1週間のヨーロッパ出張から戻り自宅マンションに着くと、司はネクタイを緩めスーツの上着を脱ぎ捨てた。
出張の途中で連絡を取った恋人に、何か変わったことはないかと訊いたとき、司の母親に会ったと訊かされた。
司が女と付き合い始めた。
女性関係については過去に何度も週刊誌に書かれたことがあったが、牧野つくしとの関係を書いた記事はない。それなら秘書から伝わったか。姉から伝わったか。それとも母親が独自に調べたのか。
姉の椿が話したとは考えていなかった。だから秘書か母親かと考えた時、母親だと思った。
何しろ母親の道明寺楓はビジネスの上では社長であり、副社長である司のスケジュールを知ることは造作もない。
ボストンへ女を同伴していることを知った母親は彼女のことを調べたはずだ。
女がいることが知られたことは驚くことではないのだが、会いに来たというところが気になった。
道明寺という巨大企業の経営者である母親は、当然だが多方面に強い影響力を持つ。
そして冷静な分析力を持つ女は何らかの思惑を持って人に会う。
だからもし、母親が息子の人生の決断を妨げるなら司にも考えがあった。
だがどちらにしても、近いうちに彼女のことは話をするつもりだっただけに、司の出張の間に日本を訪れ牧野つくしに会った母親の行動の真意を探る必要があった。
決して良好とは言えない親子関係があったが、今まで司の女性関係に関して口出しをしたことがない母親。
だが牧野つくしに関しては行動が早い。
だから恋人に母親に嫌なことを言われなかったかと訊いたが、電話の向こうから聞こえた声はいつもと変わらなかった。
だが何かあったとしても、感情や思ったことを内に秘める性格の彼女が正直に言うとは思えなかった。
それなら今の司がすることはただひとつ。
だから「今戻った。これから会えないか」と電話をした。
そして母親に何を言われたのか訊くこともだが、帰国してからでいいと持ち越していた結婚についての返事が知りたかった。もしその答えがノーだとすれば、結婚を承諾させるためにすることは決まっていた。
それは何度もキスをして言葉の限りを尽くして自分の気持ちを伝えることだが、母親が何を言ったかを知るまでは落ち着かない気持ちでいた。
司が会いたいと言ってつくしの部屋を訪れたのは午後8時。
簡単な食事を用意してくれた女性はラフな服装で現れた彼にお疲れ様と言った。
「大丈夫だったか?」
「大丈夫だったって何が?」
「だから俺の母親のことだ。電話じゃ何もなかったって言ったが色々言われたはずだ」
「お母様のこと?」
と、返されたが司が言いたいことを分かっているはずで、言葉のやり取りは、まるで焦らしているように思えた。
そしてその態度は想像に反して、落ち着いていた。
だから単刀直入に言った。
「ああ。俺の母親だが、俺たちの親子関係は決していいとは言えない関係だ。だから俺が付き合っている相手が気に入らないと言って来たならお前は気にするな。母親は_」
と、言いかけたところで司の言葉は遮られた。
「もし何かを心配しているとしても、私はお母様に何も言われてないわ」
それはまるで諭すような言い方。
「お母様は司が心配しているようなことは言わなかった。それよりも息子と結婚して欲しいと言われたわ。だから私もよろしくお願いしますと答えたの」
継がれたのは明快な答え。
だが自分より先に母親に返事をする女を生意気だと思ったが、返事の順序をとやかく言うよりも、司は惚れた女を手に入れることが出来る満足の方が大きかった。

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出張の途中で連絡を取った恋人に、何か変わったことはないかと訊いたとき、司の母親に会ったと訊かされた。
司が女と付き合い始めた。
女性関係については過去に何度も週刊誌に書かれたことがあったが、牧野つくしとの関係を書いた記事はない。それなら秘書から伝わったか。姉から伝わったか。それとも母親が独自に調べたのか。
姉の椿が話したとは考えていなかった。だから秘書か母親かと考えた時、母親だと思った。
何しろ母親の道明寺楓はビジネスの上では社長であり、副社長である司のスケジュールを知ることは造作もない。
ボストンへ女を同伴していることを知った母親は彼女のことを調べたはずだ。
女がいることが知られたことは驚くことではないのだが、会いに来たというところが気になった。
道明寺という巨大企業の経営者である母親は、当然だが多方面に強い影響力を持つ。
そして冷静な分析力を持つ女は何らかの思惑を持って人に会う。
だからもし、母親が息子の人生の決断を妨げるなら司にも考えがあった。
だがどちらにしても、近いうちに彼女のことは話をするつもりだっただけに、司の出張の間に日本を訪れ牧野つくしに会った母親の行動の真意を探る必要があった。
決して良好とは言えない親子関係があったが、今まで司の女性関係に関して口出しをしたことがない母親。
だが牧野つくしに関しては行動が早い。
だから恋人に母親に嫌なことを言われなかったかと訊いたが、電話の向こうから聞こえた声はいつもと変わらなかった。
だが何かあったとしても、感情や思ったことを内に秘める性格の彼女が正直に言うとは思えなかった。
それなら今の司がすることはただひとつ。
だから「今戻った。これから会えないか」と電話をした。
そして母親に何を言われたのか訊くこともだが、帰国してからでいいと持ち越していた結婚についての返事が知りたかった。もしその答えがノーだとすれば、結婚を承諾させるためにすることは決まっていた。
それは何度もキスをして言葉の限りを尽くして自分の気持ちを伝えることだが、母親が何を言ったかを知るまでは落ち着かない気持ちでいた。
司が会いたいと言ってつくしの部屋を訪れたのは午後8時。
簡単な食事を用意してくれた女性はラフな服装で現れた彼にお疲れ様と言った。
「大丈夫だったか?」
「大丈夫だったって何が?」
「だから俺の母親のことだ。電話じゃ何もなかったって言ったが色々言われたはずだ」
「お母様のこと?」
と、返されたが司が言いたいことを分かっているはずで、言葉のやり取りは、まるで焦らしているように思えた。
そしてその態度は想像に反して、落ち着いていた。
だから単刀直入に言った。
「ああ。俺の母親だが、俺たちの親子関係は決していいとは言えない関係だ。だから俺が付き合っている相手が気に入らないと言って来たならお前は気にするな。母親は_」
と、言いかけたところで司の言葉は遮られた。
「もし何かを心配しているとしても、私はお母様に何も言われてないわ」
それはまるで諭すような言い方。
「お母様は司が心配しているようなことは言わなかった。それよりも息子と結婚して欲しいと言われたわ。だから私もよろしくお願いしますと答えたの」
継がれたのは明快な答え。
だが自分より先に母親に返事をする女を生意気だと思ったが、返事の順序をとやかく言うよりも、司は惚れた女を手に入れることが出来る満足の方が大きかった。

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Comment:2
コメント
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司*****E様
おはようございます^^
自分よりも先に返事を訊いていた母親に対してはムッとしたかもしれませんが、良い返事でしたのでまあいいか。
それにしても、まさか母親が自分の恋に大きく絡んでいるとは考えてもいないでしょうねぇ。
そして、あの母親に気に入られた恋人に対しての思いは誇らしい思いでしょう^^
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
自分よりも先に返事を訊いていた母親に対してはムッとしたかもしれませんが、良い返事でしたのでまあいいか。
それにしても、まさか母親が自分の恋に大きく絡んでいるとは考えてもいないでしょうねぇ。
そして、あの母親に気に入られた恋人に対しての思いは誇らしい思いでしょう^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.06.25 23:08 | 編集
