「えっ?....どうしたの?」
「牧野先生。じゃない牧野さん。それから三条さんもお久しぶりです。お二人ともお元気でしたか?突然お邪魔して驚かれたと思いますが、今夜ご予定がなければお二人と一緒に食事に行けたらと思い立ち寄らせていただきました」
と言って現れたのは、つくしが大学生の頃、家庭教師のアルバイトをしていた6歳年下の若林和彦。若林建設の専務は、アジアのインフラ整備需要拡大に対応し長期出張していたベトナムから戻ったところだと言った。
「ここの大学。空港からの帰り道にあるので立ち寄りやすいんです。それから、お二人を誘いに来たことに他意はないですから安心して下さい。ただ前回お訪ねした時、言いましたよね?僕が今度食事に誘った時は恋愛感情は抜きだから付き合って欲しいって。だから今日誘いに来ました」
前回和彦がつくしを訪ねて来たのは、ロシアからの出張帰りだと言ってチョコレートを土産に持ってきた。そして二人はカフェテリアに場所を移し、つくしのことを好きだと言う和彦の気持ちに応えることは出来ないと言ったが、そのとき道明寺司が現れ、和彦はつくしの態度に、つくしには好きな人がいて、その人が道明寺司だと誤解して立ち去った。
「と言っても無理にとは言いません。急な事ですので、お二人にも都合というものがあるでしょうし、僕と食事をしたくないと思われるなら断っていただいても___」
「行きます!若林さん。私と先輩を食事に連れていって下さい。今夜は二人で食事に行く予定でしたが、喜んでお付き合いさせていただきます!」
桜子は、丁度これから女二人で食事に繰り出そうとしていた所を和彦に誘われ、女同士で不満を吐き出すよりも、自分達より若い男性を間に挟み楽しく飲む方がいいと思えた。
それに桜子から見て若林和彦は好青年と言えた。かつての家庭教師だった年上の女性に好意を抱いていることを隠すことがなく、自分の考えていることを誤魔化そうとするところが皆無だと思えた。だから和彦の誘いに喜んで答えた。
「若林さん。私も先輩もお腹が空いています。美味しい物を沢山食べたいと思ってます。それに最近嫌なことがあって飲みたい気分なんです。だから連れて行って下さい!」
そんな桜子の言葉に、「えっ?ええ...美味しい物をご馳走するのは勿論そのつもりです。でも本当にいいんですか?」
和彦は桜子の言葉につくしの方を見たが、椅子に腰かけている女は、下を向き膝の上に抱えているトートバッグの中をかき回していたが、取り出したのは雑誌の切り抜き。
「和彦君。私、この店に行ってみたいの。連れて行ってくれる?」
本来なら地下鉄を使い六本木に行くはずだが、和彦の車は二人の女性を乗せると早々に目当ての店に着いた。
人気のイタリアンの店は予約をしていなかったが、運が良かったのか。それとも時間が早かったからなのか。待つことも断られることもなく席に案内された。
4人掛のテーブルでつくしと向かい合って座った和彦は、ワインが飲みたいと言うつくしの言葉にトスカーナ産の赤ワインを注文し、それからメニューを決め乾杯して賑やかに食事を始めたが、酒に弱いと言う女が初めから飛ばし気味にワインを飲んだ。
そして、はじめこそ笑みを崩さなかったつくしも、やがて酔いが手伝ったのか、ひと言、「最低」と呻くように言ったが、それから鼻をすすり上げると、
「何が経済界のサメよ!...何が道明寺司よ...いったい何なのよ!あの男大ウソつきの最低男よ!」
と毅然と言って、泣きはじめたが、それは電話一本でつくしの心を掴み、会うことでつくしの心を壊した男に対しての感情だ。
「あの三条さん。牧野さんは道明寺副社長と何かあったんですか?」
「うん。ちょっとね...」
桜子は静かに言ったが、桜子から見れば坊っちゃん育ちを絵に描いたような若林和彦は屈折したものがない。
そして泣き出した女を見て、どうしたらいいのかと考えているようだが、つくしが言わない限り自分の口から二人の間に起きた事を話そうとは思わなかった。
だから本人を慰める言葉しか言わなかった。
「先輩あんな男のことで泣かないで下さい。先輩は人として模範的な女性です。あんな男のことなんて早く忘れて下さい」
「分かってるわよ」
と返事が返ってきたが、酒に弱い女は、「ちょっと化粧室に行って来る」と言って席を立った。

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「牧野先生。じゃない牧野さん。それから三条さんもお久しぶりです。お二人ともお元気でしたか?突然お邪魔して驚かれたと思いますが、今夜ご予定がなければお二人と一緒に食事に行けたらと思い立ち寄らせていただきました」
と言って現れたのは、つくしが大学生の頃、家庭教師のアルバイトをしていた6歳年下の若林和彦。若林建設の専務は、アジアのインフラ整備需要拡大に対応し長期出張していたベトナムから戻ったところだと言った。
「ここの大学。空港からの帰り道にあるので立ち寄りやすいんです。それから、お二人を誘いに来たことに他意はないですから安心して下さい。ただ前回お訪ねした時、言いましたよね?僕が今度食事に誘った時は恋愛感情は抜きだから付き合って欲しいって。だから今日誘いに来ました」
前回和彦がつくしを訪ねて来たのは、ロシアからの出張帰りだと言ってチョコレートを土産に持ってきた。そして二人はカフェテリアに場所を移し、つくしのことを好きだと言う和彦の気持ちに応えることは出来ないと言ったが、そのとき道明寺司が現れ、和彦はつくしの態度に、つくしには好きな人がいて、その人が道明寺司だと誤解して立ち去った。
「と言っても無理にとは言いません。急な事ですので、お二人にも都合というものがあるでしょうし、僕と食事をしたくないと思われるなら断っていただいても___」
「行きます!若林さん。私と先輩を食事に連れていって下さい。今夜は二人で食事に行く予定でしたが、喜んでお付き合いさせていただきます!」
桜子は、丁度これから女二人で食事に繰り出そうとしていた所を和彦に誘われ、女同士で不満を吐き出すよりも、自分達より若い男性を間に挟み楽しく飲む方がいいと思えた。
それに桜子から見て若林和彦は好青年と言えた。かつての家庭教師だった年上の女性に好意を抱いていることを隠すことがなく、自分の考えていることを誤魔化そうとするところが皆無だと思えた。だから和彦の誘いに喜んで答えた。
「若林さん。私も先輩もお腹が空いています。美味しい物を沢山食べたいと思ってます。それに最近嫌なことがあって飲みたい気分なんです。だから連れて行って下さい!」
そんな桜子の言葉に、「えっ?ええ...美味しい物をご馳走するのは勿論そのつもりです。でも本当にいいんですか?」
和彦は桜子の言葉につくしの方を見たが、椅子に腰かけている女は、下を向き膝の上に抱えているトートバッグの中をかき回していたが、取り出したのは雑誌の切り抜き。
「和彦君。私、この店に行ってみたいの。連れて行ってくれる?」
本来なら地下鉄を使い六本木に行くはずだが、和彦の車は二人の女性を乗せると早々に目当ての店に着いた。
人気のイタリアンの店は予約をしていなかったが、運が良かったのか。それとも時間が早かったからなのか。待つことも断られることもなく席に案内された。
4人掛のテーブルでつくしと向かい合って座った和彦は、ワインが飲みたいと言うつくしの言葉にトスカーナ産の赤ワインを注文し、それからメニューを決め乾杯して賑やかに食事を始めたが、酒に弱いと言う女が初めから飛ばし気味にワインを飲んだ。
そして、はじめこそ笑みを崩さなかったつくしも、やがて酔いが手伝ったのか、ひと言、「最低」と呻くように言ったが、それから鼻をすすり上げると、
「何が経済界のサメよ!...何が道明寺司よ...いったい何なのよ!あの男大ウソつきの最低男よ!」
と毅然と言って、泣きはじめたが、それは電話一本でつくしの心を掴み、会うことでつくしの心を壊した男に対しての感情だ。
「あの三条さん。牧野さんは道明寺副社長と何かあったんですか?」
「うん。ちょっとね...」
桜子は静かに言ったが、桜子から見れば坊っちゃん育ちを絵に描いたような若林和彦は屈折したものがない。
そして泣き出した女を見て、どうしたらいいのかと考えているようだが、つくしが言わない限り自分の口から二人の間に起きた事を話そうとは思わなかった。
だから本人を慰める言葉しか言わなかった。
「先輩あんな男のことで泣かないで下さい。先輩は人として模範的な女性です。あんな男のことなんて早く忘れて下さい」
「分かってるわよ」
と返事が返ってきたが、酒に弱い女は、「ちょっと化粧室に行って来る」と言って席を立った。

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コメント
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司*****E様
おはようございます。
研究室に現れたのは若林君でした。
実にナイスタイミングで現れた若林和彦。
そんな彼に食事に誘われ桜子とつくしは出かけました。
酒に弱い女。赤ワインをグイグイ飲んでいるようですが大丈夫?そして泣いてしまいましたが、つくしも女です。色々な思いが溢れたのでしょうね。
そして化粧室に立ちました。
え?誰かに遭遇する!\(゜o゜;)/
最近色々と忙しく疲れてます。
パソコンを立ち上げてもブログまで辿り着くことなく終わっていることもありますが、脱稿目指して更新したいと思います。
コメント有難うございました。
おはようございます。
研究室に現れたのは若林君でした。
実にナイスタイミングで現れた若林和彦。
そんな彼に食事に誘われ桜子とつくしは出かけました。
酒に弱い女。赤ワインをグイグイ飲んでいるようですが大丈夫?そして泣いてしまいましたが、つくしも女です。色々な思いが溢れたのでしょうね。
そして化粧室に立ちました。
え?誰かに遭遇する!\(゜o゜;)/
最近色々と忙しく疲れてます。
パソコンを立ち上げてもブログまで辿り着くことなく終わっていることもありますが、脱稿目指して更新したいと思います。
コメント有難うございました。
アカシア
2019.03.09 21:13 | 編集
