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2018
12.07

理想の恋の見つけ方 38

「高森社長63歳のお誕生日おめでとうございます。大変ご盛況のようですね?」

「いや、63歳にもなって誕生日を祝うというのもどうかと思いますが、妻がどうしてもと言うものですからつい調子に乗ってしまいましたがお恥ずかしい限りです」

高森隆三はゴルフ焼けした顔で笑い、隣に立つ妻の真理子もこぼれるような笑顔で挨拶をした。

「道明寺様。今日は本当にありがとうございます。主人はああ言っておりますけど、本当は嬉しいんですのよ?このパーティーも楽しみにしていましたの。だって若い頃なら元気で年を取るのが当たり前ですけど、ここまで来れば健康で長生き出来ることをお祝しなくては。特にうちのように年の差がある夫婦の場合それを実感しておりますの。それに今回は道明寺様がお出でになると訊いて私張り切りましたのよ?」

そう言った真理子はいったい何を張り切ったのか。
ワインレッドのドレスが眼に痛いほど鮮やかで、念入りに施された化粧とキツイ香水の匂いが鼻先まで漂った。艶やかなドレスに派手な化粧と、これ見よがしのダイヤのネックレスと揃いのイヤリングに指輪は、見る人の目を奪うが司からすればただの派手な品のない女としか映らなかった。だが本人がそれを自覚しているのか、いないのか。あだっぽさと明らかに作った甘い声は耳障りだった。

そしてその姿は性的魅力で男を虜にしようとする女の典型で、男をものにするためなら積極的な態度に出ることが当然だと考えている女だ。あきらの話では高森が入れ上げたというが、男の方が罠にかけられたことは間違いない。
特に容姿を気にする女にすれば、若いうちに自分を一番高く買ってくれる男を捕まえることが重要になる。そして高森隆三は真理子の手練手管に嵌った。だがビジネスはここ10年で目覚ましい発展を遂げたということは、あきらから訊かされたこの夫婦の性癖からして、計略が巡らされていると考えても間違いないはずだ。それは妻と他の男との行為の最中を録画し相手を脅すといったことだが、そんな女は蔑視の対象以外のなにものでもない。
そう思った時、隣に立つ女はどうなのかという事が頭を過った。

サメのこと以外考えていないように見える女だが、男はいるのか。もしそうだとすればどんなセックスをしているのか。そしてこうして仕事だからと言って他の男の腕に手を掛けていることが、やましい事をしていると感じているのか。
透明感がある白い胸元の肌は美しく、プロの手で化粧を施された顔は華やかとは言えないが、他人をくつろがせる表情を持っていた。
司は牧野つくしの男関係については調べなかった。それはそこまで興味がなかったからだが、その表情を向ける誰かがいるのか。司は早速調べさせようと思考を巡らせた。


「これ真理子よさないか。道明寺様はお前の話を訊きたくてお見えになられたんじゃない。私の誕生日を祝って下さるためにお見えになられたんだ。お前が何を張り切ろうが関係ない」

隆三は窘めるように言ったが真理子は微かに口を尖らせた。

「失礼ですがそちらの方は?」

隆三が司の隣に立つ女に視線を向け、真理子も同じように視線を向けたが、女というのは相手が余程の年寄りでない限りどんな女に対しても対抗意識を持つ。そしてその視線は明らかに相手を値踏みする視線であり、つくしの上から下までをサッと見た。
そして相手がクスクス笑いだけが取り柄の若い女ではなく、自分とさして年齢が変わらないと見ると司に視線を戻し彼の口から出る言葉を待った。

「彼女は牧野つくし。…..私のスタッフです」

「そうですか。スタッフの方でしたか....」

「ええ。そうですが何か?」

そう答えた司に高森真理子は何も言わずただ眉をつり上げたが、その様子は連れの女が司の恋人ではないことを知り下に見ているのは明らかだった。

「いえ。もしかして大切な方ではないかと思いましてね。いや、ですが違うということでしたら大変失礼致しました。それにこのようなことを訊くべきではありませんでしたな。何しろ我々のような人間のプライバシーはあってないようなところがあります。ですからホストである私がパーティーに来ていただいたお客様に対しプライバシーを侵すようなことを言っているようではホストとして失格です。軽はずみなことを申し上げてしまい大変失礼いたしました。どうぞお連れの方とごゆっくりなさって下さい」

高森隆三はそう言って司に対し不躾なことを申し上げましたと詫びたが、そんな男の心の中はお見通しだ。
単なる好奇心で訊いたとしても、牧野つくしが司の恋人だったらどうするつもりでいたのか。
それに妻の願いを叶えてやろうと思うならそれは叶わないことを知るべきだ。司は高森真理子のターゲットになるつもりはない。彼ら夫婦の性的趣向にも興味はない。
だがそう思う反面、牧野つくしの態度には興味があった。
こういったパーティーへ出席することへの不安。内気な性格とは言わないが、パーティーでの話題に困るという発言。決してオドオドとはしていないが戸惑いを隠せない様子。
それらは奥手の女を思わせる態度だ。だがそれが男を惑わすための演技だとすれば、相当したたかな女ということになるが果たしてどうなのか。
だがパーティーはこれからだ。牧野つくしがどんな態度を取るのか。
じっくりと見せてもらうつもりでいた。





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コメント
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dot 2018.12.07 06:16 | 編集
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dot 2018.12.07 12:35 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
高森真理子は何かするのでしょうかねぇ(笑)
そして司の興味は牧野つくしに向いています。しかし、つくしはこんなパーティーに興味はなく、頼まれたから仕方なくという状況です。それぞれの思惑....とまでは言いませんが、社交の場では様々な思いが交錯していることは確かなはずです(笑)

明日なんですね!そして『参戦』なんですね?(笑)
えー色々な意味での闘いなのでしょうか?
また教えて下さいね!楽しい報告をお待ちしております。
え?パワーについていけるか?きっと大丈夫ですよ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.12.07 22:39 | 編集
イ**マ様
こんにちは!お久しぶりです!^^お元気でしたか?
アカシアも年末を迎えしなければいけない事が山のようにあるんですが、まだ手を付けていません(笑)
時間はドンドン過ぎて行き、いつの間にか....という状況に陥らないようにしたいと思っています。
そしてこの司はいつつくしにハマっていくのでしょうね?(笑)
真面目な研究者はサメに食べられるのでしょうか!(笑)
見届けて下さるんですね?ありがとうございますm(__)m
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.12.07 22:48 | 編集
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