「こ、恋人?私の?」
「ええ。そうです。牧野先生は今お付き合いしている男性はいらっしゃるんですか?」
精悍な面差しをつくしに向ける和彦が、いきなり何を言い出すのかと驚いたが、次に語られた言葉にもっと驚いた。
「牧野先生は僕の初恋の人なんです。当時13歳だった僕は先生のことが好きだったんです。だから僕は先生が喜んでくれる顔が見たくて理科を頑張りました」
15年前大学生だったつくしに対し弟よりも年下で中学生の和彦は、思春期に見られる反抗的な態度もなく真面目な子供だった。そしてつくしが教えていた理科もだが、他の教科に対しての取り組みも真面目だと訊いた。
だが中学生ともなれば成長し自分の世界が広がり、勉強よりも友達という年代ではないかと思ったが、和彦の口から友達の話が出ることはなかった。だから和彦という少年は本当に勉強が好きなんだと思っていた。
それでも考えてみれば、中学生の男子というのは複雑な感情を潜ませ始める年頃だ。
そしてつくしが気付かなかっただけで、和彦の感情は思春期の男子らしい想いを家庭教師に抱いていたということになる。
つまり和彦が真面目に理科の勉強に取り組んでいたのは、つくしの存在があったということになるが、まさか6歳下の男性からあの頃好きでしたと言われるとは思いもしなかった。
そして今、真っ直ぐな視線で背筋を伸ばし、タキシードを着こなし立派な肩書を持つ男性は、かつての家庭教師に恋人がいるのかと訊いた。
「牧野先生。先生は今お付き合いをされている方がいらっしゃるんですか?それともおひとりですか?」
6歳という年の差は子供の頃なら大きなものがあるが、大人になった和彦の顔には少年の頃にはあった躊躇いというものが取り除かれていて、訊きたいことをダイレクトに訊いてきた。
そしてつくしは、別に思わせぶったつもりはないが、どう答えようかと考えているうちに、どっちつかずの顔になった。
すると今度は別の質問が飛んで来た。
「先生そんな困った顔をしないで下さい。その顔は昔も答えに窮するとしてましたよ。では別の訊き方をさせていただきます。先生は好きな男性がいるということでしょうか?」
好きな男性と言われ、その時頭を過ったのは週に一度電話で話をしようと言われた男性。
互いにプライバシーを明かすことなく電話だけのやり取りをする仲。知っていることと言えばひとつ年上という年齢だけで、顔を思い浮かべることは出来ず、のっぺらぼうでしかなかった。
だからつくしはその人のことが頭に浮かんだが首を横に振った。
「そうですか。つまり先生は恋人も好きな人もいないということですね?では先生。僕と付き合って下さい。今日こうして先生と会えたのは運命的な出会いだと思います。僕はあの頃は中学生で大学生の先生に思いを伝えることは出来ませんでした。でも今は違います。僕はまだ父の使い走りのようなものですが今は大人の男です。それに先生に対して責任を取ることを躊躇いません」
和彦は私立の男子校で中高一貫校に通っていた。
公立の学校しか知らないつくしは、お金があり頭のいい子供ばかりの男子校に通った和彦の女性に対する思いは偏った方向へ向かったのではないかと思った。
つまり身近に女性がいないことから、定期的に会うつくしに気持が傾いたのではないか。
そして15年ぶりに当時の家庭教師に再会したことで、あの頃の思いが再燃しただけで、いくら初恋の人だからといっていきなり付き合って欲しいと言い、責任を取ることを躊躇わないと言ったが、それは懐かしさがそう言わせただけで本気ではないはずだ。
いやだがもし本気だとすれば和彦の心の中にはずっとつくしがいたということになる。
「あの和彦君…..」と言いかけて、つくしは慌てて言い直した。
「いえ。若林君。いきなり付き合って欲しいとか、ええっと…..責任を取るとか….おかしいと思わない?」
「そうですか?おかしいですか?」
「うん。おかしいわよ。だって15年振りに会った人間に、それに私と若林君は6歳も年が…私が6歳年上よ?」
「先生はご自分が6歳年上が気になるんですか?僕は全く気になりませんよ」
「あのね若林君。6歳年上とか年下とかじゃなくて__」
そう言いかけたつくしが言いたいことは年齢のことではなく、15年も会ってなかった女性にいきなり付き合って欲しいという行動を言っているのだが、和彦は真剣な表情で口を開いた。
「先生。僕はこう考えます。大人になってからの年齢の差は色々なことを経験することで埋められるはずです。それに僕は自分が率直な人間だと思っています。それは周りの人間にも言われます。だから自分の気持を隠そうとは思いません。それに僕は真剣です。牧野先生僕はあなたのことが好きです」
和彦はそう言ってつくしの目をじっと見つめたが、その時、二人の間に力強い声が割って入った。

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「ええ。そうです。牧野先生は今お付き合いしている男性はいらっしゃるんですか?」
精悍な面差しをつくしに向ける和彦が、いきなり何を言い出すのかと驚いたが、次に語られた言葉にもっと驚いた。
「牧野先生は僕の初恋の人なんです。当時13歳だった僕は先生のことが好きだったんです。だから僕は先生が喜んでくれる顔が見たくて理科を頑張りました」
15年前大学生だったつくしに対し弟よりも年下で中学生の和彦は、思春期に見られる反抗的な態度もなく真面目な子供だった。そしてつくしが教えていた理科もだが、他の教科に対しての取り組みも真面目だと訊いた。
だが中学生ともなれば成長し自分の世界が広がり、勉強よりも友達という年代ではないかと思ったが、和彦の口から友達の話が出ることはなかった。だから和彦という少年は本当に勉強が好きなんだと思っていた。
それでも考えてみれば、中学生の男子というのは複雑な感情を潜ませ始める年頃だ。
そしてつくしが気付かなかっただけで、和彦の感情は思春期の男子らしい想いを家庭教師に抱いていたということになる。
つまり和彦が真面目に理科の勉強に取り組んでいたのは、つくしの存在があったということになるが、まさか6歳下の男性からあの頃好きでしたと言われるとは思いもしなかった。
そして今、真っ直ぐな視線で背筋を伸ばし、タキシードを着こなし立派な肩書を持つ男性は、かつての家庭教師に恋人がいるのかと訊いた。
「牧野先生。先生は今お付き合いをされている方がいらっしゃるんですか?それともおひとりですか?」
6歳という年の差は子供の頃なら大きなものがあるが、大人になった和彦の顔には少年の頃にはあった躊躇いというものが取り除かれていて、訊きたいことをダイレクトに訊いてきた。
そしてつくしは、別に思わせぶったつもりはないが、どう答えようかと考えているうちに、どっちつかずの顔になった。
すると今度は別の質問が飛んで来た。
「先生そんな困った顔をしないで下さい。その顔は昔も答えに窮するとしてましたよ。では別の訊き方をさせていただきます。先生は好きな男性がいるということでしょうか?」
好きな男性と言われ、その時頭を過ったのは週に一度電話で話をしようと言われた男性。
互いにプライバシーを明かすことなく電話だけのやり取りをする仲。知っていることと言えばひとつ年上という年齢だけで、顔を思い浮かべることは出来ず、のっぺらぼうでしかなかった。
だからつくしはその人のことが頭に浮かんだが首を横に振った。
「そうですか。つまり先生は恋人も好きな人もいないということですね?では先生。僕と付き合って下さい。今日こうして先生と会えたのは運命的な出会いだと思います。僕はあの頃は中学生で大学生の先生に思いを伝えることは出来ませんでした。でも今は違います。僕はまだ父の使い走りのようなものですが今は大人の男です。それに先生に対して責任を取ることを躊躇いません」
和彦は私立の男子校で中高一貫校に通っていた。
公立の学校しか知らないつくしは、お金があり頭のいい子供ばかりの男子校に通った和彦の女性に対する思いは偏った方向へ向かったのではないかと思った。
つまり身近に女性がいないことから、定期的に会うつくしに気持が傾いたのではないか。
そして15年ぶりに当時の家庭教師に再会したことで、あの頃の思いが再燃しただけで、いくら初恋の人だからといっていきなり付き合って欲しいと言い、責任を取ることを躊躇わないと言ったが、それは懐かしさがそう言わせただけで本気ではないはずだ。
いやだがもし本気だとすれば和彦の心の中にはずっとつくしがいたということになる。
「あの和彦君…..」と言いかけて、つくしは慌てて言い直した。
「いえ。若林君。いきなり付き合って欲しいとか、ええっと…..責任を取るとか….おかしいと思わない?」
「そうですか?おかしいですか?」
「うん。おかしいわよ。だって15年振りに会った人間に、それに私と若林君は6歳も年が…私が6歳年上よ?」
「先生はご自分が6歳年上が気になるんですか?僕は全く気になりませんよ」
「あのね若林君。6歳年上とか年下とかじゃなくて__」
そう言いかけたつくしが言いたいことは年齢のことではなく、15年も会ってなかった女性にいきなり付き合って欲しいという行動を言っているのだが、和彦は真剣な表情で口を開いた。
「先生。僕はこう考えます。大人になってからの年齢の差は色々なことを経験することで埋められるはずです。それに僕は自分が率直な人間だと思っています。それは周りの人間にも言われます。だから自分の気持を隠そうとは思いません。それに僕は真剣です。牧野先生僕はあなたのことが好きです」
和彦はそう言ってつくしの目をじっと見つめたが、その時、二人の間に力強い声が割って入った。

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つ*******マ様
初めまして。こんにちは^^
ブラックな司は苦手ですか?すみません。拙宅時々そんな彼がいますが、そちらは読み飛ばして下さいませ。
そしてこのつくしの気持。夜の電話の男性が道明寺司だと知った時どうするのか?
ホント人を騙すような男は嫌ですよね。
そしてきっかけは何にしても、司は自分では気づいていませんが、つくしに惹かれ始めています。
色々と手遅れにならないうちに早く気付けよ司!(≧▽≦)
え?ちょっと後悔するようにイジメて?わはは!恋は簡単には手に入らないことを学ぶ必要がありそうですよね?
えー、コメントのお返事はこちらでさせていただきますので、コメント欄のアドレスについては無視して頂いて結構です。
再度ご丁寧にお知らせ頂きありがとうございます。
そしてコメント有難うございました^^
初めまして。こんにちは^^
ブラックな司は苦手ですか?すみません。拙宅時々そんな彼がいますが、そちらは読み飛ばして下さいませ。
そしてこのつくしの気持。夜の電話の男性が道明寺司だと知った時どうするのか?
ホント人を騙すような男は嫌ですよね。
そしてきっかけは何にしても、司は自分では気づいていませんが、つくしに惹かれ始めています。
色々と手遅れにならないうちに早く気付けよ司!(≧▽≦)
え?ちょっと後悔するようにイジメて?わはは!恋は簡単には手に入らないことを学ぶ必要がありそうですよね?
えー、コメントのお返事はこちらでさせていただきますので、コメント欄のアドレスについては無視して頂いて結構です。
再度ご丁寧にお知らせ頂きありがとうございます。
そしてコメント有難うございました^^
アカシア
2018.12.11 22:55 | 編集

司*****E様
おはようございます^^
6歳年下の男性から付き合って下さい。
それも15年前に家庭教師をしていた時の教え子。モテますね、つくし。
それにしても、もし若林くんが15年の間ずっとつくしのことが好きだったとすると和彦くんは冬彦さん?←分かりますか?(笑)
それにしても、嫌ならさっさと断らなければ相手のペースに持って行かれること間違いないですよね?
そして次に声を掛けて来たのは誰?(笑)
つくし、色んな意味でモテてます(笑)
コメント有難うございました^^
おはようございます^^
6歳年下の男性から付き合って下さい。
それも15年前に家庭教師をしていた時の教え子。モテますね、つくし。
それにしても、もし若林くんが15年の間ずっとつくしのことが好きだったとすると和彦くんは冬彦さん?←分かりますか?(笑)
それにしても、嫌ならさっさと断らなければ相手のペースに持って行かれること間違いないですよね?
そして次に声を掛けて来たのは誰?(笑)
つくし、色んな意味でモテてます(笑)
コメント有難うございました^^
アカシア
2018.12.11 23:16 | 編集
