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2018
10.15

理想の恋の見つけ方 1

つくしは台所へ行って冷蔵室を開けたが中にあったのは、ペットボトルに入った水とマヨネーズとケチャップ。中身が半分のドレッシングといった類で大した物は入ってなかった。
その代わり中から浴びたのは大量の冷気。
そして食べ物で目に止まったのは、賞味期限の切れたハムと干からびたちりめんじゃこ。それに黒ずんだバナナ。次に野菜室を開けたが、そこにあったのは元気のないレタスとピーマンと人参。
そうだ。留守にする前に粗方の物を処分したのだ。
だからこれではどう考えてもお腹の足しになりそうな物は作れなかった。

仕方がないとばかり、しぶしぶ冷蔵庫の扉を閉めると、確か買い置きのカップ麺があったはずだと、それらの定位置を探したが見当たらなかった。
それならコンビニへ行けばいいのだが、行く元気もなければ、これからどこかへ食べに出ようという気にもならなかった。何しろ帰って来たのは午後8時半を回っていてヘトヘトだった。そうなると出前を頼むしかないと思った。

そこは馴染みの中華料理店。
美味しい、安い、ボリューム満点のその店の夜の営業は10時までで、顔なじみのつくしの注文には、ギリギリの時間でも快く対応してくれた。
だがこうしてはいられないと慌てた。いくら顔なじみで近くの店だとは言え、食べに行くならまだしも出前の受付けは9時までで、気付けば時計の針は8時50分を指していたからだ。そんなこともあり、ギリギリの時間でお願いすることにどこか遠慮があった。だが背に腹は代えられないではないが、スマホを掴むとホワイドボードに貼り付けてある店の番号にすぐさま電話を掛けようとした。
だがつい最近ガラパゴスと呼ばれた機種から買い替えたばかりの電話は最新式だと言われ、使い方に難儀をしていた。
それでも使わなければ慣れないと言われ、積極的に使うように心がけていた。
たかが34歳で時代から取り残されたくはなかった。だが以前のように携帯を開けば数字が並んでいた方が楽だった。だから一瞬どうすれば数字が表れるのか機械を睨んだが、なんとか電話の機能を呼び出すと番号を押した。


「あ。丸源さんですか?私4丁目の牧野です。_____え?はい。そうです。5階の。すいません、ぎりぎりの時間ですけど注文お願いしてもいいですか?___五目チャーハンと春巻き。え?えっと…春巻きは4つお願いします。それから鶏の唐揚げも。___はい。以上です」

これで食べ物は確保した。だから飢える心配はない。
つくしはホッとひと息つくと上着を脱いだ。
それにしても暑かった。単なる暑いというよりも蒸し暑かった。
秋なのに季節外れの暑さにエアコンのスイッチを入れたが送風口からは涼しい風が降りてこなかった。
まるでサウナのようで、もしかすると留守にしていた間にエアコンが壊れてしまったのかもしれない。
いや。そんなことがあるはずないと思いたいのだが、エアコンが壊れているとすれば最悪だった。そうなると仕方がないと窓辺に行き、カーテンを開けると窓を開けた。
だが窓を開けたところで蒸し暑さが一掃されることもなく、逆に外の蒸し暑い空気が部屋の中に流れ込んで来るだけだった。だがそれでも暫く留守にしていた部屋の空気が入れ替わっただけでも気分が良かった。


「はぁ~。お腹すいた。それにしても家に食べ物がないことがこれほど惨めに感じられるなんて初めてだわ。これなら途中でどこかお店にでも寄ってもらえばよかったわ」

だが船を降りると、まっすぐにマンションまで送られた。
それはそれで疲れていたから良かったのだが、やはりお腹に何か入れなくては空腹で眠れそうになかった。お腹のラブコールを無視することは出来なかった。
だがこうしてお腹が空くということは良いことだ。それに海の上では必ずしも食べたい物が食べれるとは限らないのだから、陸に上がった以上、好きなものを食べる権利がある。
と、なるともう一品頼んでおくべきだったと後悔した。

つくしが乗っていた船は、海洋調査船と呼ばれる遠洋、国際航海も出来る大きな船。
充実した設備を持ち、専属の料理人もいる立派な船だ。
といっても、2週間も船の上にいるとさすがに陸が恋しくなる。それでもつくしの仕事は海が相手。
だが今日で、つくしにとって半年に一度の海洋調査は終わった。
これからは陸で人間を相手にしなければならないが、そんな彼女の仕事は大学の海洋学部の准教授で専門は海洋生態学。研究テーマは日本近海にいる深海ザメの生態学的研究だ。

「やっぱりもう一品頼もうかな…..」

つくしはもう一品頼むか迷っていたが、出前のメニューに目を落とすと自分を納得させていた。
食べれなかったら明日に回せばいい。
それに明日は休みだから残ったら昼食べればいい。
そう思ったとき、時計の針は8時57分を指していた。だがまだ間に合うはずだ。それにあれだけの注文が直ぐに作れるはずがない。だからつくしはもう一度電話を掛けようとしたが、買い替えたばかりでまだ慣れないスマホも、たった今使ったばかりなのだから簡単に使うことが出来た。

「あ、もしもし?さっき電話した4丁目の牧野です。すみません、追加注文いいですか?豚肉とニラともやしの春雨炒め卵乗せもお願いします」






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コメント
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dot 2018.10.15 05:20 | 編集
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dot 2018.10.15 07:18 | 編集
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dot 2018.10.15 08:28 | 編集
ま**ん様
おはようございます^^
海洋学者のつくしはお腹を空かせてき帰ってきました。
研究対象がサメの彼女は今回はどのようにして彼に出会うのでしょうねぇ(笑)
コメント有難うございました^^

アカシアdot 2018.10.15 21:51 | 編集
ふ*******マ様
おはようございます^^
侘しい冷蔵庫の中身につくしがド貧乏だと思われたんですね?
大丈夫です。ちゃんとお給料を貰える仕事をしています。
お腹が空いていると、思った以上に買い物をしてしまうことがありますが、今のつくしは食べたいものを食べることが頭にあるようです(笑)でも確かに夜9時過ぎてのメニューとしては重いように思えます。
海洋学者のつくしと司はどのようにして出会うのか。
そして恋してくれるといいんですがねぇ(笑)
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.10.15 21:58 | 編集
司*****E様
おはようございます^^
つくしの理想の恋はどんな恋なのか。
そして司は恋をしてくれるのでしょうか。
今回の彼女はサメの研究を専門としている准教授です。
どんな風に出会い、どんな風に恋に落ちるのでしょうねぇ。

アカシアも同じくらいの使用歴です。
本当に初めは戸惑うことばかりで、今も使う機能は限られています。
ですから、宝の持ち腐れだと言われます(笑)
つくしも早く慣れるといいですね。
コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.10.15 22:06 | 編集
A***a様
こんにちは^^
こちらのお話は、ハッピーラブストーリー(アカシアの頭の中ではそのつもり)です(笑)
ふたりの恋の行方を見守っていただければと思います。
拍手コメント有難うございました^^
アカシアdot 2018.10.15 22:15 | 編集
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