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2019
05.30

理想の恋の見つけ方 136

つくしは椿に返す言葉がうまく見つけられなかった。
そして椿の最後の言葉を否定する自信がなかった。
それは、『あの子が別の誰かと付き合っていたらどう思うかを想像して欲しいの。その時もし嫌だと感じるならあなたの気持ちは司に向けられていると思うわ。つまりそれは恋だと思うの』。

つまりそれは恋__。

だがそんなはずはないと思った。
他人のフリをして電話をするような男を好きになるはずがない。
けれど杉村と名乗った男性に対しては好意を持ったことは間違いない。
だが道明寺司が杉村であることを知り、ホテルのラウンジでグラスの底に残っていた氷と多少の水を浴びせ平手打ちをしたが、そこから先、道明寺司は常に身近にいた。
図書館の書庫に閉じ込められ捻挫したつくしを病院に運び、自宅と大学の送り迎えの手配をしてくれた。それに川上真理子に拉致されたつくしを見つけることに力を尽くし、海に投げ込まれる前に助けてくれた距離を置こうとするたび近づいて来る男。
そんな男が誰かと付き合うことを想像しろと言われ、美しい女性と腕を組んで歩く姿が脳裡に浮かんだ。
ニューヨークの街角に止まった黒く大きな車から降りた二人が瀟洒な建物の中に消えて行く姿が___。



「___牧野さん?牧野さん?」

「え?あ、すみません、ちょっと考え事をしていて」

「いいのよ。だって突然現れた姉と名乗る女から弟のことを考えて欲しいって言われて何も考えない方がおかしいもの。それにごめんなさいね。私は弟のこととなるとついあの子がまだ私のスカートの端を掴んで泣いていた頃のことが思い出されちゃって….」

椿はそう言ってクスッと笑った。

「あ、でも誤解しないでね?弟はシスコンでもなければ、私が弟に対して異常な愛情を抱いている訳でもないのよ。ただ私たちは広い大きな邸の中で、たった二人の血縁だったから、自然と寄り添っていることが多かったってだけよ。それにね。今では立派な経営者だとしても弟はいつまでたっても弟なのよ。姉弟ってそんなものなのよ」

つくしは、椿の言いたいことは理解出来た。
何故なら自分にも弟がいて、姉の立場からすれば、どれだけ大人になったとしても弟は弟でありそれ以外の何ものでもないのだから。
そして椿は椿の流儀で弟のことを心から思っているということが伝わって来た。

それにしも、つくしの前で弟のことを語る女性は、つくしに対して好意的だ。
高圧的ではなく笑みを絶やさない女性は、お金持ちの女性特有と言われる嫌味はなく親しみやすさを出していた。
それに道明寺司の姉だけのことはある。人を惹き付ける力というのは、誰もマネが出来ないと思った。そしてこの人のことは信じられると思った。語られる言葉に嘘はないと思った。
けれど、道明寺司のことは___

「それからあの子。自分のことを完全無欠だとは思ってないわ。あの子は別の人間になりたいこともあったはず。でもあの子はそれが出来ないことを受け入れたわ。弟はああ見えて繊細な部分もあるの」

椿はそう言うとつくしから視線を外した。

「あら、司が戻って来るわ。ごめんなさいね。なんだか私ばかり喋って。それに勝手なことばかり言って。でもあなたに会えて良かったわ。あなたのその真剣な目は私の話をしっかりと訊いてくれたもの。思いがけない出会いだったけどあなたに会えて本当に良かったわ」

椿の話はそこで終わった。
そして近づいて来た弟に、「遅かったわね?」と言うと再びナイフとフォークを手に取った。












「あら。雨が降り出したようね?あなたたちこれからどうするの?また博物館に戻るのかしら?」

ホテルのエントランスで車に乗り込もうとする椿は、涼やかな風が吹き始めた空を見上げ、それから弟とその隣に立つつくしに視線を向けた。

「この雨。あまり激しくならなければいいわね。それから司。私は牧野さんのことが好きよ。応援するわ。だから頑張りなさい」



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コメント
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dot 2019.05.30 05:52 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
椿の話に今までのことを振り返ったつくし。
どんな感情を持ったのか。
あ、お話進んじゃってますね(汗)
少しずつですが進んできたようです^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.06.01 15:23 | 編集
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