脚の傷跡を気にするなと言われ抱き合った後は、まるで呪文が解けたように気持ちが軽くなった。
綴れ織りの縦糸のように隠されていた心が、ほぐされ、脚にキスされるたびに傷跡が薄まり消えていくような気がした。
それに、いい年をした女が経験のないことに引かれるかと思ったがそれも杞憂に終わった。
それにしても自分でも思い切った行動を取ったと思ったが、目の前に現れた姉と名乗る女性に言われた言葉が心を動かした。嘘をつかれたことに腹立たしさを感じながらも、気付けばいつの間にか心の奥に入り込んでいた男性が、自分以外の別の人と付き合っていたらどう思うか想像したとき嫌だと感じた。だからこうなったことは、今の自分の気持ちとして正しいと言える。
それに、道明寺司を否定しようとするたびに、心の中で何かが起こりつつあったが、そのことに蓋をしようとしていた自分がいた。
そしてそれを認めた瞬間、彼だけでなく男性に対しての怯えを取り払うことが出来た。
今まで臆病だった自分にサヨナラすることが出来た。
けれど男女の付き合いは大学生の時以来だ。
だが学生時代の付き合いと30代半ばの男女の付き合いを比べることは明らかに無理がある。何しろあの頃は二十歳そこそこの学生だったのだから、浮ついた気持ちというものがあったはずだ。だが今は違う。大人になり賢明さというものを持った。
そして、ここニューヨークでアメリカ滞在の残りの時間を過ごすことになり、本来の渡米目的であったウッズホールへの訪問が一度だけで終わったが、何故かそれが既定路線のように感じられた。
そしてつくしはメープルニューヨークのレストランで夕食を取りながら用心深く恋人の顔を見つめた。
それは恋人が放った言葉が本気なのかということ。
何故なら経済界のサメと呼ばれる男の片方の眉をつり上げたその表情は冗談にしては、いたく真剣な顔をしていたからだ。
「お前の傷跡を見るのが怖いだか辛いだが言った男だが、なんならその男を探し出して手錠をはめて海に突き落としてやってもいい。それも海のど真ん中で」
大学2年生の頃初めて付き合った四宮圭一はひとつ年上で恋人と同じ年。
きっかけは合コンだが数合わせで呼ばれ付き合うことになった。
彼が今何をしているかは知らない。
だが道明寺司なら調べることは簡単なはずだ。
けれど、その男性の事は過去の話だ。だからその人のことを知りたいとは思わない。
だが四宮圭一の言った言葉と態度に傷付いたのは明らかだ。だが今どこで何をしていたとしも、つくしには関係ない。だから、「止めてよ。冗談だとしても犯罪だから」と、笑いながら答えたが、司は冗談には捉えては無かった。
司は牧野つくしが大学生の頃に付き合っていた男のことを調べた。
四宮圭一という男は英徳とまではいかないが、金持ちの子供が好んで通う幼稚舎から大学までエスカレーター式に進学できる大学を卒業し、大手と呼ばれる損害保険会社に就職していた。
歴史があるその会社は、全国に支社を持ち専属の代理店を数多く抱え、強固な営業基盤を持ち、海外での事業展開も積極的に行っていた。
そして四宮という男は、国際マーケット部門に席を置き今はアメリカの現地法人にいた。
つまりここニューヨークにいるということ。
そしてその会社は、道明寺ホールディングスが手掛ける南米の鉱山開発工事の保険契約を結ぶことになっているが、保険会社は様々なリスクを精査し収支が合わないと思えば受けることはないが、多くの会社が保険プログラムを用意して道明寺との契約を望んだ。
その中から選ばれたのが四宮圭一の会社。
そしてその契約の担当者は四宮圭一。
司はその男に会うつもりでいた。
だから明日は午前中急な仕事が入った。申し訳ないと言って彼女にはこの街に詳しいガイドを手配したと言った。
「そう。分かったわ。気にしないで」
司は「悪いな」と言ったが、その言葉を明日四宮圭一に言うつもりでいた。

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綴れ織りの縦糸のように隠されていた心が、ほぐされ、脚にキスされるたびに傷跡が薄まり消えていくような気がした。
それに、いい年をした女が経験のないことに引かれるかと思ったがそれも杞憂に終わった。
それにしても自分でも思い切った行動を取ったと思ったが、目の前に現れた姉と名乗る女性に言われた言葉が心を動かした。嘘をつかれたことに腹立たしさを感じながらも、気付けばいつの間にか心の奥に入り込んでいた男性が、自分以外の別の人と付き合っていたらどう思うか想像したとき嫌だと感じた。だからこうなったことは、今の自分の気持ちとして正しいと言える。
それに、道明寺司を否定しようとするたびに、心の中で何かが起こりつつあったが、そのことに蓋をしようとしていた自分がいた。
そしてそれを認めた瞬間、彼だけでなく男性に対しての怯えを取り払うことが出来た。
今まで臆病だった自分にサヨナラすることが出来た。
けれど男女の付き合いは大学生の時以来だ。
だが学生時代の付き合いと30代半ばの男女の付き合いを比べることは明らかに無理がある。何しろあの頃は二十歳そこそこの学生だったのだから、浮ついた気持ちというものがあったはずだ。だが今は違う。大人になり賢明さというものを持った。
そして、ここニューヨークでアメリカ滞在の残りの時間を過ごすことになり、本来の渡米目的であったウッズホールへの訪問が一度だけで終わったが、何故かそれが既定路線のように感じられた。
そしてつくしはメープルニューヨークのレストランで夕食を取りながら用心深く恋人の顔を見つめた。
それは恋人が放った言葉が本気なのかということ。
何故なら経済界のサメと呼ばれる男の片方の眉をつり上げたその表情は冗談にしては、いたく真剣な顔をしていたからだ。
「お前の傷跡を見るのが怖いだか辛いだが言った男だが、なんならその男を探し出して手錠をはめて海に突き落としてやってもいい。それも海のど真ん中で」
大学2年生の頃初めて付き合った四宮圭一はひとつ年上で恋人と同じ年。
きっかけは合コンだが数合わせで呼ばれ付き合うことになった。
彼が今何をしているかは知らない。
だが道明寺司なら調べることは簡単なはずだ。
けれど、その男性の事は過去の話だ。だからその人のことを知りたいとは思わない。
だが四宮圭一の言った言葉と態度に傷付いたのは明らかだ。だが今どこで何をしていたとしも、つくしには関係ない。だから、「止めてよ。冗談だとしても犯罪だから」と、笑いながら答えたが、司は冗談には捉えては無かった。
司は牧野つくしが大学生の頃に付き合っていた男のことを調べた。
四宮圭一という男は英徳とまではいかないが、金持ちの子供が好んで通う幼稚舎から大学までエスカレーター式に進学できる大学を卒業し、大手と呼ばれる損害保険会社に就職していた。
歴史があるその会社は、全国に支社を持ち専属の代理店を数多く抱え、強固な営業基盤を持ち、海外での事業展開も積極的に行っていた。
そして四宮という男は、国際マーケット部門に席を置き今はアメリカの現地法人にいた。
つまりここニューヨークにいるということ。
そしてその会社は、道明寺ホールディングスが手掛ける南米の鉱山開発工事の保険契約を結ぶことになっているが、保険会社は様々なリスクを精査し収支が合わないと思えば受けることはないが、多くの会社が保険プログラムを用意して道明寺との契約を望んだ。
その中から選ばれたのが四宮圭一の会社。
そしてその契約の担当者は四宮圭一。
司はその男に会うつもりでいた。
だから明日は午前中急な仕事が入った。申し訳ないと言って彼女にはこの街に詳しいガイドを手配したと言った。
「そう。分かったわ。気にしないで」
司は「悪いな」と言ったが、その言葉を明日四宮圭一に言うつもりでいた。

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司*****E様
おはようございます^^
さて。つくしが初めて付き合った、そして脚に傷を負った彼女の心を傷付けた四宮圭一がニューヨークにいることを知った男は、どのような行動を取るのでしょう。
「悪いな」の言葉が効果的に使われるとすれば、それはどんな場面なのでしょうねぇ^^
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
さて。つくしが初めて付き合った、そして脚に傷を負った彼女の心を傷付けた四宮圭一がニューヨークにいることを知った男は、どのような行動を取るのでしょう。
「悪いな」の言葉が効果的に使われるとすれば、それはどんな場面なのでしょうねぇ^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.06.11 22:53 | 編集

童*様
つくしに分からないように彼女の心に傷を付けた元カレに対して活動を開始した男。
う~ん。どんな展開になるのでしょうねぇ^^
コメント有難うございました^^
つくしに分からないように彼女の心に傷を付けた元カレに対して活動を開始した男。
う~ん。どんな展開になるのでしょうねぇ^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.06.11 23:01 | 編集
