設備管理部の仕事は文字通り大学の施設の維持管理が仕事だ。
つくしの部屋のエアコンの調子が悪いと言ったのが二日前。そして次の日さっそく修理が行われ暖かい空気が部屋の中を満たしてくれるようになった。だが修理時は講義中であり部屋におらず、サインが欲しいと言われた書類の提出がまだだった。
だからサインをすると自ら書類を施設管理部へ持参し、その足で図書館へ行くことにした。
「その後エアコンの調子は問題ありませんか?」
施設管理部の男性職員は書類を受け取るとそう訊いたが、昨日に今日のことで不具合を感じることはなく、「はい。問題ありません」と答えると「そうですか。また何か気になることがあればおっしゃって下さい」と言い短い会話は終了した。
書類を提出すると、さっき歩いて来た廊下を戻り再び屋外階段を下り図書館へ向かったが、夕暮れ時を迎えた構内は学生たちの姿はまばらだった。
たが平日の図書館の閉館時間は21時だ。だからその時間まで調べものをする学生もいた。
そして設備管理棟の工事もそうだが4階建ての図書館も去年の夏から改修工事が始まっていて、建物には足場が組まれ防音シートがかけられていた。だが内部はすでに終了していて3月には全ての工事が終わる予定だ。
改修以前の図書館の1階には事務室や会議室、館長室があったが、会議室だけを残し他は今まで書庫として利用していた3階へ移動させ、空いたスペースに図書館での長時間滞在も可能なようにリフレッシュエリアを設け飲食が可能なスペースが作られたが、他にも個人ブースやアーカイブズルームも作られた。そして3階の書庫機能は今まで利用されていなかった4階へと移動した。
そして2階には図書館本来の目的である本が並んでいるが、その一角に以前そこにあった固定書架は、女性でも簡単に動かすことが出来る制震機能が付いた電動式の書架に変わっていて、つくしの目的はその書架の中にある古い資料だった。
「それにしても寒い!こんなことならマフラーも巻いてくればよかった」
施設管理棟から図書館まで5分だがコートを着たつくしは足早に図書館の入口に急ぐ。
そして建物の中に入り2階への階段を上がり、コートを着たまま書架の前に立ち、目的の資料を探し始めたが、今日は珍しくそこには誰もおらず、つくしひとりがそこにいた。
「ええっと……ここじゃないわね…..」
図書館でひとり言を言えば煩いと言われるが、幸いにも誰もいないのだから気を使う必要はなかった。
そして誰もいない広い図書館というのは奇妙なほど静かだった。しかし本来図書館というのは静かな場所なのだから奇妙という言葉はおかしいのかもしれない。だが何故かこの静けさに不自然さを感じた。そしてその時、視界の端に誰かが動いた様子が感じられ、ああ他にも誰かいるのかと思った。だからこの静けさは気のせいだと思った。
そしてそんなことよりも、早く目的の資料を探し出し研究室へ持ち帰りたかった。
「牧野先生?お調べものですか?」
そう突然声を掛けられ驚いたが、近づいて来たのは顔なじみの司書の女性だ。
と、いうことは視界の端に感じられた人影は、その女性だったのかと思った。するとどこかホッとする気持ちになったのは、やはりあまりの静けさに緊張していたということなのだろう。だが今は顔なじみの女性に声を掛けられたことでその緊張も解けた。
「ええ。そうなんです。でも書架が新しくなって資料の場所が変わったので探すのが大変です」
笑顔を向けそう言うと、司書の女性も、「そうですか。何でもそうですが慣れるまでは大変ですよね?私も同じですよ」と笑いながら言ったが、そこから先は申し訳なさそうに言葉を継いだ。
「それから先生。すみません。今日は18時で図書館を閉めることになってるんですが、もしかしてご存知なかったですか?」
「え?そうなんですか?」
「ええ。表の掲示板にも張り出してあったと思うんですが御覧になられてませんか?」
何故図書館に人がいないのか。
不思議に思ったが司書の言葉に納得できた。そして時計の針はあと10分で6時を指そうとしていた。つまり司書は閉館準備のため館内を見回っていたということになる。
と、なるとお目当ての資料を探す時間はあと10分だが、果たしてその時間で見つけることが出来るだろうか。
「すみません。見てませんでした。そうだったんですね?だから今日は人が少なかったんですね?」
「ええ。いつもならこの時間まだ学生が大勢いてもおかしくはないんですが、今日はそういったこともあって早い時間の利用で皆さん終わられたんですよ。でも先生おひとりなら少しくらい時間が延びてもいいですよ?表は閉館の札を掲げますが私も片付けに30分位はかかります。だからそのくらいなら居て下さっても大丈夫です」
「本当ですか?でも30分もかからないと思いますが助かります。ありがとうございます」
と、つくしが礼を言うと司書の女性は「終わられたら声をかけて下さいね」と言って背を向けた。
そして30分もかからず探していた資料を見つけると、3階の事務室まで上がり司書に終わったと声をかけ礼を言って階段を下りかけたところで4階からカラスの鳴き声のような声が聞こえた。確か4階は3階にあった書庫が移動したはずだったがどうなっているのか。
もしかすると閉め忘れた窓から入り込んだカラスがねぐらにしようとしているのか。
だとすれば司書に知らせた方がいいはずだが、彼女は忙しそうにしていた。それなら成りゆき上、自分が行って見てこよう。気のせいならそれでいい。
つくしは4階への階段を上り始めた。

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「その後エアコンの調子は問題ありませんか?」
施設管理部の男性職員は書類を受け取るとそう訊いたが、昨日に今日のことで不具合を感じることはなく、「はい。問題ありません」と答えると「そうですか。また何か気になることがあればおっしゃって下さい」と言い短い会話は終了した。
書類を提出すると、さっき歩いて来た廊下を戻り再び屋外階段を下り図書館へ向かったが、夕暮れ時を迎えた構内は学生たちの姿はまばらだった。
たが平日の図書館の閉館時間は21時だ。だからその時間まで調べものをする学生もいた。
そして設備管理棟の工事もそうだが4階建ての図書館も去年の夏から改修工事が始まっていて、建物には足場が組まれ防音シートがかけられていた。だが内部はすでに終了していて3月には全ての工事が終わる予定だ。
改修以前の図書館の1階には事務室や会議室、館長室があったが、会議室だけを残し他は今まで書庫として利用していた3階へ移動させ、空いたスペースに図書館での長時間滞在も可能なようにリフレッシュエリアを設け飲食が可能なスペースが作られたが、他にも個人ブースやアーカイブズルームも作られた。そして3階の書庫機能は今まで利用されていなかった4階へと移動した。
そして2階には図書館本来の目的である本が並んでいるが、その一角に以前そこにあった固定書架は、女性でも簡単に動かすことが出来る制震機能が付いた電動式の書架に変わっていて、つくしの目的はその書架の中にある古い資料だった。
「それにしても寒い!こんなことならマフラーも巻いてくればよかった」
施設管理棟から図書館まで5分だがコートを着たつくしは足早に図書館の入口に急ぐ。
そして建物の中に入り2階への階段を上がり、コートを着たまま書架の前に立ち、目的の資料を探し始めたが、今日は珍しくそこには誰もおらず、つくしひとりがそこにいた。
「ええっと……ここじゃないわね…..」
図書館でひとり言を言えば煩いと言われるが、幸いにも誰もいないのだから気を使う必要はなかった。
そして誰もいない広い図書館というのは奇妙なほど静かだった。しかし本来図書館というのは静かな場所なのだから奇妙という言葉はおかしいのかもしれない。だが何故かこの静けさに不自然さを感じた。そしてその時、視界の端に誰かが動いた様子が感じられ、ああ他にも誰かいるのかと思った。だからこの静けさは気のせいだと思った。
そしてそんなことよりも、早く目的の資料を探し出し研究室へ持ち帰りたかった。
「牧野先生?お調べものですか?」
そう突然声を掛けられ驚いたが、近づいて来たのは顔なじみの司書の女性だ。
と、いうことは視界の端に感じられた人影は、その女性だったのかと思った。するとどこかホッとする気持ちになったのは、やはりあまりの静けさに緊張していたということなのだろう。だが今は顔なじみの女性に声を掛けられたことでその緊張も解けた。
「ええ。そうなんです。でも書架が新しくなって資料の場所が変わったので探すのが大変です」
笑顔を向けそう言うと、司書の女性も、「そうですか。何でもそうですが慣れるまでは大変ですよね?私も同じですよ」と笑いながら言ったが、そこから先は申し訳なさそうに言葉を継いだ。
「それから先生。すみません。今日は18時で図書館を閉めることになってるんですが、もしかしてご存知なかったですか?」
「え?そうなんですか?」
「ええ。表の掲示板にも張り出してあったと思うんですが御覧になられてませんか?」
何故図書館に人がいないのか。
不思議に思ったが司書の言葉に納得できた。そして時計の針はあと10分で6時を指そうとしていた。つまり司書は閉館準備のため館内を見回っていたということになる。
と、なるとお目当ての資料を探す時間はあと10分だが、果たしてその時間で見つけることが出来るだろうか。
「すみません。見てませんでした。そうだったんですね?だから今日は人が少なかったんですね?」
「ええ。いつもならこの時間まだ学生が大勢いてもおかしくはないんですが、今日はそういったこともあって早い時間の利用で皆さん終わられたんですよ。でも先生おひとりなら少しくらい時間が延びてもいいですよ?表は閉館の札を掲げますが私も片付けに30分位はかかります。だからそのくらいなら居て下さっても大丈夫です」
「本当ですか?でも30分もかからないと思いますが助かります。ありがとうございます」
と、つくしが礼を言うと司書の女性は「終わられたら声をかけて下さいね」と言って背を向けた。
そして30分もかからず探していた資料を見つけると、3階の事務室まで上がり司書に終わったと声をかけ礼を言って階段を下りかけたところで4階からカラスの鳴き声のような声が聞こえた。確か4階は3階にあった書庫が移動したはずだったがどうなっているのか。
もしかすると閉め忘れた窓から入り込んだカラスがねぐらにしようとしているのか。
だとすれば司書に知らせた方がいいはずだが、彼女は忙しそうにしていた。それなら成りゆき上、自分が行って見てこよう。気のせいならそれでいい。
つくしは4階への階段を上り始めた。

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コメント
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七*様
こんにちは^^
七*様の予想は当たるでしょうか!
ドキドキして頂けるでしょうか。
そして電話の人が来るのでしょうかねぇ^^
コメント有難うございました^^
こんにちは^^
七*様の予想は当たるでしょうか!
ドキドキして頂けるでしょうか。
そして電話の人が来るのでしょうかねぇ^^
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.01.27 22:38 | 編集

ふ*******マ様
おはようございます^^
なおみちゃん。凄いですよね。優しいいいお嬢さんだと思います。
本当におめでとうございます、と言いたいですね^^
そしてこのつくし。危機感が無いですか?(笑)
そうですねぇ。自分がやらなきゃと思う気持ちが大きいのでしょうね。
この先ドキドキが続く展開となるでしょうか。
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
なおみちゃん。凄いですよね。優しいいいお嬢さんだと思います。
本当におめでとうございます、と言いたいですね^^
そしてこのつくし。危機感が無いですか?(笑)
そうですねぇ。自分がやらなきゃと思う気持ちが大きいのでしょうね。
この先ドキドキが続く展開となるでしょうか。
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.01.27 22:45 | 編集

司*****E様
おはようございます^^
本当に怪しいのは図書館!この先何か起こるのか。それとも起きないのか。
おお!そうだったんですね?それなら図書館には御詳しいですね?
大坂なおみ選手の試合はオンタイムで見たのですが手に汗握りました。
でもとてもいい試合でした。
そして、なんと\(◎o◎)/!夕方に驚きのニュースが‼
長い時間をかけて話し合いをしてきたということに更に驚きましたが、彼らも考えがあってのこと。
国民的スターとなった彼らです。これから2年間楽しませてくれるはずです。
そしていつかまた。彼らはみんな大人ですからね。その思いで待っている4人がいると思います。
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
本当に怪しいのは図書館!この先何か起こるのか。それとも起きないのか。
おお!そうだったんですね?それなら図書館には御詳しいですね?
大坂なおみ選手の試合はオンタイムで見たのですが手に汗握りました。
でもとてもいい試合でした。
そして、なんと\(◎o◎)/!夕方に驚きのニュースが‼
長い時間をかけて話し合いをしてきたということに更に驚きましたが、彼らも考えがあってのこと。
国民的スターとなった彼らです。これから2年間楽しませてくれるはずです。
そしていつかまた。彼らはみんな大人ですからね。その思いで待っている4人がいると思います。
コメント有難うございました^^
アカシア
2019.01.27 23:05 | 編集
