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2019
03.05

理想の恋の見つけ方 91

プライドの高さは人一倍強いと言われる男が大勢のひと前で頬を平手打ちにされる。
その記事が載った週刊誌があきらの前にあった。
だが流石に道明寺司という名前までは具体的に書かれていないのは、圧力がかかったか。
それとも出版社の忖度が働いたのか。
どちらにしても、記事の内容については当の本人が一番良く知っているはずで、あきらは真偽を確かめるべく司に会いに来た。

「それで司。この記事はお前のことだよな?名前こそ具体的じゃないが、ここに書かれているホテルMも経済界のサメと呼ばれる男D氏にしてもどう考えてもお前だな」

あきらは、記事の写真は粒子が荒く白黒だが司が日曜に惚れた女に会って事実を話すと言っていたことからこの写真が親友であることに確信を持っていた。
そして記事に書かれている男が平手打ちにされ、グラスの中をぶちまけられるという行為が、男女の痴話喧嘩なのか。それとも別れ話の結末なのか。
記事は記者が取材したものではなく、あくまでも伝聞であり臆測でしか書かれていなかったが、あきらは、この二人の様子が痴話喧嘩でもなければ別れ話の結末でもないことを知っている。何しろまだ二人は付き合ってもいないのだから別れ話の結末と言われれば、それは違う。だがどちらにしても終ったものとして捉えていることは正しいと思えた。

「お前。女に平手打ちをされたのは初めてだよな?」

あきらは司の姉椿が弟を平手打ちする姿は見たことがあったが、姉以外の女が親友の頬を打つ姿など見たこともなければ想像すらしたことがない。だから訊いたが、男の顔が少しだけ腫れているように見えるのは、女の力が強かったということだ。
だが親友はあきらの問い掛けに答えはしなかった。だからあきらは記事に書かれている他のことを司に訊いた。

「司。お前胸に赤いバラの花を挿していたそうだが、お前らしいというか。まあお前だから似合うんだろうが、そんな恰好でお前が現れればどこの女も胸のバラが自分に差し出されるものと思っているはずだ。だが学者先生はその花を受け取らなかった。そう言うことだろ?まあそれは仕方がない話だよな。何しろお前は嘘をついていた。だからその女が怒るのは当たり前だ」

司はパソコンを使いながら、あきらの話を聞いていたが指の動きを止め、あきらを見た。

「分かってる。だからその嘘を自分の言葉で埋めるために会うことに決めた。だが平手打ちを喰らった」

司の頬を打った手は女にしては強さが感じられたが、それはそれだけ怒りの気持ちが手に込められていたということ。
そしてグラスの中に残されていた氷と水がぶちまけられたのは、顔も見たくないという表れだ。

「そうだろうよ。お前が肝心の言葉を言う前に女の怒りは頂点に達したはずだ。だから平手打ちを喰らったんだろ?それにしても、学者先生はお前の口から出る言葉を何でもはい、そうですか。分かりましたと言う女じゃないってことだ。つまりお前は出方を間違えてるってことだが、今まで女に対して非情だったことへのしっぺ返しが来た。それに今までのお前の人生で女が心に棲んだことは無かったことを考えてみれば、学者先生の扱い方について間違ってるんじゃねぇのか?」

司はそう言われたが、何が間違っているのか分からなかった。
だからあきらに訊いた。

「何が間違ってるって?」

「だからビジネスはシビアなものだ。非情で結構。高森開発が持っていた駅前の土地を手に入れてオフィスタワーを建てるには非情さが必要だ。だが恋はビジネスと同じって訳にはいかねぇ。相手は人間だ。心がある。そこをよく考えてみろ」

あきらは、そう言うと一服つけてもいいか?と言って煙草に火を点け、
「ここだけだぜ。ゆっくり煙草が吸えるのは。うちのビル。ついに全館禁煙になった」と言って灰皿に灰を落とした。

「なあ司。お前自分自身を弁護するならその前に誠心誠意相手に尽くせ。何をされても、いや、この場合相手はお前を避けるはずだ。だがどんなに避けられても煩がれても彼女に尽くせ。自分がどんな人間か分かってもらえ。そうする以外にはない。お前は今まで贅沢な人生を歩んで来た。どんなに綺麗ないい女でも別れを決めた女を顧みることはなかった。だから今のお前は自分が顧みられないことにショックを受けているはずだ。だが狙いを定めたなら学者先生に惚れたなら天命を待つな」










あきらは帰ったが週刊誌は応接テーブルの上に残されていた。
司はあきらに言われなくてもそのつもりだ。
誰が天命など待つものか。
それに自分が顧みられなかったことにショックなど受けてはいない。

司は弱い女は嫌いだ。
自分を持つ女が好きだ。
それに気の強さと自立心というものは違う。
だから平手打ちの強さが、司に臆することなく向かって来るその強さは自立心の表れであり、それが好ましいと思えた。
だが自立心は旺盛だが、足に深い傷跡を持つ女は自分は恋には向かないと思っている。
それでも、電話の男には違った。会おうと言った言葉に少し考えたが会うと答えた。
それは相手が杉村という男だから会おうと決めたのだが、その気持ちは少なくとも杉村に思いを寄せていたということ。だから杉村と司が同一人物であることに驚いたに過ぎないはずだ。

確かに初めは女の本性が知りたくて他人を装った。
だが牧野つくしの本性が知りたいと思ったのは、初めて会った時、そうしなければならないという思いが働いたということだ。つまり牧野つくしは出会うべくして出会った相手だということ。

司はインターコムのボタンを押した。

「西田。今夜の会食はキャンセルしてくれ」




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コメント
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dot 2019.03.05 06:16 | 編集
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dot 2019.03.05 07:15 | 編集
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dot 2019.03.05 12:38 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
平手打ちをされ氷をかけられた写真が週刊誌に載り、名前を伏せていても、ぼかしていても誰か分かってしまう(≧▽≦)
そりゃあ司ですから分かりますよね?(笑)
周りの人間は目が点だったと思いますがスクープですよね?(笑)
でも司は気にしていません。流石大物!
今まで恋愛をしてこなかった男は外野はどうでもいいという感じでしょうか。
でもねぇ、ビジネスの時のような機械的な態度では駄目です。
どうやってつくしの心を開いていくのか。
頑張れ司!
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.03.06 23:10 | 編集
3月5日7時15分にコメント下さったお方様へ
いつもお読みいただきありがとうございます。
御指摘をいただいた件ですが、おっしゃる通り言葉使いが若者とは違うと感じる部分も多いと思います。
それは筆者の年齢が若くないこともあると思います。
ですから、言い回し等については仕方がないと思ってお読み頂ければ幸いです。
拙い話ではございますが「違う」「おかしい」と言われ続けると書く事が難しくなりますので、ご理解いただければと思います。
アカシアdot 2019.03.06 23:20 | 編集
イ**マ様
つくしにとっての日曜は嫌な一日に終わりましたねぇ。
あの道明寺司をメープルのラウンジで平手打ち!(≧▽≦)
そして平手打ちされた本人は落ち込んでないのは、さすが道明寺司です!
司の誠意はこれから発揮されるのでしょうかねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.03.06 23:24 | 編集
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