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2018
11.10

理想の恋の見つけ方 21

司の個人的な空間に入れる人間はごく僅かだ。
そんな男の胸の中に飛び込んで来たのは、昨夜電話で話をした女。その女が扉を開けて物凄い勢いで前へ踏み出そうとしていたところを身体で受け止めた。

「す、すみません」

と胸元でくぐもった声で謝罪をして顔を上げた女は、自分がぶつかった相手に気付くと慌てて身体を離そうとした。
だが司は少しの間自分の胸に抱いた女の身体の感触を確かめた。
骨細の身体と肉の薄い胸は見ただけで分かっていたが、こうして抱きしめてみれば尚更その細さが感じられた。
そして、「あの道明寺副社長?」とどこか戸惑い気味に言われ、司が背中に回していた腕を離すと「わざわざ足をお運びいただいてありがとうございます。ここ分かりづらい場所ですよね?迷われたんじゃないですか?お迎えに行けばよかったんですが、気が付かなくて申し訳ございませんでした」と頭を下げたが、その姿は緊張していた。

「先輩?どうしたんですか?大丈夫ですか?」

司は牧野つくしの背後に目をやったが、そこに現れた女が彼に気付くと声を上げた。

「道明寺副社長!お待ちしておりました。さあ、中へどうぞ。私は副島研究室で副島の秘書をしている三条と申します。生憎副島はアメリカへ出張しておりますが、道明寺副社長の援助の話には大変喜んでおりました。本当にありがとうございます」

三条と名乗った女は、「ほら牧野先生もそんなところでボーっとしないで早く道明寺副社長を中に御通しして下さい」と言うと言われた女は、「え?ええっと。そうね。道明寺副社長どうぞこちらへ」と言って司は研究室の中に通されたが、そこはスチールグレーのファイルキャビネットやいくつものデスク、コピー機やパソコンや冷蔵庫が置かれ、さしずめどこにでもある小さな会社のオフィスといった感じの部屋で、見回してみても、ここがサメの研究をしていることを物語るような物は見当たらなかった。だがふと壁に目を向けたとき、そこに大きな口を開けたサメの顎骨が飾られているのを見つけた。

「あれは?サメか?」

「え?」

司の視線が向けられた場所を見た牧野つくしは、「はい。そうです。あれはアオザメの顎骨標本です。アオザメは全長3メートルくらいのサメでサメの中でも高速で泳ぐ非常に活動的な種類です。そんなサメですが鰭はフカヒレの材料として加工されるんですよ」と言った。

「牧野先生。立ち話をするよりも道明寺副社長にお座りいただいて下さいね。私は直ぐにコーヒーをお持ちしますから」

「え?そうね。すみません道明寺副社長。ここは学生部屋で普段学生がいる場所ですので、私の部屋へどうぞ。そちらでお掛けいただいてもよろしいですか?」

そう言われた司は牧野つくしの後に続いて学生部屋と呼ばれる部屋よりも小さな部屋に入ったが、そこは奥の窓の傍に机があり、両サイドの壁には書棚が据えられ、中央に小さな机と椅子が置かれていた。

「すみません。狭苦しい部屋ですが、どうぞそちらにお掛けになって下さい」

司は言われるまま椅子に座ったが、牧野つくしはすぐに座ろうとはせず、先ほど入ってきたドアの外を気にしている様子が見て取れたが、司はその姿に緊張を感じ取った。
サメに対しての情熱が人一倍ある女は、男とふたりでいることに緊張するのか。それとも相手が司だからか。そしてもし牧野つくしがここで司が媚びを売るようなことをすれば、所詮この女も今まで周りにいた女たちと同じということになるが果たしてどうなのか。女たちのそんな姿は見飽きたがどうなのか。

「牧野先生。あなたもお座りになりませんか?私がここに出向いたのは、あなたの研究に対し個人的に援助をしようと決めたことを直接お話したかったからだ」

そう言われた女は、「すみません。お忙しいところをお越しいただいたのに」と言って慌てて司の正面の椅子に腰を降ろし、机の上で手を組んだ彼の顔をじっと見た。

「早速ですがあなたは財団からの助成金を受け取ることは出来なかった。だが私はあなたの研究テーマに興味を持った。財団に提出してもらった過去の論文や今後の研究についてのあなたの話は、企業で言えば出資や融資を受けるための事業計画書だ。それが優れていると思ったから私はあなたの研究に資金を提供しようと決めた。だがそれには、ひとつだけ条件がある」

女は司の条件という言葉にエッという顔になった。

「そんなに驚くことか?研究に対しある程度まとまった額を寄付した場合それに対し感謝の意を示すのが普通だと訊いたが?」

司はそこまで言って相手が先ほどの驚いた顔から少しホッとした表情になったのを見た。それは感謝の意を示せの言葉が想定されていたということだ。

「あの。道明寺副社長。その件ですが実は感謝状を贈らせていただくことや、ニューズレターや学会誌を送らせていただくことで感謝の気持を示そうかとも考えたんです。ですが私はうちの研究室で出来ることで道明寺副社長がご希望されることをと思って今日それをお訊ねしようと思っていました。何かの形でということなんですが、どうぞご希望されることがあればおっしゃって下さい」

そう言われた男は、真っ直ぐに女の目を見つめながら言った。

「そうか。それは良かった。それでは私の望みを言わせてもらおう。私はあなたの研究に興味を持った。だから私はあなたから個人的に学びたいと思っている。つまり個人教授を頼みたい」





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コメント
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dot 2018.11.10 08:18 | 編集
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dot 2018.11.10 10:42 | 編集
ま**ん様
おはようございます^^
拙宅の司。ビジネスでもエロでも真剣です(笑)
でもそれは相手がつくしだからで、他の女相手に真剣かと言えば、そうではないと思います。
運命なんですね。この二人は!(笑)知らず知らずのうちに惹かれている。
だから今の司の一番の興味はつくしという状況です。
さあ、彼は恋を見つけることになるのでしょうかねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.10 21:39 | 編集
司*****E様
こんにちは^^
扉の外にいたのは司でした。西田さんはお車でお待ちかもしれませんね?
援助するにあたり条件があると言った司。何を言い出すのかと思えば個人教授って!(笑)
そんな時間がこの人にあるのかと訊きたいこともですが、一体何を考えているのかと思うでしょうね。
そしてつくしは勿論緊張しているはずです。
ここからどんな会話がされるのでしょうねぇ。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.10 22:00 | 編集
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dot 2018.11.11 11:24 | 編集
コ**リ様
個人教授。
何故かその言葉にイヤラシさを感じてしまいました。
気を付けなければ御曹司に走ってしまいそうです!(≧▽≦)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.11 22:31 | 編集
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