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2019
05.05

理想の恋の見つけ方 125

つくしは大きく息を吸った。
そして気持ちを落ち着けようとした。
それはジョナサン・ブラウワー博士からパーティーへ招かれたことに戸惑っているのではない。アカデミックな世界に身を置く人間同士のパーティーは交流の場だ。以前道明寺司のパートナーとして臨んだ高森開発の社長の誕生日パーティーとは違い、交わされる話の内容は海洋生物学の分野についてであり、その方面の議論なら喜んで参加することが出来る。
それにあのパーティーでの高森真理子。いや川上真理子のようにつくしを見下す態度を取る人間はいない。そして研究者は少し変わっていると言われるように、自分の研究以外のことには興味がないといった人間が殆どだ。だからそれさえ話していれば話題に困ることはない。

だがブラウワー博士のパーティーへ道明寺司がつくしのパート―ナーとして同行するということは、あの時のパーティー以上に人目を引くはずだ。
それは、仲間内で見かけるタイプではない人間がいることを不思議に思うからだ。
そして男が誰であるかを知れば、好奇心を掻き立てられる。興味を持つ人間がいることも理解していた。

つまりそれは、いくら研究一筋の人間でも研究費の出どころが企業頼みであることは、誰もが知るところだからだ。そしてつくしが道明寺財団からの助成金を望んだように、自分の研究に興味を持って欲しいと思う研究者は必ずいるはずだ。
それに道明寺司がつくしの恋人だと知れば、いや恋人ではないが当の本人がブラウワー博士に言った事は、すぐに知れ渡るはずで、つくしのことを金脈を掘り当てた女だと思うはずだ。

それは研究以外のことで注目をされるということ。
だからつくしはそれが嫌で、道明寺司が断ることを望み目で訴えた。睨んだつもりだった。
だが、男は招待されたことを喜んだ。そしてお伺いしますと言って、あっさりと話題を変えブラウワー博士の業績を知っているとしか言えないようなことを話し始めた。
つまり道明寺司は初めからここに来るつもりであり、つくしが会うと思われる相手のことを調べていたということだ。

そして古き良きアメリカ人男性を代表するようなジョナサン・ブラウワーは、つくしが道明寺司にエスコートされパーティーに来ることを喜んだ。
それはブラウワーにとって若く見えるつくしがひとりでいることが心配だということもあるが、と同時に高名な男が海洋生物学者を恋人に選んだことを誇らしく思ったからだ。

それにしてもつくしは、アメリカでパーティーへ招かれるとは思わなかった。
だからそれに相応しいと思われる洋服を持ってこなかった。

「ブラウワー博士。パーティーは何時からですか?」

男が最後にそう訊くと博士は彼に笑顔を向けた。

「7時からですよ、道明寺さん。今夜再びお会いできるのを楽しみにしています」















「どうしてあんなことを言ったんですか!」

「俺が牧野つくしの恋人だって言ったことか?」

「そうです。ブラウワー博士はあなたの言った言葉を信じたじゃないですか!私はあなたにこの国に連れて来てもらったことは事実ですけど、私たちはすれ違いの恋人同士じゃありませんから!」

研究所を後にした車内での牧野つくしは怒りのこもる声でぴしゃりと言った。

「私は言いましたよね?あなたとお付き合いするつもりはないって。それなのにどうして_」

「俺も言ったはずだ。俺はしつこい男でお前のことを諦めるつもりはないってな」

司の言葉は牧野つくしの言葉を遮った。
そして女の大きな黒い瞳に刻み付けるように言葉を継いだ。

「俺は恋の駆け引きなど興味がない。だから女に期待させ気を持たせたことはない。それに男の気を惹くためならどんなことでもする女を軽蔑していた。
だが今の俺はお前の気を惹きたいがために、こうして後をつけ回している状況だ。そんな俺はお前にすればストーカーだろうよ。だがな。心が捉えられたんだから仕方がない。牧野つくしという女が俺の心を捉えた。俺は真剣にお前のことを考えている。だから制限時間なしに俺はお前に係わろうと決めた。それに口を訊かなくても向き合わなくても隣に座ることで伝わるものがあるはずだ。その時間が欲しいからこの旅を計画した」

司はそこで区切りをつけるようにひと呼吸おいた。

「それから図書館の書庫で脚を痛めたお前を見つけて安堵したことは勿論だが、優しい気持ちで女に触れたのはあの時が初めてだ」



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コメント
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dot 2019.05.05 09:36 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
確かにつくしは司に言いたいことは沢山あるはずです。
でも大人ですからね?(笑)きっと今は言いたいことは半分といったことろではないでしょうか。
司にグイグイ行って欲しいけど、つくしにも粘って欲しい(≧▽≦)
アメリカでの滞在日数はまだありますからねぇ。
そして二人ともどんどん本音の部分が出て来た。
そんな気もしますが、どうなるのでしょうねぇ^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.05.05 22:53 | 編集
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