「申し訳ございません。当ホテルはお客様のお問合せにお答えすることは出来かねます」
「私は怪しい者じゃありません。彼の飛行機でこの国に来たんです。このホテルに宿泊しています。渡したいものがあるので彼の部屋番号を知りたいだけです」
つくしはそう言ってルームキーを示した。
それに必要とあればパスポートを提示するつもりでいた。
「お客様。お客様がおっしゃるその方は当ホテルにご宿泊をされているとおっしゃいましたが、当ホテルは宿泊されるお客様のプライバシーを第一に考えております。ですから、先ほども申し上げましたようにその方がご宿泊されているかどうかはもちろんですが、お客様の個人情報を第三者様への開示や提供はいたしません」
「そんな….」
つくしは、道明寺司にブローチを返すため部屋番号が知りたいと言った。
だがよく考えてみれば、サービスの行き届いたホテルだからといって高級ホテルが宿泊客のことを軽々しく他人に教えるはずがない。
それに部屋番号を知りたい相手は道明寺司だ。
超が付くほどのVIPで命が狙われる危険もある人物だ。
そんな人物がどの部屋に泊っているかなど漏らすことになれば安全面でのこともだが、ホテルとしての信用にも関わってくる。いや。それ以前にここに宿泊していることすら認めることはなかったが、つくしはあの男の同行者としてこのホテルに滞在している。だから教えてくれてもよさそうなものの、フロントの口は硬かった。
確かに、つくしが同行者であると言うのなら、部屋番号など本人から直接訊けばいい話であり、わざわざフロントで訊ねることはない。
それにつくしについて疑っていると言われればそれまでだ。
と、なれば、あの男に会うためには、ここであの男の帰りを待つしかないということになる。
つまりボディーガードの一団に囲まれたあの男が戻って来るまでロビーにいるしかないということだ。
だがビジネスで出掛けた男のスケジュールなど知るはずもなく、いつ戻って来るのか見当もつかなかった。もしかすると戻って来ない可能性もある。
「はあ…..。あの男。いつ戻って来るのよ」
つくしはフロントを離れると大きなため息をついた。
それにしても、出来ることなら会いたくないと思う男に自分から会うことを求めることになるとは思いもしなかった。
だがそれは高価なブローチを返すためであり、そうでなければ会う必要もなければ、会いたいとも思わなかったはずだ。
それにつくしは、自分が喜んでブローチを受け取ったなど思われたくなかった。
受け取らなければ部屋から出られない状況に置かれたから仕方がなく受け取った。
だからなんとしてもあのブローチを返さなければと思い腕時計を覗いて時間を確認したが、針は午後3時15分を指していた。
昼食を一緒に取れなくて申し訳ないと言ったが、夕食のことは言わなかった。
それは、端からつくしと一緒に夕食を取るつもりはないと言うことなのか。
それとも夕食の時間までには戻って来るということなのか。
別にあの男と一緒に食事を取ろうと考えてもないのだから、こんなことを考える必要はないのだが、もし今日会えないとなれば明日でなければ会えないということになるのかと考えた。
だがつくしは、明日は朝からウッズホールに行く予定にしている。
そして次の日も、その翌日も、そしてそのまた翌日もと予定を入れている。と、なると会うことが出来るのはいつになるのか。昼食を終え一度部屋に戻り、それからフロントへ降りて来たが、あの男がいつ戻ってくるか分からない以上ここで待つ以外会う方法がないというなら、ここにいるしかない。
だからつくしは、ここにいることに決め、ロビーに置かれている淡い色をしたソファに腰を下ろしたところでふと思った。
今の自分はあの男のことばかり考えている。
これではまるで道明寺司のストーカーではないか___
「じょ、冗談じゃないわよ!どうして私があの男をストーキングしなきゃならないのよ!」
思わず立ち上って口を突いた言葉は静まり返ったロビーに響いた。
そしてその声にこちらを向いて眉を上げた人間がひとりだけいて、つくしは思わず、すみません、と小声で呟いて腰を下ろした。
それにしても、どれくらいここで待てばいいのか。
待つことを決めた自分に内心呆れかえったが、待つと決めた以上待たなければならなかった。

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「私は怪しい者じゃありません。彼の飛行機でこの国に来たんです。このホテルに宿泊しています。渡したいものがあるので彼の部屋番号を知りたいだけです」
つくしはそう言ってルームキーを示した。
それに必要とあればパスポートを提示するつもりでいた。
「お客様。お客様がおっしゃるその方は当ホテルにご宿泊をされているとおっしゃいましたが、当ホテルは宿泊されるお客様のプライバシーを第一に考えております。ですから、先ほども申し上げましたようにその方がご宿泊されているかどうかはもちろんですが、お客様の個人情報を第三者様への開示や提供はいたしません」
「そんな….」
つくしは、道明寺司にブローチを返すため部屋番号が知りたいと言った。
だがよく考えてみれば、サービスの行き届いたホテルだからといって高級ホテルが宿泊客のことを軽々しく他人に教えるはずがない。
それに部屋番号を知りたい相手は道明寺司だ。
超が付くほどのVIPで命が狙われる危険もある人物だ。
そんな人物がどの部屋に泊っているかなど漏らすことになれば安全面でのこともだが、ホテルとしての信用にも関わってくる。いや。それ以前にここに宿泊していることすら認めることはなかったが、つくしはあの男の同行者としてこのホテルに滞在している。だから教えてくれてもよさそうなものの、フロントの口は硬かった。
確かに、つくしが同行者であると言うのなら、部屋番号など本人から直接訊けばいい話であり、わざわざフロントで訊ねることはない。
それにつくしについて疑っていると言われればそれまでだ。
と、なれば、あの男に会うためには、ここであの男の帰りを待つしかないということになる。
つまりボディーガードの一団に囲まれたあの男が戻って来るまでロビーにいるしかないということだ。
だがビジネスで出掛けた男のスケジュールなど知るはずもなく、いつ戻って来るのか見当もつかなかった。もしかすると戻って来ない可能性もある。
「はあ…..。あの男。いつ戻って来るのよ」
つくしはフロントを離れると大きなため息をついた。
それにしても、出来ることなら会いたくないと思う男に自分から会うことを求めることになるとは思いもしなかった。
だがそれは高価なブローチを返すためであり、そうでなければ会う必要もなければ、会いたいとも思わなかったはずだ。
それにつくしは、自分が喜んでブローチを受け取ったなど思われたくなかった。
受け取らなければ部屋から出られない状況に置かれたから仕方がなく受け取った。
だからなんとしてもあのブローチを返さなければと思い腕時計を覗いて時間を確認したが、針は午後3時15分を指していた。
昼食を一緒に取れなくて申し訳ないと言ったが、夕食のことは言わなかった。
それは、端からつくしと一緒に夕食を取るつもりはないと言うことなのか。
それとも夕食の時間までには戻って来るということなのか。
別にあの男と一緒に食事を取ろうと考えてもないのだから、こんなことを考える必要はないのだが、もし今日会えないとなれば明日でなければ会えないということになるのかと考えた。
だがつくしは、明日は朝からウッズホールに行く予定にしている。
そして次の日も、その翌日も、そしてそのまた翌日もと予定を入れている。と、なると会うことが出来るのはいつになるのか。昼食を終え一度部屋に戻り、それからフロントへ降りて来たが、あの男がいつ戻ってくるか分からない以上ここで待つ以外会う方法がないというなら、ここにいるしかない。
だからつくしは、ここにいることに決め、ロビーに置かれている淡い色をしたソファに腰を下ろしたところでふと思った。
今の自分はあの男のことばかり考えている。
これではまるで道明寺司のストーカーではないか___
「じょ、冗談じゃないわよ!どうして私があの男をストーキングしなきゃならないのよ!」
思わず立ち上って口を突いた言葉は静まり返ったロビーに響いた。
そしてその声にこちらを向いて眉を上げた人間がひとりだけいて、つくしは思わず、すみません、と小声で呟いて腰を下ろした。
それにしても、どれくらいここで待てばいいのか。
待つことを決めた自分に内心呆れかえったが、待つと決めた以上待たなければならなかった。

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司*****E様
ストーカーのようなつくし(≧▽≦)
一刻も早くブローチを返したい!その一心なのでしょうか。
ホテルが軽々しく宿泊客のことを教えるはずはないのですが焦ってますね?
さて。どれくらい待てば司に会えるのか。
つくしのことを好きな男は、どうやって彼女の心を手に入れるのか。
マイナスからのスタートですが、頑張っていただきましょう^^
コメント有難うございました^^
ストーカーのようなつくし(≧▽≦)
一刻も早くブローチを返したい!その一心なのでしょうか。
ホテルが軽々しく宿泊客のことを教えるはずはないのですが焦ってますね?
さて。どれくらい待てば司に会えるのか。
つくしのことを好きな男は、どうやって彼女の心を手に入れるのか。
マイナスからのスタートですが、頑張っていただきましょう^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.04.17 21:42 | 編集

イ**マ様
日常に道明寺司が入り込む(≧▽≦)
日常的な俺を知って欲しいと言っていましたが、頭の中に居座り始めた男、道明寺司。
そして受け取るつもりはないし、こんな高価なものが部屋にあるのは怖い。
責任感の強い女は、ブローチを早く返したい一心で彼に会おうとする。
アレ?会いたくないのに、考えたくないのに考えてしまうあの男のこと。
司。高価なブローチを贈った理由が自分のことを考えさせるためだとすれば策士ですね?(笑)
さあ、どうするつくし?(笑)
コメント有難うございました^^
日常に道明寺司が入り込む(≧▽≦)
日常的な俺を知って欲しいと言っていましたが、頭の中に居座り始めた男、道明寺司。
そして受け取るつもりはないし、こんな高価なものが部屋にあるのは怖い。
責任感の強い女は、ブローチを早く返したい一心で彼に会おうとする。
アレ?会いたくないのに、考えたくないのに考えてしまうあの男のこと。
司。高価なブローチを贈った理由が自分のことを考えさせるためだとすれば策士ですね?(笑)
さあ、どうするつくし?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.04.17 21:52 | 編集
