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2018
11.20

理想の恋の見つけ方 26

「そう。分かったわ。西田、これからも何かあれば連絡してちょうだい」

楓は電話を切ると向かい側の席に座る人物に微笑んだ。

「これであの子とあなたの教え子は会う理由が出来たわ」

「そうか。牧野君は返事をしたか。彼女は真面目でいい子だよ。だからきっと君も気に入るはずだ」

「どうかしらね。でもあなたがそう言うならそうなんでしょう。とにかくわたくしは、あの子が結婚してくれることが望みなの。でもあの子はその気がない。普通の女性じゃ駄目なのよ」

母親というのは子供のことならお見通しとばかりに言うが、楓は積極的に子育てに携わった母親ではない。それはビジネスが忙しかったからといった理由で済まされていたが、遅れて来たしっぺ返しとでも言おうか。我が子が結婚する意志がないと気付いたのは、息子が30代になってからだ。

女性と付き合いはするが、結婚はしないと言う我が子。
それが自分の育児放棄ともいえる状況が招いた結果だとしても、道明寺という家を守るためには我が子が結婚して子孫を残す必要があった。
そしてなんとかして息子を結婚させようとしたが、一筋縄ではいかないと言われる楓の性格を受け継いだと言われる我が子は、お膳立てされることを嫌っていた。
現につい最近も自分の代わりに出席しろと命じたパーティーには、息子に相応しい女性が出席していたが見向きもしなかった。


「君ねぇ。そんなことを言うが君の周りにいるお嬢さんたちは普通の女性じゃないだろ?有名企業の経営者を父親に持つ娘さんや昔からの旧家の娘さんといった女性ばかりじゃないか。そんな女性を捕まえて普通だなんて僕の世界から言わせてもらえば彼の周りには特別な女性しかいないように思えるんだがね?」

「それはあなたがそう思うだけで、司の目から見ればそうではないの。何しろあの子は、司はそんな女性には見向きもしないんですもの。でもだからと言って女性に興味がない訳じゃないの。ただ難しいのよ」

楓の息子は女性と付き合うが決してその先を考えようとはしない。
こうなると一体何が問題なのかと思うも、30をとっくに過ぎた息子の結婚に対する価値観など知り様がなかった。

「男も女も30も半ばになれば恋愛をするのは難しいということかな?」

「わたくしは別に恋愛をしろと言ってるんじゃありません。ただ結婚して欲しいだけ。でも犬や猫じゃあるまいし無理矢理結婚させることは出来ないわ。だからあなたに頼んだのよ。副島肇さん。大学教授のあなたなら誰か紹介してくれるはずだと思ったのよ。あの司が興味を持つような女性をね」

楓はそう言って笑みを浮かべ食後のコーヒーを口に運んだ。







楓は華族の家柄で東京生まれの東京育ちだが、病弱だった幼い頃、療養のため空気の綺麗な相模湾に面した葉山の別荘で暮らしていた事があった。その時、近所に住んでいたのが今は大学教授となった副島肇だ。あの頃は肇くん、楓ちゃんと呼び合っていた二人は家の近くにある小さな神社の境内で出会った。
楓は一人でそこにいて、境内に植えられていたイチョウの木から落ちた銀杏を拾っていたが、そこに現れたのが学校帰りの肇だった。
どんな話をしたのか。何がきっかけだったのか。今となっては記憶は曖昧だが、肇は銀杏を拾う楓の傍に来て一緒に拾いはじめた。それから毎日同じ時間にふたりは神社の境内で遊ぶようになった。

「それにしてもあなたがサメを研究する大学教授になっているとは思わなかったわ。だってあなたのお父様はお医者様だったんですもの」

副島肇の父親は葉山町で開業していた内科医で、楓も何度か診察してもらったことがあった。二人はそんな幼馴染みの間柄だが、楓が東京に戻り二人の間に距離が出来ると付き合いは無くなった。だがこうして再び顔を合わせることになったのは、偶然としか言えないのだが、楓が目を通していた雑誌に副島肇の記事が載っていたことから連絡を取った。そして学会に出席するためニューヨークを訪れた副島と楓は食事をしていた。

「そうかな?僕はあの頃から海の生き物には興味があったよ。何しろ目の前は相模湾だ。潮風に当たりながら育ったんだから当然だと言えば当然だと思うな。それから今の僕の専門はサメだが初めはサメに興味はなかった。僕が興味を持ったのはエイだったんだよ。何しろ海岸には時々大きなエイが打ちあがっていて、その姿が面白くて興味を持ったんだよ。それにエイもサメも同じ板鰓類(ばんさいるい)で_」

副島はそこで笑いながら話を止めた。

「いや、すまない。ついサメやエイのことになると力が入ってしまう。今はそれよりもあの二人がどうなるかが我々には気になるところだ。何しろ牧野君は恋愛には疎い。だがもういい歳だ。だから僕としてはそんな彼女に相応しい男性を紹介したいところだが難しいんだよ。僕の秘書は彼女の友人なんだが彼女でさえ苦労しているようだ。別に男性が嫌いといった風には見えないが難しいようだ。もしかすると頭がいいことが問題なのかと思うが、司君のような男性ならそんなことも気にならないだろう。それに彼にとっても今まで周りにはいなかったタイプの女性のはずだ。だから二人は互いに興味を持つはずだと思うんだが」

教育者である副島は、自分の愛弟子である女性にそのチャンスが与えられたと思っていた。
牧野つくしはサメに対しては研究熱心だが、男という生き物についてはそうでもない。
何故そうなのかは分からなかったが、これがサメ以外の生き物に興味の対象を広げるチャンスだと考えていた。
そして幼馴染みの楓の息子である道明寺司も自分の周りにいないタイプの女性だから興味を持つ。
それは珍しいからという好奇心から来るものなのか。
だが学びたいという思いのはじまりは興味と好奇心から来る。だから人間の場合どちらか片方がそう思えば、相手にも伝わるはずだ。ただ、その思いが相手に伝わるまでが時間がかかるならその時間を与えてやればいいはずだ。

「そうね。今まで周りにいなかったタイプの人間に対してどう反応するか。あの子に財団の面接に出るように言ったのはその為ですもの。残念ながらあなたの教え子は財団の助成金を受けることは出来なかったけど、それでもあの子は牧野さんに興味を持って自ら援助しようと言うのだからいい傾向だわ」

「そう思いたいね。財団の理事長である君がわざと彼女を助成対象から外したのでなければね」





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コメント
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dot 2018.11.20 06:06 | 編集
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dot 2018.11.20 08:48 | 編集
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dot 2018.11.20 08:52 | 編集
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dot 2018.11.20 10:47 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
なんと楓さんと副島教授は幼馴染みで知り合いでした。
まさかこの二人が!(笑)
え?エレベーターを止めたのは楓さんだった?
さあ~どうでしょうねぇ(笑)何しろ楓さんは色々と仕組むことが得意ですからねぇ(≧▽≦)
でもこの二人は既に電話で繋がっていました。楓さんそこまでは知らないはずです。
さて舞台は整ったのでしょうかねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.21 21:16 | 編集
ま**ん様
おはようございます^^
そうなんです。楓さんと副島教授は幼馴染みで知り合いでした。
そして偶然にもつくしの間違い電話からふたりは既に繋がっていました。
運命は色々な出会いを用意していますが、この二人は間違い電話から始まった。
いや、エレベーター事件からでしょうか?
どちらにしても、二人は恋をする運命なのでしょうね?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.21 21:23 | 編集
み***ん様
おはようございます^^
楓さんと副島教授は幼馴染みで知り合いでした(笑)
つくしを助成対象の候補に入れたのは楓さんか?そして対象から漏れたのは楓さんのせいなのか?
とにかく、司がつくしに興味を持つことが重要でしたから、その思惑に見事に嵌った息子なのでしょうね(笑)
二人が恋に落ちるのはいつなのでしょうねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.21 21:30 | 編集
コ**リ様
幼い頃の楓は病弱だったんです!(笑)
そして銀杏を拾っていたんです!(笑)
でも銀杏は独特の匂いがありますよねぇ。よく通る歩道に街路樹としてイチョウの木が植えられている所があるのですが、秋になると踏みつぶされている銀杏が匂います(笑)
そうですか。拾われていた....でも喜ばれると沢山拾いたいですよね。いい想い出ですね?
そしてこの二人の出会いは仕組まれていた。わはは(≧▽≦)こっそりお見合い大作戦!
経済界のサメの母とサメを研究する教授。そしてやはりサメを研究する女。
サメはシーラカンスを食べるのか?それとも取り逃がすのでしょうかねぇ?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.21 21:47 | 編集
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