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2018
12.15

理想の恋の見つけ方 45

司は今まで感じたことがない不快な思いをしていた。
それは敬意の衣を纏いながら、司を好きな女を取り合うライバルとして見ている若い男の態度に不遜さを感じたからだ。

6つ年上の女に対し自分の感情を隠すことなく伝える若林和彦は、世に言うハンサムな男だ。
身長は180センチ以上。司とさして変わらない背の高さに長い脚を持ち賢そうな顔をしていた。あの手の男なら付き合っている女がいても不思議ではないはずだが、堂々と牧野つくしに思いを打ち明けるということは、今は女はいないということか?

そして何気ない言葉に何気ない申し出をして、研究室を訪れ何か出来ることがあれば手伝うといった言葉は嘘ではないだろう。そしてその言葉の端々に女への思いを乗せていることもだが、牧野つくしに向かってほほ笑みを浮かべた男は司のことなど眼中にないといった様子で女だけを見ていた。

別にそのことが気に入らないのではない。
牧野つくしは自分の女でもなければ、何の関係もない。だが司のブレーンとしてパーティーへ同伴した。しかし女は司よりも別の男との会話を楽しんでいたが、その態度は男に対してどうだったか。
媚びへつらっていたか?頬を赤らめてはいたが、そういった態度は見られなかった。
楽しげな笑い声がしたか?困惑した表情はあったが、そんな声は聞えなかった。
懐かしさはあったとしても、それ以上の感情があるようには見えなかったが、果たしてどうなのか。
となると、司は牧野つくしが若林和彦をどう思っているか訊きてみたくなった。
そして司がそう思った時、リムジンの後部座席で隣に座る女は咳払いをすると言った。

「あの、道明寺副社長。私のことで何か気に入らないことがあったんでしょうか?」

少なくともパーティーへ向かう車内では会話を交わしていた。
だが帰りの車の中は気詰まりな沈黙が続いていて、どうやら女はそれを気にしていたようだ。

「気に入らないこと?」

「はい。私はああいったパーティーには慣れていません。ですから軽率な振る舞いがあったのではないかと思ったんです」

優雅な身のこなしをする大勢の招待客の間でマナーに反することがあったのではないか。女は司にそう訊いていた。そして司を見る顏は真剣で、訊き方は控えめだが明らかにそのことに関心がある様子だった。

「牧野先生。あなたはご自分の行動で自覚できる何かがあったということですか?」

「え?いえ。でも…」

「心当たりがないなら気にする必要はないはずだが?」

「はい。でも副社長のご機嫌が悪そうでしたので….」

司と牧野つくしの間で激しい感情のやり取りがあったことはない。
ビジネスマンとしての司は、感情を露にすることがいいとは言えないことを知っているからだが、それは女という生き物に対しても同じだ。そしてそれは子供の頃に培われた人生観がそうさせるのだろう。
誰も彼もが司に迎合する。周りの人間は御多分に洩れず誰もが彼の顔色を窺い、不機嫌さを少しでも感じれは取り繕うとした。そして彼が望むことは、口に出さなくても叶えられたが、与えられたのは薄っぺらな心で、誰も本心から司と話をしようとする人間はいなかった。

やがて大人になり権威を持つ立場になれば、ますます司の顔色を窺う人間ばかりが周りにいた。
つまり今牧野つくしが、こうして司に気を遣うのは、彼が5千万の金を寄付したからなのか。
だがそれは若林和彦に話をしたように、心からの感謝の気持がそうさせるだけなのか。
そしれそれ以上は望むことはないということか?

初めて牧野つくしに会ったとき、立ち去る司を追いかけて来た女の態度は、今まで誰もしてこなかった行為で、ある意味で挑戦的とも言える態度だった。
だからこうして牧野つくしが司に気を遣う態度を取ることに違和感があるのか?
そして司が5千万の寄付をしたのは、牧野つくしが高額の寄付に対しどういった態度を取るのか知りたかったから撒いた餌のようなものだったが、女の態度はあくまでも控えめであり司に取り入ろうとはしなかった。

だが家庭教師をしていた6歳年下の男が同じことをしたら、感謝の気持であの男と付き合うことを決めるのか。若林和彦が、先ほどの返事は急がないと言ったが、偶然の出会いが運命だと言う男なら、あれは明らかに交際を申し込んだことに対する返事のはずだ。
だが15年も前の初恋の女が、あの時のままだとは言えないはずだ。
ましてや、和彦は中学生で女は大学生だった。人は変化していく生き物で心は変わる。だがそれに気付かず過去を美化して自己満足に浸っているとすれば、その態度と姿に騙されていたとしても気付かないバカな男ということになるが、若林和彦は女に不信感がないのか。

そして今夜は高森開発の所有する土地取得のため尽力せよと社長から命令され出席したパーティーだったが、ビジネスの話はビジネスの場で余計な口出しをされない場所でするに限る。
それに母親が期待をする結婚に対する思惑は、残念だが叶えられないことを知るべきだ。



「あの、道明寺副社長?」

司は暫く黙っていたが、黒い瞳は瞬きすることを忘れたように彼をじっと見ていて、その瞳を見ながら彼は訊いた。

「牧野先生。あなたは若林和彦の家庭教師だったそうですが、15年振りの再会はさぞや感動的だったことでしょう。それで?あなたは年下の男の思いに応えるつもりですか?」

それは単なる好奇心から訊いただけであり、欲望でもなければ憤りでもない。
それに一体何に対して憤るというのか。
女というのは裏表がある生き物で派手な色をした長い爪を隠し、男を追い回し騙しベッドに誘い込もうとするが、若林和彦が牧野つくしに騙されたとしても司には関係ない。
牧野つくしが誰と付き合おうと関係ない。
それなのに司の口をついた言葉は想いとは別の言葉だった。





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コメント
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.12.15 09:55 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
>今はまだ恋ではないけど、相当つくしちゃんのこと気になりだしている。
勝手にライバル視されていることにイラついている男ですからねぇ。
>司がつくしに恋していると気づくまでに、どのくらいの時間を要するのか。
早く自覚して欲しいのですが、どのくらいかかるんでしょうねぇ(;^ω^)
それにしても、若林君は自分の気持をストレートにぶつけて来ますね。
そして高森真理子の存在もありますからねぇ。
つくしは、今まで静かな環境にいましたが、司と関わったことで色々と騒がしくなったようですが、この先どうなるのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.12.15 22:15 | 編集
ま*も様
今晩は。お久しぶりです^^お変わりございませんか?
こちらのお話をお読みいただきありがとうございます。
長くなってしまったお話ですが、楽しんでいただけるように頑張ります^^
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2019.03.30 23:16 | 編集
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