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2018
10.16

理想の恋の見つけ方 2

司は無表情にスマホを見つめていた。表情はまったくなかったはずだ。
電話に出た途端、4丁目のマキノと名乗った相手に豚肉とニラともやしの春雨炒め卵乗せをお願いしますと言われ思考の焦点が合わなかった。
いったいこれは誰からの電話なのか。
転送されてきたこの電話番号を知る人間は限られている。ましてや女でこの番号を知っているのは姉だけ。それなら間違い電話ということになるが、相手は司が名乗らなくても勝手に喋り、こちらが通話終了のボタンにタッチする間もなく一方的に電話を切り間違いだと言う間もなかった。

「おい、司どうした?何か問題でもあったのか?」

「いいや。単なる間違い電話だ。どっかの女が豚肉とニラの料理を頼んで来た」

「豚肉とニラか?そりゃ多分中華のメニューだな。それにしてもお前、いつから中華料理屋始めたんだ?それとも盗聴されてもいいように何かの暗号か?」

あきらは半分冗談のつもりで言ったが、親友の顔はムッとしていた。

「あきら。これはプライベートなスマホだ。盗聴防止機能が付いているのはビジネスの電話だ。それにこの電話は転送されて来た電話だ。その番号を知ってる人間は秘書と姉ちゃんだけだ」

女が掛けてきた電話番号は、司の自宅の電話番号。必要ないと思われた固定電話だが、緊急時の回線だと言われ取り付けてあった。

「そうか。ま、お前のところは色々と大掛かりなビジネスを手掛けてるから大変だよな。ビジネスの世界は食うか食われるか。伸るか反るかはしょっちゅうだ。チャンスは逃さない。それが会社を発展させていくことになるからな。ライバルがいないと思われてるお前でも油断は出来ないってことだよな?」

司は幼馴染みであり美作商事の専務のあきらと車で移動中だった。
そしてふたりが一緒にいたのは、同じパーティーに出席して来たからだ。
どうでもいい退屈なパーティーでも顔見せ程度に出席するのは、ニューヨークにいる社長の代わりだからだ。

司の母親は、道明寺ホールディングスの社長だが、普段はニューヨークで暮らしていた。
そして副社長の司は東京。そんな息子にわたくしの代わりに出席して頂戴と言われ、なんとはなしに出席することになったパーティー。
そのパーティーが純粋なビジネスならまだしも、社長である母親が自分の代わりに出席しろといったのは、世に大企業と言われる企業の社長連中が年頃の娘を同伴し、取っ替え引っ替え司の前に現れるというもの。それはまるで犬のブリーダーが自慢の愛犬を連れ競技会場を歩いて回る品評会のような状態で、父親の背中にゼッケンが縫い付けられていてもおかしくはなかった。

派手な香水に濃い化粧。
カーペットに少しでも凹凸があれば引っ掛かってしまうのではないかと思える細く高いヒール。中にはサンバを踊るのかといったようなドレスを着た女もいた。
とにかくそういった女が次から次へと司の前に現れ誘惑を試みたが、司は相手にしなかった。

「それにしても、世の中には暇な女がなんと多いことか。まあ、お前が来るってことが分れば、女どもは目の色を変えてお前に会いに来るはずだ。道明寺ホールディングスの副社長のお前は独身。そんなお前の目に止まれば玉の輿だ。そりゃあもう目の色変えてどころじゃない。真剣そのものの態度でお前の傍に行こうとしている女は大勢いたな。それでどうだ?お眼鏡に敵う女はいたか?」

顔を見れば結婚しろという母親。
パーティーが母親の画策した大規模な見合いの手段だとすれば、それは失敗に終わった。
と同時に次の作戦を考えることは目に見えていた。
いくら司が結婚する気はないと言っても諦めの悪い母親は、それを受け入れようとはしない。まさかとは思うが願掛けをしているではないだろうが、一人息子がいつまでも独身でいられると道明寺の将来に関わるとでも思っているのか。とにかく諦めが悪かった。

「なあ、司。お前女と付き合うのはいいが、結婚は出来ないってなんでだよ?俺たちのように大企業の跡取りともなれば、結婚して子孫を残すことを求められる。俺もいい加減に結婚しろってせっつかれてるところだ。だが今は俺のことはいい。それよりお前のことだ。
今日のパーティーのメンツを見てみろ。どの女の父親も日本を代表する超が付く一流企業の経営者だ。だがそんな経営者も道明寺財閥との姻戚関係を望んでいる。
それに女の方もお前と結婚出来ることを夢に見ている。言葉は悪いが今日お前の前に並んだ女は、お前の言うがままになるような女だ。結婚したら適当に抱いときゃ満足するはずだ。それに女たちも父親同伴ってことは、もしお前と結婚出来たとしても、それが政治的なとは言わないが政略的なものだってことは分かってるはずだ。この際だ。この辺り手を打ってみるのもありじゃねぇのか?
それにお前の心に何かの枷があるようには思えねぇんだわ。それなのに何でそこまで必要に結婚を否定する?」

あきらは「枷」を強調して司を見たたが、司に枷などなかった。
そして窓の外へ視線を向けると、車窓を流れて行く景色を見ながら答えた。

「結婚は社会的なことだ。対外的なことが求められる。それが面倒なんだよ。それに自由がなくなる。それに今まで出会った女の中に何かを犠牲にしてまで結婚したいと思える人間はいなかった」

「なるほどな。確かに結婚すればパーティーやら行事やら妻も一緒に出歩くことが当たり前になるな。つまり自分のライフスタイルを脅かされるのが嫌だってことか。けどな。何も恋愛をして結婚する必要はねぇんだぞ?どうせ相手の女に求められるのは、子孫を残すこと。それにお前が何かを我慢する必要もなければ、譲れないものを譲る必要もない。名目上の結婚で済ませればそれでいいはずだ」

あきらもいずれは結婚する。
相手は何処かの企業のご令嬢であることは間違いない。それはいずれ美作商事の社長となるあきらに課された義務だと分かっていて腹を括っていた。
だが司はそうではなかった。

「一緒にいても必要以上にベタベタしたがる。それが生理的に合わねぇんだよ」

「おい。お前なあ、女と寝る時はベタベタするのが当たり前だろ?ベタベタするなって言うならお人形とでもヤルしかねぇだろ?けどダッチワイフとじゃ汗をかくこともなければ、熱い身体を感じることもねぇんだぞ?たとえ相手の女を愛していなくても、ヤッてる時くらいベタベタしてやれよ。まあそれでも男は下半身を興奮させても頭は冷静だってこともあるが、お前の場合は常にそれだってことか」

司の男女関係は淡泊だった。女と付き合いはしたが、常に距離を置いていた。
恋におちたことも恋をしたこともなかった。

「それにしてもお前もいつかは結婚するはずだ。それが本意であろうがなかろうがその日は必ず来るはずだ。まあ俺はお前がそうなる日を楽しみにしてるがな。それでこれからどうする?まだ9時を回ったところだ。口直しに飲みに行くんだろ?」

あきらがそう言うと司は窓の外を見ながら、「ああ」と低い声で言った。





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コメント
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dot 2018.10.16 06:15 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
恋に落ちない男。道明寺司。
その男を恋に落とすのは誰?
司の場合は、頭も下半身も興奮できる相手に出会わないと結婚しない(笑)確かにそうでしょうねぇ^^
彼は頭の悪い女は嫌いなはずですし、お人形のような女も嫌いなはずです。
そして間違い電話が二人を繋ぐのでしょうか。
それにしても、豚肉とニラともやしの春雨炒め卵乗せ。長い名前のメニューですねぇ(笑)
そしてつくし。夜9時過ぎてそんなに食べて大丈夫?
でもお腹のラブコールには逆らえないそうですからねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.10.16 21:38 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.10.16 22:36 | 編集
ま***ん様
スマホ初心者の間違い。
使い慣れないと焦りますが、普通では繋がらないはずの相手に繋がってしまったようです(笑)
これは運命なのか。それとも神様のイタズラなのか?
もし運命なら、ふたりの運命の歯車は回り始めたということですね?(笑)
どうなるんでしょうか。このふたり!
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.10.17 04:42 | 編集
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