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2019
06.21

理想の恋の見つけ方 147

つくしはレストランの個室という場所を初めて利用するが、そこで神経質にスカートを撫で付けていた。
普段日常的に履いているスカートは足首まであるロングスカートで、大学に行く時はパンツが殆どだが今日はスカートを履いていた。
だがそのスカートはいつものスカートではない。
アンサンブルのスーツは見る者が見ればフランスの有名デザイナーの特徴的なデザインであることが見て取れるからだ。
だがそれはつくしが買ったものではない。恋人となった男性からプレゼントされたものだ。

そして緊張しているのは、これから会う人が恋人の母親だからだ。
息子である副社長が1週間の予定でヨーロッパ出張に出かけたその日に、かかって来た電話は、メープルのレストランで会いたいというもの。
道明寺楓は、道明寺ホールディングスの社長であり道明寺財団の理事長だ。
もちろん、他にも多くの肩書があるはずだが、つくしが知るのはそこまでであり、今までそれ以上のことを知ろうなど思いもしなかった。
だが今となっては、もっと道明寺楓のことを知ってから会うべきだったのかもしれない。
それにしてもまだ付き合いだして間もない恋人の母親が会いたいと言って来るとは思いもしなかった。
けれど考えてみれば、つくしの恋人は世界的企業である道明寺ホールディングスの社長の息子であり副社長で後継者だ。だから息子が付き合っている相手を気にするのは当然なのかもしれない。
そして、つくしより少し遅れて来た女性は、予め約束をしているのだから、自己紹介は必要ないといった態度で席に着くとこう言った。

「司の母親です___訊いてらっしゃるわね、わたくしのこと」

「え?ええ。お伺いしています」

確かに訊いていた。
母親は幼い子供たちを日本に残し、海外生活をしていたということ。
我が子に会うのは年に数回で育児は使用人任せ。そして息子は娘である姉が面倒を見ていたと訊いた。だからこうして会う前は、我が子に愛情を降り注ぐタイプではないと思っていた。
もっとも、話に訊いているだけで実際にこうして会うと、また別のものを感じたが、能面のように表情を変えない女性の口元は険しく結ばれていることから、つくしが感じたまた別のものは勘違いだったということになる。そしてその口元から何を言おうとしているのか想像することが出来た。

それは、息子がどんな付き合いをしようと構わないわ。
いい年をした息子の付き合いに干渉する暇はないわ。
けれど、結婚するとなれば違うわ。
夢を見るのは勝手です。だけどあの子の言葉に意味を見出そうとは思わないことね。
あなたはあの子に相応しいとは言えないわ。
いくら高価な服を着たところであなたには似合わないわ。
だってあなたはただの大学の准教授ですもの。
それにあの子に棄てられる前に別れた方があなたのためよ?
だから早くあの子のことは忘れて他の別の男性を見つけなさい。別れていただくためのお金なら充分な金額をお支払いするわ。

つまり、この面会は息子と別れて欲しいと言うためであり、楽しく食事をしようというのではないと感じた。

つくしは恋人から結婚してくれと言われていた。
「男の金や外見を気にすることがない女は俺の周りにはいない。だから俺は理想の女に出逢ったと思った。俺たちの付き合いは短いが時間は関係ないと思っている」
ヨーロッパ出張の前に言われたそれはプロポーズの言葉。
けれど、返事はヨーロッパから戻ってから訊かせてくれと言われた。
それは、つくしの性格を分かっての言葉。
そして恋人が母親に自分の意思を伝えているとすれば、彼の心の中では、つくしの返事を待たずに結婚することは決まっているということになる。
だから母親は早急に手を打つ必要があると判断し会いに来たと言っていい。

「あの…..」

じっと自分を見つめる年上の女性に何を言えばいいのか。
言葉を選んでいたが、言いかけた言葉を引き取ったのは女性の方だった。

「あの子は、司は綺麗な女性ばかりと付き合って来たわ。でもあの子は根本的に女性に対しては無関心だわ。それに真面目な恋をしたことがないわ。でもそれもそのはず。だってあの子の周りにいたのは綺麗だけで意味のあることを話す女性はいなかったんですもの。それに彼女たちの欲しいものは、ただひとつだけ。道明寺という名前に付いて来るお金。つまり札束ということよ」

道明寺楓の言葉は、つくしの事も札束を積めば簡単に別れる女だと思っているということなのか。そんな思いが表情に出たのか。年上の女性はつくしへの思いを口にした。

「牧野さん。あなたのことは調べさせてもらったわ」

その言葉の後に道明寺楓の顔に浮かんだのは、微笑とは呼べない弱い微笑。
それが感情を表に出さないと言われている女性ならではの微笑みなら、その微笑みが色づいたように思えた。
いや。勝手な思い込みだけで色づいてはいないのかもしれない。
それに、相手は日本経済を牛耳っていると言われる女性だ。ただの准教授が太刀打ち出来る相手ではない。
だから目の前の女性の顔に浮かんだように見えた微かな微笑みは、目の錯覚だったのかもしれない。そして「調べさせてもらった」の言葉に後に続くのは、つくしが想像している通りの言葉だとすれば、それは出来ないと断らなければならない。
だからつくしは、「あの、今日は一体どういったお話でしょう。私は_」と言いかけたところで遮られた。

「牧野さん。訊いて下さらないかしら?あなたは堅実な生活を送っている。だからわたくしはあなたが札束を積めば別れる女性だとは考えてないわ」

それは、てっきりお金で息子と別れて欲しいと言われると考えていたから思いもしなかった言葉。そして継がれた言葉は、それ以上に思いもしなかった言葉だった。

「わたくしがあなたのことを調べさせてもらったという言葉の意味は、あなたの人柄をという意味よ。わたくしは副島肇とは幼馴染みなの。だからあなたのことは彼から訊いて知っているの。彼はあなたがとても研究熱心で真面目な女性だと言っていたわ」

教授の副島と道明寺楓が幼馴染み?
その意外とも言える関係が意味することは一体何なのか。

「だからあなたには胸をはって司の妻になってもらいたいの」



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コメント
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dot 2019.06.21 08:29 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
恋人の母親に突然会う。それはもう緊張するはずです。
特に相手が司のような男性の場合は母親が反対するのではないか。
そう思って当然ですよね?
でも、楓さんは人物本位の方でした^^
そして色々な意味で二人の関係は進んできたようです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.22 21:33 | 編集
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