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2019
04.15

理想の恋の見つけ方 116

つくしは1階のレストランで出されたステーキを見つめていたが、ナイフとフォークを手に取った。そして肉を切り始めたが、頭の中はあのブローチのことがあった。

ダイヤモンドとルビーで出来た鳩のブローチは部屋に置いて来たが、もし泥棒に入られたらどうしようという思いとともに、ああいった高価な宝石には保険がかけてあるはずで、自分が気にすることではないと頭を切り替えた。

それに受け取るつもりはない。
もし仮に受け取ったとしても、あんな高価な物を付けて行くような場所はない。
それにしても、あの男はいったいどういうつもりで鳩のブローチを贈りつけたのか。
まさか道明寺司は、平和の象徴と言われる鳩を自分達の間を取り持つ交渉の遣いとして寄越したつもりなのか。だが鳩は自身と同じ平和の象徴と言われるオリーブの枝を咥えてはいなかった。いや。今は鳩がオリーブを咥えていようがいまいが、そんなことはどうでもいい。
それよりも女性に高価なジュエリーを与えることで相手の心を掴もうと考えているなら、それはつくしのことを全く理解していないということになる。

それにあの男は言ったではないか。
金や自身の容姿に惹かれるような女に興味はないと。
それはつくしも同じであり、たとえ相手が世界規模の巨万の富を持つ男だとしても、富や外見には一切興味がなかった。そして道明寺司はそんなつくしのことが好きになったと言った。
だからこそあのブローチの意味が全く分からなかった。
そんなことを考えながら切れた肉を口に入れ噛んだが、焼き具合はミディアムレアでと頼んだ通り柔らかさが楽しめた。

「おいしい….」

ボストンの高級ホテルで昼食を取るとは思わなかったが、出されたステーキは美味しかった。そして今は道明寺司のことを考えるよりも、目の前の料理を楽しむことに決めると、短い滞在期間のスケジュールを頭の中で確認した。

今日は到着したこともあり予定は入れてないが、明日は副島教授の紹介でサメの研究をしているブラウワー博士とウッズホールで会うことになっている。
そして明後日は若手のサメの研究者やエイの研究者と交流を深め研究情報を交換するつもりでいた。そしてその翌日はイカの研究者と会う約束をしていた。
そしてその次の日はハーバード大学が所有する博物館に行く予定にしていた。

だから道明寺司が言った『日常的な俺を知って欲しい』は無理だ。
それにあの男もビジネスでここに来たのだから忙しいはずだ。
だから二人が一緒に過ごす時間は無いに等しいと言っていい。
そう思うと、考える必要がないことを考えることはないと思えた。
それにあのブローチは帰りの機内で渡せばいい。だがホテルの部屋での保管状況には不安がある。それならやはり早々に贈り主に返すべきだろう。
つまり、平和の象徴と言われる鳩だが、高価な鳩はつくしの所に留まることはないということだ。
だが部屋がどこかは訊かされなかった。それにつくしも訊かなかったが、フロントで訊けば分かるはずだ。
そしてブローチを返す算段がつくと気持ちが楽になった。







***







「道明寺副社長。我社は道明寺グループの一員となりました。今回のことは我社が望んでのことですので、決して乗っ取りではありません。何しろ我社の研究には莫大な資金が必要になります。その点を踏まえてご興味を持っていただいた御社には感謝申し上げます」

司は買収に合意していた会社の買収を完了させるためにボストンに来た。
その会社は人工知能を備えたロボットの研究開発を手掛ける企業だが、合意から1年余りの期間を要し晴れて買収手続きが完了した。

「オブライエン社長。御社が我社のグループの一員となり今後も発展していくことが私の望みです。それから今後の人材育成や製造および量産体制を整えるためにも融資の方は間違いなく行われるますのでご安心下さい」

「そうですか。それは大変心強い。道明寺副社長のビジネス手腕は誰もが認めるところです。それに今後の我社を引っ張っていくことが出来る若手の人材を育成するためにも資金は不可欠ですからな。改めてお礼をいいますよ。御社が一番いい条件で我社を買ってくれたのですから」

司より年上の男性は、そう言って笑顔を浮かべ握手を求めたが、ここまで来るのに1年かかったということは交渉が難航したと言ってもいい。
この会社は今から25年前、社長のオブライエンがアメリカ屈指の名門と言われる多国籍コングロマリット企業を辞め起業した。つまり創業者である男は当時少壮気鋭の研究者だった。
だからたとえ経営権が自分の手から離れたとしても、我が子のように育てた会社の繁栄を望むのは当然だ。
そしてそんな男が交渉中に見せる表情には司と同じで冷たさしかなかったが、こうしてすべてが終わった今、男が笑った顔は好感が持てた。
つまり買収されたとはいえ、会社の繁栄を願って司に売ったということがその表情に現れていた。

「ところで今夜はディナーにご招待をしようと思いましたが、お忙しいとのことでしたな。もしかして女性とお約束でもおありでしょうか?いや、これは無粋なことを申し上げました。何しろあなたのような男性は女性が放っておかないと言われていますから相手がどのような女性か知りたいような気もしますが、どうぞボストンの夜を楽しんで下さい」

と言われたが、牧野つくしは手強い。
だがブローチは受け取ったと連絡があった。
そして突き返しに来ることは目に見えていた。
だから司はそれを楽しみにしていた。



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コメント
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dot 2019.04.15 06:54 | 編集
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dot 2019.04.15 08:21 | 編集
ふ*******マ様
つくしの方から接点を持つように仕向ける男。
彼女が高価な贈り物を受け取るとは思っていませんから、返しに来ると確信しています。
え?ブローチの入手が早い?(笑)
お金があれば出来ることは沢山ありますが、ブローチもそういったことのひとつでしょうねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.04.17 21:20 | 編集
司*****E様
つくしは自分の中でブローチを返す算段を付けました。
そして司は、つくしがブローチを返してくることを見越していました。
相手から接触を求めるように仕向けた男は後は待つだけ?(笑)
何か考えているのか。恋はビジネスとは違いますからねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.04.17 21:26 | 編集
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