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2016
05.31

Trick Of The Night 前編


何年たっても変わらない思いがあった。
あいつの傍にいるためには自分の想いは心の奥深くに閉じ込めておかなければならないとわかっていた。
世間がなんと言おうと、たとえそれが永遠に続く嘘だとしても・・・
少しでもあいつの傍にいたいと思う気持ちがあったから、こんな自分でも許すことが出来たんだと思っていた。
嘘でもかまわなかった・・
つくしが司に求めるものは、ただひとつだけなのだから。







大勢の人で溢れる部屋だがある場所だけはその男を見ようと人が集まっていた。
その輪の中心には賞賛と注目を浴びることに慣れた男がいた。その男が注目を浴びるのは当然だった。道明寺司と言えばここにいる誰もが知っていて当然の男だったから。

新聞や雑誌で見かける男はいつも女を連れていた。美しく華やかさを纏った女性たち。その女が自分だったらいいのにと思った。だがつくしは司のことは深く考えないようにしていた。記憶のない男が自分を見たところで何を思い出すというのだろう。
だからこれから自分が行動に起こすことに対してなんの迷いもなかった。
つくしは司と再会することを夢みてきたのだから。

10年たっても変わらない自分は、10年の歳月を経ても自分の手が届かない男をいつまでも思っていた。
だが10年前に自分と一緒に笑いあっていた男のほうはすっかり変わってしまっていた。
噂には聞いていたが、いざこうして本人を見れば上品な顔立ちの中に人を寄せ付けない鋭い目つきがあった。あの目が優しく自分を見てくれた日々はもう戻らない。わかってはいてもそれでもどこかに儚い希望を抱いているあたしがいた。



司は仕方なしに参加したいつものパーティーだった。
どうでもいいパーティーでどうでもいい客たち。招かれただけで名誉だとばかり自分の傍に寄って来る女たち。
ニューヨークに来て10年が過ぎ、そろそろ結婚を考えないわけにはいかなくなっていた。
自分の人生は所詮ひかれたレールの上を走るだけなのかもしれない。結婚相手にしてもそうだった。司の結婚する目的は本来の結婚ではなかった。紙切れだけの契約でそれにはビジネスが付き纏う。結婚する相手がどんな相手だろうと感情が伴うはずもなく、誰であろうと一向に構わなかった。いつかはしなければいけないのなら、今すぐでも良かった。
自分に必要とされているのは、自分のあとを継ぐべき人間だとわかっていたから。

今まで恋の駆け引きは関係が無かった彼の人生。
駆け引きなどしなくても、金の匂いに引き寄せられるように自分に群がる女たち。運がよければ永遠に司の傍にいることが出来るかもしれないと考える浅はかな女たち。司にとっては一夜だけのことだというのに、何が欲しくてそんなに自分を求めるのか。そんなことはとっくにわかり切ったことだった。

金、権力、そして見てくれのいい自分の外見・・・女たちが自分に求めるのは所詮そんなものだった。そんな女などはじめから愛せるはずもなく、男としての欲を吐き出すだけの日々だった。司は自分には人を愛するという感情が欠如しているのではないか。女と愛し合っても関係を継続させることは永遠にできないのではないかと感じていた。

愛するという感情が欠如した両親に育てられた自分には人を愛することなど出来ないのだ。
それは28年間生きて来てずっとそうだったはずだ。

愛などなくてもこうして生きていられるではないか。
どうせこれから先の人生も愛されることもなく、愛することもない人生なのだから・・




ただ生きていくだけの人生は・・自分にとってはどうでもよかった。




***




つくしはこれから自分がとる行動に気おくれすることがないようにと、手にしていたグラスの中身をあおった。自分を奮い立たせるために飲むには一杯だけでは足りなかったが、これ以上は飲めなかった。これ以上飲めばあいつの元へたどり着く前に倒れてしまいそうだった。
所詮自分の気合いの入れ方なんてこんなものだ。

だが、今の自分にはこれが精一杯だった。つくしは部屋の片隅で司の姿を見つけることが出来た。離れた場所から見つけた男は、タキシードに身を包み金と権力全てを手にした人間ならではのオーラを放っていた。昔からこの男には他人にはない人を惹きつけるものがあったのは確かだ。それはカリスマ性と言ってもいいのかもしれない。

そんな男は生まれ落ちた瞬間から人生が決められていた。
だからあたしと彼の人生が交わったことが今思えば不思議だった。メビウスの輪というものがあるが、その輪は表と裏が連続していて終わりが見えない状況を表す。あの頃のあたしと道明寺の関係はまさに色々なことが絡み合い出口のない状況だった。だけど道明寺が記憶を失ってしまってからはそんな関係の輪も切れてしまい、表は表、裏は裏という常識のある世界へと2人は戻って行ったのかもしれない。

道明寺は道明寺の世界へ・・

そしてあたしは本来のあたしがいるべき世界へ・・



***



司は自分の前に現れた女に目を奪われた。長い黒髪の東洋系の女がそこにいた。
相手の顔に見覚えがなかったが自分を見つめていることだけはわかっていた。
彼は周りにいる人間にあの女は誰だと聞くまえにその女は目の前にいた。

「元気?」と声をかけてきた女。

ここは選ばれた人間しか入ることが出来ないパーティー会場。
身元は確かな人間ばかりのはずだ。司は社交辞令として挨拶を返した。

「元気だ」

それはよかったですねと返された。自分に対し気軽に声をかけてきた女。
互いに交わされた視線はあからさまで、欲望を隠そうとはしなかった。
パーティーに出れば何人かの女が物欲しげな態度で近寄ってくることには慣れていた。
この女もそんな女のひとりなのか?それならそれでもいい。どうせ一夜限りか、気に入ればもう少し傍に置いてやってもいい。どちらにしてもこれから始まる2人の関係は恋人同士と言うにはほど遠い関係になるはずだ。
だが、始まる前にどうしても確かめておかなければならないことがあった。

「俺は女とつき合っても結婚するつもりはない」

「そんなことあたしも望んでないから心配しないで」

女の黒い大きな瞳が伝えてきたのはあたしも同じだから心配しないでだった。
司は今まで自分の周りにいた女とはどこか違うと思った。

「あなたはあたしの好みのタイプとは違うから」

そんなことを平気で口にする女は生意気だと思った。


司の目の前に現れた女は黒い瞳が輝く日本人の小柄な女。
女は黒いドレスに身を包んでいるが、自分を引き立てるための宝石類は一切なかった。
東洋人独特の白い肌にはしみひとつなく、真珠の輝きような控えめな美しさがあった。
自分を飾り立てる必要はないと言うことか?よほど自分自身に自信がある女なのか?
この会場にいる女たちの胸元を飾るのはひと財産あるような宝石ばかりだ。そんな宝石は自らが買ったものではなく、男たちに贈られたものが殆どだ。

この女が自分の胸元を飾るような宝石を持っていないと言うことは誰にも依存することなく自分の脚で立つ女ってことか?この女は自分がまだ誰のものでもないといいたいのか?
誰のものでもない自分を欲しくないかと言うことか?俺のことを好みじゃないと言い切った生意気な女だ。司は挑戦し甲斐のある女だと思った。それならこの生意気な女の挑戦に乗ってやるのも悪くない。ビジネスにしても人間関係にしても挑戦され受けて立たなかったことは無かった。






永続的な関係は求めない。

その言葉が2人の関係のスタートだった。


2人の関係は決して相手を束縛するものではなかった。
永続的な関係は求めない。
それは2人とも最初から示していた態度だ。
ニューヨークでつくしが決めたのは司と体の関係を持つことだった。
情熱だけを分かち合うだけの関係。決して愛を求めていたわけじゃなかった。
2人が出会ったパーティーの夜、隣に立つ男が腰に手をまわしてきたときその手に体をゆだねた。頭の中で自分を戒める声には蓋をした。たとえ将来がなくてもいいからあたしはこの場所に来た。

道明寺があたしのことを忘れこの街へと暮らすようになった後、ひたすら勉強をして彼のことを忘れた。経済誌で見かける男は自分の置かれた立場で才能を開花させていた。
努力を必要とする人間とそうではない人間がいるが、道明寺司という人物には努力という言葉は必要がないように思えた。努力とは目標に向かって邁進することだがこの男に目標というものがあるのだろうか?与えられる全てが彼の人生にいいように働くなんてことはないと思うが、例えいいように働かないとしても今では剃刀のように鋭く切れる頭脳が男の望みを叶えてくれていた。

道明寺があのときあたしに注いでくれた愛がもう二度と戻らないと言うのなら、あたしがあんたに愛を注いであげる。たとえそれが一方通行の愛だとしても。







女と関係を持っても長く続いたことはなかった。
人前でも愛情表現はせず、親しさも見せない。
これまでもどんな女とも長続きはしなかったがパーティーで知り合った女だけは別だった。
どうしてもこの女が欲しかった。自分に対して生意気な態度で接してきたのが珍しかったのだろうか?だがそれだけではない何かがあった。
なぜここまでこの女が気になったのかはわからなかった。年は自分よりもひとつ下。
背が高くスタイルがいいと言うわけでもない。どちらかと言えば小柄でほっそりとした体形でお世辞にも魅力的な体だとは言えなかった。だが肌が合うというのはこう言うことなのだろうか。印象的なのは大きな瞳で、その瞳を見れば女の感情が分かるような気がした。

生意気な女は俺に対して対等なつき合いを求めた。
自分とつき合いたいなら他の女とはつき合わないでと。
生意気な女が求めるたことはたったそれだけだった。
そんな女との関係が今さらながら退屈していた俺の人生に刺激を与えたことも確かだった。

言いなりにならない代わりに媚びもしなかった。自分の言いなりにならない女。そんな女を征服したいと思うのは男の本能だろうか。そんな思いも遠い昔の記憶のどこかにあったような気もする。それは頭の奥にある深い記憶のどこかにある思いだった。
今まで自分の周りにはいなかったタイプの女だと思ったから物珍しいという思いもあったのかもしれなかった。
そんな2人の関係はつくしが司のマンションを訪れるという形で始まった。








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2016
05.30

大人の恋には嘘がある 15

つくしはなぜか愛想笑いを浮かべていた。
顧客からセクハラまがいの言葉を言われた時の対処方だ。
お客様は神様ですじゃないが、こんな時は曖昧にほほ笑むのが一番だ。
アメリカなんかじゃ客と店員との立場はわりと対等だけど日本の社会ではまだまだ客ありきの商売だ。
でも・・
いきなりおまえと寝れるかですって?

「あ、あんた何考えてるのよ!」
つくしは感情的になっていた。
「おまえの言う微妙な関係ってのを俺に教えてくれないか?」
「おまえとのつき合い方を考えなきゃならないからな」
「ど、どういう意味?」
「だからきちんと話し合おうってことだ」
つくしはじっと自分を見つめる司の視線を感じていた。
「だからそれはどういう意味なのよ?」

「微妙な関係ってやつの先に俺たちが寝ることが出来るかどうか知りたい」
司の目が期待に輝いた。
俺の言葉にいつわりはない。嘘をつくなっていったのは牧野だ。
だから俺は嘘偽りのない正直な気持ちを牧野に伝えているだけだ。
牧野の心が欲しいのはもちろんだが体も欲しいに決まってる。

「は、話し合うことなんてないわよ!なんでいきなりあんたとね、寝ないといけないのよっ!」
「だいだいなんで今そんなことを話し合わないといけないのよ!」

つくしは自分が案外大きな声で喋っていることに気が付いた。
レストランの中で大きな声で男と寝るとか寝ないとか・・
つくしがふと見た先にいるのは、蝶ネクタイ姿の男で、そんな男は多分レストランの支配人だろう。何やら落ち着かない様子でこちらを見ていた。
多分、恐らくだが道明寺はこのレストランでは常連なのだろう。そんな男が連れの女と口論しているとしたら、止めるべきか止めないべきか迷うのも当然だ。

つくしは周りを見るのが怖かった。近くのテーブルの客はナイフとフォークを持つ手を止めて2人の様子を見ていたし、他の客も2人の会話に聞き耳を立てているに違いない。
2人の席に料理を運ぼうとしていたウェイターにいたっては、サーブするのをためらって固まっている。
今や2人はレストラン中の注目を浴びていることには間違いがなかった。
この前は個室で食事をしたから周りを気にするなんてことがなかったけど、さすがにこのレストランでの失態につくしは頭が痛くなってきた。
それになんだか急に食欲がなくなってきたように感じられた。
それなのに向かいの席に座る男は悪びれた様子もみせずニヤリと笑っていた。

「牧野、冷静になれ」
司は面白そうに頬を赤く染めたつくしを眺めていた。
言われなくてもわかってるわよ!
何が冷静になれよ!あんたがあたしを冷静にさせないんでしょ?

「やけに今夜は機嫌が悪いな?なんか会社で嫌なことでもあったのか?」
「ええ。おかげ様で営業成績は一番をいただいていますがなにか?」
「凄いじゃないか!」 
何が会社で嫌なことよ!何が凄いじゃないかよ!
嫌なことはなかったけど、凄い方は・・まあ、道明寺のおかげだから正直お礼を言わなきゃいけないんだけど・・

「ちょっと・・失礼して来てもいい?」
つくしはこのまま席に座っていたらもっととんでもないことを口走りそうになりそうで怖かった。
「け、化粧室に行って来たいんだけど・・」
つくしはじろりと司を睨みつけると腰をあげるが早いか鞄を手に大きな足取りで化粧室を目指した。
司はどうぞ行って来いとばかりに形ばかりの挨拶をした。
なによ!グラスなんて持ち上げちゃって!
今夜のこのデートは・・デートよね?
上手くいくのか心配になってきた。





***





つくしは化粧室を見つけると扉を開けて中に入った。
その直後、背後に人の気配を感じたかと思えばひとりの女性が中に入ってきた。
つくしは怒りに任せて歩いていたせいか、自分のすぐ後ろに女性が歩いていたことに気が付かなかった。
その女性はいきなりつくしに話しかけてきた。

「あなた道明寺さんとはどういう関係なの?」

露骨な敵意が感じられるような声だった。









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2016
05.29

大人の恋には嘘がある 14

つくしは約束の時間に30分遅れていた。
今夜は道明寺と食事の約束があったのに仕事が終わらなかった。


道明寺と微妙な関係でつき合うことになったあたし。
微妙な関係でなんて言ったけど、あれは咄嗟に口をついてしまったことだった。
だってそうでも言わないとあいつのことだから、遠慮なくあたしのプライベートまで立ち入ってきそうだったから。微妙な関係だって言っとけば、いざとなれば逃げられるような気がしていたからだ。
でも、何から逃げようと言うのだろう・・
本当は逃げずにあいつの気持ちを確かめたいと言うのが正直なところなのに、あたしはどこか恋に対して臆病になっているのかもしれない。

司はつくしを見つけられずにいた。
教えられた電話番号にかけても出ない。
まさかわざと出ないわけじゃねぇよな?だがそうは思えなかった。
あいつは駆け引きをするような女じゃないはずだ。
司は眉をひそめた。まさかあいつ忘れてるわけじゃねぇよな?
俺は今夜のことをあいつに言ったはずだよな?

俺たちはまだきちんとしたデートをしたわけではなかった。
水族館で電気ウナギを見たがあれは夜のほんの短い時間で司にとってはデートだなんて言えるものではなかった。
牧野とはいわば顧客と担当者といった仕事の打ち合わせのような形でしか顔を合わせていない。
いつまでもそんな調子じゃ俺とあいつの関係が進展なんてするはずがない。
あの水族館は昔のよしみでなんてことで会うことになったが、今日は昔のよしみなんかじゃねぇからな。3年前の出来事をなかったことになんてするつもりはない。
ましてや互いの気持ちの中にあった何かを覚えてないだなんてことを言わせるつもりは無かった。

「ご、ごめん、道明寺」
「おせぇぞ!」
都内でも有名なフレンチレストランの入り口でイライラしていた男は駆け込んで来た女を見て言葉とは裏腹に内心ホッとしていた。

「なにしてたんだよ!」
「な、なにって仕事に決まってるじゃないの」
「おまえの仕事は俺の投資の相談だろ?それ以外になにがあるってんだよ?」
こいつの時間は俺が大枚叩いて買ったつもりだがそうじゃなかったのか?
「あのねえ、あんたも経営者ならわかるでしょ?仕事ってのは上っ面を撫でてるだけじゃだめなのよ?」
「細かい情報の分析が必要だってわかってるでしょ?」
「情報の分析が大切だって教えてくれたのはあんたでしょ?あたしそれでニューヨークじゃあんたに負けたんだからね?だ、だいたいねぇ・・」
つくしは走って来たのか息を喘がせながらも必死で言葉を継いでいた。
胸はどきどきしているし、走ってきたせいで脚ががくがくしていた。
これでもあたしは急いで来たんだからね!

「ああ、もういい!今夜は仕事の話しをしたくてここにいるんじゃねぇんだから」
司はつくしの手を掴むとずんずんと店の中を歩いて行き、一番奥のテーブルへと連れて行くと椅子に座らせた。
「メシ、食うぞ」
「あのね、道明寺、あたしだって仕事を持ってる人間なんだからちょっと遅れたくらいで怒らないでくれる?」
「わかってるよ!」

つくしの真正面に座った男は、はっきりとした目鼻立ちで洗練された男だ。
そんな男にじっと見られていては落ち着かなかった。
「道明寺・・あたしこういうのって・・慣れてないから」
「何が慣れてないって?」
「だから・・こんなふうに仕事が終わって男性と食事をすることよ」
「なんだよ、一度俺と行ったじゃねぇかよ?」
あんときは唇に噛みつかれたけどな・・

「だ、だから、とにかくこんなふうに男の人と出歩くなんてことは普段してないから・・」
なぜかその言葉に嬉しさを感じ、司はにんまりとした。
「おまえ、日本に帰ってきてから男と出歩いたりしてないってことか?」
「うん・・まあ・・そうかな?」
思わず湧き上がってくる大きな満足感。
つくしの心を見透かそうとするかのように、司はじっと彼女を見つめた。
俺は牧野におまえと会えなくなってから後に女はいなかったと言ったが、実のところこいつが日本に帰ってきてから男と出歩いてるかなんてことは分からなかった。

「ほら、仕事が忙しいし、なかなか時間が取れないし、休みの日だって家のこととか色々とすることがあるから・・」
言い訳がましく聞こえるかもしれなかったが、それは紛れもない事実だった。
「ねえ、どうしたの?」
「なにがどうしたんだよ?」
「なんか、あんたにやついてる・・」
「別ににやついてなんかねぇぞ・・」
「牧野、これだけははっきりさせておくが、俺はこのまえ試しにつき合ってみないかと言ったが、あれは訂正だ。だからおまえも微妙な関係ってのを見直してくれないか?」

互いに自分について相手が知らないことを教え合うことから始めるってことはデートにおけるどの段階になるのか分からないが、これから俺のことを理解させるためにあまり時間をかけたくないってことだけは紛れもなく正直な気持ちだ。

「見直すって?なにを見直したらいいの?」
「だいだいおまえの言う微妙な関係ってのが俺には分からない」
「び、微妙な関係?」

つくしは自分だってどう説明したらいいのか分からないのだから、道明寺の真剣な目つきが怖かった。
まさか微妙な関係がどんなものかだなんて、聞かれるとは思っていなかった。
つくしはどんな答えを返したらいいのか悩むはめになろうとは思いもしなかった。
だって自分でも咄嗟に口をついて出た言葉だけに、答えなんてないんだから。
逆に道明寺が知ってるなら教えて欲しいくらいだ。

微妙な関係・・・
多分それは・・

「牧野、悩んでるようなら聞くが、俺とおまえがおまえの言う微妙な関係ってのを終わらせることが出来たら・・・」
司はつくしをからかってみたくなった。
「俺はおまえと寝ることができるのか?」








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2016
05.28

金持ちの御曹司~遠い空の下で~

*******************************
大人向けのお話です。
未成年者の方、またはそのようなお話がお嫌いな方はお控え下さい。
*******************************







今年もまたこの季節がやって来た。
そうだ。モータースポーツの祭典、F1グランプリだ。
俺と牧野は今年モナコグランプリを観戦に行く。

毎年5月に開催される伝統のモナコグランプリ。
モナコグランプリは第二次世界大戦以前から開催され、モナコ王室が観覧する御前レースだ。このグランプリでの優勝者は一国の元首から栄誉が与えられるため、他のグランプリで優勝するのとは価値が違う。

モナコは南フランスの地中海に面した場所にあり世界で2番目に小さい国。ちなみに1番小さい国はローマにあるカトリック教会の総本山、バチカン市国だ。そのバチカンには教会関係者とそこを守るスイスの衛兵以外は住んでいない。

そんな世界で2番目に小さい国は4つに区分されている。そのひとつモンテカルロの市街地がこのグランプリのコースだ。このグランプリは世界三大レースのひとつと言われ伝統のあるレース。期間中は人口3万ほどの小国におよそ20万の観客が訪れ、モナコにとっては国家的な観光イベントだ。ちなみにモナコは所得税非課税の租税回避地(タックスヘイブン)でその恩恵を求めて他国から移住してくる億万長者も多い国だ。要は金持ちが好んで住む国。俺にぴったりの国じゃねぇかよ?そんなモナコは風光明美で気候も穏やかだ。まあ、俺も将来リタイアしたら牧野と住んでもいいか?


モナコまでのフライトには新しく手に入れたジェットで乗りつける。
内装をどうするかとか、お好みを焼く鉄板をどうするかなんて考えてたのはいつだったか? 結局鉄板は機内火気厳禁だと言われ製造元に断られた。
機内で牧野にお好み焼きを焼いてもらおうと思っていたが・・

チッ・・
まあいい。

それより俺の隣の席で寝てる牧野。
せっかくの機内なんだし牧野がスチュワーデスの格好してくれねぇかな・・
ひそかに用意した制服は機内後部にある寝室に置いてある。

司の頭の中で架空の映画が上映されていた。

それは・・

航空会社の制服を着た牧野が俺にシャンパンを注いでくれる場面から始まる。

「道明寺様、おかわりはいかがですか?」
「ああ。頼む」
「それより、特別サービスを頼みたい」
「そ、そんな道明寺様、こ、困ります」
「困ることねぇだろ?」
「牧野。こっちへ来い」
司は広げていた膝を閉じるとつくしを自分と向かい会うように膝の上にまたがらせた。

「あ、ダメ・・」
「ダメです!ど、道明寺様!や、やめて下さい!」
「ダメじゃねぇだろ?」
司は嫌がるつくしの制服のブラウスのボタンを外すと器用に腕から引き抜き放り投げた。
飢えた目でレースのブラジャーに包まれた胸の見据えると手を背中に回してホックをつまんだ。

プチッ・・

「あっ・・・」
ゆるんだブラジャーからこぼれるつくしの胸。
小ぶりだがツンと尖って誇らしげに上を向いていた。
司は先端をつまむと、キュッとひねった。
「あああっ!」
ずり上がったスカートを腰のあたりでまとめられるとつくしは裸同然の姿で司の膝にまたがっていた。

「おまえ・・まだ触ってもねぇのになに濡らしてんだよ・・」
「胸つねられただけで、こんなに感じてんのか?いやらしい女だな」
「俺のスラックスにシミつくってんじゃねぇよ!」
両脚を大きく広げ、司の膝にまたがるつくしの股の間はしとどに濡れ司のスラックスに大きなシミを作っていた。
司はつくしの濡れた部分をパンティの上から擦った。

「だ、だめです。ど、どうみょうじ・・さま・・ぁ・・あああっん!」
「おねが・・いです・・やめて・・」
「こんなに濡らして何がいやなんだよ?嫌がってるふりしても欲しいんだろ?」
「だ、だめです・・」
首を小さく左右に振る女。
だが司がサディスティックに耳元で囁やくと、つくしの秘部はますます濡れてきた。

「欲しいんだろ?お願いしますって言えよ・・」
「あ・・だめぇ・・お願いやめて・・」
司の指の動きが早くなった。
「やめて欲しいのか?」
「どうだ?本当にやめて欲しいのか?」
「もっとだろ?」
「あっ・・ああっ・・」
「もっと欲しいんだろ?」
「いやっ・・だめ・・」
「や、やめて・・どうみょうじ・・・」
「黙れ」
司は間髪いれずに口を塞いだ。

つくしは抗議したが、司は分別のある男だ。
そろそろやめてくれるはずだ。
が、彼はその声は無視した。

「いやっ・・」
司は指をパンティのクロッチの横から挿しこむと濡れた泉に突っ込んだ。
「こんなふうにしてほしかったのか?」
「だめぇ・・」
「そうか、こんなふうにしてほしかったのか」
「なあ、こうか、こうか、こうかっ?」
執拗に言葉を繰り返しながら指が出し入れされる。
「だめ・・あ・」
「だめなのか?だめなようには見えねぇけどな・・」
「こんなに濡らして準備出来てるじゃねぇかよ、牧野」
司は激しく早く指で突いていた。
「やっ・・・だっ・・あんっ・・」
欲しいくせに強情な女だ・・
「荒っぽくして欲しいんだろ?」
「これ脱げよ・・」
司はつくしの下着に手をかけると腰を上げさせ、おろせる状態までおろそうとした。
だが、その手は繊細な下着をビリッと引き裂くと再びつくしの濡れた場所へと長い指を押し込んだ。

ぐちゅり・・

「ああ・・っん!」
快楽を含んだ声が漏れた。

つくしは司の頭を両手でしっかりと掴むと指の動きに合わせて腰を揺らし始めていた。
司は自分の目の前で揺れる小ぶりな胸の蕾にしゃぶりつくと一心に吸い始めた。
そうしながらも指を抜き挿しているうちに我慢が出来なくなった。

「入れて欲しいんだろ?」
「なあ、俺が欲しいんだろ?」
「言えよ・・」
「お願いしますと言え」
「言わねぇといつまでもこのままだぞ?」
「お、おねが・・いっ・・」
「聞えねぇなぁ」
「お・・ねがい・・い、入れて・・」
「お願いだから・・あれをちょうだい・・」
「やるよ・・なんだっておまえにやる・・」

任せろ。
すぐに入れて・・・




「・・う・・ん・・」
「どうみょうじ・・もう、空港に着くの?」
つくしは眠たそうに目をこすると隣の司を見た。
「お、おぅ!もうすぐだ」

ちくしょう!
あともう少しだったってのに、肝心なところで目ぇ覚ましやがって・・

今の俺、多分餌を取り上げられた犬みてぇな顔してるんじゃねえかと思う。

そんな犬っころと一緒になんてされたくねぇけど、多分そんな感じだ・・

けど、これって俺の夢だよな?
妄想だよな?
妄想だけでこんなになってるなんて・・

司は自分の下半身を見た。

股間はスラックスを突き破らんばかりに猛々しく盛り上がっていた。

くそっ!
覚えてろよ!






***






モナコに到着した俺たちは迎えの車でレースのスタート会場に入った。

毎年グランプリ前に送られてくるパドックパス。
VIPチケットと呼ばれるチケットだ。一般に販売もされているが俺が手にするのは道明寺ヨーロッパがスポンサーとして契約しているチームからの招待だ。
チームの奴らは自分達のビジネスに必要な資金を調達できることには惜しみなく金を使う。 要はスポンサーを大切にってことだ。ビジネスとしてはもっともな話しだ。

俺はガキの頃、まだ免許もねぇのにフェラーリもらって無免許で隣に牧野を乗っけて走ったことがある。あれは俺が18になる前か・・
あの頃から運転テクニックには自信があった俺。普段は運転手付きの車での移動だがたまには牧野を隣にのせてドライブもしたい。
まあ今回のF1はドライバーのテクニックってのを見る為に来たようなもんだ。
俺も一度はF1カーを転がしてみたいと思うが危ないからやめろと牧野に止められた。
けどT自動車の社長だってどっかのラリーに出てたことがあるじゃねぇかよ!

ま、いいか。
あそこの社長はアレが本業だもんな。

パドックパスの特権はドライバーと話しが出来るとか、ピットレーンが歩けるとか観戦するのも特別席だとか色々とあるが、イギリス発祥のモータースポーツF1のパドックは競馬と同じで上流階級の社交場だ。モナコなんかそれこそ王室まで出て来るくれぇだから華やかなことこのうえない。

そんな社交場から引き揚げてきた俺と牧野。

「おい、牧野。体調はどうだ?」
「疲れたか?」
「うん・・大丈夫だから・・ごめんね道明寺・・」

珍しく素直な牧野。
まあ、いくら元気で国内海外問わず飛び回っていても女だからな。
体調が悪いときもある。

そう言えば1週間前いつものように俺のマンションに立ち寄ったこいつは・・
元気が無かった。

1週間前の俺と牧野の会話・・

なんだよ?調子悪りぃのかよ?と聞いた俺に上目遣いのこいつの言葉。

「ゴメン道明寺・・アレ来ちゃった・・」

アレ・・・アレ・・・

アレか・・

あれ?

アレか!

・・仕方ねぇ・・

こればかりは俺にはどうしようも出来ない・・
こいつが生理の間の俺は坊さん並の禁欲生活を強いられることになる。
牧野と同じ部屋にいるのにヤレないってのは俺にとっては拷問部屋にも等しいくらいだ。
けど、女の生理については俺も勉強した。
男の俺が知っとくのはつき合っていく上で大事なことだろ?
幸い牧野は腹が痛いとかって言う月経前症候群ってのはあまり無いらしいが、それでもイライラしてることがある。
なんで俺がこんなことで怒られなきゃなんねぇんだよってこともある。
それは・・・
つい先月の牧野・・

どこかのなんとかってケーキが食べたいだとか言ってその店に行く約束をしてた俺。
それをうっかりだか、すっかりだかすっぽかした俺。
牧野との大事な約束を忘たなんて、もしかして甘い物が嫌いな俺の無意識のうちの抵抗か? いや、もしかして俺は認知症か?
認知症の初期症状ってのはどんなんだ?
そんな俺は約束を忘れて牧野に叱られるはめになった。
俺が忘れていたことにそんなに腹が立ったのか?
悪かったって!
いつもはこんくれぇの事じゃ怒らない牧野がうるせぇくらいだ。
ガミガミ、イライラ・・・
多分このイライラが牧野の生理前のアレだ。


けど俺は牧野に叱られながら思った。

そうだ。
牧野、俺を叱ってくれ!
叱られば叱られるほど興奮する!
昔からそうだけど、怒ってる牧野はかわいい・・。
それを見て頬を赤らめてたってのがガキの頃の俺だ。
わざと牧野を怒らせるようなことをして遊んでたのが昔の俺だ。


そんな俺も男だ。
男は四六時中セックスのことを考えている。
これは本当だ。
牧野に叱られながらも妄想する俺。

例えば牧野が、
「これ美味しそうだね?」
と言えば
「おまえの方が美味そうだ」
と答え
「この靴かわいいね?」
と問われれば
「おまえがその靴を履いて俺を踏みつけてくれたらうれしい・・」
と答える。
いや・・前言撤回。
「その靴を履いた脚を俺の肩に担いでアソコに口づけしたい」
と答える。

だけどな、牧野。
いくら俺がおまえを欲しいからと言って無茶苦茶なことはしねぇ。
こう見えても俺はジェントルマンだからな。
だから・・生理のときはキスしてるだけで十分だ。

今さらだけどキスの練習・・

昔の俺はどうでもいいようなキスを沢山したが、牧野とつき合うようになってからは
こいつとするどのキスも俺にとっては重要だ。
牧野がはじめて俺とキスした時の真っ赤な顔は今でも忘れられねぇ。
向かい合ってキスだけするなんて俺たち最近そんなことないよな?

「よし、これから俺たちはキスだけするからな」
司はそう言うとソファの隣に座るつくしに優しく唇を合わせた。
「イテッ・・」
歯と歯があたっちまった。
ファーストキスじゃあるまいし、なんで今さらこんなことになるんだ?
「道明寺、下手・・」クスリと笑う牧野。
「あほか、誰が下手なんだよ!おまえがちゃんと口閉じてねぇのが悪いんだ」

手と手を握り合ってキスだけするなんて、何年ぶりだ?
優しくついばむようなキスから、舌を絡めるような深いキス。
口腔内をねぶるようなキスまで色んなキスをしまくった俺たち。
下心抜きで長い間キスだけをする・・
いや、下心が無いっていったら嘘だけど、今はキスだけで十分だ。
こんなに長い時間をキスだけに費やしたことは今までなかったはずだ。

牧野が生理だったわずか1週間のうちに俺のセックスに対する概念は一気に覆された。
俺はなぜこんな重大なことに気づかなかったんだ!
キスだけでもこんなに興奮するなんて知らなかった!
唇と唇が重なって、相手の温かさが伝わって、優しく動く唇はなまめかしくもある。
理屈じゃ動かない唇が動くってのは相手への思いがあるからこそだろ?
中坊のとき、どうでもいい女とキスしてるときなんか俺の唇なんて1ミリ足りとも動かなかったはずだ。
キスしてるだけでもこんなにいい気持になれるなんて知らなかった。
目から鱗って言うのはこのことか?
でもこれは相手が牧野だからこそだろ?
他の女なんかじゃ絶対こんな気持ちになんてなるわけない。
ま、他の女となんかキスするつもりなんて金輪際ねぇけどな。


ところで、あれから1週間だろ?
もうこいつの生理はもう終わったはずだ。

ならこのモナコで大声上げさせてもいいよな?
俺の今日の妄想が酷いのはこんな感じで暫くお預け食ってたからだと思ってくれ。


「ゴメン牧野」
「アレ、もう終わってるよな?」念のため確認。

小さく頷く牧野。
そうか!

「牧野、そろそろレースが始まるらしいからバルコニーから見ないか?」

モナコの富裕層は海に浮かぶ豪華クルーザーのデッキからとか高級マンションとかホテルのバルコニーとかの特等席からレースを見るのが定番だ。
俺たちもマンションのバルコニーから観戦する。
そんなマンションのすぐ下を通過するマシンたち。

司はつくしの手を取るとバルコニーへと連れ出した。
目の前に広がるのは地中海の青い空と青い海で潮風が心地よかった。
なんか思い出すよな・・
高校時代仲間を連れて俺のうちが持ってる島に行った時のことを。
バルコニーでこいつを後ろから抱きしめたあの時の光景を。
あの後、類とこいつが抱き合ってるとこに出くわして大変なことになったってのもあったけど、今は許す。

牧野はすごい綺麗な海。と言って遠くの海を眺めている。
この台詞もあの時と全く同じだ・・。
あの時は無理矢理やっちまおうかと思ったが俺の理性がそれを許さなかった。
俺は俺を好きな女じゃねぇと抱きたくないだなんて言ったけど、本当はヤリたくて仕方がなかったってのが本心だ。

「おまえのことずっと考えてた」

それはあの頃からずっと変わらない俺の気持ち・・
司はまるであの時の光景を再現するかのようにつくしの背後に歩み寄ると、ウエストを抱きしめた。

「どうみょうじ・・」

まるであの頃に戻ったような気持だ。

だが、

あの頃と違うことがある。

それは、俺もこいつもいい大人の恋人同士ってことだ。
だから・・・

司はつくしのウエストから手を離すとバルコニーの手すりを掴み、つくしを自分と手すりの間に閉じ込めた。
手すりはどっしりとしていて下からは見えない造りだ。
階下の道からはF1マシン特有のエンジンの爆音が聞えて来る。


「ど、道明寺?」
「ちょっと・・なに・・」
「じっとしてろ。大丈夫だから」低い声で囁いて体を寄せた。

司はつくしのふんわりとしたスカートの後ろをたくし上げると尻に手を当てた。

「えっつ?な、なにするの?」
「海を見ながら・・」うなじに鼻をこすりつけた。
「おまえと愛し合いたい・・」
「ちょっと・・ど、道明寺っ?」
司はつくしのパンティに指をかけると、くるぶしまで落とした。
「ど!どうみょうじっ?」
「黙ってろ」
司はひざまづくとつくしの足元に落ちたパンティを足から抜いた。
「おまえ、覚えてるか?高校んときのこと・・」
「南の島で俺が後ろから抱きしめて俺たちの部屋だって言ったときのこと」
「えっ・・うん。お、覚えてる・・」
「あんとき、俺がどんな思いだったか・・」
おまえが欲しくて、欲しくてたまらなかったんだよ・・
「牧野、尻を突き出せ」
つくしは言われるまま素直に上体を屈めた。
司は笑い出しそうになっていた。
何だかんだ言ってもこいつ俺の望んでるとおりにしてくれるんだよな・・
「いいぞ。牧野、しっかり手すりに掴まってろ」
司はつくしの臀部を抱えると好ましい体位を保って、ゆっくりつくしの中へと入っていった。
「ああ・・あっ・・」
そこは濡れて司を咥え込んだ。
「力を・・抜け、まきの・・」

「息をしろ・・」
ゆっくりと動き出した司の体。
「・・う・・ん・・あああっ!」
つくしの中は司を締め付けた。

「まきのっ、まき・・のっ、・・クソッ・・まきのっ・・」

「あっ、あぁっん・・ど・・どうみょ・・じっっ!」

「い、いい・・どうみょうじっ!!」

何度も後ろから突き上げて、こいつに経験させたことがないほどの叫び声を上げさせた。

いいんだよ!

F1マシンの爆音に紛れてこいつの叫び声なんか隣近所に聞えやしねぇよ!
眼下を通過するマシンなんて2人共見ちゃいねぇ・・
俺たちが見てるのは正面に見える青い空と海だけ。
多分それさえも目には映ってない。
そんな2人が感じるのは互いの喘ぎ声と息遣いだけ。

「大丈夫か?」
「まきの・・いやだったか?」
「い、いやじゃないけど・・」
「なんだよ?」
「・・外でなんて・・誰かに見られてないかと思ったら、は、恥ずかしかった」

クソッ!
牧野、かわいいじゃねぇかよ!
マンションの最上階なんて誰も見てねぇよ!

たった1週間なのに我慢出来ないなんて・・
俺の体はどうなってんだ?

けど、

牧野の体が悪くなって出来なくなってもそんなことは関係ない。
女はこいつひとりでいい。
牧野が傍にいてくれたらそれでいい。
そうだ、牧野以外は必要ない。

だって牧野は牧野だからな。

よし、来年もモナコで叫び声を上げさせてやるからな!
ここならどんなにデカい声で叫んでも問題ないからな!
来年はもっとデカい声で叫ばせてやるよ。
また来年も俺を好きだって思いっきり叫んでくれ。

もちろん、俺も叫んでやる。
牧野、愛してるってな!







* F1 2016 モナコグランプリ開催中。5月28日予選 5月29日決勝

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2016
05.27

大人の恋には嘘がある 13

「気は確かなのか?」
「ああ。俺は何も問題ない」その言葉にはみなぎる決意があった。

こんな中途半端な状態じゃ仕事が手につかない。
日々目をむけるべき業務はいくらでもあるが牧野を自分のものにするまで、さっぱり集中することが出来ない。
微妙な関係について西田に聞いただけで何とかなるとは思えなかった。

司は思わず笑みを浮かべた。これから3年越しの恋を実らせるための作戦を練ろうかってところに女に関しては自信のある2人の親友をバーに呼び出して飲んでいた。
2人の男はこと女についての駆け引きはどちらも引けを取らない。限りなく楽観的な考えで女達とつき合うことが出来る2人の男。女と楽しむことが何よりだと言わんばかりで1人の男は人妻とつき合うという危険を冒すことを楽しんでいる。

「おまえのその目、久しぶりに見た気がする」
「狙った獲物は逃がさないって目だよな?」
「けどその獲物って今までは女じゃなくて欲しい会社だっただろ?」
「しかし、微妙な関係ってどうだよ?」

司はつくしから提案された微妙な関係について話しをしていた。
あきらと総二郎の頭に浮かんだのと同じ疑問が司の頭の中にもずっと浮かんでいた。

「西田が言うには友達以上、恋人未満だとよ」
「おまえら中学生の恋愛か?」
そんな昔のことなんて覚えてねぇよ。
司は大きくハァーとため息をついてから口を開いた。
「俺にもさっぱりわかんねぇ。微妙な関係に含まれるものって何なんだ?」
「司、そんなこと俺に聞くなよ?」
あきらは総二郎に顔を向けた。

「司、それを言うなら含まれないものを言ったほうがいいかもしんねぇな」
「セックスはどうなんだ?」
司の力の入った口調はどうしてもこれだけは確認しなければいけないという思いだ。

「バカかおまえは。友達がセックスなんかするか?」
あきらのその言葉に司はむっとした表情を浮かべた。
「そんなこと誰が決めたんだ?」
「あ、でもセックスフレンドってのはあるよな?」総二郎があきらをつくづく眺めた。
「だって俺らって女とつき合ってなくてもヤッてるよな?」
「総二郎、今は俺とおまえの話しじゃない」とあきらがたたみかけた。
「いま話してるのは司の話だ」
「おまえらがヤッてんなら、俺もしていいんだろ?」
牧野を思っての3年間は他の女のことなど、どうでもいい3年間だった。
名前も顔も誰が誰だかわからないような女が近寄って来ても司にとってはどうでもいいことで、興味が湧かなかった。

「そりゃしてもいいとは思うが、相手の女がその気になんねぇと無理だよな?」
「まあ、今までの司の場合、女は寝るか寝ないかのどっちかしかなかったからな。
そんな司がまあ、よく3年も我慢できたよな?」

司はますますむっとした顔で2人を睨むとグラスをあおった。
なんだっていうんだ?それが悪りぃかよ?
なんでそんな知ったような口を利くんだ?
俺は牧野つくし以外欲しくなかったんだから仕方がねぇだろうが!

「しかし、司の顔は油断ならない顔してるからな」
「それで、今おまえ達の関係はどこまでいってるんだ?」
「キスはした」
「流石だ、司」 総二郎はおまえがそこで躊躇してるのがおかしいと声を上げて笑った。
「けどな、俺はこんなプラトニックな関係ってのには慣れてねぇ」
司は大きくため息をついた。
だが、俺と牧野の間に互いに惹かれ合う緊張感が感じられるのは確かだ。
司はバーテンに合図をすると次のグラスを待った。

「そりゃそうだ。女とただの友達でいるなんて子供じゃあるまいし出来るわけがないよな?」
「それで、おまえが好きになったその、3年前の女ってのはどんな女なんだ?」
総二郎の口調はますます面白そうだ。

「ああ。仕事が出来る女。酒もたばこもやんねぇ女でいたって健康的」
「司!おまえは仕事の出来る女に惚れたのか?」
「胸がデカいとかじゃなく?」
「バカ野郎、そんなこと関係ねぇんだよ。あいつは日々目標のために努力するような女だ」
「それに水族館の電気ウナギがお気に入りだ」何故か誇らしげに言った。
奇妙なことに司はつくしが気に入ったという電気ウナギに興味を抱くようになっていた。
好きな女が気に入ってるって言うんだから自分も少しは興味を持つべきだと考えていた。

「で、電気ウナギっておまえ・・その女相当変わってるよな?」
「その女。牧野って言ったよな?」
「ああ。そうだ」
「おまえが脳みそのある女に惚れるなんてこと自体が驚きだけど、わからないこともない」
「おまえの周りには見た目がいい女なんて掃いて捨てるほどいたけど、本音を隠して近づいてくる芝居がかった女が多かったよな?」

それは十分過ぎる程わかっていたことだ。金があって力がある家に生まれれば周りに集まるのは本音を隠した奴らばかりで、心の底から信頼できると言えば同じような環境で育った悪友たちしかいない。

「そうそう。俺らの周りに集まるのは財産目当ての女ばかりだからな」
「それで、司が好きな女って独立心が旺盛な女か?」
「ああ。間違いなく独立心旺盛だ」
独立心、それはまさにあの女のためにあるような言葉だろうな。
まあ、頑張り過ぎる面もあるが。

「なるほどな。今までおまえの周りにはひとりも居なかったタイプの女ってわけだ」
「羨ましいよな。ある意味そんな女に出会えたなんて・・」
親友の言葉にはある種の羨望が含まれているように感じられた。

「そうだよな。金目当てじゃなくて、俺らをひとりの男として見る女なんてのはなかなかいねぇからな」
「司がその女に求めてるのって体だけじゃないんだろ?」
「おまえがその女に求めてるのってのはなんだ?」
唐突な問は司自身にとっては思いもよらぬものだった。


俺が求めているものか?
だが、改めて考えるものでは無かった。

「俺が求めているものはあいつの体だけなんかじゃねぇよ」
「そうだろ、司。俺らだっておまえと同じものが欲しいんだけどそんな相手にはなかなか巡り逢えねぇんだ」
司は2人が話す同じものが何か知りたかった。
「なんだよ?同じものってのは?」
「わかってんだろ、司」
「心だよ、心。ハートだ」あきらは自分の胸に手を置いた。
「心のつながりだよ、俺らが求めてるのは」
「いくら体の相性が良くて、体だけがつながっててもツマンネーだろ?」

男2人の口から出た思いもよらぬ言葉。
普段の2人なら決してこんなことは言わないはずだ。

「しかしな、司。おまえはその牧野つくしに呪いをかけられたんじゃねぇのか?」
「3年前にその女に呪いをかけられて、それから女とヤッてないってんだからな」
「その女、電気ウナギを操る魔女じゃねぇのか?」
総二郎は笑いながら言ったが再び真剣な顔に戻った。
「がんばれよ、司。おまえにとってマジな恋なんだろ?応援してやるよ」
「俺も応援してやるよ、司」
あきらは手にしていたグラスを掲げると、司のグラスとかちりと合わせた。



司は悪友2人の頭に牧野つくしに関してとんでもない話しを吹き込んでしまったかと思ったがこいつらが勝手に牧野を探し出して変な勘ぐりを入れるよりは自分で話すことが一番いいと思っていた。何しろこいつらは俺のマジな恋を楽しんでるようだからな。
首を突っ込むなって言ったところで所詮無駄だってことはわかってる。
だが思わぬところで2人の本音が聞けたことは司にとっても意味のあることだった。
なんだかんだ言ったとしても、こいつらが求めるものってのは俺と同じだったってことか。









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2016
05.26

大人の恋には嘘がある 12

つくしは雨が降り出したので慌てて地下鉄の入口へと駆け込んだ。
普段なら仕事のことで頭がいっぱいなのに、道明寺からお互いに知らない者同士として試しにつき合ってみないかと言われ、いいわ、と返事をしていた。
頭の中が仕事よりあの男のことでいっぱいになりつつある・・

他の女性が道明寺からつき合おうなんて言われたら、きっと素直な気持ちで返事をするんだろうな・・
あたしなんかみたいな返事の仕方はしないはずだ。
でも試しにつき合ってみないか?なんて言われたんだから、あの返事でもよかったはずだ。
そう簡単に誘惑に負けるわけにはいかない。あたしにだって女としてのプライドってものがあるんだから・・




***




エレベーターが開き、司は頭の中で優先するべきことを考えた。
それはもちろん牧野つくしについてだ。
廊下を歩いて自分の執務室である副社長室までずんずんと歩いていた。
まず何からすればいい?必要だと思われることは何でもするつもりでいた。
秘書に言って花でも贈るか?花と一緒にあいつの好きそうな甘い物も贈るか?
試しにつき合ってみないかと声をかけ、案外あっさりと了承したのはどうしてだと考えた。
ただ、ひとつ提案があると言われた。
つき合う上での提案・・

それは微妙な関係でつき合ってみないかと言うことだった。
上目遣いで見つめられ、思わずよしわかったと頷いていた。
互いに知らない者同士として試しにつき合ってみないか?の答えが微妙な関係でつき合う。
なんだよ、その微妙な関係ってのは?俺が試しにつき合ってみないかって言った試しが悪かったってことか?

クソッ!言い方がまずかったってことだよな?
試しにじゃなくマジでつき合おうって言うべきだった。
だが互いに自分について相手が知らないことを教え合うことから始めようと言われれば、最初から始めないかと言った俺の提案に対しての答えとしては理に適う。
要は今までのことは無かったことにして新しい関係を始めようってことだよな?
ああ。確かに俺は古い話しは水に流せとも言ったが、マジで初めっからスタートするってことか?それに微妙な関係・・この意味はなんなんだ?


司は副社長室の手前にある秘書室から出て来た西田に呼び止められた。
「副社長、ちょっとよろしいですか?」
「あとにしてくれないか?これから・・」牧野の言う微妙について考えるところだ。
司は西田の前を通り過ぎようとしていたが、立ち止まると振り向いた。

「おい西田、微妙な関係ってなんだ?」司は西田を見据えた。
「副社長、仰っている意味がよくわかりませんが?」
「男と女の間で微妙な関係って何だかわかるか?」
司にしてみれば、男と女の間なんてのは所詮寝るか寝ないかどちらかだろうとしか思えなかった。だからつくしが言う微妙な関係の意味するところが理解出来ずにいた。


銀縁メガネの男の顔は至極真面目だったが、勘が鋭くよく知恵が回る。
「男と女の間で・・ですか?」
四十半ばの男に聞くことかと思ったがまさか秘書室にいる女の役員秘書に聞くわけにもいくまい。
「それは友達以上、恋人未満ということではないでしょうか?」
「もしかして牧野様のことですか?」
勘が鋭い男はメガネの奥に見える目の表情を変えなかった。

流石お袋の懐刀と言われた男だ。
西田は俺の秘書になって何年になる?
牧野がニューヨークにいた頃はこの男はまだお袋の秘書だったか?
だから牧野のことは知らないか・・
だが俺が牧野にグラスの水をぶっかけられた所も見られているし、ここのところ投資関係の資料持参で執務室へも頻繁に出入りする姿も見ていればわかりそうなものだよな。

本来なら俺が女の担当なんて受け入れるはずがないってことはこの男だってよく知ってる。
それに西田からすれば俺が他人に資産運用を任せなくても自分でそのくらい簡単にやってのけることは十分知っているはずだ。牧野からの提案書は申し訳ないが精読はしていない。
ここへ来させて、話しをするチャンスが欲しいからの手段であって内容はどうでもいいのが事実だ。


「微妙な関係ってのは友達以上恋人未満か・・」

あの女ガキみてぇなつき合いを望んでいるわけじゃないよな?
待てよ。殆どの女は男に対してはっきりした関係を求めるものだろ?
微妙とか曖昧とかって関係ってのは普通女の方が嫌がるもんだろ?
それなのに女の方が友達以上恋人未満の関係を求めるってのは何なんだ?
あいつ俺のこと本気で考えるつもりはあるのか?
まさか俺のこと都合のいい男だなんて考えてるわけじゃねぇよな?
牧野と揺るぎない関係を築くためにはどうしたらいい?


「西田、頼みがある」
「はい、副社長」
「花を贈ってくれないか?」
「承知いたしました」
「それから・・チョコレートも」
「承知いたしました。ではただちに取り掛かります」
「おい、送り先は・・」
「承知しておりますので」
いかにも分別臭い西田の表情はまったく変わらなかった。

「いいか西田。ニューヨークには・・お袋には言うなよ?」
「それも承知しております」
西田にしてみれば言うもなにも副社長の動向はニューヨークにいらっしゃる頃からご存知かと思われますが。とは敢えて言わずにおくことにした。

司は副社長室の扉の前で立ち止まると振り向いた。
「西田、それでおまえの用はなんなんだ?」
「はい。今夜予定しておりました会食は延期になりました」
西田は司の片眉が上がったのを見た。

「副社長、僭越ながら申し上げます」西田は意味ありげに咳払いをした。
「ご自分の評価が落ちるような行動だけはお慎みになられた方がよろしいかと思います。」
「牧野様は、曲がったことがお嫌いのようにお見受けしました。つまり嘘もお嫌いと言うことかと」

「ああ。わかってる」司は西田に目を合わせた。
「おまえが言いたいのは俺がこの前あいつにグラスの水をぶっかけられたとき、俺たちに何かあったってことには気づいてたんだろ?あれはそうされても仕方がなかったんだよ」

西田は自分の上司が特定の女性に対してこんなふうに嬉しそうに話す理由がわからないほど馬鹿ではない。この3年間浮いた話しが無かったのは牧野様のせいだったのかと納得していた。

「それにあいつに嘘をついたらどんな事になるか、そんなことは3年も前に学んだからな」
「これから俺はあいつの前ではありのままの自分でいるつもりだ」

でなきゃ本当の俺を知ってもらうことなんて出来ねぇからな。
これからは本気であいつを求めにいってやる。








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2016
05.25

大人の恋には嘘がある 11

水槽の底でじっとしている電気ウナギ。体長2メートル以上は優にあり胴回り直径15センチはあろうかという電気ウナギの体は、灰褐色でまるで丸太のようだった。
司は横を向き、隣に立つつくしの顔を一瞥してからまた水槽の中でじっと横たわっているウナギに視線を戻した。

司は電気ウナギについて興味はなかった。
だが、好きな女が電気ウナギを好きだなんてことを聞けば、これから勉強するべきか?と考えずにはいられなかった。
普通の女なら、高価な宝石とか、鞄とか洋服を欲しがるがこの牧野つくしは本当に電気ウナギが好きなのか?それなら俺は電気ウナギを買ってプレゼントするべきなのか?
確かアマゾン川だって言ったよな?ブラジルの支社に連絡して捕獲させるか?
いや、待てよ・・いくらなんでも電気ウナギをプレゼントする男がどこにいる?
2人して水槽の中でじっとしている電気ウナギを眺めていると、ウナギの体がぴくぴくと震えたのがわかった。
おい、放電してるってことか?

「おまえ、本当に電気ウナギが好きなのか?」
司は聞かずにはいられなかった。
「道明寺はどう思う?このウナギ?」
「ど、どう思って言われてもよぉ・・」

こいつ本気で俺に聞いてんのか?
例え食えたとしても、とてもじゃないが到底美味そうだとは言えない代物で、見た目もなんとも言えずグロテスクに感じられた。
果たして正直な感想を述べていいものか・・
もしかして、これは俺を試してるってことか?

「道明寺、正直な感想を言ってくれる?」
正直な感想・・
司は二度と嘘はつくなと言われた手前、頭に思い浮かんだことを正直に答えることにした。

「食っても不味そうだし、かわいいとはとても言えねぇよな」
ウナギはまるで司の言葉が聞えたかのように、ぴくぴくと体を震わせた。
もしかしてこのウナギは俺の言葉に怒ってんのか?

「そうよね・・食べても美味しくなさそうだし、とてもかわいいとは言えない」
「あたしもそんな女だと思う・・」

なんだよそれ?
なんでおまえは自分を電気ウナギに例えてるんだよ?
司は聞かずにはいられなかった。「それどういう意味だよ?」

「まあ、あんたはあたしについてはもう色々と調べているから知ってると思うけど、あたしの家は生活に余裕がない家で、あんたのとこみたいに裕福じゃないの。まあ、あんたと比べること自体が間違いなんだけどね」

誰もいない水族館では声をひそめる必要もなく気兼ねなく話しが出来る。

「今ではあたしもそれなりの生活が出来るようになったけど、学生時代からよく働いたの。
毎日バイトと大学の授業で大変な思いをして卒業したの。それから今の会社に入社したんだけど、あんた・・道明寺副社長もご承知のとおり金融関係の仕事ってノルマがキツイの」
つくしはおどけるようにわざと副社長の敬称を付けて言った。

「それでもね、決められた目標に向かって数字を積み上げて行くのはやりがいがあって、あたしに向いてたかな?」
数字は正直だ。誤魔化しが効かない。

「日本で何年か仕事して、それからニューヨークへ異動になって・・それからあんたと出会ったんだけどね・・」
「それまでは仕事一直線だったから男性に対して免疫が無かったって言うのが正直な話かもしれない」

道明寺がそれまで眠っていたあたしの中の欲求の目を覚ましたのは確かだった。
恋愛経験の少ないあたしが認めたくはないけど、道明寺のことを好きになり始めたときに
つかれた嘘だったから、騙されたと感じ傷ついた。
男と女が分かち持つ特別の感情を感じられたと思っていたから他人を装っていたことを知ったとき、ショックだった。


「あたしはニューヨークで仕事に疲れたら水族館に行くようになったんだけどね。何故か電気ウナギを見て、この姿に癒されたって言うのか、興味が湧いたというのか・・」
「ほら、見てよ?この冷たそうな醒めた目。それに何にも考えてなさそうな顔」
つくしは水槽の中でまどろんでいる電気ウナギに顔を近づけていた。

「いや、俺に言わせりゃ魚なんてどれも何も考えてねぇと思うが?」
「確かにそうだけどね、なんかこんなに大きな体なのに脳みそなさそうで、それでも体から電気を発して相手を痺れさせて獲物を取るんだから凄いと思ったのよ」
「もし、知らずにこのウナギに触れたら人間だって下手したら死ぬこともあるらしいから」
つくしは水槽のガラスに手を触れてみた。ひんやりとした冷たさが手に伝わって来た。

「まあ、それはさておき、あたしは見た目かわいくないし、食べても・・この電気ウナギみたいに美味しくはない・・」
「そんなあたしでもあんたと出会って、ああ、仕事だけじゃなくてもいいのかな?なんて考えてしまったのよね・・」
「でも思えば仕事ばかりで、あたしはこの電気ウナギみたいに醒めた目の女かもしれないでしょ?」
「ねえ、あたしのことが好きだって言うけど、いったいあたしのどういうとこが好きなの?」
つくしは水槽から顔を離すと後ろを振り向いた。

まだ言ってなかったか?
「おまえの前向きなところだ。日々目標に向かって努力するところ。そこへたどり着くための努力は惜しまないというところだ」
「あたし達、短い期間しか・・会ってないのにどうしてそんなことが言えるの?」
「おまえ、俺の立場わかってて聞いてんのか?」
「人を見る目がなきゃ俺の仕事は務まらない。例え会った回数が少なかろうと、相手がどんな人間かなんてことくらいは会話の中から拾えるもんだ」

おまえには自分で決めたことは最後までやり遂げるという強い意志が大きな瞳の中に感じられた。それは敵対関係になった時、初めて知ったこいつの力強さだ。

「俺はおまえが好きだからつき合いたいし、もっとおまえを知りたい。3年前俺たちはまだ互いを知らないままで始まったばかりだったはずだ。だから今からまた・・最初から始めないか?俺たちはいい大人なんだし、人生もそれなりに過ごして来たんだ」
「古い話しは水に流して、互いに知らない者同士として試しにつき合ってみないか?」



おまえが自分をこの電気ウナギみたいだって言うんなら、俺は牧野つくしって言う電気ウナギに感電させられた魚ってことだ。
それにおまえ俺に対して相当強力な電気を浴びせかけたことは間違いないはずだ。



俺は3年前におまえに感電させられてから・・

ずっとおまえに痺れっぱなしだ。









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2016
05.24

大人の恋には嘘がある 10

初めはあり得ないと思って突っぱねていたが、司のあまりのしつこさに負けたつくしは
日曜日の誘いを受けることにした。
じゃあ昔のよしみで・・と答えたつくし。
あのとき、道明寺の目に一瞬だけ危険な色が宿ったように見えたが、それも瞼を閉じたことで遮られてしまった。次に目が開かれた時はそんな色もなく、気のせいだったのかもしれないと思った。別にしつこいから誘いに応じたというわけでもなかったが、自分でもどうしてそんな気になったのかは、わからなかった。

考えてみれば3年間デートなど一度もしたことがなく、会社と自宅の往復だった。
独身の男性が職場にいないわけでもなかったが、つくしにとっては同僚としか思えなかった。ただ、一度だけつき合って欲しいと言われたことがあったが断っていた。

まさか3年ぶりに男性と出かけるのが道明寺だなんて・・
やっぱりこれってデートなの?
金曜の夕方に念押しのように道明寺から会社へ電話がかかってきた。
会社の電話なら出ないわけにはいかない。
『おい牧野!道明寺副社長から電話だ』と叫ばれたら出ないわけにはいかなかった。
それにしても、今日まで毎日電話がかかってきた。
内容は・・・まったく仕事には関係がなかった。
今なにしてるんだ?とか、時間間違えるな、とか・・。
道明寺の質問にはい。と、いいえでしか答えないあたしに周囲の人間が耳をそばだてていることはまるわかりだった。
電話を切れば何か問題でもあったのかと聞いてくる。そりゃそうよね・・道明寺HDが大口顧客となった今、粗相があったら大変なことになるってことは社員一同充分承知していることだ。
会社全体の目が全部あたしに向けられているようで怖いのよ!
衆人環視とはこのことだと思った。
これって・・道明寺の作戦?
なんだか網を持った人間がじわじわと近寄ってきてあたしを捕まえようとしているような気にさせられるのは・・気のせい?


***


司は椅子に背中を預けた。
自分を好きになってもらうためのチャンスをくれと牧野に言った。
あいつと知り合ったのは3年前。他の女関係は3年前にすべてきれいにケリをつけていた。 3年以上女関係がないなんて自己最長記録だな。それまでの俺は女とつき合えばある程度の時間が経てば別れていたことが殆どだ。だから相手のことを深く知りたいとか、自分のことをもっと知って欲しいなんて考えたこともない。

そもそもここまで真剣になれる相手に巡り会うなんてことが初めてだ。
記憶をたどってみたが、やはりそんな女はいなかった。
それに女とただの知り合い関係でいるなんてことの経験がない。要はプラトニックな関係でいるということ自体が初めてだ。それも3年だぞ!
いやこの3年は俺が勝手に思っていた3年だった。
寄ってくる女はいくらでもいたが、牧野つくし以外は欲しくないんだからどうしようもなかった。

俺に関心を払ってもらうにはどうしたらいい?あいつの会社をうちのコンサルタントとして契約させたし、あいつは俺の専属にした。
これ以上なにをすればいい?
あいつが興味を持ってるものってなんだ?女だから洋服とか宝石か?
俺はこんなにひとりの人間を思って頭を悩ますことなんて今まで無かったはずだ。
それに何かに対して、それは物や人に対してだがこんなに執着したことは無かったはずだ。
まったく妙な話だが惚れたんだから仕方がねぇよな。
この前は我慢が足んなくて思わずキスしたが、牧野に対してはじっくり慎重に行くべきなんだろうな。

焦りは禁物か?






日曜日、2人が出かけたのは水族館だった。
司に誘われたつくしは、出かけるなら水族館がいいと言った。
決してけんか腰で話しをしているわけでもなく、まるで古い友人のような態度で話しはじめた2人。
なぜ水族館なのか?ニューヨークにいた頃、よく1人で出かけたのがコニーアイランドにあるニューヨーク水族館だったからだと答えた。
ニューヨーク水族館はアメリカ国内で一番古い歴史がある。こじんまりとした昔ながらの素朴な水族館だ。

マンハッタンから地下鉄で約1時間ほどで行けるブルックリン区南部にあるコニーアイランド。地下鉄と言ってもマンハッタンを出ればずっと地上を走り、終着駅がコニーアイランドだ。名前のとおりかつては島だったところだが今は陸続きだ。

そこには遊園地や水族館、大西洋に面する全長4キロに渡る砂浜があり、ニューヨーク近郊のリゾート地、観光地として知られている。
砂浜に沿ってボードウォークと呼ばれる板敷の遊歩道が整備され、散歩やジョギングをする人々が行き交っている。日本で言えばお台場のようなところだ。


「なんで1人で水族館なんだ?」
司は動物が苦手だったが水族館ならガラスの向うにいる魚を眺めるだけだから問題ないと思った。
「考えごとをするのにちょうどいいから」
「だって魚は静かでしょ?」
「別に動物園でもよかったんだけど?」
司は情けない顔をした。「いや。動物園だけは勘弁してくれ」


今ふたりがいるのは都内にある比較的新しい水族館だ。
魚は静かだと言うが、この水族館自体が静か過ぎるほど静かだった。
それもそのはずだ。道明寺が貸し切りにしたんだから・・
だがさすがに日曜日の真っ昼間を貸し切りにするわけにもいかず、夜9時以降2時間だけだが貸し切ったらしい。
最近では夜10時まで営業したり、特別にナイトツアーを行う水族館もあるくらいで、この時間ならと水族館側も道明寺からの依頼に特段の難色は示さなかったらしい。
あくまでも本人談で水族館側の考えは不明だが。

「ふーん」
「で、おまえはよく1人でその水族館に行ってたのか?」
司は何が楽しくて1人水族館に行くのかが不思議だった。
「退屈しねぇのかよ?1人でなんて?」
「しない。だって考えごとをするために行ってたんだもの」

観光地として有名な場所で砂浜は夏になれば大勢の人で賑わう場所だ。
だが、冬になれば人はまばらになる。
なにしろ大西洋に面した場所で海からの冷たい風をまともに受ける場所だ。
まさか人出の多い夏場を選んで行っていたとは思えず、それならやはり冬場だろうと考えた。

「あんたは・・たまにはマンハッタンの喧騒を逃れてのんびりしたいとか思わなかった?」
「そんな暇なんてねぇよ・・」
「それで、おまえは考え事をする以外に水族館の中でなんか目当ての魚でもいるのかよ?」

2人はひんやりとした静寂な空気が流れるなかで壁に埋め込まれた水槽を眺めていた。
「うん。あたしね、これが好きなの」
つくしが示したのは横に長い水槽の中でじっとしている細長い円筒形のなんとも言えない魚だった。

「これ、電気ウナギ」
「はぁ?」
「だから電気ウナギよ、電気ウナギ」
「アマゾン川のあたりに住んでいてね、電気を起こすの。これに触れると人間も感電するんだって!」

司はつくしの知らなかった一面を見た気がした。
この女、意外と変なものが好きなんだな。と。








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2016
05.23

金持ちの御曹司~ひそやかな愉しみ~

*********************************
大人向けのお話です。
未成年者の方、またそのようなお話が苦手な方はお控え下さい。
なおイメージが著しく損なわれる恐れがあります。ご注意下さい。
*********************************






「後ろをむけ」
「スカートをまくり上げて脚を開け」
「あっ・・・だめっ・・」
「なにがだめなんだ・・?」
「あっんっ・・だ、だって誰か来たら・・ふっ・・ん・・あっ・・」
司は背中のファスナーを下ろすと上半身を裸にし、つくしの中に指を1本滑り込ませた。

ぐちゅ・・
「ああっんっ!」
「おまえのアソコがこんなにイヤラシイなんて誰も知らねぇもんな・・」
「しかも下着をつけてないなんて、俺を待ってたんだろ?」

後ろからぐちゃぐちゃと掻き回されて、突起をつままれ、こねくり回されつくしは何かに掴まっていないと膝から崩れ落ちてしまいそうだった。
顔が見えない分、まるで知らない男に凌辱されているようだ。

「ああああ・・っ!」
「どうだ?もう1本入れて欲しいか?」

トロトロでグチョグチョの牧野のなかはどんどん溢れてきて垂れ流しだ。
「ああ・・お・おねがいっ・・ど、どうみょうじ・・・・先生っ!」
ズブズブと呑み込まれた2本の指はつくしの中でバラバラとうごめいた。

「はあっっ!あああっ・・・」
「なあ、牧野・・誰があの患者のカテーテルを抜いていいって言った?」
「あっ・・・だって・・先生が・・」
「いつ俺がそんな指示を出した?」
「あ・・だって・・日勤の先輩が・・も、申し送りで・・あの患者さん・・もう・・トイレに行けるから・・あっん!」

司はむき出しになった乳首に聴診器の平らな金属をあてると擦りつけた。
「あああっっつ!」
「医者の指示が守れないってんならナースなんて辞めちまえよ・・」

心臓外科の権威と呼ばれる男は細く、長く、きれいな指でつくしの中を掻き回していた。
その指はついさっきまで6時間にもおよぶ心臓切開手術をこなしてきたところだった。

「はぁ・・んん・・あっ・・」
「俺の言いつけを守らないナースにはお仕置きが必要だ」
指が3本に増やされると親指は突起をグリグリと押しつぶした。

「やっ・・ああんっ!」
「そうか・・そんなにお仕置きして欲しいのか?」
「ああん!・・ど、どうみょうじ・・先生!」
「カテーテルなんかじゃなくて・・もっといいモノ・・欲しいだろ?」
「ね・・せ・せんせ・・お・・おねがい・・は、早く・・先生のおっきな注射・・して?」

両手を目の前の棚に載せたつくしの腰は後ろへと引かれた。
「・・ったく・・いやらしい・・ナースだよな・・」

つくしは両脚の間隔を広げられると、背後にいる司へと尻を差し出した。

「いい眺めだな、牧野・・純情ナースと言われるおまえが夜勤になると夜な夜な俺に抱かれに医局まで来るなんて、看護師長が知ったらどうするか・・」

司は白衣の下でガチャガチャとベルトをはずし、ファスナーを下ろすと太くて硬くて長いものを一気に根元まで突き入れた。

「あああああっっ!・・・ど、どうみょうじっせ・・・先生っ!!」






うっ・・





司は官能的な夢から目覚めた。
シーツは汗でぐっしょりと濡れていて、体は熱をもっているかのように熱かった。

なんだ、夢か・・
夢にしてはリアルだったな・・
だが何故か片手は自身を握っていた。

やべっ・・・やっちまったか・・
シーツにぶちまけられた白濁したソレ・・

・・・・。
いいじゃねぇかよ!
男の生理現象だ。
男としての機能は問題ないってことだ。

けど、今朝の夢は俺の願望か?
おとなしい女ほど変態プレイにのめり込むと聞いたことがあるが・・
俺が医者で・・牧野がナース・・
これ俺が妄想してたやつだよな・・
確かバレンタインにあいつを追いかけて行ったインドネシアから帰ってからだ。

それは・・
医局で白衣を着た俺と露出度満点のナース服を着た牧野の話・・
『ああん・・どうみょうじ・・大っきい注射して・・』
『あん・・もっと激しく・・・お願いっ・・・』
なんて言われて両手を牧野のかわいらしい尻に這わせて持ち上げて・・
後ろから思いっきり・・
以下略。

そうだ!
インドネシアであいつにとんでもねぇ目に合わされて帰国してからだ!

まあいい。
それよりもこれは俺の願望なのか?妄想その2か?
やっぱ俺のコスプレ願望か?
まだ妄想その1もまだだって言うのに、その2かよ!

司は考えた。
まずは妄想その1をどうやったら叶えられるか・・
それは・・・
牧野が『今日は遅かったんですね・・』とか言って・・
俺は『迷惑だから帰れ!』なんて跳ねつけて・・
そしたら牧野が『どうしてそんなこと言うんですか。あたし道明寺さんが好きなんです!』
なんて言うから、『そんなに好きなんなら俺の言うこと何でも聞くか?』ってなわけで
部屋に連れ込んで悪戯する。
以下略。
俺の頭の中はすでにシナリオが完成してる。
あいつノリノリでやってくんねぇかな・・・
イ・タ・ズ・ラ・・・・



***




昼下がりの執務室。

「牧野、これ」
「え?どしたの道明寺?」
そんな明るい顔してほほ笑んでられるのも今のうちだ。
司は一枚の紙をつくしに渡すとニヤリとした。

「な、なによこれ!なんでこんなこと・・!」
「俺、お・・」
「わ、わかってるわよ!・・でもね・・あんた・・いい年していったい何考えてるのよ!」
「・・んなもん年なんか関係ねぇぞ!」
「男のロマンだ!」
「はあ?どこが男のロマンなのよっ!」
「こ、今回だけだからねっ!二度としないからっ!」
「もうっ!」
牧野は紙をポケットに突っ込むと・・走って逃げた。
あの女!なんで逃げんだよっ!




薄暗くなって来た時間にマンションのエントランスに佇むひとりの女がいる。
人の気配に気が付いたのか、ぱっと振り返って俺をみた女。

17で出会った牧野が大人になった姿で制服着てるなんて夢見てるみてぇだ。
英徳の制服を着てマンションの下で俺の帰りを待つ牧野。
もちろん長い黒髪は垂らしたままだ。

たまんねぇっ!!!
俺、大人だぞ?
それなのに制服姿の牧野に欲情しまくってる・・
もう俺のムスコはガンガン突きまくってやるとばかりで痛てぇくらいだ。


さかのぼること半月前・・
「おい、司。今度俺らとゲームしねぇか?」
声をかけて来たのはあきら。
「・・んだよ?それ?」
「おまえ、知らねぇのかよ?」
「知らねぇよ!なんで俺がゲームなんかしなきゃなんねぇんだよ!ゲームなんざガキがするもんだろうが!」

ゲーム・・・嫌な思い出が甦った。
ゲームで思い出すのは俺が牧野に仕掛けた赤札しか思い浮かばねぇ・・
あれは俺の過去で一番の汚点・・

「司クン、おまえは何も知らないんだな・・」
「仕事ばっかだもんな・・おまえ・・」
「牧野のためだよな?それもこれも・・」
「今度牧野と2人でうち来いよ。楽しめるぞ・・」
「ヤダね。そんなガキみてぇな遊びなんか出来るかよ!」
「いや。あながちバカに出来ねぇゲームだからな」
「司、ちょっと耳かせよ」
「・・・・・・・」
「・・・・!!」
「マジか!」
「ああ。マジだぞ、司!」

初めて知った大人のゲーム。

まるで俺のためのゲームじゃねぇかよ・・
ゲームの名は・・王様ゲーム。
まさに俺のためのゲームだろ?
ナイショだがあきらが俺のために仕込んでくれた当たりくじ。
当然王様は俺。
好き放題命令が出来る立場。


だから俺の妄想その1を牧野に叶えてもらうことにした。
マンションで俺に付き纏うストーカー女、女子高校生編。
俺の夢がことごとく実現しようとしている!!

女子高校生姿の牧野とスーツ姿の俺。
シュチュエーションだけで燃えてくる。
けどまるで高校時代に戻ったようなこの感覚・・
淫靡だとか、淫行だとか、卑猥だとか、扇情的とかそんな文字が頭ん中を回ってる。

「牧野・・」
「わ、わかってるわよ!!」

ここからはあらかじめ決められたセリフを言うことになっている。
ストーカー役の牧野とストーカーされる俺。

「き・・今日は・・遅かったん・・ですね・・」
ほとんど棒読みの上、のろのろと口を開くこいつ。

「・・ったく迷惑な女だな!帰れ!」 感情を込める俺。

「ど、どうしてそんなこと言うんですか。あ、あた、あたし道明寺さんが好きなんです!」
やけくそな牧野。

「そんなに好きなんなら俺の言うこと何でも聞くか?」 楽しむ俺。
「・・・・・」
言えよ牧野・・

「き、き、き、」
「聞けばいんでしょ!聞けば!」こいつの顔真っ赤!

言うことなし。


マンションのエレベーターの中からすでにヤル気満々の俺。
と、ムスコ。

「ま、まきの・・俺のこと先生って呼んでくれ・・」
この際、医者だろうがセンコーだろうが関係ない。
「言えよ・・」
「・・・」
「オレ王様・・」
「・・せ、先生・・」

・・・・その上目遣い最高!
すげぇ!
なんかすげぇいい!
エロエロじゃねぇかよ!
なんかいますぐエレベーターの壁に押し付けてヤッちまいたい気分・・
そんな俺の気持ちなんか知らない牧野は嫌々なのか渋々なのか仕方なさそうな顔して俺に付いて来る。なんだよ!ヤなのかよ?
けどな、俺、王様。今夜は俺の言う事を聞くって約束だよな?
おまえ了承したよな?今さら約束を反故にするってんなら出るとこ出てもいいぞ?

司の背後で玄関のドアが音を立てて閉まった。
悪戯の時間か?

司は上着を脱ぐとネクタイをはずし、真っ白なシャツのボタンの一番うえを外した。
マジでやべぇ・・
女子高校生姿の牧野・・
生意気に口紅なんか塗りやがって・・
ちょっぴり色気づいて俺を誘う女子高校生牧野つくし・・

司はつくしの肩と膝の下に手を差し入れると、軽々と彼女を抱き上げた。
「ど、道明寺・・」
「・・んだよ?」役になりきれ牧野!
「あ、あたしたち・・これから・・」
「おまえが想像してることする・・」

それ以上のこともする予定。
高校の制服着ただけで終わるわけねぇだろうが!
その先があるに決まってるだろうが!
嫌だなんて言わせねぇぞ!
今夜は俺が王様だ!
ま、子供の頃から王様だって言われてたけど、今の俺はこいつの下僕だからな・・
牧野、たまには俺にも王様やらせてくれよ・・

「嫌だなんて言わせねぇからな!」これ王様命令。

薄暗い明かりのなか、それでもこいつの顔が赤くなったのだけはわかった。
抱き上げられて寝室まで運ばれる間に、俺の首に回された手に力がこもったのが感じられた。
怖がってんのか?
だが
「うん。わかった。どうみょうじ・・」
と言われた瞬間、俺の頭ん中は水蒸気爆発したみてぇに真っ白になった。

「本当に悪い女だな、牧野は」
司はベッドに腰かけ、目の前に立つ制服姿のつくしを見ていた。
具現化された俺の妄想・・
こいつの靴下姿なんて何年ぶりだ?それもご丁寧に膝下までのまさに女子高生仕様だ。
まさか、わざわざ買いに行ったのか?

「牧野、服を脱げ」

躊躇している牧野。
さっき、うん。わかったって言っただろ?
恥ずかしいのかよ?何を今更・・
けど決心したのか、制服のブレザーを脱ぐと胸のリボンをほどき、ブラウスをスカートから抜き出すとボタンを上からひとつずつ、外しはじめた。
脱ぎ捨てられたブラウスとスカートは床の上で小山を作った。

制服を脱いだ女は女子高校生じゃなかった!
女子高校生がこんな下着なんかつけるかよ!
黒いレースの下着姿の女が妖艶な姿で立っている。
それもすげぇスケスケのタイプ。


・・・ここからストーカー女、OL編か?

ヨッシャ!

「下着を脱げ」荒っぽい有無を言わさない口調だ。
もう硬くて爆発寸前の俺のムスコ。

「おい、女。おまえ、俺のことが好きなんだろ?」
「俺の言う事なんでも聞くって言ったよな?」

なんかすげぇいいよな、このシュチュエーション!
今までの俺たち2人には無かった上下関係だろ?
ダチにはおまえは下僕だ犬だと言われる俺たちの関係・・
俺だってその気になったらこんなもん朝飯前だ!

「おい、待たせんじゃねぇよ」

こんなセリフ、普段言ったら殴られそうだよな。
ま、あとでどんな目に合わされるかはこの際どうでもいい。

「早くしろ、女!」

つくしは言われたとおりブラとパンティを脱ぐと床の小山の上へと置いた。

「こっちへ来い」

なんか癖になりそうだよな、こんなセリフ。
司はゆっくりと自分に向かって来たつくしを腕の中に捕まえるとベッドへと横たえた。
裸の女と服を着たままの俺。
なんかイヤラシイよな・・もう爆発寸前だ。
司はワイシャツとスラックスを脱ぎ捨てた。

「いいか、よく見てろ」

司がパンツを降ろすと硬くなったモノが非常に強い意志を持って現れた。
驚愕に目を見開く牧野。
司はつくしの耳元へと唇を寄せると囁いた。

「悪戯してほしいか?」
こいつに言わせたい。

「言えよ・・」
「道明寺・・」火が点いたように真っ赤な顔のこいつ。
今更なに恥ずかしがってんだよ?
「言わねぇつもりか?」 あくまでも王様の俺。
「脚を大きく開け」

なんだよ、こいつ言われたことは素直にするじゃねぇかよ?
司は望みどおりの体勢を取らせると太腿の間に体をおき、膝に手を添えるとさらに大きく開かせた。
司の目の前では美味しそうなごちそうが、食べられるのを今かいまかと待っているように見えた。
艶めくアソコ。ひだを開いてまじまじと見てやったら潤んで来た。
なんだよ、こいつも濡れ濡れでノリノリじゃねぇかよ?
ここからが悪戯されるストーカーOL牧野つくしだ。

「なあ、おまえ。俺のこと好きなんだろ?」
ブスリと指2本を挿しこんだ。
「ああっ!」
「言えよ・・・俺に抱かれたかったんだろ?」
指を奥深く突っ込んで掻きまわした。
「俺のことつけ回しやがって、鬱陶しい女だよな、おまえは!」
オラ、どうだよ!
「ああ・・うっ・・」
「し、支社長っ!!」
「お、お願いっ・・・」

おい!
今の聞いたか?
俺のこと支社長って呼んだぞ?
いつも名前呼び捨てのこいつが・・
・・・つまりそう言うことだよな?
役になりきってるってことだよな?
悪戯されるストーカーOL牧野つくしってことだよな?

俄然ヤル気の俺。

「どっちが気持ちいいんだ?」
「言えよ・・」
「指と舌とどっちがいいんだ?」
ペロリと舐めた。
「ああんっ!」
「なあ、どっちがいいんだよ?」
「言えよ・・」
「あんっ!」

結局どっちも良かったらしく、はかないかすれた声で啼く女。
俺はもう一日中こいつのこと考え過ぎて爆発寸前。
かわいい尻を掴んで、一番奥深くまでぐっと突き入れて乳首をなぶって腰を振れば、
反応抜群の女はあっという間に解き放たれて、泣き声を上げた。




***




「道明寺のエロ親父っ!」
「てめぇ、よくも俺のことエロ親父なんか言いやがったな!」
「だ、だってそうでしょ!あ、あんなことして・・」

・・はっきり違うぞとは言えない俺。

「なんだよ!おまえだって途中からノリノリだったじゃねぇかよ!」
「俺のこと支社長だなんて呼びやがって」
「指と舌とどっちがいいんだって聞いたら、どっちもだなんて喜んでただろうが!」
「そ、それは・・」唇を軽く噛み締めるこいつ。

こんなふうにこいつをイジメてやるのも俺のひそやかな愉しみのひとつ。
いいんだ牧野。
愛し合ってる俺たちがどんなふうに愉しもうと誰も文句なんか言うわけねぇだろ?

それに男はみんなエロなんだよ!
男からエロとったら何が残るんだ!
俺は一生おまえに欲情しまくって枯れ木になんてなんねぇからな!
もし枯れたとしてもそんな俺に花を咲かせてくれるのはおまえだけだ。

なあ牧野?

これからも2人で色んなコトして楽しもうぜ?

ちゅっ・・








関連記事 インドネシアの話 『罪と罰』
関連記事 妄想その1の話 『優しく殺して』

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Comment:11
2016
05.22

金持ちの御曹司~危機管理~

チンとエレベーターが鳴って閉まりかけた扉の向う側から大きな体を捻じ込んで来たのは道明寺。完璧なセクシーさを身につけた男。
その表情はまさに捕食者の顔だった。

「牧野、おまえなんで俺から逃げてんだよ!」
「べ、別に逃げてなんかないわよ?」
「じゃあ、なにこそこそしてんだよ!」
「別にこそこそなんてしてないわよ?」
「それより、なんであんたがここにいるのよ?」
「あぁ?急いでんだよ・・」
「あんた急いでるんなら役員専用エレベーター使いなさいよ!」
うるせぇなぁ・・
おまえと二人っきりになりたいからわざわざこっちのエレベーターに乗ったんだよ!


チン・・
エレベーターの扉が開いたが誰もいなかった。
「ボタンを押し間違えた?」
ふたたびドアがぴたりと閉じられると2人だけの世界だった。

・・・たまんねぇ・・・
あのエレベーターでのことが思い出された。
そうだ・・あの鏡張りのエレベーターでの一夜だ。
想像しただけで漏れそうになる。
「ねえ、急いでるって何かトラブルが起きたの?」
ああ。
俺のスラックスのなかで起きてる。


いつもこいつに振り回されっぱなしの俺。
牧野にはしょっちゅうすきを突かれていて、なかなか思い通りにいかない。
・・ったく油断のならない女だよなこいつは。
たまには俺がこいつを振り回してみたいから執務室から追っかけてきた。

「なあ牧野・・」

ピンポンパンポ~ン~♪

『 こちらは道明寺ビル防災管理センターです。 
本日15時より予定通り社内避難訓練を開始いたします。
各部署で参加者リストにお名前が記載されている方は開始時刻10分前になりましたら1階エントランスロビーの指定場所までお集まり下さい。なお火元責任者の方は20分前にお集まり下さい 』

♪~ピンポンパンポ~ン

 


知ってる。

参加者リストにこいつの名前もあった。
それから各フロアに必ずひとりはいる火元責任者。
今年から牧野はその火元責任者の副担当になった。

オフィスビルの場合収容人数が50名以上の場合1名以上の防火管理者を置かなければいけない決まりがあるが、その下で補助する役割が火元責任者だ。防火管理者と一般社員の間のパイプ役。ま、連絡係ってことだよな。
何に対してもやる気満々のこいつは責任感も人一倍強い。
そんな火元責任者はフロアの入口にある赤いプレートに名前が書かれている。
赤なんてまるで赤札を思い出すから縁起が悪い気がするが仕方ねぇ。

「あ、あたしこれからこれに参加するの」
「おまえ、訓練に参加すんのか?」会話の流れから念のため聞いとく。
「そうよ?道明寺も参加する?」

いきなり支社長の俺が現れたら避難訓練になんてなんねぇと思うがいいのかよ?
・・ってか避難訓練って何すんだ?
俺は今まで一度も参加したことがないがいいのかそれで?

「避難訓練ってなにすんだよ?」
「今回はねぇ防火扉についての講習があって・・」

静かに下降を続けていくエレベーターがいきなりがたんと止まった。
「きゃっ!」
ぱっと照明が消え、非常用のライトが点灯した。
「牧野っ!大丈夫か?」
司は止まった拍子にバランスを崩して倒れ込こみそうになったつくしを抱きとめた。

まじかよ・・
なんだよこれ・・

今回ばかりは俺はなにも仕込んでなんかない・・
マジで閉じ込められた俺と牧野。
避難訓練がマジもんの訓練に変わるとは流石の俺も思わなかった。
なのに・・俺の体は不謹慎にもあんときの夜を思い出してヤバイ。
モノが猛烈に硬くなった。
今、ここでヤッたら牧野どのくらい怒るか?
試してみるか?
司は抱きとめたついでとばかりにつくしの首筋に鼻をこすりつけて匂いを嗅いだ。
いや、ダメだ。真夜中ならまだしも真昼のエレベーターじゃさすがの俺もこいつの為には危険を犯すことは出来ない・・・
でもちょっとくれぇいいだろ?

司は離れようするつくしの背中に手をまわすと、かわいらしいお尻をギュッと掴んだ。
キュッと引き締まった牧野の尻は最高だ!まるで俺の手に収まるように作られたこの尻!
サイズも形も、もちろん色も、もう最高!
「ち、ちょっと!道明寺なにしてるのよ!」
「存在確認・・」牧野の尻がここにあるかどうか・・
「な、なによ、そ、存在確認って・・」
つくしはもがいて司の腕から抜け出そうとした。
だが、司は逃がすものかと抱きしめた。
「離せ!道明寺っ!」
離すもんか・・・って俺はいつから尻フェチになったんだ?
いや、俺は尻フェチなんかじゃねぇ・・牧野つくし全部のフェチだ。
それにしても牧野の抱き心地は最高だ!ちょうど股間のあたりに当たるこいつの腹や胸板に押し付けた胸の柔らかい感触・・もうパンツの中でムスコが早く出してくれって痛てぇのなんの・・
今が真昼間じゃ無かったらあんとき以上に激しいのを一発・・
だが相変らず俺の腕の中のこいつは唸り声を上げて離せを連発中だ。
そんなに暴れんな!ひっくり返ったらどうすんだよ!
なんならこのまま体重を浴びせかけて倒してみるか?
オラ、どうだよ牧野?
司はわざと体の力を抜くとつくしに体重を預けた。
「ちょ、道明寺っ、お、重いっ・・」
「こ、こんなことしてる場合じゃない・・でしょ!」
ヒールを履いた脚が必死に踏ん張っていやがる。


チッ・・

仕方ねぇ・・・

たまにはこいつに俺のカッコいいとこでも見せてやるか?

「牧野、心配すんな。俺がついてるんだ問題ない。安心しろ」

こんな口調で危機管理能力に長けてることを分からせた。
知力・体力・時の運っての誰が言ったか忘れたが、体力だけは昔からすこぶるある。
何しろこいつを求める17の俺はどんなに大けがを負わされても犬なみと言われた回復力で立ち直ってきた。

司は誰に見られているわけでもなかったが、ハリウッドのアクションスター並の手際の良さでエレベーターの閉じられた扉を指でこじ開けようとしていた。

「ちょっと道明寺!なにしてんのよ!危ないからやめてよ!」
「心配すんな。開けたからって落ちやしねぇよ・・」

しかし俺たちは昔っからエレベーターには縁があるな。
何しろ初デートがエレベーターの中での一夜・・
司は内側の扉をこじ開けると、外側の扉をこじ開けた。



扉をこじ開けて見れば、エレベーターはフロアとフロアの間に止まっていた。

司は携帯電話を取り出した。
「ああ。俺だ。緊急事態だ。5分で道明寺ビルまで来い」
「道明寺・・」と心もとない牧野の声。
「心配すんな。救援を呼んだ」

救援・・
頼んだところを知ったらきっとこいつは怒り狂うだろうが、そんなこと知ったこっちゃねぇ。
「取りあえずは、ここから出るか・・」
「え?」
「大丈夫だ。心配すんな俺が先に出ておまえを受け止めてやるから」
司はエレベーターの床に腰を降ろし、下の階へと長い足を降ろすとするりと器用に体を外へと滑らした。

「し、支社長っ?大丈夫ですか?」
「ああ、エレベーターが急に止まった」
停止中のエレベーターの扉からいきなり出て来た俺に驚く社員の男。
「おい、おまえ。手を貸せ。中に人が乗ってる」
「は、はい!」
「だ、誰か呼んできましょうか?」
「いやいい・・」
「おい、降りてこい」
司は両手をエレベーターの中の人物に向かって差し伸べた。
「受け止めてやるから心配すんな」
女の脚が見えたかと思えば司はつくしをさっと抱きあげるとサンキュと、ひと言残して長い廊下の先を目指して歩き出した。
あっと言う間の出来事とアクション映画のワンシーンにありがちな光景を目の当たりにした男性社員は、ハリウッド俳優なみのカッコよさを持つ司の後ろ姿に
「カッコいいってこう言うことなんだ・・」
「・・けど、あの女性って誰なんだ?」
「どっかで見たような気もするけど・・」
と呟いた。




「牧野、ここからだと上に上がったほうがいいな」
「え?」
「上だよ、上」

まるでアクション映画のワンシーン・・
男が助けた女を抱き上げて階段を上り救援を待つ・・
ちくしょう!
やっぱ記録として残すべきだったか?
撮影班でも呼べばよかったか?
これ記録映画だよな?
ドキュメンタリーだよな?
タイトルは 『 沈黙のエレベーター 』・・・
今回はなんにもヤッてねぇからな・・
いや、なんか違うな・・

まあいい。


司は何がなんだか分からなくなっているつくしの体を抱きかかえたまま長い廊下の先にある非常階段を目指した。

「ち、ちょっと道明寺、どこ行くのよ?」
「ねぇ・・避難訓練はどうするの?」
「あほか、避難訓練なら今やってるじゃねぇかよ?」

まさにリアル避難訓練・・
企業の緊急事態においてのリスクマネジメントとしての考え方としては初動対応が肝心だ。
こいつがまだぼんやりしてる時を狙うのが一番いいに決まってる。
目をぱちぱちさせて俺を見上げる牧野はアホみてぇにかわいい。

世の中には3種類のオスがいる。
少年。男性。そして男。
少年は文字通りガキ。
男性は性別として女と区別するための呼び名。
男・・男らしいとか、男気があるとか・・
いまさに今の俺だろ?
牧野、そんな俺を見て惚れ直したか?


司はつくしを抱いて非常階段を最上階まで上ると屋上へと出た。

「悪りぃな、急なことで」

司は抱きかかえたつくしが腕のなかでじたばたする前にヘリコプターへと近づくと
押し込んでから自分もヘリに乗りこんだ。
「出してくれ」
「ちょ・・ちょっと!ま、待ってよ!」
「な、なんでヘリ?」
エンジンの轟音に負けじとつくしは叫んだ。
「どこ行くのよ!」

「あぁ?俺とおまえの思い出の場所」






***






「南の島・・久しぶりだよな・・」
俺と牧野がはじめてを過ごした場所・・
「・・・・・」
「なんだ、怒ってんのかよ?」
「当たり前じゃない!」
「避難訓練どうするのよ?」
「会社になんて説明するのよ!あたし火元責任者で訓練に参加する予定だったんだからね!」
道明寺のばか!
「いいじゃねぇかよ。避難訓練しただろ?」
マジもんの訓練したじゃねぇかよ!
「いったい何から避難したっていうのよ!」
「危険から避難したじゃねぇかよ?」
「それより・・おまえ火元責任者なんだろ?」
「ならちょうどいいじゃねぇかよ?」
「何がちょうどいいのよっ!」
「・・俺の火・・してくれよ・・」
司は何かを含んだように言葉をぼかすとつくしを見つめた。
「え?」
「だから俺の情熱の炎を何とかするのがおまえの責任」
「な・・牧野・・」
「俺もうこんなになって・・」
司は見事な持ち物をスラックスの上から触らせようとした。
「なにすんのよ!この変態っ!」
「なんだよ?その口の利き方は!その変態を好きなのはおまえだろうが!」



そうは言っても2人は愛し合う恋人同士。
つくしもそんな司には今更だ。



恐ろしいくらいに惹きつけられたガキの頃の思いと今の思いは同じ。
一番欲しくて手に入らなかったものを手にすることが出来た島・・
俺たち2人にとってここは何ものにも代えがたい神聖な場所だ。
何があってもこの場所に来れば2人の思いは同じはずだ。

司は押し黙り、射るような瞳でつくしを見つめた。
片方の眉が上がり、薄い唇がカーブを描くとあの日を思い出したかのように
愛してる、と口を開いた。
つくしの瞳が輝くと、司の首に回された腕はゆっくりと彼の頭を引き寄せた。


俺の情熱の炎をうまく管理してくれるのも火元責任者の責任だろ?
俺の中の情熱の炎は一生消えることはない。
胸が締め付けられるほどのこの思いはこれから先もずっと俺の心の中にあるはずだ。
俺の炎を消すにはおまえの炎でしか消すことが出来ない・・
けど俺とおまえの炎は消えることは決してない・・
決して消えることのない炎・・それは永遠だ・・

これから先何かあっても俺たち2人はこの島に戻ればまたいちからやり直せるよな?
司の願いはただひとつだけ。

それはあのとき果たせなかった2人の願い・・

永遠という時の流れの中で2人で抱き合って眠ることだ。

愛してる・・・牧野・・

これからもずっと・・








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