せっかくこの国で週末を過ごすのだからと西田は二人で観光でもしてきたらどうかと言った。
つくしは観光でもしないかと誘われたとき、どうしようかと悩んだ。
「あの・・あまり気が進まないんですが・・」
つくしは司に言われたことをずっと気にとめていた。
好きだと言われてそのことを意識しないで過ごすほどの無神経さは持ち合わせていない。
司はいろいろと口実を探して断ろうとしているつくしを見ながら彼女にとまどいの表情が浮かんでいるのを見た。
司にはそれがまたなんとも初心で可愛らしく見えた。
他の女なら俺が声をかければケツ振ってついて来る雌ブタばかりだ。
「俺と観光するのが心配なのか?」
司はそう言ってつくしの答えを待った。
「・・・あの」
堅苦しく身構えているつくしに司は言った。
「牧野、俺の気持ちは分かっているとは思うが、おまえに今すぐどうこうしろとは言ってない。俺と一緒に今日一日を過ごして俺のことを少しでも知ってもらえるチャンスだと思っておまえを誘った」
つくしはそれでもやはり躊躇していた。
正直、この人のことを知りたいと思っている。
「でも・・・」
「俺と一緒だと・・心配か?」
司はつくしが何かを心配しているのではないかと思った。
俺がいきなり襲いかかるとか思ってんじゃねぇか?
確かにちょっとフライングしちまったけどよ。
「心配?」つくしは声をうわずらせていた。
「あの、いえ・・・」
「じゃあ、と、友達として一日付き合ってくれないか?」
司はなだめるような言い方をした。
「友達・・としてですか?」
「ああ、そうだ。上司と部下じゃなくて友達としてだ。牧野、と、友達になってくれないか?」
司は慌てて言い添えた。
あきら、戦略は方向転換を余儀なくされたぞ。
いい歳してお友達だぞ?
ここ数カ月牧野と仕事をしてきて真面目で賢い女であることは分かっていたけど
堅物すぎるぞ。
俺が本気で行けばどんな女でも手に入るはずだなんて言われたが、あきらが言ってた鉄パンって言うのはこう言うことなのか?
けど俺はどんなに厄介な案件でも、難癖つけてくるクライアントでもアグレッシブに取り組んできた。問題は難しいほど、山は高いほど乗り越えた先に大きな喜びが待っているもんだろ?
今の俺にはいい仕事をしたいと言う思いと牧野を攻略すると言う思いは同じくらいだ。
「・・ずるい言い方ですね?」
つくしは笑いを含んだように言った。
「と、言うことは友達になってくれるってことか?」
「・・はい」つくしは小声で言って頷いた。
マジか!
「そうか!」
司はつくしを説得できた喜びにほほ笑みを浮かべた。
「友達なら呼び方も変えなきゃな。支社長なんて呼ばれると仕事してるみたいだしな。
名前で呼んでくれてもいいぞ?」
司は嬉しそうに言った。
「・・道明寺さん?」つくしは戸惑いながらも呼んでみた。
「そんな堅っ苦しいんじゃなくて・・・もっと・・」
司は体がうずくような喜びで言った。
「滋だってよ、俺のこと司って呼び捨てなんだし牧野も司って呼んでもいいぞ?」
司は高揚した気分で言った。
「いえ、それはいくらなんでも・・」つくしは頬を染めていた。
「と、とにかく今日は観光することに決まったってわけだよな?」
司は決定したとなったら行動するのは早かった。
******
金持ちの人間はやはりお金と時間の使い方が違う・・・
二人の乗ったジェットは2時間でこの国第四の都市でもある州都に到着していた。
ここは彼らが滞在している場所とは異なり、夏は暑く乾燥しているが冬は比較的暖かい土地だ。ここはこれから夏を迎えようとしていた。
そして空は抜けるような青さだった。
つくしから見た司は新鮮だった。
いつもビジッときめたスタイルしか見たことがない。
だが今日はいつもの洗練された雰囲気とは異なりこうして年相応の青年らしい姿をした彼は実にカッコいい。
彼はサングラスを取り出すとかけていた。
ジーンズとポロシャツスタイルの若々しい装いで、乱れた髪がセクシーだった。
まるでモデルみたい・・・
つくしはそんな彼のそばで自分の格好を気にしていた。
空港で待っていたのは跳ね馬のエンブレムが付いた真っ赤なコンバーチブルだった。
つくしは大方の予想はついたが、好奇心から聞いてみた。
「この車、道明寺さんの?」つくしはちらりと司を見た。
「ああ。今朝買った」と気軽に言った。
「か、買った?け、今朝?」つくしの声が思わず裏返った。
「ああ。電話して買った」といって唇の両端をあげると笑った。
濃いサングラスで目を隠した司はつくしの一挙一動に目を凝らしていた。
つくしは驚いた様子で車をまじまじと見つめていた。
彼はそんなつくしから一時も目が離せなくなっていた。
司はつくしをエスコートすると助手席のドアを開けた。
助手席に座ったつくしは司が車の前をまわって運転席に着くのをぼんやりと見ていた。
女性をさりげなくエスコート出来るなんて、やっぱりこの人はお金持ちの生まれ育ちだと思っていた。
つくしはなにか話しをしようと思い司に聞いた。
支社長は?と言いかけて司にジロリと睨まれ慌てて言い直した。
「道明寺さんはこの街に来たことがあるんですか?」
「ああ、一度な」
そう答えると司はエンジンをかけギヤを入れ替えるとアクセル踏んだ。
派手なエンジン音がして車は走り出したが司の運転はトップスピードを出すような派手な運転ではなかった。
車は長い直線の海岸線を南へと下っていた。
海から吹いてくる風が髪をなぶり、頬を撫でる。
水面は太陽の光が反射してキラキラと輝いて見えた。
そして海岸線に打ち寄せる波の音が聞こえる。
「なあ、牧野、腹減ってるだろ?」
つくしはその問かけに笑い出すところだった。
「少しだけですけど・・」
「滋から聞いてた。おまえすげぇ食うって」
「もうやだ、滋さんたらそんなこと・・」
つくしは笑いながらも認めていた。
「どうしてみんな私を見るとお腹がすいてないかばかり聞くんでしょうね?」
つくしは明るく笑いながら言葉をついでいた。
司の記憶のとおりの店はその場所にあった。
司はインド洋に面した小高い丘のうえにあるレストランへと向かって車を走らせていた。
そしてつくしが明るく笑っている姿をみて、司は今の自分に必要なのは牧野が自分に気を許すようになるまで辛抱強く、節度を保ち、ユーモアを持って接することだと思った。

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「あの・・あまり気が進まないんですが・・」
つくしは司に言われたことをずっと気にとめていた。
好きだと言われてそのことを意識しないで過ごすほどの無神経さは持ち合わせていない。
司はいろいろと口実を探して断ろうとしているつくしを見ながら彼女にとまどいの表情が浮かんでいるのを見た。
司にはそれがまたなんとも初心で可愛らしく見えた。
他の女なら俺が声をかければケツ振ってついて来る雌ブタばかりだ。
「俺と観光するのが心配なのか?」
司はそう言ってつくしの答えを待った。
「・・・あの」
堅苦しく身構えているつくしに司は言った。
「牧野、俺の気持ちは分かっているとは思うが、おまえに今すぐどうこうしろとは言ってない。俺と一緒に今日一日を過ごして俺のことを少しでも知ってもらえるチャンスだと思っておまえを誘った」
つくしはそれでもやはり躊躇していた。
正直、この人のことを知りたいと思っている。
「でも・・・」
「俺と一緒だと・・心配か?」
司はつくしが何かを心配しているのではないかと思った。
俺がいきなり襲いかかるとか思ってんじゃねぇか?
確かにちょっとフライングしちまったけどよ。
「心配?」つくしは声をうわずらせていた。
「あの、いえ・・・」
「じゃあ、と、友達として一日付き合ってくれないか?」
司はなだめるような言い方をした。
「友達・・としてですか?」
「ああ、そうだ。上司と部下じゃなくて友達としてだ。牧野、と、友達になってくれないか?」
司は慌てて言い添えた。
あきら、戦略は方向転換を余儀なくされたぞ。
いい歳してお友達だぞ?
ここ数カ月牧野と仕事をしてきて真面目で賢い女であることは分かっていたけど
堅物すぎるぞ。
俺が本気で行けばどんな女でも手に入るはずだなんて言われたが、あきらが言ってた鉄パンって言うのはこう言うことなのか?
けど俺はどんなに厄介な案件でも、難癖つけてくるクライアントでもアグレッシブに取り組んできた。問題は難しいほど、山は高いほど乗り越えた先に大きな喜びが待っているもんだろ?
今の俺にはいい仕事をしたいと言う思いと牧野を攻略すると言う思いは同じくらいだ。
「・・ずるい言い方ですね?」
つくしは笑いを含んだように言った。
「と、言うことは友達になってくれるってことか?」
「・・はい」つくしは小声で言って頷いた。
マジか!
「そうか!」
司はつくしを説得できた喜びにほほ笑みを浮かべた。
「友達なら呼び方も変えなきゃな。支社長なんて呼ばれると仕事してるみたいだしな。
名前で呼んでくれてもいいぞ?」
司は嬉しそうに言った。
「・・道明寺さん?」つくしは戸惑いながらも呼んでみた。
「そんな堅っ苦しいんじゃなくて・・・もっと・・」
司は体がうずくような喜びで言った。
「滋だってよ、俺のこと司って呼び捨てなんだし牧野も司って呼んでもいいぞ?」
司は高揚した気分で言った。
「いえ、それはいくらなんでも・・」つくしは頬を染めていた。
「と、とにかく今日は観光することに決まったってわけだよな?」
司は決定したとなったら行動するのは早かった。
******
金持ちの人間はやはりお金と時間の使い方が違う・・・
二人の乗ったジェットは2時間でこの国第四の都市でもある州都に到着していた。
ここは彼らが滞在している場所とは異なり、夏は暑く乾燥しているが冬は比較的暖かい土地だ。ここはこれから夏を迎えようとしていた。
そして空は抜けるような青さだった。
つくしから見た司は新鮮だった。
いつもビジッときめたスタイルしか見たことがない。
だが今日はいつもの洗練された雰囲気とは異なりこうして年相応の青年らしい姿をした彼は実にカッコいい。
彼はサングラスを取り出すとかけていた。
ジーンズとポロシャツスタイルの若々しい装いで、乱れた髪がセクシーだった。
まるでモデルみたい・・・
つくしはそんな彼のそばで自分の格好を気にしていた。
空港で待っていたのは跳ね馬のエンブレムが付いた真っ赤なコンバーチブルだった。
つくしは大方の予想はついたが、好奇心から聞いてみた。
「この車、道明寺さんの?」つくしはちらりと司を見た。
「ああ。今朝買った」と気軽に言った。
「か、買った?け、今朝?」つくしの声が思わず裏返った。
「ああ。電話して買った」といって唇の両端をあげると笑った。
濃いサングラスで目を隠した司はつくしの一挙一動に目を凝らしていた。
つくしは驚いた様子で車をまじまじと見つめていた。
彼はそんなつくしから一時も目が離せなくなっていた。
司はつくしをエスコートすると助手席のドアを開けた。
助手席に座ったつくしは司が車の前をまわって運転席に着くのをぼんやりと見ていた。
女性をさりげなくエスコート出来るなんて、やっぱりこの人はお金持ちの生まれ育ちだと思っていた。
つくしはなにか話しをしようと思い司に聞いた。
支社長は?と言いかけて司にジロリと睨まれ慌てて言い直した。
「道明寺さんはこの街に来たことがあるんですか?」
「ああ、一度な」
そう答えると司はエンジンをかけギヤを入れ替えるとアクセル踏んだ。
派手なエンジン音がして車は走り出したが司の運転はトップスピードを出すような派手な運転ではなかった。
車は長い直線の海岸線を南へと下っていた。
海から吹いてくる風が髪をなぶり、頬を撫でる。
水面は太陽の光が反射してキラキラと輝いて見えた。
そして海岸線に打ち寄せる波の音が聞こえる。
「なあ、牧野、腹減ってるだろ?」
つくしはその問かけに笑い出すところだった。
「少しだけですけど・・」
「滋から聞いてた。おまえすげぇ食うって」
「もうやだ、滋さんたらそんなこと・・」
つくしは笑いながらも認めていた。
「どうしてみんな私を見るとお腹がすいてないかばかり聞くんでしょうね?」
つくしは明るく笑いながら言葉をついでいた。
司の記憶のとおりの店はその場所にあった。
司はインド洋に面した小高い丘のうえにあるレストランへと向かって車を走らせていた。
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Comment:1
コメント
H*様
金持ちとドライブいいですね(笑)
勿論ドライバーは司くんで!
先日お近くまでお邪魔していました!(゚Д゚;)
行先は話題になった某所です。
もしかしてH*様が思い浮かべた海沿いの道は私も走った道ではないでしょうか?
はい、レンタカーを借りました。
あの時は空も海も荒れていましたが、やはり水面はキラキラと輝いていました。
司!真っ赤なコンバーチブルでドライブに連れて行って!(*´Д`)
お声を代弁させて頂きました。
コメント有難うございました(^^)
金持ちとドライブいいですね(笑)
勿論ドライバーは司くんで!
先日お近くまでお邪魔していました!(゚Д゚;)
行先は話題になった某所です。
もしかしてH*様が思い浮かべた海沿いの道は私も走った道ではないでしょうか?
はい、レンタカーを借りました。
あの時は空も海も荒れていましたが、やはり水面はキラキラと輝いていました。
司!真っ赤なコンバーチブルでドライブに連れて行って!(*´Д`)
お声を代弁させて頂きました。
コメント有難うございました(^^)
アカシア
2015.11.11 22:41 | 編集
