「牧野さんお客様ですよ?」
そう言われたつくしはキーボートを打つ手を休めて声のするほうを見た。
「は、花沢さん?」
そこには吸い込まれそうにキラキラとした瞳をした花沢類がいた。
つくしにとって花沢類は、自分の知りうるかぎり正真正銘の王子様だった。
穏やかな空気をまとい、おとなしそうな美しい顔にビー玉のような瞳がキラキラと輝いているようだ。
そして陽に透けるような栗色の髪を後ろに流している。
細身に見えるけれど決して弱々しくはなく優雅な大人の色気が感じられる。
道明寺さんとはタイプが正反対だと思った。
「牧野さん、こんにちは」
つくしは席をたつと、花沢類が所在なさげに立っている場所までやってきた。
「花沢さん、どうしたんですか?」
オフィスの入口に立つ花沢物産の専務に他の社員の視線が集まった。
「支社長なら今夜帰国なんですが・・」
つくしは頭のギアを切り替えなければと思った。
花沢さんは道明寺さんとは違っていきなり本題を切り出すような人ではない。
それにこの人はつくしにはよく分からない細かなことを大切にするような人だ。
「ん?司?いいんだよ司のことは」
類は社内をさっと見回していた。
「今日は牧野さんに会いに来たんだ」
「わ、わたしにですか?」
「 そ 」類はほほ笑んだ。
「牧野さん出張はどうだった?」
つくしは花沢類が傷害未遂事件に巻き込まれた支社長を心配して来たと思っていたので自分の様子を聞いてきたことに少し驚いていた。
「え、あ、はい。有意義な出張でした」
「牧野さん、そんな杓子定規な返事なんてしなくてもいいよ」
つくしはそう言われて少し照れながら答えた。
「素晴らしかったです。ヘリに乗って上から鉱山の露天掘りの様子を見たんです」
そう言いながらもつくしはあのとき、司にキスをされた時のことを思い出していた。
「そう。いい経験を積んだんだ」類はほほ笑んだ。
類はある種の男性には生まれつきに備わっていると思われるさりげない優雅さがあった。
それは支社長にも言えることだった。
二人ともスマートに女性をエスコートすることが出来る。そして何気ない気遣いが感じられる。そんな二人の傍にいるとつくしは自分の無骨さが目立つのではないかと感じることがあった。
「で、司は大丈夫なの?」
「はい。何も問題ありません・・」
つくしはそう言うと納得がいかないとばかりの顔をして言った。
「でもどうして道明寺さんが環境保護団体の人間に襲われるような目に合わないといけないのか納得がいきません。だってうちの会社は環境保護には力を入れているんですよ?」
つくしは大まかに事件の説明をしながら類の顔のよぎる表情を見ていた。
「森林保全だってちゃんとしています!河川管理だって・・」
つくしはいったん口をつぐんだ。
「まったく頭にきます!道明寺さんだって・・」
「牧野さん司のこと道明寺さんって呼でるんだ」花沢類の目つきが鋭くなった。
「え?あ、支社長です!し、支社長だって・・」つくしは慌てて言い直した。
類の質問に対する答えはイエスと言っているようなものだった。
「ねえ牧野さん、今夜花沢物産の後援でコンサートがあるんだけど行かない?」
「コ、コンサートですか?」
「うん」
つくしは暫く考えてから言った。
「あ、あの・・」
「嫌かな?」
類は同意を求めるように言った。
「い、いえ。その・・」
つくしはいったん口をつぐみ、恥ずかしそうに花沢類の目を見て言った。
「わたし、ど、道明寺さんに好きだって言われたんです」
「・・・へぇ・・。そうなんだ」
類は楽しそうな声で言った。
「は、はい」つくしはそう言うときまりが悪そうにはにかんだ。
「ふーん。司ついに言ったんだ」類は何かを考えているように言った。
「それで牧野さんは?」
「わ、わたしはまだよくわからなくて・・」
「でも!友達からはじめようって・・」
つくしは言い添えた。
「じゃあ俺も遠慮なく言うよ。」
類はユーモアの混じったような温かいほほ笑みを浮かべていた。
「俺も牧野さんのことが好きだから。だから今夜はコンサートに付き合ってよ」
「えっ?」
つくしはまじまじと類の顔を見つめて真意を推し量ろうとした。
「俺、本気で牧野さんのこと好きだから」
類はそう言うと輝くようなほほ笑みを浮かべた。

にほんブログ村

人気ブログランキングへ

応援有難うございます。
そう言われたつくしはキーボートを打つ手を休めて声のするほうを見た。
「は、花沢さん?」
そこには吸い込まれそうにキラキラとした瞳をした花沢類がいた。
つくしにとって花沢類は、自分の知りうるかぎり正真正銘の王子様だった。
穏やかな空気をまとい、おとなしそうな美しい顔にビー玉のような瞳がキラキラと輝いているようだ。
そして陽に透けるような栗色の髪を後ろに流している。
細身に見えるけれど決して弱々しくはなく優雅な大人の色気が感じられる。
道明寺さんとはタイプが正反対だと思った。
「牧野さん、こんにちは」
つくしは席をたつと、花沢類が所在なさげに立っている場所までやってきた。
「花沢さん、どうしたんですか?」
オフィスの入口に立つ花沢物産の専務に他の社員の視線が集まった。
「支社長なら今夜帰国なんですが・・」
つくしは頭のギアを切り替えなければと思った。
花沢さんは道明寺さんとは違っていきなり本題を切り出すような人ではない。
それにこの人はつくしにはよく分からない細かなことを大切にするような人だ。
「ん?司?いいんだよ司のことは」
類は社内をさっと見回していた。
「今日は牧野さんに会いに来たんだ」
「わ、わたしにですか?」
「 そ 」類はほほ笑んだ。
「牧野さん出張はどうだった?」
つくしは花沢類が傷害未遂事件に巻き込まれた支社長を心配して来たと思っていたので自分の様子を聞いてきたことに少し驚いていた。
「え、あ、はい。有意義な出張でした」
「牧野さん、そんな杓子定規な返事なんてしなくてもいいよ」
つくしはそう言われて少し照れながら答えた。
「素晴らしかったです。ヘリに乗って上から鉱山の露天掘りの様子を見たんです」
そう言いながらもつくしはあのとき、司にキスをされた時のことを思い出していた。
「そう。いい経験を積んだんだ」類はほほ笑んだ。
類はある種の男性には生まれつきに備わっていると思われるさりげない優雅さがあった。
それは支社長にも言えることだった。
二人ともスマートに女性をエスコートすることが出来る。そして何気ない気遣いが感じられる。そんな二人の傍にいるとつくしは自分の無骨さが目立つのではないかと感じることがあった。
「で、司は大丈夫なの?」
「はい。何も問題ありません・・」
つくしはそう言うと納得がいかないとばかりの顔をして言った。
「でもどうして道明寺さんが環境保護団体の人間に襲われるような目に合わないといけないのか納得がいきません。だってうちの会社は環境保護には力を入れているんですよ?」
つくしは大まかに事件の説明をしながら類の顔のよぎる表情を見ていた。
「森林保全だってちゃんとしています!河川管理だって・・」
つくしはいったん口をつぐんだ。
「まったく頭にきます!道明寺さんだって・・」
「牧野さん司のこと道明寺さんって呼でるんだ」花沢類の目つきが鋭くなった。
「え?あ、支社長です!し、支社長だって・・」つくしは慌てて言い直した。
類の質問に対する答えはイエスと言っているようなものだった。
「ねえ牧野さん、今夜花沢物産の後援でコンサートがあるんだけど行かない?」
「コ、コンサートですか?」
「うん」
つくしは暫く考えてから言った。
「あ、あの・・」
「嫌かな?」
類は同意を求めるように言った。
「い、いえ。その・・」
つくしはいったん口をつぐみ、恥ずかしそうに花沢類の目を見て言った。
「わたし、ど、道明寺さんに好きだって言われたんです」
「・・・へぇ・・。そうなんだ」
類は楽しそうな声で言った。
「は、はい」つくしはそう言うときまりが悪そうにはにかんだ。
「ふーん。司ついに言ったんだ」類は何かを考えているように言った。
「それで牧野さんは?」
「わ、わたしはまだよくわからなくて・・」
「でも!友達からはじめようって・・」
つくしは言い添えた。
「じゃあ俺も遠慮なく言うよ。」
類はユーモアの混じったような温かいほほ笑みを浮かべていた。
「俺も牧野さんのことが好きだから。だから今夜はコンサートに付き合ってよ」
「えっ?」
つくしはまじまじと類の顔を見つめて真意を推し量ろうとした。
「俺、本気で牧野さんのこと好きだから」
類はそう言うと輝くようなほほ笑みを浮かべた。

にほんブログ村

人気ブログランキングへ

応援有難うございます。
スポンサーサイト
Comment:3
コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます

as***na様
類君、ストレート過ぎますね。
もっとひねってよ!と言いたいんですが
何考えているか分からないのが類君です(笑)
何か考えているのか、考えていないのか・・
明日になれば答えが出ているといいのですが・・
コメント有難うございました。
類君、ストレート過ぎますね。
もっとひねってよ!と言いたいんですが
何考えているか分からないのが類君です(笑)
何か考えているのか、考えていないのか・・
明日になれば答えが出ているといいのですが・・
コメント有難うございました。
アカシア
2015.11.18 22:24 | 編集

k**hi様
類君、久々の登場です。
二人海外でしたからねぇ。
絡むチャンスがありませんでした(笑)
そうなんです、今夜帰国するって時に誘う類・・
天然のように見えてそうでない・・いいキャラクターですよね?
ええ、もうそろそろ展開しないと。
司、早く帰って来てってことで(笑)
コメント有難うございました。
類君、久々の登場です。
二人海外でしたからねぇ。
絡むチャンスがありませんでした(笑)
そうなんです、今夜帰国するって時に誘う類・・
天然のように見えてそうでない・・いいキャラクターですよね?
ええ、もうそろそろ展開しないと。
司、早く帰って来てってことで(笑)
コメント有難うございました。
アカシア
2015.11.18 22:32 | 編集
