FC2ブログ
2019
04.26

穏やかな風 1

陽射しが暖かく感じられるようになり、春が近づいて来るのが感じられる時期。
冬が終わりを告げ全てがふたたび息を吹き返す季節が来た。
そんな季節。僕がその人を見かけたのは、3000メートル級の山々の雄大な眺めが街の風景となっている富山市内のホテルだ。
だがその人を見かけたのは、そこが初めてではない。羽田空港のターミナルでその人を見かけ、同じ飛行機に乗っているところを見た。だから今日その人を見たのは3度目だった。

それにしてもどうして僕はその人が気になるのか。
理由など分からなかったが僕はその人に惹き付けられた。
その人は50代後半から60代といったところに見えたが、まだ20代の僕が齢を重ねた男性に見るのは、自分の父親の年の取り方でしかないのだが、もしかするともう少し若いかもしれない。いや、逆にもっと年上なのかもしれないが、その姿を父親に重ねることが出来るということは、やはりその人は自分の父親と同年齢だと言えた。

そしてひと目見て分かるのは、どこか独特な雰囲気を持つ人だということ。
顔立ちは端正で背が高く髪の毛に幾らか白いものが混じっているその人の立ち姿は堂々としていて隙がなかった。
服装はスーツだが普通のビジネスマンが着るスーツとは明らかに違っていた。つまり高級な生地で仕立てられていることは一目瞭然で、それなら黒く艶やかな輝きを放っている靴も然りで職人の手縫いだということが想像できた。

そしてその男性は1階のラウンジでコーヒーを飲んでいたが、誰かを待っている様子が見て取れた。
何故ならその男性が時刻を気にするように何度か左腕に目を落としていたからだ。

ホテルで待ち合わせる人物は誰なのか。
僕は興味があった。それは単なる好奇心なのだが、自分の父親と同世代のその男性の行動に何故か興味を抱いた。

スーツ姿だということは、ビジネス絡みの相手と会うのか。
だがそれにしては鞄もなければ、これから商談をしようといった雰囲気も感じられず、その落ち着いた態度は服装と同じで東京から来たビジネスマンのそれとは明らかに違っていた。
そして僕は視線の端にその人を捉えながら同じようにコーヒーを飲んでいたが、男性はおもむろに席を立ち右手で伝票を掴むとカウンターに向かった。

待ち人来たらずだったのか。
それともただの時間潰しだったのか。
だがその男性が誰かを待っていたように思えて仕方がなかった。
そしてコーヒーを飲み終えた僕は立ち上りその人の後を追った。




にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト




コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2019.04.26 06:12 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2019.04.26 12:57 | 編集
司*****E様
20代の青年と年配の男性が登場。
短いお話ですのでサラッとお読みいただければと思います。(*^^*)

お休みも長いと逆に疲れますよね?(笑)
アカシアは適度に動いて適度に休む。そんな休日となりそうです。
色々なしわ寄せは、考えないことにしてます(笑)
司*****E様も良いお休みをお過ごし下さいね。
コメント有難うございました。
アカシアdot 2019.04.26 23:08 | 編集
イ**マ様
理想の……の司はうわ手(笑)
そんな司に振り回され始めたつくし!(≧∇≦)
さて、二人はどんな時間を過ごすことになるのでしょう。

こちらのお話は短編ですが、楽しんでいただければ幸いです。
それにしても、今回の10連休は正直言って長すぎです。
イ**マ様はお仕事!色々大変ですよね?お疲れ様です(^_^)
コメント有難うございました。
アカシアdot 2019.04.26 23:37 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top