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2019
02.09

理想の恋の見つけ方 77

司は三条桜子の案内でぐったりと力が抜けた牧野つくしの身体を寝室へ運んだが、身体は思いのほか軽かった。
そして桜子が痛み止めだと言って渡したのは少し強めの睡眠導入剤。図書館に閉じ込められ捻挫をしたという状況は普段とは全く異なる状況であり、疲れているだろうと桜子が用意したものだった。それに道明寺司が一緒にいることで緊張していると思えたからだ。

「先輩は自己防衛能力が低いんです。だから渡された物も素直に口にしてしまいます。それは言葉を変えれば人を信じやすくお人好しという意味ですが、道明寺副社長もそう感じていらっしゃるんですよね?」

もちろん司は、その言葉の意味を理解していた。
牧野つくしの発する言葉の全てがそうだとは言わないが、明らかに今まで司の周りにいた女たちとは違いバカ正直なところがあった。それは司が杉村と名乗り夜の電話の男を演じている時、自分が置かれた状況を正直に話し彼に向けられる発言に嘘はないからだ。

「ああ….まあな。この女は昔からそうか?」

そう訊いたのは、捻挫した右足に気を付けながらベッドにゆっくりと身体を横たえてからだ。

「ええ。そうです。昔からでした」

司に向かって平気でキツイ言葉を放つことが出来る三条という女は、牧野つくしの親友であるが司の敵ではないと感じていた。
それは大切な親友を司が抱きかかえてここまで来ることを許したこともだが、三条桜子から感じられるのは、自分のせいで牧野つくしが受けてしまった心の傷を自分が繕わなければならないという思い。司が遊びなら許しはしないが、本気ならこの人を変えて欲しいという思いだ。

そして三条桜子が毛布をかけるとベッドの女は少しだけ身体を動かした。
二人はそんな女を見つめていたが、桜子に隣の部屋へ戻りましょうと言われ、司はソファのある部屋に戻った。

そして改めて部屋の中を見渡したが、シンプルといった印象の部屋だった。
司は今までどんな女の部屋も訪れたことはなかった。それは司が訪れることで何かを期待する女が殆どだからで、過去に付き合った女たちの部屋へ足を向けたことは一度もなかった。

司は病院の待合室で三条桜子に訊かされた足に傷を負ったため、牧野つくしを捨てたという男のことを訊きたかった。そしてあの時三条桜子の問いかけに答えようとしだが、その前に牧野つくしが処置を終えて出て来たため言えなかったことを言おうとしていた。

それは、彼女の傷を受け入れることが出来るか。男性によって傷つけられた心を自分の方へ向ける自信があるか。見られたくないものを見られた女に対してどう言葉をかけるかという問いかけ。だからその質問に答えることにした。

「待合室でのあんたの質問だが今ここで答えてもいいか?男が女に惹かれるのは肉体的なことから始まるのが一般的だ。人はまず外見から相手を判断する。だから見た目がいいにこしたことはない。女が男に惹かれるのは、そこに肩書が加わり金がどれくらいあるかが加わる。その全てが揃った男に向けられる女たちの態度は死肉を漁るハイエナのようなものだ」

だが牧野つくしは違った。どんなに司の近くにいても女をひけらかすことはせず、あくまでもビジネスライクに接していた。
司は自分が死肉だとは思わないが、自分の外見や肩書や金が女たちの嗅覚を刺激していることは分かっている。そして金の匂いにつられて集まる女がいかに貪欲かということも知っている。

「俺は近づいて来るそんな女達の見せかけの皮を剥ぐことが楽しかったこともあった。人間の上っ面なんぞ作ろうと思えば作れる。だが人の心はそう簡単には作れるもんじゃねぇだろ?それに惚れた女に傷があることが受け入れるかどうかの判断になるとは考えねぇな。所詮人間は皮を被っているだけで傷が人間の本質に関係あるとは思ってない。それから傷のある女にかける言葉は必要ない。言っとくがそれは悪い意味じゃない。俺は傷があることが悪いと思わねぇんだから引け目を感じる必要はない。ああ、それから男に傷つけられた女の気持ちを自分に向かせる自信があるかだが、ある」

それは司が一度こうと決めたことは最後までやり遂げることが当然だと思うからだ。
だがそれはビジネスについてのみ行われていたことだが今は違った。

「三条さん。あんたの見た目は一般的な女に比べれば綺麗だ。男が放っておかないはずだ。だがあんたは牧野つくしに対する責任から男に興味がない。いや。牧野つくしの身体に出来た傷のせいで離れて行った男に嫌悪感を抱いた。だから男は信用できない。そんな思いも抱いているはずだ」

桜子はそれに反論しなかった。
そしてこう言った。

「さすが経済界のサメと言われる方は違いますね?」

ただの秘書だと思っていた女の率直な物言いが小気味よく響くのは、司が牧野つくしの傍にいることを反対しないと言っているのか。
その思いで司は言葉を継いだ。

「精神的に惹かれる人に出会うことは難しい。だが自分の気持ちが向く相手が決まったなら多くを考える必要はないはずだ」




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コメント
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dot 2019.02.09 09:47 | 編集
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dot 2019.02.09 12:16 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
桜子はつくしに怪我をさせた責任を感じていますが、そこには親友としての思いもあります。
そして、つくしが眠った後で司と話をする桜子は、男の態度と言葉が信頼に値すると思ったのでしょうね。
つくしの傷ついた心を自分に向かせる自信があるという男。さすがですね。
経済界のサメは深海でひっそりと生きてきたシーラカンスの興味を自分に向けることが出来るのでしょうか。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.02.09 23:23 | 編集
ひ**り様
「ああ、それから男に傷つけられた女の気持ちを自分に向かせる自信があるかだが、ある。」
女にフラれたことがない司は自信があるらしいですよ(;^ω^)
本気の恋を見つけたなら頑張ってもらいましょう!
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.02.09 23:29 | 編集
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