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2019
06.06

理想の恋の見つけ方 141

部屋は片隅に置かれたオレンジ色の間接照明だけで薄暗い。
それは夜空を映し出していたプラネタリウムとは違う暗さ。
ここで女が足を踏み入れたのは未知の淵。
だがそれは司も同じ。
幾度も繰り返した行為でも相手が好きな女なら司にとっても未知だと言えた。



傷跡に舌を這わせる。
今まで女を抱いてもその身体に舌を這わせたことがなかった男のその行為は、動物が傷ついた伴侶の傷口を舐めるそれに似ていた。
そして一瞬、火傷の痕に氷を当てられたように強張った身体も、やがて熱を帯びたのか。
白い肌が薄っすらとピンク色に染まった。

司が今まで女達と経験してきたことは愛とは言えず色恋とも違う。
それは感情とは無関係のものであり女達は性欲のはけ口と言えた。
だから冴えた頭での行為の最中に愛してるも好きだも口にしたことがない。
だが今は違う。身体の奥底から感じられる炎は、めらめらと燃え広がり下腹部の一点に集中して力を持った。

「お前のことが好きだ」

司を利用しようとしない女は初めて。
そして彼を拒絶した女も彼女が初めて。
だが今は司を利用して欲しい。
傷のせいで女としての自信を失っていたのなら、高ぶりを隠すことが出来ないこの身体に対して投げかける言葉を教えて欲しい。
そして司は逸る気持ちを抑えながら訊いた。

「いいんだな?」

それは気が変わったというなら、今ならまだ止められるという思いから出た言葉だが、女は顔を横に振った。

司はベッドから降りるとシャツを脱ぎ一瞬にして裸になった。
それは気が狂うほど彼女が欲しいから。
そして性急に奪いたい。むさぼりたいという思いと共に頭にあるのは初めてだという女に対しての気遣い。

だが司が気遣うのとは逆に司に対しては気遣いなど無用であり躊躇わないで欲しい。
その手で触れて欲してほしい。不器用な手つきでもいいから彼を求めて欲しい。
だが今それを求めることは無理だと知っている。だから司はつくしが着ていたものを全て脱がせると唇を重ね、首すじに唇を這わせ、胸の先端を舐めた。

その瞬間、唇から漏れた声は喘ぎ声ではなく、あっ、という短い声。
そしてそこのあるのは、のけ反らせた首と、きつく閉じられた瞳とシーツを掴んだ手。
柔らかく唇を使う行為は初めての女に対し順を追って愛することを決めた男の気遣いだが、彼女の手は司の背中に回されることを躊躇っていた。
だからその手に自分の手を重ね、身体をシーツに縫い付け身動き出来ないようにした。

「目を開けて俺を見ろ」

素直に目を開けて司を見上げたその瞳に浮かぶのは戸惑い。
それは経験したことのないことへの期待なのか。それとも恐怖なのか。
だが初めての女を抱くのは司にとっても初めての経験なのだから、今のこの感覚は不思議な感覚だった。

つまりよく知っている行為も、愛する人を前にすると行為自体が神聖なものに思えた。
そして司は手を離し、頬を撫でると顔を近づけ、唇がしっかりと重なるようにして舌を絡ませた。すると相手は躊躇いながらも絡ませてきた。
そして自由になった手は司の背中に回され、しがみついてきた。

司は二人の身体の間に片手を差し入れて、彼女の胸を包み込んだが、心臓は早鐘を打っていた。
胸を可愛がられることも、唇で身体の隅々までむさぼられることも、彼女にとってはすべてが初めての行為。だから左右の乳首を吸い身体の中心の泉まで指を這わせ挿入したが、その瞬間、漏れた声は呻きではなく喘ぎ。
優しく抜き差しして潤い始めた部分をさらに濡らしたが、どこか緊張しているのは感じられた。
だから司は頭を下げ、太腿を押し広げると脚の間の泉に唇をつけ、舌で舐め、味わい、転がし強く吸い全身に炎を広げ、濡れた部分を指で広げていった。

「リラックスしろ」

そう言ったものの、司自身がリラックスなど出来るはずがなかった。
それは自分の初めての時はどうだったかを考えたからだ。
だがそれは遠い昔の話で身体を交えただけの関係であり、そこに愛などなかった。
だから愛のあるセックスを初めてする男は、彼女と同じでどこか緊張していたとしてもおかしくはなかった。

だが身体が引き返せない状況に来れば、結ばれることを躊躇わなかった。
だから司は、つくしの尻を掴むと、激しく脈打つ高まりに密着させ、本当にしているように腰を回した。それはこれから始める行為に対する前戯のひとつだが、司自身の大きさを暗に伝えたが、聞こえたのは喘ぎ声。

「どうした?心配か?だがな、お前の身体の準備は充分出来ている。だから何も心配するな」

司の胸板に躊躇いがちに伸ばされた指先。
口では何も言わなかったが瞳は気持ちを語っていて、微熱を持ったような身体は司を求めていた。
その姿が豊穣の女神ではなくても、美の女神でなくても、司の前に横たわっているのは、愛おしいと思える最上の女性。
だから司は自分に向かって開かれた、たおやかな身体に愛おしさを込めゆっくりと分け入ると奥まで突き進んだ。
その瞬間声が上がった。
だから司は一度腰を引いたが、今度は思いっきり腰を突き出した。

「しっかりつかまってろ」

司の言うとおり彼の背中に回された手は、立てられた爪は、司の情熱を刺激した。
そして司の両腕は、つくしを離さず、唇は愛の言葉を囁き、肉体の全てを使って愛を伝えた。
それは今まで他の女にしたことがない優しさと有無を言わせない強さを持った行為。
そして少しでも先に延ばしたいという快楽の頂点を二人して越えた瞬間、女は未知の淵を越えた。と、同時に司は今まで経験してきたどのセックスとも比べものにならないほどの満足を得た。





司は何も言わなかったが、女も何も言わなかった。
それに言葉は必要なかった。
何故なら愛撫とキスで気持ちは充分伝わったから。
そして、今夜はこれ以上求めることは無理だなと心の中で思うと、腕の中にいる女をきつく抱きしめ、「眠るんだ」と言って自身も深い眠りに落ちていった。



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コメント
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dot 2019.06.06 07:58 | 編集
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dot 2019.06.06 12:50 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
はい。ついにです。
つくしは翻弄されっぱなし(≧▽≦)確かにそうでしょうねぇ^^
そして傷跡のことを考えてる余裕はなかったはずです。
え?帰国して桜子への報告ですか?報告しなくても桜子なら何かあったと分かるような気がします。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.07 23:07 | 編集
イ**マ様
椿お姉さんの力は偉大なのでしょうか(笑)
そしてお姉さんの言葉は目から鱗だったのでしょうか。
決めたら迷わないわよ!といった女です。
いい年をしてますから迷ってなんかいられないといった感じなのでしょうか?
まるごと愛された女‼確かに羨ましいゾ!
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.07 23:20 | 編集
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