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2018
12.01

理想の恋の見つけ方 33

「あなた。道明寺さんがパーティーに来てくれるわ」

高森真理子は薄いレースのネグリジェ姿で長い黒髪を梳かしながら鏡越しに部屋に入って来た夫に言った。

「そうか。だがそれは私が持っている駅前の土地が目当てで来る。決してお前を目当てに来るのではない」

「分かってるわ。だってあの日もけんもほろろにあしらわれたんですもの」

「仕方ないだろ。彼は美作商事の専務とは違う。人妻には興味がない。いくらお前が秋波を送ろうと、その身体を見せびらかしても、なびきはしないはずだ」

「でもどんなに冷たいと言われる男でも気の迷いといったものがあるわ」

「お前はそう思うのか?だが道明寺司という男は女にだらしない男ではない。彼は女と付き合うが本気になったことはない。結婚する気はないと言われている男だ。それが人妻であるお前に興味を示すとは思えんがね」

バスローブ姿の隆三は、真理子の背後に立ち、鏡の中の妻に語りかけながら豊満な胸に目を落とした。
34歳女盛りの真理子の身体は60代の隆三にとって眩しさを感じるほど美しかった。だが既に下降線をたどり始めた隆三の身体は、二回り以上も年が離れた妻を満足させることが出来なくなっていた。
そんな夫は妻と毎日一緒に風呂に入り、その身体を舐め回すように鑑賞しながら身体を洗わせていた。そうすることが今の隆三の楽しみであり、妻が他の男と行為に及ぶ姿を見ることで性欲を満たしていた。

「真理子。私はお前が可愛い。お前が喜ぶことならどんな我儘も訊いてきた。だが道明寺司はお前が今まで相手にしてきた男とはレベルが違う。格が高い男だ。それに下手なことをすれば潰されてしまう。それをよく考えてくれ」

高森家は街の小さな不動産屋から成り上がった家だ。今でこそ高森開発と言う名前で一部上場企業として名前が知られているが、道明寺財閥とは比べものにならないことは知っている。だからこそ妻が身の丈に合わない男に手を出そうとしていることを咎めた。
だが若い妻は気にしていなかった。

「あら、あなた心配なの?大丈夫よ。そんなことにはならないようにするわ。だって私はあなたの会社の大株主でもあるのよ。会社が潰れてしまっては困るわ。それにあなたの事業がここまで大きくなったのは私がいたからでしょ?秘書をしながらあなたの愛人でいた10年の間あなたを助けてきたわ。だから分かってるつもりよ。それに私は楽しみたいだけ。何もあなたを捨てて道明寺司と結婚したいとは思っていないから心配しないで。ただあの男と寝てみたいだけよ」

隆三は真理子を溺愛してきた。
それは銀座でホステスとしてアルバイトしていた頃、はじめて寝た時この身体の虜になった。だから他の男と同じことをさせるつもりはなく、ホステスのバイトからは早々に足を洗わせ、その代わりアルバイトで手にしていた以上の金を渡していた。そして大学を卒業した女を自分の会社に入れ秘書兼愛人として傍に置いていたが、派手なその外見からは想像出来ない頭の良さを持つ女だった。そして妻となった女は夫と別れるつもりはない。他の男と寝るのは肉欲が全てであり、それを夫に覗かせるということでふたりの関係は保たれていた。

「ねえあなた。どうしたの?」

鏡の中の真理子は、自分の頭の上にある夫の顔に向かって明るい笑みを浮かべた。

「いや。何でもない。ただくれぐれも気を付けてくれ。会社を潰されてはかなわんからな」

真剣な口調で言う隆三に、真理子は笑みを浮かべたまま明るい声で言った。

「心配しないで。そんなことにはならないようにするわ。ねえ今夜はもう疲れたわ。お喋りはこれくらいにして、もう寝ましょうよ。ほらあなたもお疲れでしょ?ベッドに横になって眠りましょう」

真理子は髪を梳かすのを止め立ち上ると、隆三に身体を密着させ手を取りベッドへと向かった。







***







自分が下した決断は果たして正しいものだったのか。
道明寺副社長。道明寺司のパートナーとしてパーティーへ行く。
それは学会終了後行われる懇親会ではない。ビジネスの現場に於いてのパーティーというは、研究の成果を語り合う場所ではないことくらいつくしだって理解していた。

だが秘書からは、どのようなパーティーなのか具体的に教えてはもらえず、同伴者としてとしか言われなかったが、それが一般企業で当たり前のようにあると言われる部下は黙って上司の命令に従えばいいということなら、大学という組織も企業と同じ所がある。だからその金額の大きさに困惑し、教授の副島に相談した後5千万の寄付を受け取ったが、その5千万がつくしをパーティーに同伴者として出席させることになったと言ってもいいはずだ。
だからこれは教授の副島にも責任があるはずで、まだアメリカにいる副島にメールで事の次第を報告したが、

『いいじゃないか。これも勉強だ。楽しんできたまえ。サメ仲間以外の人間と知り合うチャンスだ。金持ちの人間の観察をすればいい。経済界のサメの周りにどんな人間が集まるのか見てきたまえ。それに新しい人脈が築ける可能性もあるぞ。牧野君の健闘を祈る』

と書かれたメールが送られてきた。

それにしても、副島研究室は何故こうものんびりしているのか。
確かに大学の教員は講義がない時は大学へ出て来ることはない。それはつくしも同じで一般企業に勤める会社員とは違い自由が効く。だからパーティーに必要なものを揃えて下さい。お支払いは不要です。話は通してありますと秘書から言われ、指定された銀座の店へ出かけたが、年配の店員は姿勢のいい姿でつくしを迎えてくれた。

「牧野様いらっしゃいませ。どうぞ。西田様からお伺いしております」

と言われれば、自分で何か適当なものがないかと探すような身の程知らずの行為をしようとは思わなかった。何しろチラリと見た洋服には値札がついていないのだから怖くて手を伸ばすことが躊躇われた。そしてその店は、いかにもお金持ち御用達の煌びやかな店ではなく、ひっそりと控えめな入口があるだけで、外に大きく開かれた窓というものがない。それは選ばれた人間だけが足を踏み入れることが出来る場所ということから、外部に見せる必要がないということなら、ここにいるつくしは場違いな場所にいるとしか言えなかった。


「あの」

「はい」

「すみません。私は西田さんから言われるがまま来たものですから、その…必要なものと言われてもよく分からないんです。つまりドレスコードがどれほどのものなのか」

つくしはただパーティーへの同伴を求められただけで、詳細については知らされていなかった。だが店員は秘書から訊いているというのだから、そのパーティーがどんなものなのか知っているはずだ。

「お誕生日パーティーだとお伺いしております。ですから華やかさがあるドレスがよろしいですね。それから夜のパーティーですからイブニングドレスになりますが、色のご指定はありませんでしたので牧野様のお好きなお色でもよろしいかと思いますが、特になければわたくしがお選びいたしますがいかがいたしましょう?」

「え?ええっと…はい。お任せしますのでお願いします」

夜のパーティーでイブニングドレスと言われても、どんなドレスを着ればいいかなど分かるはずもなく任せることにした。それに副社長の同伴となればそれなりの基準というものがあり、不釣り合いにならないようにしなければならないはずだ。だから出しゃばることはせず、ただひとつだけ確認しておかなければならないことを除いてこれは仕事だと割り切って任せることにした。

「あの。ロングドレスですよね?脚が出るドレスではないですよね?」

「ええ。脚が出るドレスではありません。お裾もあまり広がらない方が牧野様にはよろしいかと思います」

脚が出ることはないと訊きホッとすると同時に夜のパーティーということに少しだけ眉間に皺が寄りそうになった。
だがここでつくしがあれこれ考えても仕方がない。頼まれた以上、そして引き受けた以上役割を果たさなければならないが、傍に佇むだけでいい。洒落た喋りも必要ないと言われたのだから出来るはずだ。

「では牧野様。どうぞこちらへ」

そう言われ案内される方へ向かって歩き出していた。





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コメント
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dot 2018.12.01 07:06 | 編集
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dot 2018.12.01 07:25 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
高森真理子。司を狙ってますね。
確かに司はカッコいい。身体の関係を持ちたいという思いは分かりますが、実際行動を起こそうとする女性はなかなかいません。
それに夫の言う通り下手なことをすると潰されることは間違いありません。
しかし、自分に自信があり過ぎなのか。それとも怖いもの知らずなのか?(笑)真理子何かするのでしょうか。

副島教授は間違いなく楽しんでいるはずです!健闘を祈る牧野君!
さてパーティーはどんなパーティーになるのでしょうね?^^
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.12.01 21:23 | 編集
12月1日 7時25分にコメント下さったお方様へ
高森隆三と真理子に地獄をですか?
それは今後の真理子の行動にかかっているはずです。
え?つくしのドレス姿に司が惚れないかですか?
女に惚れたことがない男ですが、どうでしょうかねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.12.01 21:32 | 編集
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