「司?アンタこんな所で何してるのよ?」
「姉貴?」
「驚いたわよ。さっきからアンタに似てる後姿の男がいると思って見てたんだけど、まさかこんな場所にいるとは思わないでしょ?だから他人の空似かと思ったけど、やっぱりアンタだったわ」
司の方こそ、まさかロスに住む姉にニューヨークで会うとは思いもしなかった。
それも姉の言う通り博物館という司には似合わない場所にいるのだから、姉も驚いて当然だと思った。
「新聞見たわよ。ボストンの会社。アンタにしては随分と時間がかかったみたいだけど無事買収が終わったそうね?夫も喜んでいたけど、私からもおめでとうと言わせてもらうわ」
司の姉、椿の夫はホテル王と言われアメリカ国内はもとより海外にも巨大ホテルをいくつも所有している。そして日系3世の夫が経営するホテルは、かつて道明寺グループのメープルとはライバルだと言われていたが、椿との結婚により業務提携契約が結ばれた。
「それで?アンタこんな所で何してるのよ?仕事はいいの?それとも息抜きかしら?でも息抜きに博物館ってアンタらしくないわね?ああ私?私は今日予定していたお友達との約束がキャンセルになったからここに足を運んだの」
司の姉はそう言って彼の隣に立つ女に視線を向けた。
「ところでそちらの方は?どなたかしら?私は司の姉の須藤椿よ。よろしくね?」
椿はいい年をした弟が結婚しないでいることを心配していた。
だから弟の傍にいる女性が誰であるかが気になった。
そして世界中で唯一司のことをアンタと呼ぶことが出来る姉は深い洞察力を持ち、幼かった弟の面倒を見て来たことだけのことはあり、大人になってからは感情を面に出さないと言われる弟の顔から心の裡を読むことが出来た。
だから感じたことを口にした。
「あなたもしかして司の恋人かしら?」
「いいえ。違います。私は道明寺副社長のブレーンであり恋人ではありません」
椿の質問に間髪を入れずに答えた女はそのまま自己紹介をした。
「私は大学で海洋生物の研究をしている牧野つくしと申します。専門は深海ザメで副社長の学術分野に於けるブレーンの一人です。こちらでこうしてご一緒させていただいているのは、副社長のボストン行きに際し同じ州内にある海洋生物学の研究施設への訪問をご提案下さったことで同行させていただいたに過ぎません。ですからおっしゃるような関係ではありません」
椿は、つくしを見た瞬間、明らかに今まで弟の周りにいた女性たちとは違うと感じたが、まさか目の前の女性が大学で深海ザメの研究をしているとは思いもしなかった。
そしてどういった経緯で二人が出会ったとしても弟の態度と彼女の態度は、彼女が言った以上の関係に思えた。
「あらそうなの?それは残念だわ。今までのこの子はお付き合いしてきた女性とこういった場所に、つまり博物館のような場所に足を運ぶことはなかったはずだから、てっきりここでデートでもしているかと思ったの。だから本当に残念だわ」
椿はつくしに向かってそこまで言うと、今度は司に向かって言った。
「私はついにアンタが結婚を視野にいれて付き合いを始めたのかと思ったけど違うのね?」
「いいや。そうじゃない。俺は彼女のことを単なるブレーンだとは考えてない。俺は彼女の事が好きだ。だから口説いてるところだ」
司は姉の性格を理解しているからこその発言をした。
それは、姉である椿は弟が惚れた女のことが気に入ったも同然のことを口にしたからだ。
そしてそれが事実であるとすれば姉の行動力に頼ることは悪くないと考えた。
何しろ椿という人間は、思い立ったら即行動という思考の持ち主で、人の話を訊かないところがあるからだ。だから牧野つくしの司に向けられる頑なな心を少しでも解く事が出来るなら、司の秘密も悪い癖も全てを知りつくした姉の弟に対する大袈裟な愛情表現を彼女に話してもらっても構わないと思っていた。
つまりそれは姉の母性を利用するということ。
それに牧野つくしが司のことを嫌いだと言ったとしても、椿を嫌いになるとは思えないからだ。
何故なら姉は道明寺家の長女でありながら、若い頃は権威というものに反発を抱き、好きな男が出来たと言って家出をしたことがあるような女だからだ。
そして女同士ということから司の言葉よりも椿の言葉なら、たとえそれが弟を嘲るような言葉だったとしても受け入れられるような気がしていた。
「あら!そうだったの?私の勘は間違ってなかったってことね?私はアンタがいい加減まともな恋をしてくれることを願ってたのよ?だから凄く嬉しいわ!」
その言葉に司は姉と弟の連帯感というものが発揮されたと感じた。
それは、椿の情熱は加速を始めると一直線に目的に向けられ、とどまることを知らないということ。
そして次に放った言葉はここから先は私に任せなさいと言っているようにも思えた。
「ねえ。そろそろお昼でしょ?もしよかったらだけど3人で一緒に食事をしない?」

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「姉貴?」
「驚いたわよ。さっきからアンタに似てる後姿の男がいると思って見てたんだけど、まさかこんな場所にいるとは思わないでしょ?だから他人の空似かと思ったけど、やっぱりアンタだったわ」
司の方こそ、まさかロスに住む姉にニューヨークで会うとは思いもしなかった。
それも姉の言う通り博物館という司には似合わない場所にいるのだから、姉も驚いて当然だと思った。
「新聞見たわよ。ボストンの会社。アンタにしては随分と時間がかかったみたいだけど無事買収が終わったそうね?夫も喜んでいたけど、私からもおめでとうと言わせてもらうわ」
司の姉、椿の夫はホテル王と言われアメリカ国内はもとより海外にも巨大ホテルをいくつも所有している。そして日系3世の夫が経営するホテルは、かつて道明寺グループのメープルとはライバルだと言われていたが、椿との結婚により業務提携契約が結ばれた。
「それで?アンタこんな所で何してるのよ?仕事はいいの?それとも息抜きかしら?でも息抜きに博物館ってアンタらしくないわね?ああ私?私は今日予定していたお友達との約束がキャンセルになったからここに足を運んだの」
司の姉はそう言って彼の隣に立つ女に視線を向けた。
「ところでそちらの方は?どなたかしら?私は司の姉の須藤椿よ。よろしくね?」
椿はいい年をした弟が結婚しないでいることを心配していた。
だから弟の傍にいる女性が誰であるかが気になった。
そして世界中で唯一司のことをアンタと呼ぶことが出来る姉は深い洞察力を持ち、幼かった弟の面倒を見て来たことだけのことはあり、大人になってからは感情を面に出さないと言われる弟の顔から心の裡を読むことが出来た。
だから感じたことを口にした。
「あなたもしかして司の恋人かしら?」
「いいえ。違います。私は道明寺副社長のブレーンであり恋人ではありません」
椿の質問に間髪を入れずに答えた女はそのまま自己紹介をした。
「私は大学で海洋生物の研究をしている牧野つくしと申します。専門は深海ザメで副社長の学術分野に於けるブレーンの一人です。こちらでこうしてご一緒させていただいているのは、副社長のボストン行きに際し同じ州内にある海洋生物学の研究施設への訪問をご提案下さったことで同行させていただいたに過ぎません。ですからおっしゃるような関係ではありません」
椿は、つくしを見た瞬間、明らかに今まで弟の周りにいた女性たちとは違うと感じたが、まさか目の前の女性が大学で深海ザメの研究をしているとは思いもしなかった。
そしてどういった経緯で二人が出会ったとしても弟の態度と彼女の態度は、彼女が言った以上の関係に思えた。
「あらそうなの?それは残念だわ。今までのこの子はお付き合いしてきた女性とこういった場所に、つまり博物館のような場所に足を運ぶことはなかったはずだから、てっきりここでデートでもしているかと思ったの。だから本当に残念だわ」
椿はつくしに向かってそこまで言うと、今度は司に向かって言った。
「私はついにアンタが結婚を視野にいれて付き合いを始めたのかと思ったけど違うのね?」
「いいや。そうじゃない。俺は彼女のことを単なるブレーンだとは考えてない。俺は彼女の事が好きだ。だから口説いてるところだ」
司は姉の性格を理解しているからこその発言をした。
それは、姉である椿は弟が惚れた女のことが気に入ったも同然のことを口にしたからだ。
そしてそれが事実であるとすれば姉の行動力に頼ることは悪くないと考えた。
何しろ椿という人間は、思い立ったら即行動という思考の持ち主で、人の話を訊かないところがあるからだ。だから牧野つくしの司に向けられる頑なな心を少しでも解く事が出来るなら、司の秘密も悪い癖も全てを知りつくした姉の弟に対する大袈裟な愛情表現を彼女に話してもらっても構わないと思っていた。
つまりそれは姉の母性を利用するということ。
それに牧野つくしが司のことを嫌いだと言ったとしても、椿を嫌いになるとは思えないからだ。
何故なら姉は道明寺家の長女でありながら、若い頃は権威というものに反発を抱き、好きな男が出来たと言って家出をしたことがあるような女だからだ。
そして女同士ということから司の言葉よりも椿の言葉なら、たとえそれが弟を嘲るような言葉だったとしても受け入れられるような気がしていた。
「あら!そうだったの?私の勘は間違ってなかったってことね?私はアンタがいい加減まともな恋をしてくれることを願ってたのよ?だから凄く嬉しいわ!」
その言葉に司は姉と弟の連帯感というものが発揮されたと感じた。
それは、椿の情熱は加速を始めると一直線に目的に向けられ、とどまることを知らないということ。
そして次に放った言葉はここから先は私に任せなさいと言っているようにも思えた。
「ねえ。そろそろお昼でしょ?もしよかったらだけど3人で一緒に食事をしない?」

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コメント
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ま**ん様
こんにちは^^
最強の助っ人現る!(笑)
椿は、どんな風に頑ななつくしの心を解していくのか?
ここは姉の力を借りることにしたようですので期待してみましょう!
コメント有難うございました^^
こんにちは^^
最強の助っ人現る!(笑)
椿は、どんな風に頑ななつくしの心を解していくのか?
ここは姉の力を借りることにしたようですので期待してみましょう!
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.05.25 23:24 | 編集

司*****E様
こんにちは^^
椿の登場は司にとっては有難い援軍だと思いますが、姉の行動がつくしの頑なな心を解すことが出来るのでしょうか。
確かに椿は司以上にグイグイ行きますからねぇ。
それに弟がやっとまともな恋愛をする。そう思うと是が非でも応援してくれるはずです。
さて、椿はつくしとどんな話をするのでしょうね?
コメント有難うございました^^
こんにちは^^
椿の登場は司にとっては有難い援軍だと思いますが、姉の行動がつくしの頑なな心を解すことが出来るのでしょうか。
確かに椿は司以上にグイグイ行きますからねぇ。
それに弟がやっとまともな恋愛をする。そう思うと是が非でも応援してくれるはずです。
さて、椿はつくしとどんな話をするのでしょうね?
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.05.25 23:28 | 編集
