理由の説明できない感情というものは誰にでもあるはずだ。
そしてそれが突然湧き上がり頭の中を支配すれば、物事を論理的に考えることが困難になる。だから何故今自分がジェットに乗りニューヨークへ向かっているかを説明することは難しかった。
そして隣の席にいるのは、このジェットの持ち主の男だが、本来なら今日は若手のサメの研究者とエイの研究者に会い交流を深め研究情報を交換する予定だった。
だが、突然招かれた昨夜のパーティーで彼らに会い話を訊き、翌日会う予定だったイカの研究者ともパーティーで会ったことから会いに行く必然性が無くなってしまった。
そしてそれはそれぞれの相手も同じで、ここで会えたのだから、わざわざ足を運ぶ必要がなくなりましたね、と言った。
パーティー帰りの車内で、つくしに明日はどうするんだと訊いて来た男は、その話を訊くと「そうか。それならニューヨークへ行かないかと言った」
ニューヨークには、この旅では行くことは出来ないと諦めていたアメリカ自然史博物館があり、そこへ行ける嬉しさがあったがすぐに返事が出来なかった。
それは行くとも行かないとも言えずにいたということ。それに誘いに応じるということは、男の好意を受け入れるということになる。だからすぐに返事が出来ず考えていたが、そんなつくしに男は言った。
「時間は何時でもいい。考えが纏まったら教えてくれ」と。
だからホテルに戻り2時間考えた末に教えられた部屋番号に電話をした。
時計の針は午前1時を過ぎていたが、何時でもいいと言われたから電話をしたが、よく考えれば非常識な時間だった。
そして電話に出た男は、つくしがアメリカ自然史博物館に行きたいと言うと数秒の沈黙後、分かったと言い出発時間を告げた。
2時間考えたのは、パーティーでの道明寺司の様子がいつもとは違ったからではない。
だが、くしゃみをした女の肩に自分の上着を着せた男は、今夜は楽しめたと優しい表情で言った。
そして、つくしのことを好きだと言う男は、どんなに彼女が冷たい態度を取っても諦めない。
それは、つくしをどう扱えばいいかを知っているともとれる態度にも思えたが、そのことを考えていたのではない。考えていたのは、何故正直に明日の予定が無くなったことを言ったのかということだ。適当なことを言って、どこかへ出かけてもよかったはずだ。
だがそうしなかったのは何故なのか。その疑問の答えを出すための時間が必要だった。
だから2時間考えたが結局答えは出なかった。そして気付いた時にはニューヨークへ行くことに同意をする電話をかけていた。
そして翌朝、告げられた時間通りにつくしの部屋の扉をノックする音があった。
「アメリカ自然史博物館で標本観察か。俺はニューヨークで暮らしていたがここに来るのは初めてだ」
セントラルパークの西側にある建物は荘厳な造りで、入口では第26代アメリカ合衆国大統領であるセオドア・ルーズベルトが馬に乗った姿で出迎えてくれた。
つくしは初めてのニューヨークであり、当然この場所に来るのは初めてだった。
つまり二人とも初めての場所にいて、これから二人で博物館を見学するのだが、頭の中に立ち上がる光景を振り払った。
それはこの場所でデートをしている二人の姿。
だがどう考えても道明寺司のような男が博物館でデートをするとは思えなかった。
それに今つくしが男と二人でここにいるのは、時間が空いたからであり、これをデートとは呼ばないはずだ、
そんなことを考えている女の隣にいる男は、目の前にある巨大な恐竜の骨格標本をじっと見つめると感心した声を上げた。
「いい仕事をしている」
「は?」
「この骨格標本の造りだ。こんなにデカいのを組み立てた人間を褒めるのは当然だろ?」
博物館に来て何を言うかと思えば恐竜の骨の組み立てが素晴らしいということ。
つくしはその言葉に思わず笑った。
そして、
「あのね、ここは博物館で生き物がどんな時代に生まれてどんな生き方をしてきたかを見るところなの。勿論この大きな恐竜の骨格を組み立てた人は凄いと思うけど、それはまた別の話で、ここでそんなことを感心されても困るのよ」
と言ったが、その言葉に男は笑うと、
「別にお前が困る必要はないはずだ。それに考えてみろ。一日中骨と向き合ってこの骨はどの部分の骨か考えながら組み立てていくんだ。まさに文化財の修復と同じことだろ?だとすれば根気のいる作業だ。それを成し得た人間を褒めてどこが悪い?」と言ったが、この人は案外面白いことを言うと思った。
そして今までのつくしは道明寺司と話をする時は、自然と口がとがっていた。
だが今は隣に立ち大きな恐竜の骨格標本を見つめる男に向ける口は笑っていた。

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そしてそれが突然湧き上がり頭の中を支配すれば、物事を論理的に考えることが困難になる。だから何故今自分がジェットに乗りニューヨークへ向かっているかを説明することは難しかった。
そして隣の席にいるのは、このジェットの持ち主の男だが、本来なら今日は若手のサメの研究者とエイの研究者に会い交流を深め研究情報を交換する予定だった。
だが、突然招かれた昨夜のパーティーで彼らに会い話を訊き、翌日会う予定だったイカの研究者ともパーティーで会ったことから会いに行く必然性が無くなってしまった。
そしてそれはそれぞれの相手も同じで、ここで会えたのだから、わざわざ足を運ぶ必要がなくなりましたね、と言った。
パーティー帰りの車内で、つくしに明日はどうするんだと訊いて来た男は、その話を訊くと「そうか。それならニューヨークへ行かないかと言った」
ニューヨークには、この旅では行くことは出来ないと諦めていたアメリカ自然史博物館があり、そこへ行ける嬉しさがあったがすぐに返事が出来なかった。
それは行くとも行かないとも言えずにいたということ。それに誘いに応じるということは、男の好意を受け入れるということになる。だからすぐに返事が出来ず考えていたが、そんなつくしに男は言った。
「時間は何時でもいい。考えが纏まったら教えてくれ」と。
だからホテルに戻り2時間考えた末に教えられた部屋番号に電話をした。
時計の針は午前1時を過ぎていたが、何時でもいいと言われたから電話をしたが、よく考えれば非常識な時間だった。
そして電話に出た男は、つくしがアメリカ自然史博物館に行きたいと言うと数秒の沈黙後、分かったと言い出発時間を告げた。
2時間考えたのは、パーティーでの道明寺司の様子がいつもとは違ったからではない。
だが、くしゃみをした女の肩に自分の上着を着せた男は、今夜は楽しめたと優しい表情で言った。
そして、つくしのことを好きだと言う男は、どんなに彼女が冷たい態度を取っても諦めない。
それは、つくしをどう扱えばいいかを知っているともとれる態度にも思えたが、そのことを考えていたのではない。考えていたのは、何故正直に明日の予定が無くなったことを言ったのかということだ。適当なことを言って、どこかへ出かけてもよかったはずだ。
だがそうしなかったのは何故なのか。その疑問の答えを出すための時間が必要だった。
だから2時間考えたが結局答えは出なかった。そして気付いた時にはニューヨークへ行くことに同意をする電話をかけていた。
そして翌朝、告げられた時間通りにつくしの部屋の扉をノックする音があった。
「アメリカ自然史博物館で標本観察か。俺はニューヨークで暮らしていたがここに来るのは初めてだ」
セントラルパークの西側にある建物は荘厳な造りで、入口では第26代アメリカ合衆国大統領であるセオドア・ルーズベルトが馬に乗った姿で出迎えてくれた。
つくしは初めてのニューヨークであり、当然この場所に来るのは初めてだった。
つまり二人とも初めての場所にいて、これから二人で博物館を見学するのだが、頭の中に立ち上がる光景を振り払った。
それはこの場所でデートをしている二人の姿。
だがどう考えても道明寺司のような男が博物館でデートをするとは思えなかった。
それに今つくしが男と二人でここにいるのは、時間が空いたからであり、これをデートとは呼ばないはずだ、
そんなことを考えている女の隣にいる男は、目の前にある巨大な恐竜の骨格標本をじっと見つめると感心した声を上げた。
「いい仕事をしている」
「は?」
「この骨格標本の造りだ。こんなにデカいのを組み立てた人間を褒めるのは当然だろ?」
博物館に来て何を言うかと思えば恐竜の骨の組み立てが素晴らしいということ。
つくしはその言葉に思わず笑った。
そして、
「あのね、ここは博物館で生き物がどんな時代に生まれてどんな生き方をしてきたかを見るところなの。勿論この大きな恐竜の骨格を組み立てた人は凄いと思うけど、それはまた別の話で、ここでそんなことを感心されても困るのよ」
と言ったが、その言葉に男は笑うと、
「別にお前が困る必要はないはずだ。それに考えてみろ。一日中骨と向き合ってこの骨はどの部分の骨か考えながら組み立てていくんだ。まさに文化財の修復と同じことだろ?だとすれば根気のいる作業だ。それを成し得た人間を褒めてどこが悪い?」と言ったが、この人は案外面白いことを言うと思った。
そして今までのつくしは道明寺司と話をする時は、自然と口がとがっていた。
だが今は隣に立ち大きな恐竜の骨格標本を見つめる男に向ける口は笑っていた。

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コメント
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司*****E様
おはようございます^^
傍から見ればデートを楽しんでいるようにしか見えない二人。
そうですねぇ。つくしはこの状況を嫌がっているようには見えません。
つまり心が動き出したのでしょうか。
そしてその心が向かう方向は?ということになるのでしょうね。
それにしても日本に帰るまでに二人の関係が前進するのでしょうかねぇ(;^ω^)
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
傍から見ればデートを楽しんでいるようにしか見えない二人。
そうですねぇ。つくしはこの状況を嫌がっているようには見えません。
つまり心が動き出したのでしょうか。
そしてその心が向かう方向は?ということになるのでしょうね。
それにしても日本に帰るまでに二人の関係が前進するのでしょうかねぇ(;^ω^)
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.05.11 22:38 | 編集
