fc2ブログ
2019
06.15

ロングシュート~続・子の心、親知らず~<前編>

Father’s Day Story
***********







ある日、僕の前に突然現れた父。
そして父は母の日に18年振りに再会した母と3ヶ月後に結婚した。
もちろん、そのことに僕は反対しなかった。
ただ、いい年をした大人の男が、これまたいい年をした大人の女と結婚するのに盛大な式を挙げる必要があるだろうか?そのことを口にした僕に父は、

「おい。祐。結婚式ってのは一生に一度しか挙げねぇものだ。それに俺たちの結婚は恥ずかしいものじゃない。だからちゃんとした式を挙げて世間に母さんのことを知らせる。それが俺の母さんに対する誠意だ」

その言葉通り父は母と教会で式を挙げると、メープルの一番広い宴会場で盛大な披露宴を開いた。そこに招かれたのは各界の著名人と言われる人々。
それにしても、まさかそこに現役の内閣総理大臣が列席するとは思いもしなかった。
それはまさに道明寺司の妻に対する並々ならぬ決意とでも言おうか。この先何があっても妻を離さないといった思いと共にこの結婚に文句がある人間がいれば容赦しないといったものが感じられた。

そして父と暮らすようになって知ったことがある。
たとえばそれは寝る時は裸で寝るということ。
歯磨きはミントフレーバーだということ。
いつも付けるコロンは決まっていて、それは高校時代から変わらないということ。
意外なことだけど好き嫌いは無いということ。だから母が作る料理は何でも食べるということ。
誰もが振り返る男でクールに見えるけど、何故か玄関に脱いだ靴下がカタツムリのように丸まって落ちていることがあるってこと。
つまり経済誌の表紙を飾る父は誰が見ても大人の男でビジネスマンの顔をしているけど、僕や母の前にいる父は全くの別人にしか思えなかった。
そして父という人間は、包容力のある大人の男と我儘な男が同居しているということを知った。

それにしても母は父のどこに惹かれたのか。
二人のキャラクターは全くといって言いほど違うのに、何故この二人が愛し合うようになったのかが不思議だった。
けれど父と結婚した母は、そんな父を上手くコントロールしていた。

そして家族となった僕には父に対しての気遣いというものがあったが、気遣いというのは想像力が必要で、僕の父に対する気遣いとは、広大な邸の中に作らせた母専用の台所にいる母がエプロン姿で立ち振る舞っているとき、そっと席を外すこと。

僕は生まれてからずっと母の傍にいた。だからそれだけ母のことはよく分かっているつもりだ。けれど父と母の付き合いは高校時代の1年にも満たない時間。
それは僕の知らない二人のドラマがあった時間だが、それは余りにも短い時間。
だから父と母が二人でいるための時間を少しでも持つことが出来るならと、親子とはいえ男同士の義理がそうさせた。

それにしても、あの道明寺司がエプロン姿の妻の後姿に目を細め嬉しそうにしているとは世間の誰も想像すらしないはずだ。だが父は間違いなく、そういった種類の人間だ。
つまりそれは妻を溺愛するタイプの男ということ。
それを結婚して10ヶ月たった今、改めて思うのは僕の父は親バカならぬ妻バカだということだ。

そして父と母が再会を果たしてから1年と1ヶ月。
僕にとっては初めての父の日が来た。去年の父の日は出会って1ヶ月ということもあり、何かをしようというところまで気が回らなかった。
だが今年も母の日が終り巡って来た父の日。
そして、ここで僕は父に初めての父の日の贈り物をすることにした。
だが欲しい物は何でも簡単に手に入れることが出来る父に何をプレゼントすればいいのか。
正直僕は悩んだ。髭剃り?ポロシャツ?万年筆?ありきたりな物しか思いつかなかった。
そんな中、僕は父の親友の花沢類さんからある話を聞かされた。



にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト




コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2019.06.15 11:28 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2019.06.15 14:44 | 編集
ふ******マ様
おはようございます^^
祐くん登場。母の日からの続編となりますが、盛大な結婚式を挙げた二人のその後は、こんな感じでした(笑)
妻のエプロン姿にデレデレの男は見るだけではなく付いて回る!(≧▽≦)
きっとそうなんでしょうね(笑)
そしていい年して...と息子は思いながらも、そんな両親に気を使ってます。
え?祐くん。早く彼女を作ってですか?道明寺司の息子であることが世間に知られ、彼も自分の周りが騒がしくなったのではないでしょうか。そうなると彼女選びも大変かもしれませんね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.15 21:26 | 編集
司*****E様
こんにちは^^
「子の心、親知らず」の続編。こちらは父の日のお話です。
天ぷら屋で嗚咽した母を見た祐くん。そして司のことを「父さん」と呼んでから後のお話です。
父と息子。祐くんは父を知ることを始めたと思いますが、まだ出会って1年と1ヶ月。
この間にどのような関係を築いたのでしょう。
父の姿に母を大切にしていると思うも、時に我が道を行く父の姿に気遣いをする息子がいます。
出来た息子ですねぇ(笑)
そして父の日の贈り物。
祐くんにとっては初めての父の日。類からどんな話を聞かされたのでしょうね?
何を贈ろうかと考えた先にあるのは...。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.15 21:47 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top