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2019
01.19

理想の恋の見つけ方 63

馴れ馴れしくも司の隣に座った女は、ここを銀座のクラブと勘違いでもしているのか。
初めて会った時から嫌悪感を覚えた女だが、その行動に司は途端に不快そうに眉を寄せた。
そして司の腕を取らんばかりに身体を寄せてきたが、鼻を突く香水の匂いは気分を悪くさせた。


「ねえ、道明寺さん。主人はあの土地は売るつもりはないと言ってるの。だってあの駅前の再開発は莫大な利益を生むことが分かっているんですもの。だからいくら道明寺さんの会社が欲しいとおっしゃられても無理だと思うわ」

一流と呼ばれる男が惹かれる色っぽさが何かと言えば、それは礼儀正しさと知性があるかないかによる。
司は好んで女を侍らせる店に行くことはない。それでも、時に利用する馴染みの料亭の女将や高級クラブと呼ばれる店のママは女盛りであっても、それをこれ見よがしに晒すことはなく、頭がよく口が堅い人間が多い。

たとえば海外からの人間を接待する為に料亭を利用することがあるが、女将は津田塾出身で英語が堪能だ。そして彼女たちは料亭をビジネスの場の延長として利用する人間や、クラブを大人の社交場として利用する人間を立てることを知っている。

高森真理子も大学生の頃銀座のクラブでアルバイトをしていたというが、こうして社長である夫が仕事をする場所で男に馴れ馴れしく接して来ることは、夫に対しての忠誠心など無いに等しい。それともここでスカートを捲り上げことに及ぼうと誘うなら、どこかに隠しカメラが設置されていて、経理担当者を誘ったのも恐らくここのはずだ。
そして夫はどこかの部屋で妻と男の行為を見る。録画して楽しむことをしているはずだ。
それにしても司を相手に身の丈以上の駆け引きをしようというのだから、司も舐められたものだ。



「なるほど。あなたの夫である高森社長はあの土地を売る気はないとおっしゃっているんですね?」

「ええそうよ。あそこはオフィスが一切入らない商業施設ビルにするの。映画館やライブハウスやレストラン。それにホテルが入るエンターテイメントビルが建つわ。そこは大勢の人間が集まってナイトライフが楽しめるビルになるわ。でも道明寺さんがこの事業に関わりたいとおっしゃるなら考えてみてもいいわ。つまりうちの事業に加わるということだけど」

真理子は主導権が高森にあることを強調し、道明寺が事業に加わればと言っていた。
そして司が黙っていると真理子は彼が思案していると取ったのか言葉を継いだ。

「悪いお話じゃないと思うわ。テナントになりたい企業も多いはずよ。それに昔のように土地神話はないと言われるけれど、不動産価格は高騰しているわ。だから将来的にも不良資産化することはないと思うわ」

頭がいいのか。悪いのか。
水商売上がりとはいえ、大学を卒業している真理子は人事に口を出すこともだが、夫の事業に深く関わっているようだ。それは真理子が会社の大株主であることからして不思議ではないが、夫の代わりに司と交渉しようとすることに一層不快感を覚えた。


「そうですか。だが私にはその事業が最終段階まで行けるとは思えませんね」

司が否定的な発言をすると、真理子は綺麗に整えている眉を上げた。

「あら。どういう意味かしら?」

「言葉通りですよ。その事業は諦めた方がいいということです。御社から近藤大臣に渡った4億と言えばお分かりでしょう」

司は、高森開発と現職の国土交通大臣との関係を話し始めた。

「借用書無しでの4億。もちろん帳簿には載らない金だ。大臣は個人的な借り入れだと言いうだろう。だがそうじゃない。渡された時期からその金は選挙資金として使われたはずだ。そしてその金の代償は高森開発への配慮とでも言えばいいか?それとも口利きと言えばいいか?とにかく大臣は色々と便宜を図ってくれた。違いますか?そしてこのことが公けになれば困るのは大臣だ。そして高森開発との関係を問われることになる。この金は選挙資金として提供を受けたものであり、高森開発は便宜を受けたいがために支払ったものだとね」

「な、何よいきなり!」

「おや違いますか?」

「ええ!違うわ。言いがかりをつけるのは止めてもらいたいわね。それにどこにそんな証拠があるのよ!」

きれいに化粧が施された顔は血相を変えて言い募った。

「証拠ですか?ええありますよ。証言がありますから。それに調べれば他に証拠を揃えることは簡単なはずだ。それからあなたは夫の会社の社員に対して色々とご執心のようですが、いくら大株主だからといって人事に介入することがいいとは思えませんね」

「な、何がおっしゃりたいのかしら?」

司の指摘は真理子にとっては思ってもみなかったところを突いたはずで、顔が赤く染まっていくのが見て取れた。

「そうですか。あなたは心当たりがないとおっしゃる。だがあなたが人事に介入するのは、自分が気に入った男を近くに置きたいからではありませんか?たとえばそれは自分専用の運転手として傍に置き自分の相手をさせる。自分達の快楽のためにその様子を録画して_」

「道明寺副社長!」

扉が開かれ入って来たのは社長である高森隆三。
まるで飛び込むように入って来たその様子は、腹の調子が悪いと化粧室に行っていたにしては随分と慌てていた。

「お、お待たせして申し訳ございません。真理子!お前は席を外せ。私は道明寺副社長と話がある」

司は高森隆三が苛立った様子で妻の真理子に話す様子を見ていたが、真理子は「でも….」と言い動こうとはしなかった。

「でもじゃない!早く出て行くんだ!」

真理子は隆三に一喝されると、それ以上は何も言わず口をつぐみ立ち上がり出て行こうとした。
だが司は構わず言った。

「そういえば、御社は過去6年間増収増益を重ねて来ているようですが、大変素晴らしいことですね。それに今年度の決算予想も上々だとか。だがそれも怪しいもんだ。噂だが高森開発は粉飾決算をしている。経理操作がされているという話がある。それも監査法人を巻き込んでいるという話があるが粉飾決算ともなれば一体どれほどの額なのか知りたいですね?」

司は話しながら隆三の顔を見ていた。
粉飾が発覚するのは内部告発が殆どであり外部からは分かりにくい。そしてこの話は大臣への借用書無しの貸し付けの件と同様に高森開発を辞めた経理担当の男の証言だ。
そしてこの話が嘘ではないことを証明するように隆三の顔色は明らかに青ざめていた。

「駅前のあの土地に建設されるおつもりの建物には幾ら必要になるのか。奥様はエンターテイメントビルとおっしゃいましたが、さぞや資金調達は大変でしょう。だがだからといって銀行から融資を受けるため経営状況を良く見せ財源を実際より豊かに見せる必要があるということでしょうが粉飾決算はどうかと思いますがね?」

司はそこまで話すとソファから立ち上がって腕時計を見た。

「高森社長。どうやらお約束を頂いた時間はここまでのようだ。お忙しいところ申し訳なかったですね。どうぞお身体をお大事になさって下さい。東京拘置所の中は寒いと訊きますから」

粉飾の額によっては高森開発の破綻もあり得る話であり、逮捕され有罪になることもある。そして現職の大臣に対しての多額の現金の供与は政界を巻き込んだスキャンダルとなり、恐らく大臣は辞任に追い込まれることになる。
だがそれは双方の身から出た錆であり、いつかはバレる話だ。だが自ら公表するのと暴かれるのでは心証が違ってくるが、果たして高森はどうするのか。

司は社長室を後にすると、別室で待機していた西田とエレベーターに乗った。

「副社長お疲れ様です。いかがでしたか?高森社長のご様子は?」

「血相を変え部屋に飛び込んで来たかと思ったら一気に血の気を失ったぜ」

「そうですか。あの情報は役立ちましたか」

「ああ。粉飾決算が明らかになれば株価は暴落する。株主代表訴訟があってもおかしくない。それにあの会社がいつまで持つかと言えば立っていられる時間は短いはずだ。だから現金はいくらあってもいいはずだ。西田。社長にはあの土地はすぐにでも手に入ると伝えてくれ」





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コメント
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dot 2019.01.19 08:56 | 編集
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dot 2019.01.19 12:48 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
え?ちょっとブラックな感じでしたか?(笑)
鉄の女の息子ですから、ビジネスに関しては冷酷な男かもしれませんね?
そしてビジネスとは結果が全てであり過程は求められません。
相手に弱みがあればそれを利用することもあるでしょうね。
真理子さん。残念ながら、ということになりましたが、また目が離せないですか?(笑)
さてどうでしょうねぇ^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.01.19 22:33 | 編集
イ**マ様
お仕事お疲れさまでした^^

神に愛されデキル男は違う!(≧▽≦)
司のビジネススタイルはクール。そして自分に敵対して来る相手には容赦がないと思います。
そして東京拘置所。高森隆三は入るのでしょうか?司、しっかり脅してます(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.01.19 22:42 | 編集
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