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2015
11.22

まだ見ぬ恋人31

つき合う・・そう決心はしたものの、実行に移すのは勇気がいった。
つくしは今まで自分から付き合って欲しいとか、ましてや好きだとか言ったことがなかった。
今までお付き合いした男性と言えば、どちらかといえば物静かな人ばかり・・・
それに社内恋愛なんてはじめてだった。
大使館だったから社内じゃないか・・

しかも相手はつくしの勤務する会社の日本支社長だ。
どんな態度をとればいい?
おまけに、プロジェクトの責任者であるこの人のデスクはつくしの目の前にある。
つくしは当惑した。
それでも私と道明寺は付き合いはじめて二カ月がたっていた。

そして・・わたしと道明寺司が付き合っていることはもちろん内緒だ。

なのに!
この人は!

用もないのにコピー機のそばにくる!
用もないのにシュレッダーのそばにくる!
用もないのに資料室についてくる!

少年のような人だと思ったけど、今では子供のような人だと思った。
「道明寺っ。私は真面目に言ってるのよ?ここは仕事をするところなんだからいい加減・・」
いかにも自分は順番を待っていますとばかり、コピー機の隣に立つ男につくしは小さな声で呟くように言った。

コピー機はセキュリティー対策が施されていて各自の認識コードを入力しなければ使えない。
この人が自分のコードを知っているとはとても思えない。
そもそも自分でコピーなんてしたことがあるのだろうか?
その手に持つ紙はなに?
ちらりと見えたそれは・・・社内通達「東支―総務第72―1124」・・・
それって総務部からのお知らせ・・・?
どこからその文書を?
女子更衣室のエアコン取り換え工事の為のなんとか、かんとか・・・
それをコピーするつもりなのだろうか?
 

シュレッダーだって使ったことなんてあるのだろうか?
つくしは間違えてネクタイまで巻き込むんじゃないかと心配していた。
いや、これは本当の話しだ。
笑い事じゃない。
ガガガガガーーーって巻き込んだ人を見たことがある。
オヤジ臭いからネクタイピンなんて嫌だって言ってた人。
そのひと、パニックになって電源を切るところまで頭がまわらなくて助けてくれっ!
って叫んだからみんなで慌てて助けに行った。
大きなシュレッダーは恐ろしい。


そして、最近では支社長の奇妙な行動に他の社員は訝しそうな視線を向けてくる。
そして気を使う。
コピーならわたしが・・と他の社員が気をつかう。
要は他の社員の仕事を増やしているのだ。


バカを言うな!
俺がほかの社員を悩ませている?
他の奴らは俺のことなんて気にしてなんていないはずだ。

「あのね道明寺。道明寺はこの会社の支社長なんだから俺のことは気にするなって言っても無理なの。みんな気にするから」
「それに、わ、私が席を立つたびに金魚の・・みたいに付いてこられても困るの」
「なんで困るんだよ!」
「だって道明寺が席を立つたびにみんなの視線が集まるもの!」
「こっちだって仕事してるんだ、なにが悪い」


極め付きは社内メールだった。
社内メールの気安さからか、やたらと送られてくるようになった。
新着メールを知らせるマークが表示されるたび、メールの確認をする。

『 忙しいな! 愛してる牧野 』 
無視した。

『 天気が悪いな! 愛してる牧野 』
削除した。

『 愛してる牧野。 どこかに行こう!』
えっ?最後のメールはなに?
思わず顔をあげて向かいの席に座る道明寺を見た。
・・・・ウィンクを返された。

あのね、道明寺。
わかってると思うけど社内メールって監視されてることもあるって知ってるのよね?
・・ま、まさか支社長のメールまで監視されてはいないと思うけど。
私達が付き合ってるのは秘密なんだから!


司のほうはとっくにつくしの気持ちを察していた。
だいいち、最近の牧野は社内で俺と視線を合わせるのを避けている。
まだ付き合うまえ、出張する前は視線をそらすなんてことは無かった。
いいじゃねぇか!
せっかく付き合いはじめたのにデートもままならない。
社内でいちゃいちゃしてなにが悪いんだよ!
と、いうかいちゃいちゃしたいんだよ!俺はッ!
でも真面目な牧野は相手にもしてくれねぇ・・


ゆうべの情景が思い出された。
抱きしめた牧野の感触が思い出された。
抱きしめてキスしたときの感触・・


俺は彼氏だぞ!
かまって欲しいって思ってなにが悪い?
ここは煙草が吸えないのは辛いが牧野がいるからまだ我慢も出来る。
しかしイライラするな。
牧野から煙草を減らせと言われたがそう簡単に出来るわけがなかった。
まあ、午前中だけの我慢だ。
執務室に戻ったら・・・

「あの支社長、『鉱害防止技術と環境保全』と言う本を探しているんですがご存知ありませんか?」
牧野がためらいがちに、丁寧に聞いてきた。

「・・いや。知らないな」
司の指は止まることなくキーボードの上で動いていた。
「おかしいな・・ここに置いてあったんですけど・・」とつくしは首をかしげて司を見た。
俺を疑いの目で見るなよ。


・・・が、その本は俺にデスクの上にある。
あいつが席を立ったとき、向かいの牧野のデスクへ手を伸ばして本を引き寄せると上から紙を一枚重ねた。
この手口は西田に見つかったことがあるが、俺がまたこの手を使うなんて西田も思わないよな?
姑息な手で悪かったな西田!

「そうですか・・」
「では、ちょっと資料室まで行ってきます」

オイ、絶好の機会じゃねぇか!
も、もしかしてさっき送ったメールを見て・・
誘ってんのか?牧野!
資料室には俺と牧野の二人だけ・・・
こういう場面は何百回も妄想した。
牧野も意外と大胆だな・・資料室でかぁ・・
うちの資料室は明るくてきれいだ。
そこらへんの図書館なみに管理されているらしい。
ま、俺は図書館なんて行ったことはないけど巷の噂ではそんなものらしい。
もちろん、俺はこのチャンスを逃すものかと資料室へと向かった。


・・が資料室に牧野はいなかった。
あいつどこに行ったんだ?
しかたないから戻ってみれば、牧野は自分のデスクにいた。
そしてこれ見よがしに本の表紙を俺に見せつけた。
なんだ、ばれてたか・・


社内恋愛ってのはこう言うやりとりが楽しいんだな。
牧野と俺だけにしか通じないやりとりだ。
なんか二人だけの秘密みたいでいいな!
周りは絶対に気づいていないはずだ!
俺は別にばれても構わないけどよ。


でもこれって拷問だよな。
好きな女が目の前にいるのに手が出せない。
でも最高に素晴らしい拷問だ。








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コメント
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dot 2015.11.22 07:10 | 編集
as***na様
社内恋愛に憧れていた司なので本人は大喜びです。
多分その言葉の響きに憧れているのでしょうね。
でも同じフロアの他の社員には迷惑な話でしょうね。
もうバレバレでしょう。
だってつくしに付いて回ってますからね。
きっと頬が緩んでいるのではないでしょうか?
だらしないですね(笑)
コメント有難うございました。

アカシアdot 2015.11.22 21:58 | 編集
H*様
司のオフィスラブ。楽しそうですよ?(笑)
毎日ウキウキしてます。
周りにはバレていないと思っているのは当事者のみかと・・
意外にバレるものです、オフィスラブ。
と、言うよりも分かり易くてバレています。
色々と妄想もしているようです。
資料室に追いかけて行くもかわされた。
などと言う目にあったりしても、恋をしてるとそんなことさえも楽しいものでしょうね(笑)
コメント有難うございました。
アカシアdot 2015.11.22 22:10 | 編集
L**A(坊ちゃん**)様
はじめまして。ご訪問有難うございます。
坊ちゃんの頭の中では誘っているとしか思えなかったのでしょうね。
妄想大好きですから(笑)
なにしろ初心者ですので・・
あともうひと押し!と言うところでしょうか。
この坊ちゃんは仕事はバリバリ出来るんですが、恋は奥手のようです。
コメント有難うございました。
アカシアdot 2015.11.22 23:12 | 編集
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