幸いでしたね?^^
司は彼の性格からすればケジメをつけるでしょう。
四宮圭一は、自分の手で自分の将来を失うようなことをしたのですから、どうなっても仕方がないですね?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.29 23:16 | 編集
ア*******ク様
四宮圭一は自分で自分のこれからを潰した。
はい。その通りです。
彼は過去の自分の行動と現在の言動で自分の未来を失いました。
そして彼のその行動がつくしに向けられているものだとしても、司にしてみれば、婚約者に向けられた敵意は自分に向けられたものと取ります。
四宮圭一。ひねり潰されることになるんでしょうねぇ。
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.29 23:26 | 編集
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