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2019
02.26

理想の恋の見つけ方 86

「牧野先輩おはようございます。今朝で道明寺副社長との出勤も終わりましたね。それにしても毎朝高級車がマンションまでお迎えに来るなんて、重役出勤以外の何ものでもないですけど、楽な移動に馴れた身体で明日から満員電車での出勤大丈夫ですか?」

と、桜子から言われたが、今まで全く足を使わなかったという訳ではない。
それにもうとっくに治っているのだから今まで通り電車に乗ることに問題はない。

「大丈夫よ。捻挫をする前まで毎日満員電車だったのよ?もう平気よ」

「そうですか?でも気を付けて下さいね。だって質の悪い捻挫は骨折よりも治りが遅いと言われるくらいなんですから。だから先輩の捻挫も長引いたじゃないですか。あ、それから研究会から新しい会報が届いていましたが出てましたよ。先輩も参加した去年の海洋調査についての記事」

と言って桜子が渡してくれた板鰓類(ばんさんるい:サメやエイといった軟骨魚類)研究者のための研究会報に掲載されているのは、去年の夏から秋への季節の変わり目に参加した海洋調査の記録だが、あれから半年以上経ったとは信じられないが、思えば船を降り疲れ果ててマンションに戻った頃はまだ暑かった。そして馴染みの中華料理店丸源に出前を頼のみ、やっぱりもう一品と追加注文した先が杉村と名乗る男性の電話だったが、あの時のメニューは忘れもしない、豚肉とニラともやしの春雨炒め卵乗せだった。

そして今、頭の中を過るのは四日後に迫った杉村との対面のこと。
だが杉村のことは桜子に話していない。何しろ桜子は道明寺司との関係を勧める。それに桜子に間違い電話から始まった杉村との関係を話せば、返される言葉は容易に想像出来た。

「先輩、電話だけの相手に会うなんてどうかしてます!その人が本当に先輩の思うような人だと言えますか?きっとそうやって電話で相手を油断させて自分を好きになるように仕向けてお金を巻き上げる詐欺ですよ!詐欺!今はお年寄りだけを狙うオレオレ詐欺だけじゃなく独身の女性を狙う国際ロマンス詐欺なんてのもあるんですから!もしくは宗教の勧誘とか!だいたい先輩は常識の範囲内で生活をする人間ですよね?それなのに間違い電話で知り合った人と会うなんて先輩の常識は何処かへ置き忘れてきたんですか? 」
と言われることは目に見えていた。
だから言わないつもりだ。

それにもしそんな話をすれば、桜子のことだ。私も一緒に行きますと言うに決まっている。
だが昨日の夜、日曜日の待ち合わせについて杉村と話をしたとき言われたことがある。
それは、『私はまともな暮らしは似合わないと言われたことがあります』だったが、その言葉の意味は一体どういう意味なのか。

「まともな暮らしが似合わないか…」

「なんですか先輩。まともな暮らしが似合わないって?」

「え?」

つくしは桜子の言葉にハッと我に返り視線を落としていた会報から桜子へ移したが、自分が何と言ったか分からなかったが、もしかして杉村の名前でも口走っただろうか。

「ひとり言ですよ、ひとり言。口から漏れてますよ。まともな暮らしが似合わないって言ってましたけど、確かに娯楽も何もない海の上での生活はまともな暮らしとは言えませんよね?」

「…う、うん」

「それにしても受験生は今が一番の正念場です。あとひと頑張りで結果が出ますが、今が踏ん張り時です。出来ればすべての受験生を合格させてあげたい思いですが、そうはいかないんですよね…..」

桜子のいう正念場とは、国公立大学2次試験前期日程のことで、今はそれが終ったばかりだが、受験生にとっては人生に一番関わると言われる試験。その試験につくしは監督官を務め、桜子は補助スタッフとして監督官を務めたが、近年つくしが准教授を務める大学の倍率は高い。つまり人気があるということだが、それは就職率がいいからだ。
だが言葉を変えれば就職することを念頭に入学をし、大学に残って研究をする人間は少ないということになるが、それは教育の現場に身を置く者としては少しだけ寂しいものがあったが、その思いはどうやら秘書の桜子も同じだった。

「今年も優秀で学ぶことに意欲的な学生が入学してくれることを祈るしかありませんが、入試シーズンの仕事は激務ですよね?今日は副島教授はお休みされています。もしかするとインフルエンザかもしれないっておっしゃってました。季節の変わり目です。牧野先輩も一度なったからといって油断しないで下さいね?学生たちは休みでも先生方にはやるべきことが幾らでもあるんですからね?」

「分かってるわよ」

桜子のいう通りで、試験が終わったということは採点作業が待っている。そして入試業務というものは、教員にとっては大変手間のかかる業務だ。だが今のつくしは、日曜日に杉村と待ち合わせするメープルの1階ラウンジのことを考えていた。
時間は12時と決まっていたが、昨日目印になるものについて話をした。
すると杉村は身長が180センチ以上あること。そして赤いバラの花を胸のポケットに挿して行くと言った。
今まで何度か桜子に男性を紹介されたが、尻ごみとまでは言わないが乗り気ではなかった。
けれど、杉村と会うと自分で決めたことは、どこかで自分を変えようとする気持ちがあるということ。つくしは杉村がどんな姿をしていたとしても気にしない。それは自分自身の身体にある傷跡がそう思わせるのだが、相手はつくしに会ってどう思うか。だが会いたいと言い出したのは彼の方だ。そして会うことで二人の関係に変化が訪れるはずだが、今は会う事を考える楽しみというものを味わっている自分が楽しかった。




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コメント
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dot 2019.02.26 05:58 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
司がバラの花を胸に現れる‼
その光景を想像しただけで、周りがざわつきますね(笑)
そして運命の対面まであと4日!この微妙な時間がドキドキを増幅させるような気がします。
何事も最初が肝心ですが、つくしの心を掴むことが出来るのでしょうかねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.02.26 22:27 | 編集
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