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2019
02.03

理想の恋の見つけ方 72

つくしは、ほふく前進して扉まで辿り着くと、なんとか立ち上がろうとした。
だがやはり右足が痛くて立てなかった。つまり立ち上がるには誰かの助けが必要だということだが、こうなったら扉を叩いて助けを呼ぶしかない。
だが閉館した図書館にまだ誰か残っていればの話だが、果たして下の事務室に誰かいるだろうか。司書に終わったと言いに行ったとき、そこにいたのは司書の女性ともうひとりの女性。そして男性がひとりいたが、その中の誰かがまだいることを望みにスチールの扉を叩き始めた。

「誰かいませんか!」

誰かいて欲しい。
こうなったら神様に祈るしかないのだが、その祈りは届くだろうか。
そんな思いから言葉に出して助けを呼び、扉をガンガンと叩いたが、その音は階段に響いているはずだ。

「誰かいませんか!立てないんです!誰か扉を開けて助けて下さい!」

そんな風に言って何度も扉を叩き、声を上げたが扉の向こうに人の気配はしなかった。
つまりそれは、もう誰も残っていない。誰もこの建物には残っていないということになる。

「どうしよう….」

革のショートブーツの中の右足は圧迫されてはいるが、あきらかにいつもと違い腫れてきているのが感じられた。ジンジンとズキズキする感覚がじわじわと上へと昇るのが感じられ、右足が大きくなっていくように思えた。

「さむ…..」

コートを着ていても感じるこの寒さは底冷えのような寒さ。今夜ひと晩ここで過ごすことを考えると今度はインフルエンザではなくても確実に風邪をひくと思った。
桜子はもう帰っただろうか?いつもなら9時まで開いている図書館に行くと言ったのだから今も図書館で調べものをしていると思っているはずだ。
だからまさか4階の書庫で足首を骨折….とは思いたくないが、立てなくなった状態で助けを呼んでいるとは思いもしないはずだ。
そして思い浮かぶのは、いつも桜子が言っていた「携帯を持ち歩いて下さい」の言葉。ポケットに携帯があれば助けを呼ぶことが出来るはずだ。そんなことを考えながら、再び扉をガンガンと叩いた。

するとバタバタと階段を上る足音に続き扉の向こう側で鍵穴に鍵を挿し込む音がした。
そして扉が開いて入口の壁にある蛍光灯のスイッチが入れられた。
だが暗闇の中にいて突然の明かりに目が慣れずにしばたたいた。するとそこはひとりの男性が立っていた。
だがその男性は事務室にいた男性とは別人だった。何故なら目の前に現れた男性はメガネをかけていないからだ。
床に這いつくばった状態のつくしを見下ろす男性はスーツを着ていて、その服装からして警備員ではないことは明らかだ。それならこの男性はいったい何者なのか。
すると直ぐにその男性から声がした。

「おい。しっかりしろ!大丈夫か?」

そう言って、しゃがみ込んだ男性は心配そうな顔でじっとつくしを見た。
そこで急にその男性が誰だが気が付いた。

「ど、道明寺副社長?!」

「ああ。俺だ。大丈夫か?」

すると直ぐに聞き慣れた声が慌てた様子で名前を呼んだ。

「牧野先輩!?」

「さ、桜子?」

「そうですよ!先輩大丈夫ですか?それにしてもどうしてこんな所にいるんですか?」

桜子も直ぐにしゃがみ込みつくしの顔を見た。

「ここからカラスの鳴き声が聞こえたの。だから見に来たの。でもカラスはいなくて。そうしたら電気が消されてそれで転んだの」

「え?!どういうことですか?」

桜子は、つくしが言っているカラスの意味が理解出来ず怪訝な顔をした。

「だからここから出ようとして転んだの。コートが何かに引っ掛かったの。それで前に倒れたの。その時右足を捻ったの。もしかすると右足が折れているかもしれないの」

やはりその言葉は何があってここにいたのかはっきりと分からなかったが、右足が折れているかもしれないは理解出来た。
そして牧野つくしの言葉に即座に反応したのは司だ。

「動くな。じっとしてろ」

そう言うと、つくしの右足首をブーツの上から触った。

「…い…っ…」

「痛いか?」

つくしは顔をしかめて頷いた。それは足が少しだけ引っ張られたからだ。

「先輩大丈夫ですから。直ぐに病院に行きましょう。レントゲンを撮ってもらわないと」

と桜子は言って、「大丈夫です。荷物はここにありますから」と言葉を継いだ。

「ああ。そうだな。すぐに病院に行こう。俺が抱えて行く。その前にこのブーツを脱がせた方がいい。ブーツの上からじゃはっきりとした状況が分からない。足首もそうだがそこから上も確かめたほうがいい。ストッキングを履いてるなら脱がすことになるが骨が突き出ているところがあるか確かめた方がいい」

司はそう言うと、足首に纏わりついたロングスカートの裾をたくし上げようとしたが、牧野つくしから出た「止めて!触らないで!」の声は身体の硬直を伴っていた。だがそれは痛みを感じた声とはまた別の悲痛な声だ。

「ブーツは病院で脱ぎます。ここでは脱ぎたくないんです!それにここでストッキングを脱ぐ必要はないはずです!だから触らないで下さい!」

「先輩!落ち着いて下さい。大丈夫ですから。道明寺さんは先輩のことを心配して言って下さっているだけですから」

その声は牧野つくしを落ち着かせようとしているが、やはり悲痛さが感じられた。
そして牧野つくしは司がたくし上げたスカートの裾を元に戻そうとしたが、司はそれを止めた。

「大丈夫だ。俺に何かされると思っているなら秘書もいる。だから心配ないはずだ。それにけが人相手に俺が何をするって思ってるんだ?」

司は明らかに動揺している女に諭すように言ったが聞き入れようとはしなかった。

「道明寺副社長が何かをするとかそんなことを言ってるんじゃないんです!骨が折れてるかどうかは病院で見てもらいます!ブーツは向うで脱げばいいはずです!だから早く病院へ連れてってください!さ、桜子!お願い止めさせて!」

ブーツを脱がし骨折しているかを確かめる。その為にはスカートをたくし上げる必要がある。怪我をした人間がそれを恥ずかしいと思うことは間違っている。だが牧野つくしの声はまるで恐怖を感じているように聞こえた。

「道明寺副社長。先輩がああ言ってるんです。ブーツを脱ぐのも足を確かめるのも病院で見てもらえばいいはずです。何もここで先輩の嫌がることをしなくてもいいんじゃありませんか?」

司は秘書がそう言ったが止めなかった。
スカートをふくらはぎの途中までたくし上げ、右足を押さえ、ブーツの短いファスナーを下ろし、さして高くない踵を掴むと慎重にゆっくりと脱がせたが、その瞬間牧野つくしの顔は痛みを堪えた顔になった。
そして司は牧野つくしが止めてと言ってもスカートを膝までたくし上げたが、その時肌色のストッキングの下に見えたのは大きな傷跡。それが上へ向かって伸びていた。



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コメント
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dot 2019.02.03 09:38 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
無事救出されたのは良かったのですが、足の具合を確かめようとした司の行為を頑なに拒否するつくしがいました。
この傷はどうして出来たのか。司は知りたいと思うでしょうねぇ。
「私のせいで」と言っていた桜子。何があったのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.02.03 21:31 | 編集
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