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2019
04.20

理想の恋の見つけ方 119

司はロビーのソファに座る牧野つくしを見つけ近づいた。
だが目の前に立った男に気付かない女は考え事をしているのか。その顔は真剣そのもので正面をじっと睨みつけていた。
そんな女に声をかけたが、余程頭の中の問題に気を取られているのか。黒目の勝った大きな目をしばたたいた後、ハッとして司を見あげた顔は驚いていた。

「どうした?こんなところでぼんやりして?」

と司は言って「ああ、そうか…..そういうことか。悪かったな。俺を待ってたのか?」と喉の奥に笑みを込めながら付け加えたが、女は立ち上ると「違います!」と強く否定するように言った。
だがすぐに「いえ…..待ってたと言えば待ってたんですけど、ただ待ってたんじゃありません。理由があるから待ってたんです」と口調を押さえ言葉を継いだが、その顔は仏頂面とも取れる表情をしていた。

「いったいどういうつもりですか?」

「何がだ?」

と、訊いたが牧野つくしの言いたいことは分かっていた。
それに強い反発を見せることも分かっていた。

「あのブローチです。あんな高価なものを届けさせていったいどういうつもりですか?」
と思っていた通りのことを言われ、「ああ、鳩か?可愛いだろ?目なんかお前にそっくりだ。とは言ってもお前の目は鳩みたいに赤くはないがな」と言って唇だけで笑った。


司が届けさせた鳩のブローチの身体にはダイヤが散りばめられていて、目にはルビーがはめ込まれていた。それは、世界中のどんな高級な宝石も手に入れることが出来る男にしてみればデザインも値段も控えめだと思えたが、司が惚れた学者先生は華美なものを好まない。だからその性格に敬意を表し控えめな物で妥協したつもりだったが、相手はそう思わなかったようだ。

「あの道明寺副社長、私が言いたいのは可愛いとか可愛いくないと言う問題ではなく、あのように高価なものを受け取る理由がないということです。だからお返ししたいんです」

それも思っていた通りの言葉で驚くことではない。
だから司は平然とした顔で答えた。

「返す必要はない。それに惚れた女に何か贈りたいと思うことに理由が必要か?言っとくが惚れたはれたは金の問題じゃない。高価なものと言ったが金額が高いかどうかは俺には関係ない。あの鳩がお前に似合うと思ったから贈った。けどな。返しに来ることは目に見えていた」

その言葉に目の前の女は顔を強張らせた。
表情はメープルのラウンジで司の顔を平手打ちした時と同じだったが、彼は女が何を考えているかは分っていた。
それは、バカにしないで欲しいという思い。

「試したんですか?あの時と同じで私を試したんですか?自分の周りにいた女性があなたのお金に興味を抱いていたように私に高価なものを贈ればどうなるか見ようとしたんですか?あのブローチを喜んで受け取るかどうか__」

司は牧野つくしがあの時と同じように感情を爆発させるとは思わなかったが、言葉を遮るように口を開いた。

「お前を試すためにあのブローチを届けさせたんじゃない。あれは俺の気持ちだ。話したろ?お前は傷付いて庭にいた鳩に似てるってな。それに牧野つくしは金に釣られる女じゃない。実直で公明正大。犯罪者にも心を寄せる。分相応な暮らしが好きで派手なことを嫌う。そんな女に俺は心を奪われた。白い鳩じゃない。灰色の鳩にだ。鳩と同じチャコールグレーのパンツスーツが好きな女にな」

それは目の前の女の服装だが、地味な服装が悪いと言っているのではない。
司は好きになった女がどんな格好をしていても文句はない。
グレーの鳩だとしても一向に構わなかった。

意地悪くからかわれたとは思わないが、つくしは司を睨みつけ、彼の前から立ち去ろうとした。
だが司はそんな女に言った。
「食事に行こう」司は厳しい顔をして自分を見つめる女に平然とした顔で言った。
「昼食は付き合えなかったが、夕食には喜んで付き合おう。そこで言いたいことがあれば言えばいい」

司は牧野つくしを手に入れるために、じっくりいくことを決めたが、自分の流儀を変えるつもりはなかった。
牧野つくしがウッズホールに行くことを望んでいることは知っていた。だからそれを利用した。そして牧野つくしには仕事の旅だと言ったが仕事は終えた。
だからこれから日常的な自分を知って欲しいと言った通り、この1週間は牧野つくしと過ごすつもりだ。それはこの旅を計画した時点で決めていたことだが、その計画を次の段階へ移すことにしたが、手始めが一緒に食事をすること。
だが、牧野つくしの瞳に浮かんだのは拒絶を示す表情。
だから司は牧野つくしがもっと拒絶をすることを言うことにした。
それはビジネスでも言えることだが、相手の態度を逆手に取ってフルに活用すること。


「それとも俺の部屋にブローチを返しに来るか?」

司はからかうように眉を上げたが、案の定牧野つくしは口もとを引き締め、さらに拒絶の表情を強くした。そしてブローチを返したいと思う女は、レストランで食事をするか。それとも司の部屋を訪ねるかを迷った末、仕方なくといった風に食事をすることに同意をした。




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コメント
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dot 2019.04.20 08:16 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
司を待っていた女。しかしそれは好きだとか、恋焦がれて会いたいという意味ではありません。
アメリカに行くことを決めてからのつくしは、司の手の内に落ちたとまでは言いませんが、それでもそれに近い状況に追いやられているような...。
恋の駆け引きが始まったとすれば、それは司の一方通行ですが、アメリカ滞在中につくしの心を自分に向けることが出来るのでしょうかねぇ^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.04.20 22:15 | 編集
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