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2018
11.05

理想の恋の見つけ方 17

高圧的で尊大な態度を取られるかと思った。
だが道明寺副社長の態度はそうではなかった。
そして研究室の経済的未来を左右するのが財団から助成金が貰えるかどうかということだが、届いた手紙に書かれていたのは、誠に申し訳ございませんが__という文字。
その文字が意味するのは、深海ザメの研究に対する助成金を手に入れることが出来なかったということだ。



「そうですか。サメの研究をオーガナイズ出来ると思いましたが、残念ですが仕方がありませんね。他にも大勢の研究者が申請をしていたはずです。書類審査をパスしただけでも大したものです。研究資金はいくらあってもありがたいものですが、これで色々と夢に描いていたものは消えてしまいましたけど、また次がありますから。それに研究助成事業を行っている財団は道明寺財団だけじゃありませんし、来年また別の財団に申請すればいいじゃないですか。一度くらい駄目だったからといって次も駄目になるとは限りませんから」

つくしは研究室の自分の席で桜子の励ますような言葉を聞きながら手にしていた文書を折り畳むと封筒に入れたが、その封筒を手渡された時、差出人から中身はあの日の結果だと分かっていて、結果を見るまで頭を過ったのは大丈夫という思いと、駄目かもしれないという思いが半々だった。

それにしてもまさかこんなに早く結果が通知されるとは思わなかったが、他の申請者の面接が全て終了した時点である程度の目星はつけられていたのだろう。
つまりそれは一度目の面接が流れてしまった、つくしの面接をしたものの、実はその時点で既に助成対象者は決まっていて、つくしの面接は形だけのものだったということだ。
だから面接を受けて3日目の通知という早さになったのだ。それなら面接を受ける必要はなかったのではないかと思うも、それでは公平性を欠くということで、つくしの面接となったのだろう。


「はあ…..それにしても残念ですよね。道明寺財団からの助成金。夢と消えちゃいましたね。あ、でも道明寺副社長には会ったんでしたよね。こうなったら目の保養が出来て心に栄養を与えることが出来たということで、それだけでもいいと思わなきゃ仕方がないですね?」

そうだ。桜子の言う通りで終わったことは仕方がない。
だが道明寺司という男のことは、桜子ほど興味がないのだから目の保養とか心に栄養という言葉はつくしには関係ないものだった。

「それにしても、現実問題としてこの先のことを副島教授と相談した方がいいですね。残念ながら愛弟子は研究費を取り損ねました。来年度の研究室の予算は大学から支給されたものだけです。その中でやりくりするしかありませんからね?それともこうなったらどこかの企業に寄付をお願いする、研究費を出してもらうようにお願いしてみますか?環境問題に力を入れている企業にスポンサーになってもらいますか?それとも医薬品でもサプリメントでもいいです。サメの遺伝子に興味がある企業。この際なんでもいいですからお金を出してくれる企業を探すしかないですね」

桜子はつくしが手にしている道明寺財団からの残念なお知らせが入った封筒に目を落とし、ため息をついた。

「あのね桜子。そんなに簡単に言うけど、実際にはそう簡単に行かないでしょ?」

企業にスポンサーになってもらえれば、それは大変助かる話しだ。
だがそれは見返りが期待できる分野。例えば医薬品といった分野ではよく訊く話だが、サメの生態の研究に金を出そうという企業がそう簡単に見つかるとは思えなかった。

「ええ。そうです。分かってます。だってiPS細胞でノーベル賞を貰った教授ですら100円からでもいいからと自らの名前で寄付をお願いしてるんですよ?それに自らマラソンをして寄付を集めるくらい日本の大学の研究費は削られまくりなんですから、この際うちも何かしませんと研究は先細ってしまいますからね」

まさに桜子の言う通りで大学の研究費は年を追うごとに削られていて、研究を続けるためには何らかの策を講じる必要があった。
だが何をどうすれば研究費を捻出できるのか。企業から寄付を募ると言ってもノーベル賞受賞者でさえ大変なのに、サメの研究にそう簡単に寄付が集まるとは思えなかった。それに果たしてサメに魅力を感じる人間がいるのか。そこが一番の問題だ。

「道明寺副社長は経済界のサメと言われる人物ですから、そんな人がサメに興味を持ってくれるといいんですが、やっぱり無理でしたね。それに道明寺副社長は冷静で非感傷的な男だと言われてますから、利益が見込まれない研究に個人的な寄付をしてくれるとは思えませんし、どこかの風変りな篤志家からの寄付を待つと言ってもそんな人がいるかどうか」

桜子が喋っているあいだ、つくしは憂鬱な気持ちで道明寺財団の封筒に目を落とし考えていた。
今まで自分の主張を声高にすることはなかった。
だが敗北主義者的な考えの持ち主ではない。信念を持ちポジティブさがモットーで逆境に立たされても立ち向かってきた。だがお金の問題となると信念がどうのと言ってはいられないのが現実だ。

「私の家は上流社会との縁故を持ちますけどサメの研究に寄付をしそうな人を探すのは簡単ではありませんから。でも何とかツテを頼って__はい。副島研究室です」

上流社会との縁故を持つ桜子は、話の途中で鳴り出した電話に出たが、本人から訊いた話によると、三条家は華族の家柄でかつては大きなお邸を構えていたそうだ。そして世が世ならお姫様だった。だが今ではそれは過去の栄華で私はこうして大学で秘書として働いていますと。でも遠い親戚には会社を経営している人間もいますからと言ったことがあった。

「___ええ。はい。そうですが___はい。___ええっ!?それ本当ですか?」






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コメント
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dot 2018.11.05 07:20 | 編集
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dot 2018.11.05 07:41 | 編集
ふ*******マ様
おはようございます^^
財団からの通知は残念なお知らせとなりました。
恋が始まらない(笑)本当にそうですよねぇ(笑)
研究肌の女つくしと現実に生きる女桜子。
二人はいいコンビですか?(笑)
そしてつくしは残念な話をMr.X氏にするのか?
研究室に掛かってきた電話の相手は?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.05 22:20 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
財団から届いた残念なお知らせ。
落ち込みながらも次なる研究費集めの方法を考えなければなりません。
研究一筋の女は、そういった方面はすぐに頭が回りませんが、さすが桜子!
ああでもない。こうでもないと考え始めました(笑)
そんな時に掛かってきた電話は誰からでしょうねぇ?(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.11.05 22:27 | 編集
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