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2018
12.13

理想の恋の見つけ方 44

若林和彦は司に牧野つくしのことを好きだと言った。
そして二人が知り合った経緯を話し、この出会いは単なる偶然ではなく運命であると言った。
その話が司に向かって意図して言われたものだとしても、彼が深く考える必要はない。
それにしても、和彦が牧野つくしを愛しているなら、女が求めることなら何でもすると言うのか。
若林建設の跡取り息子は牧野つくしが求める物は何でも与えるのか。そしてそれは愛がそうさせるのか。

だが愛も欲望のひとつであり人類の過去の歴史には、欲望を満たすためならプライドも道徳心も投げ打ってきた大勢の男達がいた。そしてやがて女に裏切られた男達は心を傷つけられ身を滅ぼしていた。

女は詐欺師であり売春婦と同じだ。男を騙し自らの身体を与えて己の欲望を満たす。相手が誰だか知れば態度を変える。それが司が過去の経験から知ったことだ。

そして今、司の前に現れた若い男は、彼のことを牧野つくしをめぐって争う相手と見ていた。
だがそれはお門違いもいいところで牽制する必要などない。
だが若林和彦の司を見る眼は明らかにライバルを見る眼だった。
そしてその姿は司に対し敬意の衣を纏いながら、怖いもの知らずで不敵な感じのする笑顔を持っていた。

和彦が13歳の少年だった頃、女子大生だった女は今の和彦をどう思うのか。
歳が離れていても関係ないというなら、高森真理子と同じだが、あの夫婦の場合は男が年上だ。そして和彦と牧野つくしは男が年下だが高森夫婦に比べれば年の差はないと言える。
それに和彦は、いずれ父親の跡を継ぎ若林建設の社長となる男だ。女にとって自分を崇拝する年下の男ほど扱いやすい男はいないはずだ。となると、牧野つくしは若林和彦を金づると見るのか。5千万の寄付に驚いた女は、もっと上の高い場所にある金と地位を掴むことを望むのか。

そして今の二人の男の間に流れる空気は、つい先ほどまで和やかだった周りの空気を変え、彼らから離れた場所にいる招待客も二人の男の姿を見つめていた。やがてその場が沈黙に支配されはじめ、重苦しさが漂い始めていた。だがその沈黙を破ったのは和彦だ。

「ところで道明寺副社長。牧野先生が仕事でお世話になっているそうですが、先生が何をされているかお伺いしてもよろしいですか?」

その質問に口を開いたのはつくしだ。

「あのね若林君。道明寺財団の研究助成事業に応募したんだけど駄目だったの。でも道明寺副社長が私の研究に興味を持って下さって個人的に寄付を頂けたの。それでそのことに対してのお礼として副社長のブレーンになったの。ほら、私の専門は深海サメの研究だから道明寺副社長の会社が海底の資源開発をするにあたって開発が海底の環境や深海に棲むサメや生物の生態に与える影響についての助言をすることになったの。それで今夜はスタッフのひとりとしてパートナーの役目を仰せつかったの。だからこれは仕事の一環なの」

つくしは一気に喋った。
それは何故かこの空気の重さが自分のせいであると感じられたからだ。
そして今日のパーティーに出席したのは、秘書から頼まれた役目で、その秘書からは社長からの指示だと言われれば、断わることなど出来なかった。
それに5千万の寄付に見合うだけのお礼が思いつかなかったのだから、考えてみればブレーンになることも、こうしてパーティーのお供をすることも大したことではないと思えたのだが、まさかかつての教え子に出会い、好きだ。付き合って欲しいと言われるとは思わなかった。そして同伴者の道明寺副社長の態度に不機嫌さを感じると、この場をなんとかしなければと思い始めていた。

「そうですか。牧野先生の研究室は資金不足でしたか」

和彦は考え深げに言ったが、研究が地味であればあるほど、国から大学の研究に対する交付金も少なければ支援してくる人間もいない。

「うん。大学はどこの研究室も資金不足よ。だから研究助成事業に応募する研究者は山のようにいるわ。今回書類選考はパスして面接まではこぎつけたんだけど、最終的に駄目だったの。でも副社長が気にかけて下さったから新しい顕微鏡も買えるし、学生たちに新しいウエットスーツを用意してあげることも出来るわ。他にも色々と揃えることが出来るし海外の学会にも行けそうだし道明寺副社長には本当に感謝してるの」

つくしは懸命に不機嫌さを感じさせる男に感謝の意を述べたが、表情を変えない男が何を思っているのかは分からなかった。

「そうですか…..もし僕がそのことを知っていたら、僕が寄付させて頂いたのに。何しろうちの会社は海洋土木が専門的なこともあるので水に関する物でしたらうちでいくつかご用意出来たと思います」

「うん。ありがとう。その気持ちだけで充分よ。それにしても今夜はまさか若林君に会えるとは思ってなかったから驚いたけど、あの…..」

と、言ったところで言葉に詰まったが、その先を引き取ったのは和彦だった。

「牧野先生。先ほどの返事。急ぎませんから。それに今度研究室にお邪魔します。うちの会社なら先生の研究に役立てられるものがあるかもしれませんので是非僕にもお手伝いさせて下さい」









つくしは、微笑んだ和彦が、では僕はこれで失礼します、という言葉を残しパーティー会場を出て行くのを見送ったが、隣に立つ男が相変わらず厳しい表情を浮かべているのを見れば、もしかして自分が何か軽率な振る舞いをしたのではないかと思わざるを得なかった。





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コメント
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dot 2018.12.13 05:50 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
6歳年下の若林くん。かつて家庭教師だったつくしに恋人がいないなら付き合ってと言い、そして司の存在をライバルと見ている。まぁ。確かに司のような男が傍に立っていたらそう思ってしまうかもしれませんね。
そしてつくしから司を見れば、不機嫌この上ない様子。
つくしの立場からすれば、パーティーのパートナーであり多額の寄付をしてくれた司のことも気にかけながら、教え子のことも気になる。そして教え子の発言に困ったと頭を悩ませる。
若林くん。これからどうするんでしょうねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.12.14 22:06 | 編集
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