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2018
10.17

理想の恋の見つけ方 3 

「それで、注文したはずの豚肉とニラともやしの春雨炒め卵乗せが届けられなかったことがショックだったんですね?」

「そうなのよ。確かに注文したの。でもね、おかもちの中から出て来たお皿の中に豚肉とニラともやしの春雨炒め卵乗せが無かったの。注文した時点で口もお腹の中も豚肉とニラが溢れていたのに、注文が伝わってなかったのかもしれないわ。あの店は最近中国から来た留学生がアルバイトしてるんだけど、多分彼が聞いたのね。だから聞き取れなかったのかもしれないし、最後まで確認しなかった私が悪かったのね」

あの時は注文時間がギリギリで慌てていたこともあり、注文だけ伝えるとすぐに電話を切ってしまった。それに『豚肉とニラともやしの春雨炒め卵乗せ』はかなり長い名前のメニューだから、外国人留学生のアルバイトには聞き取れなかったのかもしれないと思った。

「でもお腹いっぱい食べたんですよね?それならいいじゃないですか。その豚肉とニラともやしの春雨炒め卵乗せが無くてもお腹は膨れたんですよね?それよりエアコンが壊れていたって方が重要じゃないですか?修理してもらったんですか?」

2週間の船の生活から解放され、自宅マンションに戻ったとき、部屋の蒸し暑さに辟易した。
エアコンのスイッチを入れたが送風口からは冷気は吐き出されなかった。だから翌日修理を呼んだ。

「うん。メーカーも丁度季節の端境期で割と暇だったみたいで、土曜の朝に電話をしたら翌日の日曜の午後には来てくれたから助かったわ。とにかく買い替える必要はないみたいで、持って来てくれた部品だけで修理が出来たみたい。だから大幅な出費は抑えられたわけ」

帰宅した翌日の土曜は荷物の整理をしながら家事をこなした。
そして日曜はエアコンの修理業者を待ちながら、仕事を片付けていた。

「そうですか。じゃあお家のことは、それでいいとして、今日から本業の方もお願いしますね。例の研究費の件。頑張って勝ち取って下さいね。何しろうちの学部はマイナーですから、研究費は少ないんです。だから研究を進めるためにも研究費獲得は急務です。それを充分理解して下さいね。それにうちの教授はアカデミックすぎて世間に疎い人で研究費を集めるのも下手です。だから准教授の先輩が頑張らなきゃいけないんですからね」

つくしの勤務する大学にある海洋学部。
その中の海洋生物学科で准教授を務めるつくしに課せられたのは研究費の捻出だ。
そしてつくしのことを先輩と呼ぶ三条桜子は、高校時代の後輩で、頭の良いつくしが国立大学へ進んだのに対し、彼女はお嬢様大学を卒業したが、何故か国立大学の教授の秘書として就職をした。そして教授が出張で留守の研究室でのふたりは、こうして一緒に弁当を食べていた。

「分かってるわよ桜子。でも桜子みたいなしっかりした女性が教授の秘書で本当に良かったわ」

「そうでしょ?副島教授は浮世離れしてるというのか、世間に疎いというのか。海の中のことばっかり考えてる人ですからね。それに自分が死んだら水葬にしてくれって言ってますよ。ほら、昔は長い船旅で亡くなった人がいるとご遺体を海に流すことがあったじゃないですか。まあ今でもたまにありますけど、それは事情によるじゃないですか?でも教授は本気でそれを考えてますからね。私の身体はサメのエサにしてくれって本気で言ってますよ?教授はそれが死体遺棄罪にあたるとか考えていませんし、奥様にしてみればバカも休み休み言いなさいってことらしいですけど、頭がいい人は何を考えているのか凡人には分からないことが多いですから」

確かに極端に頭がいい人間は何を考えているか分からないことが多い。
だがそれは、脳の使い方が違うからだと言われているが、つくしが所属する研究室の副島という男性教授は61歳になるが日本に於いてのサメ研究の第一人者と言われていて、若い頃からサメ一筋だった。
そしてつくしも日本近海にいる深海ザメの生態を研究していた。
実はあまり知られていないが日本近海、特に駿河湾には多くの深海ザメがいて、その生態には謎が多いと言われていた。

だがサメの研究は、あまりにもマイナーなため研究費は少なかったが、研究を進めるためには資金が必要だ。しかし国が主体の研究補助金は競争率が高く、得られる見込みはない。それならと、ある企業の財団からの援助に望みをかけた。

それが道明寺財閥によって設立された道明寺財団。
国内の大学に籍を置く若手研究者を対象に、研究活動の助成をすることを目的に設立されたその財団が募集する研究助成事業に応募した。40歳以下の若手研究者が対象で、他にもある条件はクリアしていた。
だが問題は研究対象が深海ザメということに、どれくらい興味を示してくれるかということだ。だから申請書には心を込め記入した。

『深海ザメは深海の食物連鎖の中でトップにいる生き物。サメは頂点捕食者で彼らを食べる生き物はいない。だからサメの身体の中には有毒な化学物質が濃縮されて溜まりやすく、有機塩素系化合物が高濃度で検出されている。つまり深海ザメの生態を調べることで、綺麗だと言われる深海の汚染について知ることが出来る』と。そして過去に書いた論文を添えた。

「それで牧野先輩。明日は面接に行かれるんですよね?丸の内にある道明寺ビル。あのピカピカのビルに面接に行くんですよね?」

丸の内にある道明寺ビルは、別名道明寺タワーと呼ばれる建て替えられたばかりの超高層ビルで輝いて見えた。そしてそのビルの中に道明寺財団はあった。

「そうなのよ。封筒を見た時はまさかって思ったけど、それでもやったって思ったわ」

海洋調査に行く前に届いた書類には、書類での審査はパスしたと書かれていた。
だが申請書類だけでパスしたとは思っていない。当然詳しく調べられたはずで、面接まで行けることが嘘のようだと思っていた。
そして明日は道明寺ビルにある道明寺財団で直接自分の熱意を伝えることが出来る。

「牧野先輩….いえ。牧野准教授。明日は頑張って下さいね。それからあの道明寺財閥が設立した財団です。道明寺ホールディングス本社と同じビルの中にあるんですから、もしかすると道明寺司に会えるかもしれませんよ?」

道明寺司。
道明寺ホールディングス副社長のその名前を知らない人はいないと言われるほど知名度がある経済人で、その姿は雑誌やテレビで見たことがあった。それに道明寺財団の研究助成事業へ申請を出すとき、プロフィールを見た。英徳学園出身でコロンビア大学卒業。道明寺ニューヨークで働きながら、ハーバードビジネススクールでMBAを取得。それから数年間ニューヨークで働き、その後日本に帰国と書いてあった。

「だって財団の理事に名前があるんですから、彼も面接に現れるかもしれませんよ?何しろサメの研究をしている女なんてそうはいませんから珍しいから見てやろうって現れるかもしれませんよ?それに牧野先輩はご存知ないかもしれませんが、道明寺司って経済界のサメだって言われてますから。ある意味研究対象になるかもしれませんね?」

「なにそれ?道明寺司ってサメ並の脳しかないってこと?」

サメは脊椎動物の中で体重と脳の重量比率が最も小さく、サメの脳と言えばバカの例えとして使われるが、道明寺司はバカなのか?もしかしてあの経歴は嘘なのか?

「違います!そうじゃなくて行動がサメだってことです。つまりビジネスに於いては凶暴だってことです。それに女性に対しても冷たいって評判なんです。でも噂はありますから決して女性が嫌いって訳でもなさそうなんですよ。とにかくあのクールな外見は一見の価値があります。だから先輩。もし会うことがあれば、しっかり見て下さいね。二度と会うことはないと思いますから」





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コメント
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dot 2018.10.17 05:49 | 編集
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dot 2018.10.17 07:48 | 編集
ま**ん様
サメ並の脳しかないと思われた司(≧▽≦)
もしそんなことを言われたと知ったらどんな顔をするでしょうね。
そして、ふたりの接点はすぐそこにあるようですが、お互いが研究対象となる日が来るのでしょうか(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.10.17 21:30 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
慣れないスマホ操作でもあり、自分が電話番号を間違えていたとは気づいていないつくし。
お腹が満足すればそれで良しということですね(笑)
研究費を捻出するため道明寺財団の研究助成事業へ申請書を出しました。
書類審査は通過したようです。良かったですねぇ。
司のことをサメ並の脳みそしかないと思ったつくし(笑)
そんな男と出会ったとき、つくしは何を思うのでしょうね?
ふたりのご対面を楽しみに待ちたいと思います。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.10.17 21:45 | 編集
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