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2019
02.25

理想の恋の見つけ方 85

「ええ。そうです。メープルの1階ラウンジです。そこで待ち合わせるためには何か目印が必要だと思います。何を目印にするか。まだ時間はありますからゆっくり考えましょう。それにその頃には、あなたの捻挫も治っているはずだ」



杉村がその言葉を口にしたのが3週間前。
それからも約束通り週に一度の電話の関係は続いたが、杉村に対しての思いは今までと変わらず好感の持てる男性ということ。けれど、あと4日で運命の日曜日を迎えることになる。
それは、今まで積極的に男性と会うことをしてこなかった女の挑戦なのかもしれない。

あの時、杉村と名乗る男性が「私はあなたと話すのが楽しい。だから会って話す時間が無駄だとは思わない。それにきっと直接会って話す方が楽しいに決まっている」と言ったとき、偽名に守られた関係よりも別の関係を望んだ。
だが、本人に直接会うということは、今までの電話での関係の終わりを示している。
つまり会った段階で二人の関係は変わるということ。
そしてその変化は、二人の間に進展があるのか。それとも会ったその日にどんな関係も続けることはないということか。そんな二つの想像に思いを巡らせていたが、どちらにしても会うことは自分で決めたのだから、どんな結果になったとしても受け止めるつもりだ。

間違い電話をかけたのは、まだ夏の余韻が残る秋だった。
それから3月上旬の日曜まで週に一度見知らぬ男性に電話をかける。それは今までのつくしにすれば勇気ある行動。所詮会うことがないのだから、嘘を、虚構を連ねても良かったはずだが、つくしはそれをしなかった。
それは、いつの間にか心の中に芽生えた思いがあったから。
名前の無かった男性から杉村と偽名とはいえ名前がついた頃から、いやそれ以前から心を寄せはじめていた。

そして今日で道明寺副社長の車で大学へ行くのが終る。
だからつくしは車が大学に近づいてくると隣に座る男に言った。

「あの道明寺副社長。今日まで送迎をしていただき本当にありがとうございました」

「俺は好きな女の世話がしたかっただけだ。だから気にするな」

お前が好きだと言われ、足を捻挫した女を1ヶ月近く送ることをした男性は、時に海外出張でいないこともあったが、それ以外毎朝迎えの車の中に道明寺副社長はいた。
だが足もすっかり良くなった今、本来ならもっと早くに送迎は終えてもらうつもりでいたが、彼がいいと言うまで止めることはなかった。

つくしは、想像の杉村に思いを馳せた。
夜の電話の男性である杉村とは話すことは幾らでもあった。だがそれとは逆に道明寺副社長とは会話らしい会話が殆ど無かった。
例えば、「今日の調子はどうだ?」と訊かれれば、「おかげさまで随分と良くなってきました」と返すと、「そうか。それは良かったな」で会話が終わった日もあった。また別の日は、挨拶を交わしたが、それ以外無言ということもあったが、それは車の中で書類に目を通していたからだが、そんな時つくしは窓の外を流れていく景色を眺めていた。

同時期に同じ年齢の二人の男性と過ごしたことはなかったが、つくしにすれば道明寺司という人間は生々しいほど男性を感じさせる。そしてそんな男性は今までつくしの傍にはいなかった。
それにつくしのことを好きだと言っておきながら、黙殺したような態度を取る男はよく分からなかった。そして何故自分がそんなことを気にしているのかが、つくしには分からなかった。

だが電話という限られた世界での杉村は、そうではない。
つくしの主観だが、杉村の喋る言葉には品格があり知性を隠している。そしてそれは身体が丈夫ではないと言った彼の言葉から想像するしかないのだが、全てに於いて上手な語り手だと思った。
そして、あまり外出をすることが無いと言っていた杉村の職業は、法に触れることがないと言われたが、その時彼の仕事は在宅でも勤務可能なIT関連で黙々と仕事をしているといったイメージがあった。だがそんな人間が弁が立つということが、不思議だと思うのは考え過ぎなのか。

だがあと4日。あと4日で実際の杉村に会うことになる。だが今思えば果たしてこれで良かったのだろうか。という気持ちが胸にゆらめいていた。

そして今では足もすっかり良くなったのだから、道明寺副社長が車を降り、つくしを抱えることもない。そして今日が最後だというのに意外とあっさりとした返事が返されたことに妙に拍子抜けした気持ちになったが、車を降り改めて副社長に頭を下げたが、毎日送迎して貰えたことは正直助かったと言えた。












「副社長。若林和彦の件ですが彼は牧野様が書庫に閉じ込められた日はミャンマーにいたようです。それからホームで後ろから押されたという日も国内にはいませんでしたが、今現在も国内にはいません。それに若林和彦が牧野様の周りをうろつくといった怪しい行動は見られません」

運転席の隣に座る男がそう声をかけて来たのは、司が調査を命じたからだ。
駅のホームで後ろから誰かに押される。
書庫に閉じ込められる。
そのどちらも偶然だと言えばそうかもしれない。
だが世の中で起こることには、必ず理由があると思う人間もいる。
そして言えることは、司と近しい関係である人間は、何かとターゲットにされることがあるということ。だから司は、牧野つくしが司と知り合ってから彼絡みで出会った人間について調べることにしたが、それは彼女に好意を寄せていたがフラれた男である若林和彦。
そしてもう一人。高森開発の社長だった高森隆三の妻である高森真理子。人妻だが司に色目を使う女。

「それから高森真理子の方ですが、どうやら夫と離婚したようですが所在不明です」



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コメント
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dot 2019.02.25 06:14 | 編集
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dot 2019.02.25 07:11 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
え?当日ドタキャンですか?(;^ω^)
そしてつくしが大学へ出勤する日は、出来る限り彼女を送って来た男は車内ではあまり話をしなかったようですが、策を巡らせていたのか。それとも、もう一人の自分とは会話を楽しむ女を観察していたのか。
4日後。どんな顔をしてつくしの前に現れるのでしょうね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.02.25 22:18 | 編集
童*様
夫と離婚した高森真理子。
所在不明という状況が気になりますが、この後、真理子はどう出るのでしょう。
癖のある女、真理子。プライドが高い女性のようですので何か考えている。
そんな気がします。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.02.25 22:26 | 編集
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