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2018
11.09

理想の恋の見つけ方 20

司は会社を出ると牧野つくしが准教授を務める大学へ向かっていた。
昨夜の電話で明日サメのような人と会うと言った相手は司のことだが、サメが怖いと思わないと言った。それはつまり司と会うことを楽しみにしているといった意味なのか。
だがそれは司が個人的に援助することを決めたからなのか。スポンサーになる男に対して悪い感情はないということなのか。
どちらにしても、今日これから会うことになるが、司は牧野つくしにとっては金づるということになる。

司は、女は男を金づるとしか考えていないといった思いがあるが、それは贅沢な暮らしをしたい、自分を着飾りたいといったことが目的だが、牧野つくしの場合金の使い道はサメの研究という女なのだから他の女とは明らかに目的が違う。だから自分の身成りに気を遣うことはないのか。司は二度会ったがどちらも黒のパンツスーツ姿で化粧は薄かった。
そして昨日の話に出て来た好奇心と興味から派生したサメの研究が自分のライフワークになっているようだが、この先の研究を続けていくために手に入れようとしていた財団の助成金とは違い司の個人的援助をどう思うのか。媚びへつらうことはしないだろうが、それなりの見返りといったものを寄越すのだろうか。
もしそれがあるなら、それは一体どんなものなのかも気になるところだった。
そしてひとりの女の裏と表を見極めたいと望んだが、今のところ牧野つくしの行動は司の周りにいたどの女とも違っていた。
それは昨夜の電話も先日の面接も、どちらもさして態度の変わらない女がいるということだ。













「先輩!もうすぐいらっしゃいますよ。ちゃんと準備は出来ましたか?道明寺副社長が援助を申し出て下さることもですが、直々にこの研究室にお見えになるなんて凄いことですよ。でもせっかくお越しになられるのに、うちの大学は古いですからどうしても暗い感じがするんですよね。だからせめて緑くらい置いた方がいいと思って用意したんですけど、いいと思いませんか?」

桜子はそう言って今朝買って来た観葉植物の鉢の向きを変えていたが、研究室は間違ってもどこかのティールームのような雰囲気にはならなかった。だが部屋にひとつ緑があるだけで随分と雰囲気が変わったような気がした。
そして桜子は、副社長にお出しするコーヒーはブルーマウンテンですからね、と教えてくれたが、普段インスタントが主流の研究室にもコーヒーメーカーが置かれていて、たまにだが豆から淹れることもあった。

「それから道明寺副社長が寄付をして下さったことに対する研究室からの感謝の気持ですが、どう示すか決まりました?」

「うん….」

「もう先輩。うんじゃなくて、考えが纏まらなかったんですか?昨日何やってたんですか?ちゃんと考えて下さいって帰る前に言ったじゃないですか」

桜子は、そう言って鉢植えの向きが気に入らないのか、やっぱりこっちの方が葉がキレイに見えると言って鉢を動かしていた。

寄付行為に対してのお礼の気持を表す。
それは感謝状だったり、ニューズレターを送るといったことだったりするが、研究室が過去に寄付を受けたことはなく、感謝状を贈るなら副島研究室副島教授の名前で出せばいいのか。
それとも牧野つくし准教授の名前で出せばいいのか。
そして道明寺副社長はニューズレターや学会誌の送付を希望するだろうか。希望するなら送るが望まないなら何か他の方法で感謝の気持を示さなければと思うも、一体何をすればいいのか思いつかなかった。それに昨日は別のことが頭にあってお礼については失念していた。
こうなったらお礼は何がいいですかと本人に訊くのが一番いいはずだ。

「ねえ桜子。必要のない物をもらっても迷惑だろうし本人に訊いたら駄目?」

「あ、それいいかもしれませんね。経済界のサメと言われる道明寺副社長が何を希望されるのか想像もつきませんけど、寄付して下さるんですから出来るだけ寄付者の希望に沿うべきだと思います。でもハンサムな上にお金持ちの男性がうちの研究室に欲しいものがあるとは思えませんが、例えばサメの歯が欲しいとかそのくらいの希望なら簡単なんですけどね」

経済界のサメが本物のサメの歯が欲しい?
とてもそんなことを望むような男性には見えなかったが、金持ちは気まぐれだと言った桜子の言葉を借りれば、もしかすると道明寺副社長という男性は少し変わった嗜好の持ち主なのかもしれない。
そしてサメの歯だが、深海ザメではないがホホジロザメの歯なら今ここにあるが、サメ界のスターと呼ばれるホホジロザメの歯なら経済界のサメと呼ばれる男性にはピッタリかもしれない。

「それより先輩。道明寺副社長はここの場所がお分かりになると思います?うちの研究室かなり奥まった場所にありますけど大丈夫でしょうか。秘書の方はここを訪ねることで何もおっしゃらなかったんですよね?でもここ。かなり分かりにくいと思いますけどお迎えに行かなくても大丈夫ですか?」

そうだ。それは確かに言える。
つくしが所属している副島研究室は、訪れたことがない人間にとっては非常に分かりにくい場所にある。それにただでさえ大学の構内は分かりにくく、迷路のようだと言われていた。
そうなるとつくしが気遣いをしなければならなかったはずだ。せめて分かりやすい場所まで迎えに行くという気遣いが。

「ごめん。桜子。私ちょっと行って来るから」

「え?行くってどこに?」

「だから道明寺副社長を迎えに行くのよ」

そして時計が約束の時間である午後1時を指すと同時に研究室の扉を開け廊下へ出たが、そこにいた人物に思いっきりぶつかっていた。





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コメント
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dot 2018.11.09 06:07 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
研究室に自ら足を運ぶ男。
面接でもなく電話でもなく生身といっては言葉が違いますが、研究室の牧野つくしはどんな女なのか。
研究室は彼女のテリトリー。どんな女がいるのでしょうね?
今のところ裏表があるような女には見えませんが、司は女は男を金づるだと思っている。
女は信じられないといった思いがありますが、つくしを知ることでその考えを確かにするのか。それとも?
さて、つくしがぶつかったのは誰なのか。司は時間通り現れたのでしょうか?
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.09 23:03 | 編集
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dot 2018.11.11 11:13 | 編集
コ**リ様
経済界のサメにサメの歯をプレゼントする。
いいかもしれませんが、サメはそんなものを望んではいないはずです。
え?桜子の観葉植物の下りが?(笑)
観葉植物は時々向きを変えてあげないと生育が偏りますからねぇ。
それに鉢植えも生け花と同じで正面がありますから、桜子は一番キレイに見える角度で調整しています。
そしてきっと葉っぱを拭いているはずです。

拙宅の桜子さん。結構な庶民感覚をお持ちです。
現実主義者ですから、足元からしっかり鍛えている。そんな女性ですね(笑)
でも彼女のすることも時に笑わせてくれます(笑)
そしてつくしの傍には、いつもそんな桜子がいるようです。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.11 22:29 | 編集
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