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2019
06.03

理想の恋の見つけ方 138

暗い夜空に瞬く満天の星の風景。
それは都会の夜空の下、肉眼では決して目にすることが出来ない景色だが、プラネタリウムならどんな星空も見ることが出来る。
そしてその星空の下で自分の気持ちを確かめることをしていた。

つくしが恋におちたことに気付いたのは椿の言葉だったが、心が捉えられた瞬間がいつだったのか。だがそれを思い出す必要はないのだが、言いたいことをどう切り出せばいいのか分からなかった。何故なら今まで道明寺司を拒否していた自分の態度を考えたとき、どうなのかという思いがあるからだ。

しかしそれは一歩を踏み出す勇気があるかどうかの問題。
だがその勇気というものが持てずにいた。それに今までならその勇気が向けられたのは往々にして仕事に対してであり、研究費の獲得や発表といったもので、遠い昔の恋愛経験しかない女が恋におちた男に対して言いたいことや伝えたいことがあったとしても簡単ではなかった。
それに頭の中で勝手に回り始めた言葉は口に出すには躊躇われる言葉があった。

そうだ。ここは一度冷静になって考えることをしなければならないはずだ。
だから天空を見上げ煌めきを放つ星を眺めていたが、思い切って口にした言葉は冷静に考える前の言葉だった。

「あの。私は男性経験がないの。それが一番の問題なの」





司は唐突に語られたその言葉に、もたれていた椅子から身体を浮かせ隣にいる女を見た。
だが暗闇の中では真っ直ぐに上を向いた女がどんな表情をしているのか、はっきりと分からなかった。それにまさか彼女の口からそんな言葉が出るとは思いもしなかった。

『男性経験がない』

長い間男がいなかったことは知っているが過去に付き合っていた男がいた。だから当然だがその男と関係があったと思っていた。
だが牧野つくしは男性経験がないと言った。
そしてそのことが問題だという女は、そこから先も喋ることを止めなかった。
だから司は牧野つくしが話したいというなら遮ることをしない方がいいと思った。
それにまるで何かを吹っ切ったように胸の裡に溜めていたものを語り始めたとすれば、彼女の想いを聞いてみたい。そんな思いから継がれる言葉を黙って聞くことにした。

「知っての通り私の脚には大きな傷跡があるわ。傷が出来た理由は桜子から訊いてると思うけど、私が不注意な行動を取った結果怪我をしたの。その傷が出来た当時付き合っていた人がいたけど別れたわ。理由はその人が傷跡を見るのが辛いからという理由。だから私たちは男女の関係になる前に別れたの。
別れる理由を聞かされた時その人は心が正直に訴えることを言った。だから、ああそうなんだって相手の想いを受け入れたわ。それに無理をして付き合っていたとしてもいずれ別れることになるなら、早いに越したことはないもの。傷ついたのは私の身体だけど、その人はまるで自分が傷を負ったように辛そうな顔をしたから。だから繊細な人だったと思ったわ」

司は相手の男が言った別れの理由を三条桜子の話から知っていたが、男が傷を受け入れることが出来ないと正直に言ったことは、下手な嘘をついて別れられるよりはマシかと思った。しかしそうは言っても正直に言われたからそこ堪えることもある。
それに司に言わせれば恋人の傷跡を見ることが辛いから別れたという男は繊細などではなく単なる臆病者だ。
本当に好きな女なら、たとえ相手の身体に傷があろうと関係はないはずだ。

そして隣にいる女は彼の方を見なかったが、別れた相手のことを悪く言おうとしないのは、事由は違えど川上真理子の時と同じで終わったことは仕方がないといった態度に思えた。
だが緊張していることは感じられた。
それに顔を合わせて話そうとはしないが、その目は真面目であることは分かっていた。
だから司はその目を見ようとした。
見えない表情を。その顔を。
過去のことを語る女の顔はどんな表情を浮かべているのかを。
そしてもしその顔に傷付いた表情が浮かんでいるのなら慰めてやりたいと思った。

「おい」

司は優しく呼んだ。
だが牧野つくしは司の呼びかけに応えようとはせず話し続けようとした。

「あれ以来私は男性と距離を置くようになったわ。私のことを好きになる人がいたとしても、その人は私の脚の傷を見たらショックを受けるって。だから人を好きになることはなかった。それで今までの私は_」

だからもう一度呼んだ。「おい。牧野つくし」と。そして肘掛の向こうにある彼女の手首をつかみ驚いてこちらを向いた女と顔を合わせた。

「お前は緊張するとぺらぺらと喋る癖があるのか?」

司は感じたことを口にしたが、女はその言葉に暫く黙っていた。
そして「そ、そんなはずはないと思うけど」と答えたが、その答え方は明らかに動揺していた。それでも司の目を見つめながら牧野つくしは言った。

「あの….私は自分がしたことを後悔するよりも、しなかったことを後悔したくないの。だから….ええっと、その…..自分の気持ちを正直に伝えることにしたの」




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コメント
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dot 2019.06.03 10:13 | 編集
司*****E様
色々と考え過ぎる女、牧野つくし。
言いたいことが纏まる前に口が滑ったのでしょうか?(;^ω^)
緊張すると多弁になるタイプとそうでないタイプがありますが、つくしの場合は多弁だったようです(笑)
ジレジレとして進まなかった(´Д⊂ヽ 
そんな状況でやっとここまで来ましたが、大人なんだから、ちゃんとね、つくしちゃん!と言ってあげたいと思います。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.03 22:24 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2019.06.03 22:44 | 編集
イ**マ様
やっとここまで来ました(´Д⊂ヽ
はい。暗闇の中でなら話せてしまうこともありますが、今のつくしは考えが纏まる前に口が滑った感があります(笑)
そして心臓の動きが急速に早くなりその音が周りに聞こえてしまうのではないか。
まさにそんな状況でしょうねぇ(笑)
二人の関係がこれからどうなるのか?(*'ω'*)
相手は大人の男。道明寺司ですから!(笑)
でもその相手は牧野つくしですからねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.03 22:58 | 編集
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