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2019
03.21

理想の恋の見つけ方 99

サメに近づきたくはないかと言われ、全身の神経が一瞬にして張りつめた。
それは手足を縛られているからではない。この女性が何を考えているのか分からないからだ。
そして川上真理子の放った言葉の意味が経済界のサメと言われる男のことを言っているのではない事は、この状況の下ですぐに理解出来た。

「ところでここがどこだか分かる?あら、ごめんさない。分かる訳ないわよね?あなたは良く寝てたもの。実際化粧室に現れたあなたは気分が悪そうだった。だから薬を嗅がせたらすぐに気を失ったけど、ここに来るまで目を覚まさなかったのは助かったわ。だって途中で目が覚めて騒がれたら困るもの」

徐々に取り戻されてゆく記憶は、食事の途中で化粧室に行くと用を足し、洗面台で手を洗った時、突然背後から何かが襲い掛かって来て声を上げる余裕はなかった。それは口が何かで塞がれたからで、そこから先の記憶は一切なかった。

そして真理子の言葉もそうだが、つくしは今自分がどこにいるのか知りたかった。
だがサメに近づきたくはないか、の言葉からここが海に近い場所ではないかと感じた。
けれど今が何時なのか。縛られた腕に嵌められた時計を見ることは出来ず、窓のない部屋には時計もないのだから、いったい自分がどれくらいここで寝ていたのか分からなかった。

そして頬を叩かれたのは一度だったが、それでも叩かれた痛みは続いていた。
それは初めての衝撃だったがその時、自分が道明寺司の頬を平手打ちした時のことを想い出していた。
会う約束していたのは杉村という男性で、その人となら足の傷に心が囚われることなく接することが出来ると思っていたが、現れた道明寺司に欺かれたと感じ思わず手が出てしまった。

「牧野さん。あなた道明寺司が助けに来ると思ってるわよね?だってあの男はあなたの恋人ですものね?」

真理子はそう決めつけているようだが違う。
だがそれを再び口にすれば、また叩かれるような気がしていた。それに手足を縛られた状態では身を守る術もないのだから否定も肯定もせず口をつぐんでいた。

「あら。答えないつもり?つまりそれは、あの男が自分を助けに来ることが当たり前だと思っているってことね?」

と言った真理子は、「でも間に合うかしらね」と言って笑ったが、つくしはグッと感情を抑えた。それは川上真理子という女性が普通ではないと感じ始めていたからだ。
それは人を誘拐する人間の心理状態を考えれば当たり前のことなのだが、なるべく刺激するようなことは言うべきではないと思った。

だから黙ったままでいたが、真理子は、「あら。何も言わないということはあの男を信頼してるのね?」と言ったが、今のつくしにすればあの男ほど信頼に値しない男はいないと思っていた。
だからつくしは思わず言った。

「あの人は私に嘘をついた人です。だから私はあの人を信頼していません。信頼という言葉ほどあの人に似合わない言葉はありません」

と、否定的な言葉を口にしたが、川上真理子は微笑んだ。
それは冷たい微笑みだった。

「あら面白いことを言うわね。あなたたち喧嘩でもしてるのかしら?でも私に愚痴を言うのは止めて欲しいわね。恋人同士の喧嘩を聞かされるほど馬鹿なものはないもの」

真理子はそこまで言うと、つくしが寝ているベッドの傍を離れ扉の前に立った。

「それにしても日本の近海にサメがいるとは思いもしなかったわ。だってサメって大海原を獲物を求めて回遊しているイメージがあるじゃない?それなのにこの辺りにはサメが沢山いて日本人の名前が付けられたサメもいるって訊いたわ。それに夜行性のサメもいるそうね?」

つくしは真理子の言葉からこの場所がどこであるか推測しようとした。
この辺りにはサメが沢山いる。
そして日本人の名前が付けられたサメというのは、相模湾で発見され日本の動物学者である箕作(みつくり)博士の名前が付けられたミツクリザメのことを言っていると分かった。
ミツクリザメは深海ザメで水深が1000メートル以上になる深海湾で見られる。
つまりそのサメが沢山いる場所と言えば、相模湾でここは三浦半島ではないか。
そして夜行性のサメがいるという言葉から、今はまだ夜ではないかと思った。

「でも今のあなたが研究しているサメは経済界のサメと呼ばれる男。そしてあなたはサメの研究者だからそんな男を餌付けするのもお手の物ってことかしら?」

真理子はそう言うと部屋を出て行こうとしたが、そこで振り返って言った。

「そろそろ船の準備が出来た頃かしらね。確かめてこなければ。ええそうよ。あなたが乗る船よ」




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コメント
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dot 2019.03.21 10:11 | 編集
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dot 2019.03.21 12:03 | 編集
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dot 2019.03.21 14:31 | 編集
司*****E様
こんにちは^^
今の真理子に何を言っても無駄。
考えてみれば、手足を縛って誘拐するような人間に何を言ったところで聞く耳なんて持ってませんよね?
つくしは真理子の言葉から自分が三浦半島にいることが分かりましたが、三浦半島のどこ?
司は機動力を駆使してつくしの行方を探しているはずです。
まだつくしのピンチが続いていますが、救出されることを祈りましょう!
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.03.21 22:37 | 編集
み***ん様
こんにちは^^
真理子!(@_@。怖いですねぇ。
船で海に出て何をするつもり?
夜釣りではないことは確かです‼
何も知らずに協力してしまった石田章夫。誘拐の片棒を担いでいる事実を知ってどうするのでしょうね?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.03.21 22:42 | 編集
桜****ら様
また美味しそうなお名前!(≧▽≦)この季節にピッタリですね?
アカシアにも分けて下さい。

誘拐犯真理子。怖いですよ、この人。
サメ司に対抗する深海のエイリアンですからねぇ。
はい。サメには第六感があります。その感を最大限発揮してシーラカンスを探せ!
牧野つくしを追え!ということで頑張って頂きましょう。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.03.21 22:53 | 編集
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