俺があいつを見かけたのは全くの偶然だった。
ニューヨークから東京への移動だがその日はいつものビジネスジェットが使えず民間機のファーストクラスでの帰国だった。
あの女がいた。
忘れもしない女。
俺が学生時代に子供じみた遊びに興じていたとき、そのターゲットになった女。
その遊びのターゲットにされたばかりに周囲からは疎まれた女。
この俺に蹴りを入れ大きな瞳で真っ直ぐに見返してきた女。
何故だか俺はその女に恋をした。
恋をするのに理由なんていらない。
その女が今、同じファーストクラスの席にいる。
上品でいて仕立ての良いスーツを着て艶がある美しい黒髪はねじって上品にまとめてある。
そして何やら熱心に書類を読んでいる。
あれから何年だ?
高校を卒業した俺はその後に渡米してからずっとニューヨーク暮らしだった。
俺はその女の顔がよく見えるように少し横に身体をずらした。
その時女が身を屈めて何かを拾っている。間違いない。
そう思った途端、女がこちらに顔をむけた。間違いない、牧野だ。
牧野の向けた視線はしばらく俺のところでとどまっていた。
気が付いたか?
俺は胸の奥に懐かしい感情が湧き上がるのを感じる。
俺に気が付かないはずがない。
こう見えても世界的企業の御曹司と呼ばれる俺だ。
だがその視線はただの風景を見ているが如くだ。
******
つくしは機内で素早く視線を巡らせた。
あの男がいた。
あの男が高校時代始めた赤札と言うゲームに巻き込まれた私。
あの男のせいでいつも学年のトップクラスを保っていた成績が下がった。
私は国立大学の奨学金制度を利用したいと考えていたのにあの男のせいで
それも危ぶまれるところだった。
道明寺司!
輝ける道明寺ホールディングスの御曹司で今は日本支社長の肩書を持つ男だ。
せっかくのファーストクラスも気分が沈む。
なんであの男が民間機を利用しているのよ?
なんで自家用ジェットを利用しないのよ?
つくしはテーブルの上のグラスに手を伸ばし、今しがた目にした光景を忘れようとするように中の液体を飲み干した。
最悪だ・・・。
と、そのとき誰かに右肩を叩かれた。
私が右斜め45度の角度で視線を上げた先にハンサムな男が立っている。
どんな男も腰が引けるほどの威圧的な存在感を醸し出す男。
ウェーブした黒い髪、見る者を射抜くような瞳、生まれながらの気品が漂うその口元。
極め付けはそのスタイルの良さだ。
「牧野、牧野つくしだろ?」
全身をしびれさせるような深いバリトンの声で問われた。
ばれたか・・・。
つくしは警戒しながらも無言で頷いた。
「久しぶりだな、牧野」
「・・・お久しぶりです。道明寺さん・・・」
つくしは内心で道明寺が早く立ち去ってくれるのを願っている。
「お前に会えて嬉しいよ」
低いバリトンがつくしの右斜め45度から降り注いでくる。
この男、見え透いたことを言うな!
誰が嬉しいなんて思うもんか!
「お前ファーストに乗れるなんて出世したんだな?」
道明寺の口調には皮肉っぽさが含まれている。
つくしがファーストクラスに乗っているのは本来利用するはずだった人間が急きょ入院するはめになり、その人間の代わりに出張をしたせいだ。
だから出世なんてしていない。
「あの・・・」
「お前の隣、空いてるよな?」
道明寺は素早く隣の席へと腰を下ろした。
途端、客室乗務員が飛んできてお伺いをたてている。
「で、お前なんでこんな所にいるんだ?」
そんなことアンタに関係ないでしょ?
「本来出張するはずだった担当者が入院することになって、それで代わりに私が・・」
「そうか。で、お前は今は何をしてるんだ?」
言いたくない。
でもこの男のことだ。すぐにでも秘書に調べさせるだろう。
そんなことまでされたくない。
「島田コンサルタントにいます」
「そうか島田か! 牧野、お前優秀なんだな」
「はい、生活がかかっていますから」
つくしは笑ってみせた。
牧野つくしが島田コンサルタントにいる。
そんなことは知っていた。
どこにいて、何をしているか・・。
今回帰国するにあたり牧野のことは調べがついていた。
だって俺はこれから牧野つくしを捕まえるつもりだから。

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ニューヨークから東京への移動だがその日はいつものビジネスジェットが使えず民間機のファーストクラスでの帰国だった。
あの女がいた。
忘れもしない女。
俺が学生時代に子供じみた遊びに興じていたとき、そのターゲットになった女。
その遊びのターゲットにされたばかりに周囲からは疎まれた女。
この俺に蹴りを入れ大きな瞳で真っ直ぐに見返してきた女。
何故だか俺はその女に恋をした。
恋をするのに理由なんていらない。
その女が今、同じファーストクラスの席にいる。
上品でいて仕立ての良いスーツを着て艶がある美しい黒髪はねじって上品にまとめてある。
そして何やら熱心に書類を読んでいる。
あれから何年だ?
高校を卒業した俺はその後に渡米してからずっとニューヨーク暮らしだった。
俺はその女の顔がよく見えるように少し横に身体をずらした。
その時女が身を屈めて何かを拾っている。間違いない。
そう思った途端、女がこちらに顔をむけた。間違いない、牧野だ。
牧野の向けた視線はしばらく俺のところでとどまっていた。
気が付いたか?
俺は胸の奥に懐かしい感情が湧き上がるのを感じる。
俺に気が付かないはずがない。
こう見えても世界的企業の御曹司と呼ばれる俺だ。
だがその視線はただの風景を見ているが如くだ。
******
つくしは機内で素早く視線を巡らせた。
あの男がいた。
あの男が高校時代始めた赤札と言うゲームに巻き込まれた私。
あの男のせいでいつも学年のトップクラスを保っていた成績が下がった。
私は国立大学の奨学金制度を利用したいと考えていたのにあの男のせいで
それも危ぶまれるところだった。
道明寺司!
輝ける道明寺ホールディングスの御曹司で今は日本支社長の肩書を持つ男だ。
せっかくのファーストクラスも気分が沈む。
なんであの男が民間機を利用しているのよ?
なんで自家用ジェットを利用しないのよ?
つくしはテーブルの上のグラスに手を伸ばし、今しがた目にした光景を忘れようとするように中の液体を飲み干した。
最悪だ・・・。
と、そのとき誰かに右肩を叩かれた。
私が右斜め45度の角度で視線を上げた先にハンサムな男が立っている。
どんな男も腰が引けるほどの威圧的な存在感を醸し出す男。
ウェーブした黒い髪、見る者を射抜くような瞳、生まれながらの気品が漂うその口元。
極め付けはそのスタイルの良さだ。
「牧野、牧野つくしだろ?」
全身をしびれさせるような深いバリトンの声で問われた。
ばれたか・・・。
つくしは警戒しながらも無言で頷いた。
「久しぶりだな、牧野」
「・・・お久しぶりです。道明寺さん・・・」
つくしは内心で道明寺が早く立ち去ってくれるのを願っている。
「お前に会えて嬉しいよ」
低いバリトンがつくしの右斜め45度から降り注いでくる。
この男、見え透いたことを言うな!
誰が嬉しいなんて思うもんか!
「お前ファーストに乗れるなんて出世したんだな?」
道明寺の口調には皮肉っぽさが含まれている。
つくしがファーストクラスに乗っているのは本来利用するはずだった人間が急きょ入院するはめになり、その人間の代わりに出張をしたせいだ。
だから出世なんてしていない。
「あの・・・」
「お前の隣、空いてるよな?」
道明寺は素早く隣の席へと腰を下ろした。
途端、客室乗務員が飛んできてお伺いをたてている。
「で、お前なんでこんな所にいるんだ?」
そんなことアンタに関係ないでしょ?
「本来出張するはずだった担当者が入院することになって、それで代わりに私が・・」
「そうか。で、お前は今は何をしてるんだ?」
言いたくない。
でもこの男のことだ。すぐにでも秘書に調べさせるだろう。
そんなことまでされたくない。
「島田コンサルタントにいます」
「そうか島田か! 牧野、お前優秀なんだな」
「はい、生活がかかっていますから」
つくしは笑ってみせた。
牧野つくしが島田コンサルタントにいる。
そんなことは知っていた。
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今回帰国するにあたり牧野のことは調べがついていた。
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Comment:11
皆様こんにちは。
これまで拍手コメントを下さった皆様には御礼のお返事を差し上げず申し訳ございませんでした。
本来ならば皆様へ個別にお返事をさせて頂きますところを
まとめてのお返事となりますがここで御礼の言葉とさせて頂きます。
G*ds & D**th 様
ゆ*ん様
ぷ*ゅ様
た**さぎ 様
N*様
は**な様
他 御芳名無の皆様
実は拍手コメント欄が存在することを失念しておりまして、本日初めて拝見いたしました。
せっかく皆様に温かいお言葉を頂きましたのに、御礼が大変遅くなり申し訳ございませんでした。
開設間もない拙い話に沢山のコメントを頂き、感謝しております。
本当に有難うございました。
また明日より新しいお話がスタートしますので、お時間が許す時にでもお立ち寄り下さいませ。
それでは皆様よい休日をお過ごし下さいませ。
ご拝読有難うございました。
andante*アンダンテ*
アカシア
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実は拍手コメント欄が存在することを失念しておりまして、本日初めて拝見いたしました。
せっかく皆様に温かいお言葉を頂きましたのに、御礼が大変遅くなり申し訳ございませんでした。
開設間もない拙い話に沢山のコメントを頂き、感謝しております。
本当に有難うございました。
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***************************
ここから先は少々大人の方向きなお話です。
未成年者の方、またそう言うお話がお嫌いな方はお控え下さい。
気持ちがひとつになった夫婦の夜・・・・
***************************
「つくし、これ」
私は毎日道明寺から贈られるプレゼントに困っている。
道明寺がはめてくれた20カラットあると言うダイヤモンドの指輪は大きすぎて
とてもじゃないけど日常生活には必要のないものだ。
「ねぇ、司 もう何も買ってこなくていいから!宝石も高級車もこれ以上何も要らないから」
「あ?じゃあお前専用の小型ジェットでも買うか?」
そう言いながらソファの隣に座る男は私の鼻先にキスをする。
「それとも大型クルーザーでも買うか?で、船名にはお前の名前をつけよう。
やっぱり船は女の名前じゃないと縁起が悪いしよ。大きさはどうするかな
この前会ったロシア人のオヤジんとこの船より大きいのがいいよな?」
「い、いらないから!」
「じゃあなんだ、他に何か欲しいものがあるのかよ?」
「・・・うん」
あるの・・司
「言ってみろよ。お前が欲しいものなら何でも手に入れてやる」
世界的規模で物事を考えるこの男が言うことは常に本気で、今では宇宙的規模で考えている。
宇宙開発事業にまで手を出すのか?道明寺ホールディングス!
いや、実際に事業部門はあるらしい・・・。
「で、何が欲しいんだ?言ってみろよ」
「・・・ん ・・・」
私は口ごもって隣に座る彼の手を取りその指に収まる指輪を撫で、道明寺を見つめた。
「赤ちゃんが欲しい・・」
「そうか!そんなことでいいのかよ!」
「 え? 」
「よし、つくし。これからお前が欲しいものをいくらでもやる。俺の努力が足りてないってことだよな? 俺のことがもっと欲しいってことだよな?」
え? あのね、そりゃあ赤ちゃんが欲しいって言ったらそうなんだけどね。
何か意味が違うような・・・
あのね、つ、つかさ・・・
******
私の着ていたワンピースは手品師並の早業で脱がされていた。
ベッドの上に裸で横たわるつくしの姿に俺はめまいがした。
何度愛し合っても欲望が強烈過ぎて止めることが出来ない。
初めてつくしと愛し合った時に芽生えた嫉妬心と執着心はますます膨れ上がる。
俺は着ているものを脱ぐのがもどかしいくらいで、ジャケットを脱ぎ捨てると
床の上でくしゃくしゃになっているワンピースの上へと投げ捨てる。
首に絡まるネクタイをむしり取るとワイシャツのボタンが飛び散るのも構わずに脱ぎ捨てズボンを脱いで蹴り飛ばした。
ああ、この女は俺のものだ。
つくしの全てが俺のものだ。
強烈な欲望が俺を襲う。
今日は優しくなんて出来そうになかった。
目の前の柔らかな膨らみを掴んで思いっきり吸い付いた。
ゆっくりと、確実にその頂きを舐めまわしていくとそこが硬く尖ってきた。
乳房の外側をなぞり、そのままウエストへと撫で下ろしながら唇はつくしの身体の上を這いまわる。白い肌に赤い情熱の花が咲いていく。
つくしは司の髪に指を絡ませて身を反らせて引き寄せるしか出来ない。
司の手が触れたところが熱く熱をもっているように火照る。
理性はどこかへ飛び去ってしまったように司を求めた。
「つ、つかさぁ・・・」
懇願する声が聞こえる。
「どうした、つくし?」
「お願い・・」
俺はつくしと愛し合うようになってからつくしの言う言葉の意味が理解できるようになってきていた。
つくしの言う『お願い』の意味を・・
勿論、つくしの願いならなんだって叶えてやる。
俺はつくしの膝の裏に手をかけて脚を掴むと引き寄せた。
そして大きく開かれた脚のあいだを舌で弄ぶ。
つくしは甘い呻き声を漏らしはじめた。
俺はさらに脚を大きく開くともう一度じっくりと味わうように弄ぶ。
濡れそぼるつくしの女の部分から顔を上げ、今はまだ平らな腹へと目をやる。
つくし、子供はすぐにでも出来るさ。
お前が欲しいものは何でも与えてやる。
今日にでも出来るかもしれないぞ。
いや、もう出来ているかもしれない・・。
だから何も心配することなんてない。
それに子供が出来るまで何度でも俺が愛してやる。
俺は太腿を抱え上げ一気に入るところまで突き進んだ。
つくしの中は俺を引き込むように収縮を繰り返している。
この温もりを求めていた。
つくしだけが与えてくれるこの温もりを。
荒々しいほどの原始的な交わりもつくしとだから喜びが生まれる。
耐えきれないほどの摩擦を生じさせながら腰を前後する動きが速くなる。
つくしは両脚を司にまわし、共に腰を揺らしている。
情熱の嵐が二人を快楽の高みへと押し上げる。
俺は最後にもう一度深くつくしを貫き高みへと追いやると身を震わせながらつくしの中へと一気に放った。
情熱の嵐がすぎ去ると俺はつくしに優しく口づけを繰り返す。
額に、頬に、唇に、首筋に、肩に・・・
その仕草はついさっきまで所有欲の塊だった男とは思えないほど優しい。
9年間もの間、虚無で孤独な時間を過ごしていた男の仕草とは思えなかった。
つくしの上気した顔はほんのりと色づいていてたった今愛されたばかりの女の香りがする。
つくし・・・
「 つかさ・・・ 」
「 ん? おやすみ つくし 」
俺はまどろんでいるつくしを上掛けに包むとそのくちびるにそっとキスをした。
終

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気持ちがひとつになった夫婦の夜・・・・
***************************
「つくし、これ」
私は毎日道明寺から贈られるプレゼントに困っている。
道明寺がはめてくれた20カラットあると言うダイヤモンドの指輪は大きすぎて
とてもじゃないけど日常生活には必要のないものだ。
「ねぇ、司 もう何も買ってこなくていいから!宝石も高級車もこれ以上何も要らないから」
「あ?じゃあお前専用の小型ジェットでも買うか?」
そう言いながらソファの隣に座る男は私の鼻先にキスをする。
「それとも大型クルーザーでも買うか?で、船名にはお前の名前をつけよう。
やっぱり船は女の名前じゃないと縁起が悪いしよ。大きさはどうするかな
この前会ったロシア人のオヤジんとこの船より大きいのがいいよな?」
「い、いらないから!」
「じゃあなんだ、他に何か欲しいものがあるのかよ?」
「・・・うん」
あるの・・司
「言ってみろよ。お前が欲しいものなら何でも手に入れてやる」
世界的規模で物事を考えるこの男が言うことは常に本気で、今では宇宙的規模で考えている。
宇宙開発事業にまで手を出すのか?道明寺ホールディングス!
いや、実際に事業部門はあるらしい・・・。
「で、何が欲しいんだ?言ってみろよ」
「・・・ん ・・・」
私は口ごもって隣に座る彼の手を取りその指に収まる指輪を撫で、道明寺を見つめた。
「赤ちゃんが欲しい・・」
「そうか!そんなことでいいのかよ!」
「 え? 」
「よし、つくし。これからお前が欲しいものをいくらでもやる。俺の努力が足りてないってことだよな? 俺のことがもっと欲しいってことだよな?」
え? あのね、そりゃあ赤ちゃんが欲しいって言ったらそうなんだけどね。
何か意味が違うような・・・
あのね、つ、つかさ・・・
******
私の着ていたワンピースは手品師並の早業で脱がされていた。
ベッドの上に裸で横たわるつくしの姿に俺はめまいがした。
何度愛し合っても欲望が強烈過ぎて止めることが出来ない。
初めてつくしと愛し合った時に芽生えた嫉妬心と執着心はますます膨れ上がる。
俺は着ているものを脱ぐのがもどかしいくらいで、ジャケットを脱ぎ捨てると
床の上でくしゃくしゃになっているワンピースの上へと投げ捨てる。
首に絡まるネクタイをむしり取るとワイシャツのボタンが飛び散るのも構わずに脱ぎ捨てズボンを脱いで蹴り飛ばした。
ああ、この女は俺のものだ。
つくしの全てが俺のものだ。
強烈な欲望が俺を襲う。
今日は優しくなんて出来そうになかった。
目の前の柔らかな膨らみを掴んで思いっきり吸い付いた。
ゆっくりと、確実にその頂きを舐めまわしていくとそこが硬く尖ってきた。
乳房の外側をなぞり、そのままウエストへと撫で下ろしながら唇はつくしの身体の上を這いまわる。白い肌に赤い情熱の花が咲いていく。
つくしは司の髪に指を絡ませて身を反らせて引き寄せるしか出来ない。
司の手が触れたところが熱く熱をもっているように火照る。
理性はどこかへ飛び去ってしまったように司を求めた。
「つ、つかさぁ・・・」
懇願する声が聞こえる。
「どうした、つくし?」
「お願い・・」
俺はつくしと愛し合うようになってからつくしの言う言葉の意味が理解できるようになってきていた。
つくしの言う『お願い』の意味を・・
勿論、つくしの願いならなんだって叶えてやる。
俺はつくしの膝の裏に手をかけて脚を掴むと引き寄せた。
そして大きく開かれた脚のあいだを舌で弄ぶ。
つくしは甘い呻き声を漏らしはじめた。
俺はさらに脚を大きく開くともう一度じっくりと味わうように弄ぶ。
濡れそぼるつくしの女の部分から顔を上げ、今はまだ平らな腹へと目をやる。
つくし、子供はすぐにでも出来るさ。
お前が欲しいものは何でも与えてやる。
今日にでも出来るかもしれないぞ。
いや、もう出来ているかもしれない・・。
だから何も心配することなんてない。
それに子供が出来るまで何度でも俺が愛してやる。
俺は太腿を抱え上げ一気に入るところまで突き進んだ。
つくしの中は俺を引き込むように収縮を繰り返している。
この温もりを求めていた。
つくしだけが与えてくれるこの温もりを。
荒々しいほどの原始的な交わりもつくしとだから喜びが生まれる。
耐えきれないほどの摩擦を生じさせながら腰を前後する動きが速くなる。
つくしは両脚を司にまわし、共に腰を揺らしている。
情熱の嵐が二人を快楽の高みへと押し上げる。
俺は最後にもう一度深くつくしを貫き高みへと追いやると身を震わせながらつくしの中へと一気に放った。
情熱の嵐がすぎ去ると俺はつくしに優しく口づけを繰り返す。
額に、頬に、唇に、首筋に、肩に・・・
その仕草はついさっきまで所有欲の塊だった男とは思えないほど優しい。
9年間もの間、虚無で孤独な時間を過ごしていた男の仕草とは思えなかった。
つくしの上気した顔はほんのりと色づいていてたった今愛されたばかりの女の香りがする。
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「 ん? おやすみ つくし 」
俺はまどろんでいるつくしを上掛けに包むとそのくちびるにそっとキスをした。
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応援有難うございます。
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皆様こんにちは。
いつも拙宅をご訪問して頂き有難うございます。
処暑を迎え、皆様のお住まいの地域ではそろそろ秋の気配が感じられている
時節の処もあるのではないでしょうか。
また先日の台風で被害を受けられた皆様にはお見舞い申し上げます。
さて「いつか見た風景」も短いながらも最終話を迎え完結となりました。
いかがでしたでしょうか?
拙い話にこうして無事に終話が迎えられましたのも、沢山の応援、拍手、コメントを下さった皆様のおかげです。正直お励ましを頂いた想いで一杯です。
本当に有難うございました。
またご感想などありましたらお寄せ頂けると嬉しいです。
頭を垂れてお待ちしております。
そして最後までお付き合いを頂いた皆様、花より男子ファンの皆様は目の肥えた方ばかりですので突っ込み所が満載だったと思います。
そのあたりはお見逃し頂けると有難いと思います。
諸先輩方の素晴らしい作品を前に拙宅へも足をお運び頂き有難うございました。
かく言う私も拝読、拝見させて頂いており、皆様とても秀逸で胸躍るような物語ばかりで楽しませて頂き、また癒されています。読んで感動、眺めてうっとりと言う感じです。
当方、次回作を予定しております。もちろん司とつくしの物語なのですが
王道とは言えませんので、ご趣味、ご嗜好に合わないと思われましたらお控え下さい。
が、決して二人が不幸な状況に陥ることは一切ございません。
まだ構想段階ですが、来週からスタートを予定しております。
お話の概要につきましては第1話をお読み頂くとなんとなく分かると思います。
特段の事件、事故は全くありません(笑) さらっと流し読み出来る程度ですので
お時間がある時にでもお立ち寄り下さい。
なお、明日はエピローグをお届けしますので、宜しかったらご覧になって下さい。
最後になりましたが、皆様の沢山の応援に感謝申し上げます。
ご拝読有難うございました。
andante*アンダンテ*
アカシア
なお、本日のお話はこの記事の下にあります。
追伸、なぜかビジネス文書のようになってしまいます。硬いですね(笑)
いつも拙宅をご訪問して頂き有難うございます。
処暑を迎え、皆様のお住まいの地域ではそろそろ秋の気配が感じられている
時節の処もあるのではないでしょうか。
また先日の台風で被害を受けられた皆様にはお見舞い申し上げます。
さて「いつか見た風景」も短いながらも最終話を迎え完結となりました。
いかがでしたでしょうか?
拙い話にこうして無事に終話が迎えられましたのも、沢山の応援、拍手、コメントを下さった皆様のおかげです。正直お励ましを頂いた想いで一杯です。
本当に有難うございました。
またご感想などありましたらお寄せ頂けると嬉しいです。
頭を垂れてお待ちしております。
そして最後までお付き合いを頂いた皆様、花より男子ファンの皆様は目の肥えた方ばかりですので突っ込み所が満載だったと思います。
そのあたりはお見逃し頂けると有難いと思います。
諸先輩方の素晴らしい作品を前に拙宅へも足をお運び頂き有難うございました。
かく言う私も拝読、拝見させて頂いており、皆様とても秀逸で胸躍るような物語ばかりで楽しませて頂き、また癒されています。読んで感動、眺めてうっとりと言う感じです。
当方、次回作を予定しております。もちろん司とつくしの物語なのですが
王道とは言えませんので、ご趣味、ご嗜好に合わないと思われましたらお控え下さい。
が、決して二人が不幸な状況に陥ることは一切ございません。
まだ構想段階ですが、来週からスタートを予定しております。
お話の概要につきましては第1話をお読み頂くとなんとなく分かると思います。
特段の事件、事故は全くありません(笑) さらっと流し読み出来る程度ですので
お時間がある時にでもお立ち寄り下さい。
なお、明日はエピローグをお届けしますので、宜しかったらご覧になって下さい。
最後になりましたが、皆様の沢山の応援に感謝申し上げます。
ご拝読有難うございました。
andante*アンダンテ*
アカシア
なお、本日のお話はこの記事の下にあります。
追伸、なぜかビジネス文書のようになってしまいます。硬いですね(笑)
Comment:6
車のフロントガラスに差し込む陽光が眩しいくらいだ。
ロングボディーのメルセデスがエントランスに横付けされている。
「おはようございます」
リムジンの後部座席に乗り込んだ俺の隣にすわる西田が声をかけてくる。
「・・・何か言いたげだな」
俺は西田を見向きもしなかった。
「奥様には・・」
「いや、まだだ」
俺はそっけなく答えた。
そして脚を投げ出し窓の外を眺めた。
車窓を流れて行く景色を見ながらいつの間にか俺の口元はかすかな笑みが浮かんでいた。
そしていつしか俺は牧野のことを考えていた。
車が東京支社の前に来たところで牧野のことを考えるのをやめ、これから待ち受けている仕事のことを考えるべくだらしなく緩んでいたであろう口元を引き締めた。
******
俺は今も牧野が昔と同じ気持ちでいてくれていると言う想いを知って
自分の中にあったあの時と同じ牧野に対しての愛しさが燃え上がってきている。
牧野と一緒に過ごす時間が増えるにつれて求め合う気持ちが高まってきているように思える。
俺はタキシード用のタイを結びながら考える。
今夜は牧野と特別な夜を過ごすつもりだ。
******
そこは大変な人出だった。
そぞろ歩きの通行人もいれば待ち合わせの人間も少なくない。
ロングボディーのメルセデスから降りて来たタキシードとパーティードレスを身にまとった二人に周囲の人間は何かの撮影かと歩みを止める。
一見モデルと見まがえる男性と小柄な女性。
その男は女の手を引き広場へとやって来る。
「ど、道明寺、どうしたの急に」
私は彼の急な行動に驚くしかない。
だってここは・・・この場所は・・・
「ねえ、待ってよ」
道明寺の歩くスピードについて行けない私はつまずきそうになる。
そんな私を見て彼は私の腰に腕を回したかと思えば緩慢な動作で私を抱き上げた。
そして衆人環視のなか、私を抱きかかえて広場の中央までやってくると唇にキスをした。
それから優しく私の身体を降ろすと、ふんわりと抱きしめてくる。
「牧野、今日は俺とデートだ」
この場所は俺が牧野に初めてのデートの待ち合わせ場所として指定した広場だ。
降りかかる雨をもろともせずにお前を待ち続けた。
私はどうしてこの場所に連れてこられたのか不思議に思った。
この場所は何かの偶然なのか・・・
「あのね、ここ・・・」
「分かってる」
私の言葉を阻むように道明寺は話はじめた。
「ここは雨の中、俺がお前に待ちぼうけを食わされた場所だろ?」
「・・・・ど、どうして・・・」
「 牧野、ごめん・・・・・。 俺、お前のことを思い出した 」
そう言いながら俺は牧野の瞳を見つめ続けた。
牧野は身動きもせず声も出さない。
俺は一瞬背筋がぞっとした。
牧野に愛されていると思っていたのは勘違いだったんだろうか。
俺は牧野の華奢な身体を抱いたまま、驚きに見開かれていく瞳を見つめていた。
その瞳の奥が揺れ動くのが分かる。
そしてその身体の震えが感じられ、感情の波が牧野の身体を駆け抜けているのが感じられた。
俺の腕の中の小さな温もりが震えている。
「 い、いつ? 」
私は言葉が喉の奥に貼り付いたようで上手く言えない。
そしてうれしさと安堵感で涙が溢れてくる。
「 ど、どうして謝るの? 」
お願い、謝らないで・・
私は不安とパニックに襲われそうになった。
私はあの日、夢のように時間を止め、哀しみはそっと眠らせて道明寺の傍にいることにした。
だから謝らないで。
どうして謝るの?
「 牧野、牧野 」
牧野の瞳から大粒の涙がこぼれている。
「聞いてくれ。俺がお前を9年間も忘れ去っていたんだ。すべては俺がお前を・・・
お前のことを思い出さなかった俺が・・・」
俺は何度でもお前に詫びるよ。
「 ごめん 牧野 」
私はこの9年間誰にも知られないように、誰にも気づかれないように哀しみを眠らせてきた。
忘れないで・・・私はここにいる。
いつだってその想いを手放すことなんか出来なかった。
「ど、どうし・・て・・・どうして・・・忘れちゃったの・・なんで・・・」
私は感情のダムが決壊してしまった。
涙が溢れるのを止められないでいる。
眠らせてきた想いが溢れでてきて止めることが出来ない。
「牧野・・・悪かった・・・お前のことを忘れて・・」
俺は身体を震わせ泣いている牧野を抱きしめ続けた。
そうする事で牧野の哀しみが少しでも俺に吸収されればいいと思った。
こいつの人生が哀しみに染まることがないように・・・
そして哀しみで涙がこぼれることがないように・・・・
これからは決してお前の傍を離れることは無い。
もう二度と離れないように愛せる。
どこかでカメラのフラッシュが閃いている。
それが引き金となったかのように周囲の人だかりから歓声と思われる声が聞こえてくる。
そして誰かが手を叩きはじめていた。
俺は胸で泣いている牧野の顔を自分の方に向けた。
「 愛している 」
俺はそうささやくと唇をあわせ、力いっぱい牧野を抱きしめて胸の奥でくすぶっていた思いをぶつけた。
沢山のカメラのフラッシュの閃光と、歓声と拍手が聞こえる。
まるでそこだけにスポットライトが当てられているような光景・・・。
まるで映画のワンシーンのような光景に歓声と拍手が広がっていく。
そして、それはまるで伝染したかのように周囲に広がっていった。
それでも俺はキスを止めることが出来なかった。
牧野はそんな回りの喧騒に何も気づかないようにキスを返してくる。
カメラのフラッシュも、囃し立てる声も、拍手も・・何もかも忘れたように。
そしてそんな牧野と俺のキスは終わることがなかった。
あの日、俺の目の前に現れたウエディングドレス姿の牧野。
あの時言わなかった俺の言葉。
今なら言える。
これから先、永遠の愛を誓う。
お前だけに。
*****
「じゃあね牧野。元気で」
昨日花沢類にそう言われて東京を離れた私達はニューヨークへと戻って来た。
私はベッドでゆっくりと目を覚まそうとしていた。
さずがの道明寺も疲れているのか、私の隣で寝息をたてている。
頭の中には前夜の記憶が甦る。
記憶の戻った道明寺とベッドで愛し合うのは妻としての義務ではない。
彼の愛する妻として愛し合うのは今までの感情の比ではなかった。
昨夜の道明寺の激しい抱擁を思い出すと身体が火照る。
分厚いカーテンの向こうはきっと眩しいくらいの光が降り注いでいるはずだ。
そろそろ起きなければ・・
「きゃ・・」
私のそんな考えを遮るように隣に寝ていたはずの道明寺がのしかかってきた。
「・・・お前、何考えてる・・」
「な・・何ってそろそろ起きないと・・」
「まだ起きなくていい・・」
9年分の熱い思いと情熱が感じられる。
互いの手脚を絡め合いながらもう決して離れないと抱き合った。
共に欲望の嵐にのまれ、共に高みにのぼりつめた。
そして燃え尽きた。
その先に訪れた充足感に私達は再び眠りにつこうとしていた。
そして心地よい眠りに身をまかせようとする。
『 俺はつくしの夫だ 』
私はそう言われた時のことを思い出す。
『 いい響きだな。慣れてしまえば 』
そう言いながら妖艶な笑みを浮かべていた。
『 つくし、うちへ帰ろう 』
私達のうち・・・
『 ニューヨーク? 』
『 ああ、そうだ。帰ろう、ニューヨークへ 』
fin
明日はエピローグです。

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ロングボディーのメルセデスがエントランスに横付けされている。
「おはようございます」
リムジンの後部座席に乗り込んだ俺の隣にすわる西田が声をかけてくる。
「・・・何か言いたげだな」
俺は西田を見向きもしなかった。
「奥様には・・」
「いや、まだだ」
俺はそっけなく答えた。
そして脚を投げ出し窓の外を眺めた。
車窓を流れて行く景色を見ながらいつの間にか俺の口元はかすかな笑みが浮かんでいた。
そしていつしか俺は牧野のことを考えていた。
車が東京支社の前に来たところで牧野のことを考えるのをやめ、これから待ち受けている仕事のことを考えるべくだらしなく緩んでいたであろう口元を引き締めた。
******
俺は今も牧野が昔と同じ気持ちでいてくれていると言う想いを知って
自分の中にあったあの時と同じ牧野に対しての愛しさが燃え上がってきている。
牧野と一緒に過ごす時間が増えるにつれて求め合う気持ちが高まってきているように思える。
俺はタキシード用のタイを結びながら考える。
今夜は牧野と特別な夜を過ごすつもりだ。
******
そこは大変な人出だった。
そぞろ歩きの通行人もいれば待ち合わせの人間も少なくない。
ロングボディーのメルセデスから降りて来たタキシードとパーティードレスを身にまとった二人に周囲の人間は何かの撮影かと歩みを止める。
一見モデルと見まがえる男性と小柄な女性。
その男は女の手を引き広場へとやって来る。
「ど、道明寺、どうしたの急に」
私は彼の急な行動に驚くしかない。
だってここは・・・この場所は・・・
「ねえ、待ってよ」
道明寺の歩くスピードについて行けない私はつまずきそうになる。
そんな私を見て彼は私の腰に腕を回したかと思えば緩慢な動作で私を抱き上げた。
そして衆人環視のなか、私を抱きかかえて広場の中央までやってくると唇にキスをした。
それから優しく私の身体を降ろすと、ふんわりと抱きしめてくる。
「牧野、今日は俺とデートだ」
この場所は俺が牧野に初めてのデートの待ち合わせ場所として指定した広場だ。
降りかかる雨をもろともせずにお前を待ち続けた。
私はどうしてこの場所に連れてこられたのか不思議に思った。
この場所は何かの偶然なのか・・・
「あのね、ここ・・・」
「分かってる」
私の言葉を阻むように道明寺は話はじめた。
「ここは雨の中、俺がお前に待ちぼうけを食わされた場所だろ?」
「・・・・ど、どうして・・・」
「 牧野、ごめん・・・・・。 俺、お前のことを思い出した 」
そう言いながら俺は牧野の瞳を見つめ続けた。
牧野は身動きもせず声も出さない。
俺は一瞬背筋がぞっとした。
牧野に愛されていると思っていたのは勘違いだったんだろうか。
俺は牧野の華奢な身体を抱いたまま、驚きに見開かれていく瞳を見つめていた。
その瞳の奥が揺れ動くのが分かる。
そしてその身体の震えが感じられ、感情の波が牧野の身体を駆け抜けているのが感じられた。
俺の腕の中の小さな温もりが震えている。
「 い、いつ? 」
私は言葉が喉の奥に貼り付いたようで上手く言えない。
そしてうれしさと安堵感で涙が溢れてくる。
「 ど、どうして謝るの? 」
お願い、謝らないで・・
私は不安とパニックに襲われそうになった。
私はあの日、夢のように時間を止め、哀しみはそっと眠らせて道明寺の傍にいることにした。
だから謝らないで。
どうして謝るの?
「 牧野、牧野 」
牧野の瞳から大粒の涙がこぼれている。
「聞いてくれ。俺がお前を9年間も忘れ去っていたんだ。すべては俺がお前を・・・
お前のことを思い出さなかった俺が・・・」
俺は何度でもお前に詫びるよ。
「 ごめん 牧野 」
私はこの9年間誰にも知られないように、誰にも気づかれないように哀しみを眠らせてきた。
忘れないで・・・私はここにいる。
いつだってその想いを手放すことなんか出来なかった。
「ど、どうし・・て・・・どうして・・・忘れちゃったの・・なんで・・・」
私は感情のダムが決壊してしまった。
涙が溢れるのを止められないでいる。
眠らせてきた想いが溢れでてきて止めることが出来ない。
「牧野・・・悪かった・・・お前のことを忘れて・・」
俺は身体を震わせ泣いている牧野を抱きしめ続けた。
そうする事で牧野の哀しみが少しでも俺に吸収されればいいと思った。
こいつの人生が哀しみに染まることがないように・・・
そして哀しみで涙がこぼれることがないように・・・・
これからは決してお前の傍を離れることは無い。
もう二度と離れないように愛せる。
どこかでカメラのフラッシュが閃いている。
それが引き金となったかのように周囲の人だかりから歓声と思われる声が聞こえてくる。
そして誰かが手を叩きはじめていた。
俺は胸で泣いている牧野の顔を自分の方に向けた。
「 愛している 」
俺はそうささやくと唇をあわせ、力いっぱい牧野を抱きしめて胸の奥でくすぶっていた思いをぶつけた。
沢山のカメラのフラッシュの閃光と、歓声と拍手が聞こえる。
まるでそこだけにスポットライトが当てられているような光景・・・。
まるで映画のワンシーンのような光景に歓声と拍手が広がっていく。
そして、それはまるで伝染したかのように周囲に広がっていった。
それでも俺はキスを止めることが出来なかった。
牧野はそんな回りの喧騒に何も気づかないようにキスを返してくる。
カメラのフラッシュも、囃し立てる声も、拍手も・・何もかも忘れたように。
そしてそんな牧野と俺のキスは終わることがなかった。
あの日、俺の目の前に現れたウエディングドレス姿の牧野。
あの時言わなかった俺の言葉。
今なら言える。
これから先、永遠の愛を誓う。
お前だけに。
*****
「じゃあね牧野。元気で」
昨日花沢類にそう言われて東京を離れた私達はニューヨークへと戻って来た。
私はベッドでゆっくりと目を覚まそうとしていた。
さずがの道明寺も疲れているのか、私の隣で寝息をたてている。
頭の中には前夜の記憶が甦る。
記憶の戻った道明寺とベッドで愛し合うのは妻としての義務ではない。
彼の愛する妻として愛し合うのは今までの感情の比ではなかった。
昨夜の道明寺の激しい抱擁を思い出すと身体が火照る。
分厚いカーテンの向こうはきっと眩しいくらいの光が降り注いでいるはずだ。
そろそろ起きなければ・・
「きゃ・・」
私のそんな考えを遮るように隣に寝ていたはずの道明寺がのしかかってきた。
「・・・お前、何考えてる・・」
「な・・何ってそろそろ起きないと・・」
「まだ起きなくていい・・」
9年分の熱い思いと情熱が感じられる。
互いの手脚を絡め合いながらもう決して離れないと抱き合った。
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そして燃え尽きた。
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『 俺はつくしの夫だ 』
私はそう言われた時のことを思い出す。
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金曜日の午後、混雑している都心の道路を、リムジンはスピードを上げて走り抜け、東京支社へと向かっていた。
先日のパーティーのホストだったクソ親父の会社の買取りに成功したが、大がかりな変革が必要となりそうだ。道明寺の財政支援を必要としている優良企業を買取り、事業運営の仕方を整え、本当に欲しい部門だけを残しあとはバラバラにして売り払う。いずれにせよまだ暫くは、毎日長時間の骨の折れる仕事となりそうだ。
そんな中、司は未だに記憶が戻ったことをつくしに告げられずにいた。
***
「法務部の者が副社長に言われた書類を持ってきました」
西田は契約書を司に渡した。
何百億、何千億という支出を伴う文書を顔色ひとつ変えることなく読み進めていく男を、秘書は黙って見ている。そうしながらも不意に思った。司様は牧野様のことを思い出されているのではないだろうかと。
見る者を威圧する勢いと、徹底的な無情で立ちはだかる障害を排除してきた男だ。
だが最近ふとした時に見せる表情に、違和感を感じることがある。
時おり牧野様を困らせるようなことをおっしゃっても、その表情はどこか違う。
うっすらと笑みを浮かべているように見えるその表情は、決して以前には無かったものだ。
その笑みはまるで愛しい人を見守っているような笑みだ。
あれはどう見ても・・・
もしや・・・
そんな思いを巡らせていた西田だったが、いきなり現実に引き戻された。
司が契約書の内容の何か所かに変更を加え差し戻せと突き返してきた。
西田はその契約書を受け取り指示通り、法務部へと返却をする為に執務室を後にしようと踵を返そうとした時だった。
「なあ西田」
「はい。何でございましょうか」
いつもと変わらない自信に満ちた声の男は、
デスクの正面に立つ秘書にひと息つくとこう言った。
「俺、記憶が戻った」
「やはりそうでしたか」
西田は表情を何ひとつ変えることもなく言い放っていた。
「お伺いしてもよろしいですか」
「何だ」
司はデスクの上に軽く肘をつき、胸の前で手のひらを組むように合わせた。
「記憶が戻られたのはいつのことでしょうか」
「俺が高熱を出して牧野が来ただろ? あの時だ」
「それでこの事は牧野様・・・いえ奥様にはお伝えしていないのですね?」
「・・ああ。まだ言ってない」
じっと西田の方を見返してくる男の表情が一瞬歪んだように見えた。
いや、見えたのではない。実際歪んだはずだ。
「なぜお伝えしないのですか?」
「・・なんと言えばいいのか分からないでいる」
司は思わず言葉に詰まりそうになっていたが、動じるなという方が無理だ。
「どうなさるおつもりですか?まさかこのまま・・」
「いや、それはない」
司は西田の言葉を遮って断言したが、やはりどうすればいいのか分からずにいた。
その顔は、明らかに内心穏やかではいられないといった表情をしていた。
司は椅子ごと向きを変え、都内の一等地が見渡せる窓の外を見つめた。
そしてそれを合図としたように、西田は一礼をして静かに出て行った。
窓の外を見つめながら司は思った。
決して消えない、消せない思い出を作りたいと思ったのはいつのことだったかと。
彼はもどかしさと苛立ちに深いため息をついていた。

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先日のパーティーのホストだったクソ親父の会社の買取りに成功したが、大がかりな変革が必要となりそうだ。道明寺の財政支援を必要としている優良企業を買取り、事業運営の仕方を整え、本当に欲しい部門だけを残しあとはバラバラにして売り払う。いずれにせよまだ暫くは、毎日長時間の骨の折れる仕事となりそうだ。
そんな中、司は未だに記憶が戻ったことをつくしに告げられずにいた。
***
「法務部の者が副社長に言われた書類を持ってきました」
西田は契約書を司に渡した。
何百億、何千億という支出を伴う文書を顔色ひとつ変えることなく読み進めていく男を、秘書は黙って見ている。そうしながらも不意に思った。司様は牧野様のことを思い出されているのではないだろうかと。
見る者を威圧する勢いと、徹底的な無情で立ちはだかる障害を排除してきた男だ。
だが最近ふとした時に見せる表情に、違和感を感じることがある。
時おり牧野様を困らせるようなことをおっしゃっても、その表情はどこか違う。
うっすらと笑みを浮かべているように見えるその表情は、決して以前には無かったものだ。
その笑みはまるで愛しい人を見守っているような笑みだ。
あれはどう見ても・・・
もしや・・・
そんな思いを巡らせていた西田だったが、いきなり現実に引き戻された。
司が契約書の内容の何か所かに変更を加え差し戻せと突き返してきた。
西田はその契約書を受け取り指示通り、法務部へと返却をする為に執務室を後にしようと踵を返そうとした時だった。
「なあ西田」
「はい。何でございましょうか」
いつもと変わらない自信に満ちた声の男は、
デスクの正面に立つ秘書にひと息つくとこう言った。
「俺、記憶が戻った」
「やはりそうでしたか」
西田は表情を何ひとつ変えることもなく言い放っていた。
「お伺いしてもよろしいですか」
「何だ」
司はデスクの上に軽く肘をつき、胸の前で手のひらを組むように合わせた。
「記憶が戻られたのはいつのことでしょうか」
「俺が高熱を出して牧野が来ただろ? あの時だ」
「それでこの事は牧野様・・・いえ奥様にはお伝えしていないのですね?」
「・・ああ。まだ言ってない」
じっと西田の方を見返してくる男の表情が一瞬歪んだように見えた。
いや、見えたのではない。実際歪んだはずだ。
「なぜお伝えしないのですか?」
「・・なんと言えばいいのか分からないでいる」
司は思わず言葉に詰まりそうになっていたが、動じるなという方が無理だ。
「どうなさるおつもりですか?まさかこのまま・・」
「いや、それはない」
司は西田の言葉を遮って断言したが、やはりどうすればいいのか分からずにいた。
その顔は、明らかに内心穏やかではいられないといった表情をしていた。
司は椅子ごと向きを変え、都内の一等地が見渡せる窓の外を見つめた。
そしてそれを合図としたように、西田は一礼をして静かに出て行った。
窓の外を見つめながら司は思った。
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内容の一部分に大人向けの表現が含まれています。
未成年の方はお控え下さい。
またそのようなお話が苦手な方もお控え下さい。
***********************
車内のリカーキャビネットにある銀のアイスバスケットの中にはドンペリニョンのボトルが斜めに寝かせてある。
待たせていた車に乗り込みパーティーを後にした二人は邸へと向かっていた。
外の喧騒を街の片隅に追いやるように車はスピードをあげて行く。
時の流れと同じように車窓を流れていく風景。あの日止まってしまった俺と牧野の風景。
心が震えているようだ。だがどれだけの時間(とき)が流れてもお前の言葉に嘘はないだろう?
牧野は俺とずっと一緒にいる。
これから先もずっと。
司はアイスバスケットから取り出したドンペリの栓を抜いた。
そしてグラスをつくしに差し出した。
「乾杯しよう」
「え?」
いったい何に乾杯すると言うのだろうという顔の女。
それでもおとなしくグラスを受け取った。
「ねえ、何に乾杯するの?」
一瞬妙な顔つきになっていた。
司は無性に女を腕の中に引き寄せたかったがグラスを持つ手にそんなことは出来ない。
何に乾杯するのか。
その質問に対する答えは
『 牧野、お前との記憶が戻ったことに 』
「あ? あのクソ親父の会社がうちのものになる前祝いだ」
つくしが手にしているグラスに合わせるよう、司はグラスを持ち上げた。
***
身体はまるでクリームのように溶かされて行く。
帰りの車の中で飲んだシャンパン。
そしてキスの嵐。つくしは夢中でキスを返した。
誘いかける司の舌を迎え入れ、自らも同じことをする。
目をつむって夢の時間に身を任せる。
そんな甘いひととき、唇が離れ、一瞬時間が止まる。
「ど、どうしたの?」
か細い声は他人のようで戸惑いを感じさせた。
「お前を見ている」
司の視線はつくしの胸、ウエスト、そして太腿へと這わされていた。
つくしはそわそわと恥ずかしくなり、手を差し出し、司の肩を抱き寄せようとしていた。手に触れた男の身体はまるで熱があるように熱い。ゆっくりと俯いて顔が近づき、荒々しくもエロティックなくちづけが交わされる。
互いの舌を差し入れ絡めあうくちづけ。
粘着質な音がつくしの耳に届いているが、その音さえも心地よいと感じられた。
身体は司の熱が伝染したかのように火照っていた。そんなつくしを壊れものでも扱うように触れてくる男の手。
司はつくしの胸に唇を這わせ、その頂きを口に含み、脚の間へ自分の脚を入れ押し広げる。
つくしは司の背中に手をまわし、しがみついていた。心臓は狂ったように鼓動を高めているが、そんな女の中に司はうめき声とともに突き進んだ。
浅く緩やかに動き出したと思うと、埋もれるほどの深さでつくしの中に突き進み、律動を繰り返す。少しずつテンポを速めるその動きに、男の背中にしがみき、呻くしか出来ない女。爪が肩に食い込むほど抱きしめ、男の全てを受け止め高みにのぼって行く。
ああ、道明寺・・・
愛してる。
あんたがあたしのことを思い出さなくてもいい。
これから先もずっと愛し続けるから・・・
涙が頬を伝うのが分かる。
熱くうねる液体がつくしの身体の奥へとそそぎ込まれる瞬間、陶酔感にひたっていた。
***
司は無心に妻を抱いた。
今この腕の中にいるのは昔の俺が愛した女。
互いの指に収まる指輪を見つめて9年前を思う。
牧野は最初からすべてを与えてくれる側で、そして決してその見返りを求めることは無かった。
二人の住む社会の間には深い溝があったはずだ。
一度はその溝を飛び越えて俺のもとへと来てくれた女だった。
それなのにこの俺は大切な女の事を忘れ去っていた。
どれだけ時間が流れても、お前のことだけは忘れてはいけなかったのに・・・・
司は眠った妻に優しく唇を寄せた。
俺が心の底から欲しかった女・・
牧野・・・
愛している。

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車内のリカーキャビネットにある銀のアイスバスケットの中にはドンペリニョンのボトルが斜めに寝かせてある。
待たせていた車に乗り込みパーティーを後にした二人は邸へと向かっていた。
外の喧騒を街の片隅に追いやるように車はスピードをあげて行く。
時の流れと同じように車窓を流れていく風景。あの日止まってしまった俺と牧野の風景。
心が震えているようだ。だがどれだけの時間(とき)が流れてもお前の言葉に嘘はないだろう?
牧野は俺とずっと一緒にいる。
これから先もずっと。
司はアイスバスケットから取り出したドンペリの栓を抜いた。
そしてグラスをつくしに差し出した。
「乾杯しよう」
「え?」
いったい何に乾杯すると言うのだろうという顔の女。
それでもおとなしくグラスを受け取った。
「ねえ、何に乾杯するの?」
一瞬妙な顔つきになっていた。
司は無性に女を腕の中に引き寄せたかったがグラスを持つ手にそんなことは出来ない。
何に乾杯するのか。
その質問に対する答えは
『 牧野、お前との記憶が戻ったことに 』
「あ? あのクソ親父の会社がうちのものになる前祝いだ」
つくしが手にしているグラスに合わせるよう、司はグラスを持ち上げた。
***
身体はまるでクリームのように溶かされて行く。
帰りの車の中で飲んだシャンパン。
そしてキスの嵐。つくしは夢中でキスを返した。
誘いかける司の舌を迎え入れ、自らも同じことをする。
目をつむって夢の時間に身を任せる。
そんな甘いひととき、唇が離れ、一瞬時間が止まる。
「ど、どうしたの?」
か細い声は他人のようで戸惑いを感じさせた。
「お前を見ている」
司の視線はつくしの胸、ウエスト、そして太腿へと這わされていた。
つくしはそわそわと恥ずかしくなり、手を差し出し、司の肩を抱き寄せようとしていた。手に触れた男の身体はまるで熱があるように熱い。ゆっくりと俯いて顔が近づき、荒々しくもエロティックなくちづけが交わされる。
互いの舌を差し入れ絡めあうくちづけ。
粘着質な音がつくしの耳に届いているが、その音さえも心地よいと感じられた。
身体は司の熱が伝染したかのように火照っていた。そんなつくしを壊れものでも扱うように触れてくる男の手。
司はつくしの胸に唇を這わせ、その頂きを口に含み、脚の間へ自分の脚を入れ押し広げる。
つくしは司の背中に手をまわし、しがみついていた。心臓は狂ったように鼓動を高めているが、そんな女の中に司はうめき声とともに突き進んだ。
浅く緩やかに動き出したと思うと、埋もれるほどの深さでつくしの中に突き進み、律動を繰り返す。少しずつテンポを速めるその動きに、男の背中にしがみき、呻くしか出来ない女。爪が肩に食い込むほど抱きしめ、男の全てを受け止め高みにのぼって行く。
ああ、道明寺・・・
愛してる。
あんたがあたしのことを思い出さなくてもいい。
これから先もずっと愛し続けるから・・・
涙が頬を伝うのが分かる。
熱くうねる液体がつくしの身体の奥へとそそぎ込まれる瞬間、陶酔感にひたっていた。
***
司は無心に妻を抱いた。
今この腕の中にいるのは昔の俺が愛した女。
互いの指に収まる指輪を見つめて9年前を思う。
牧野は最初からすべてを与えてくれる側で、そして決してその見返りを求めることは無かった。
二人の住む社会の間には深い溝があったはずだ。
一度はその溝を飛び越えて俺のもとへと来てくれた女だった。
それなのにこの俺は大切な女の事を忘れ去っていた。
どれだけ時間が流れても、お前のことだけは忘れてはいけなかったのに・・・・
司は眠った妻に優しく唇を寄せた。
俺が心の底から欲しかった女・・
牧野・・・
愛している。

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司は高熱を出し、つくしのことを思い出していた。
何故このタイミングで思い出したのかは神のみぞ知るとしか言いようがない。
どうすればいい?
俺はもう昔の俺じゃない。
何がどう違うかと言われても困るが
18歳の俺と今の俺では牧野に対する思いが違うんだろう。
昔、好きでたまらなかった女も今は俺の妻だ。
これが喜ばずにいられるか?
喜ばすにはいられないはずだ。
覆水盆に返らず、という諺があるが俺と牧野は今は夫婦になっている。
これまでの人生で色々とあったかもしれないがもう大昔のことだ。
それに俺は同じ女に二度目の恋をしている。
二度目の出会いは俺たちの結婚式。
牧野を知るたびに新しく芽生えた気持ちがある。
時計の針を戻すことは出来ないが、俺は今からでもまた牧野のことを愛することが出来る。夢に見た記憶がもう消えることはもうない。延々と続く夢の先に見たのはおまえの姿だったんだな。今まで別々の道を歩んでいたのはあの日の為だったのか?
天命だったか?
俺の目線の先にいる牧野。
そんな牧野の髪が揺れる度に俺の視線も揺れ動くようだ。
牧野、あの日俺はおまえを忘れ去ってしまった。
そして大切な約束も・・・。
いつかの″お前じゃなきゃだめだ″が今でもおまえの記憶の中にはあるか?
暗闇を彷徨う俺に永遠を与えてくれたのはお前だった。
失いかけていたお前をこの手に取り戻したこともあった。
そして今お前と迎える新しい夜明けがある。
終わらない記憶をこれから一緒に刻んでいきたい。
***
最近の道明寺は様子がおかしい。
相変らず仕事は精力的にこなしてはいるが何かが違うと感じる。
つくしはふわりとスカートが広がるシルクタフタのストラップドレスを着ていた。
胸元を飾るのは見事なサファイアとダイヤモンドのネックレス。
化粧室から出ると司の待つ階下へと戻る為階段へと歩みを進めた。
司はあたりを見回し、妻を探した。
そのとき誰かが自分の名を呼ぶのを聞いた気がした。振り向いて階段の上を見上げた瞬間、シャンパングラスを手に司は固まってしまった。
そこで目にした女。出会った頃はまだ子供と言ってもいいような年齢だった女が美しい姿で立っていた。
『牧野 きれいだ』
心の中でしか呟くことが出来ないでいる。
もう二度と忘れたくないから、離れたくないから、決して消せない、消えない思い出を作りたいと司は願っていた。
階段を降りてくるつくしはひとごみのなか、司の姿を探しながら最後の一段を降りた。
立ち尽くしている司の傍には人だかりが出来ている。だが、まわりの人間の話し声はただの喧騒としか感じられない。つくしは司が見つめていることに気づくと、足早に近づいた。
「お待たせ」
少し息をはずませた声が出る。
「道明寺さん、本日はようこそおこし下さいました。奥様もどうぞごゆっくりしていって下さい」
二人の間に割って入るように握手を求めて来たのは、司が敵対的買収を計画している会社の社長だ。そんな事とはつゆ程も思いつかない男は呑気に話かけていた。男の会社はバイオ関連の特許をいくつも持っている。それも特許の有効期間が長いものばかりだ。司はその会社に対し、役員を送り込もうとしていた。
「道明寺さん、最近敵対的買収が増えて来ていることについてどう思われますか?」
この男感づいたか?
誘導尋問的なことを予想はしていたが、司は上手くはぐらかした。
「いい会社は狙われるものです。我社はいい会社なら買収したいと考えます。それはお互いの為にはいい事ではないでしょうか? 仮にですがもし我社が買収を試みるのならその会社のためには利益になるのでは?」
「しかし、その会社が買収を望んでいないとしたら?」
「それは残念です。我社ほど資本がある会社の傘下に入るなら色々とメリットもあるはずだが?」
袖口の時計へと目を落とすと時間を気にする素振りをした。
「申し訳ないが、このあと妻と約束をしている事がありますので失礼をさせて頂きます。」
牧野の手を取りパーティーを後にした。

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何故このタイミングで思い出したのかは神のみぞ知るとしか言いようがない。
どうすればいい?
俺はもう昔の俺じゃない。
何がどう違うかと言われても困るが
18歳の俺と今の俺では牧野に対する思いが違うんだろう。
昔、好きでたまらなかった女も今は俺の妻だ。
これが喜ばずにいられるか?
喜ばすにはいられないはずだ。
覆水盆に返らず、という諺があるが俺と牧野は今は夫婦になっている。
これまでの人生で色々とあったかもしれないがもう大昔のことだ。
それに俺は同じ女に二度目の恋をしている。
二度目の出会いは俺たちの結婚式。
牧野を知るたびに新しく芽生えた気持ちがある。
時計の針を戻すことは出来ないが、俺は今からでもまた牧野のことを愛することが出来る。夢に見た記憶がもう消えることはもうない。延々と続く夢の先に見たのはおまえの姿だったんだな。今まで別々の道を歩んでいたのはあの日の為だったのか?
天命だったか?
俺の目線の先にいる牧野。
そんな牧野の髪が揺れる度に俺の視線も揺れ動くようだ。
牧野、あの日俺はおまえを忘れ去ってしまった。
そして大切な約束も・・・。
いつかの″お前じゃなきゃだめだ″が今でもおまえの記憶の中にはあるか?
暗闇を彷徨う俺に永遠を与えてくれたのはお前だった。
失いかけていたお前をこの手に取り戻したこともあった。
そして今お前と迎える新しい夜明けがある。
終わらない記憶をこれから一緒に刻んでいきたい。
***
最近の道明寺は様子がおかしい。
相変らず仕事は精力的にこなしてはいるが何かが違うと感じる。
つくしはふわりとスカートが広がるシルクタフタのストラップドレスを着ていた。
胸元を飾るのは見事なサファイアとダイヤモンドのネックレス。
化粧室から出ると司の待つ階下へと戻る為階段へと歩みを進めた。
司はあたりを見回し、妻を探した。
そのとき誰かが自分の名を呼ぶのを聞いた気がした。振り向いて階段の上を見上げた瞬間、シャンパングラスを手に司は固まってしまった。
そこで目にした女。出会った頃はまだ子供と言ってもいいような年齢だった女が美しい姿で立っていた。
『牧野 きれいだ』
心の中でしか呟くことが出来ないでいる。
もう二度と忘れたくないから、離れたくないから、決して消せない、消えない思い出を作りたいと司は願っていた。
階段を降りてくるつくしはひとごみのなか、司の姿を探しながら最後の一段を降りた。
立ち尽くしている司の傍には人だかりが出来ている。だが、まわりの人間の話し声はただの喧騒としか感じられない。つくしは司が見つめていることに気づくと、足早に近づいた。
「お待たせ」
少し息をはずませた声が出る。
「道明寺さん、本日はようこそおこし下さいました。奥様もどうぞごゆっくりしていって下さい」
二人の間に割って入るように握手を求めて来たのは、司が敵対的買収を計画している会社の社長だ。そんな事とはつゆ程も思いつかない男は呑気に話かけていた。男の会社はバイオ関連の特許をいくつも持っている。それも特許の有効期間が長いものばかりだ。司はその会社に対し、役員を送り込もうとしていた。
「道明寺さん、最近敵対的買収が増えて来ていることについてどう思われますか?」
この男感づいたか?
誘導尋問的なことを予想はしていたが、司は上手くはぐらかした。
「いい会社は狙われるものです。我社はいい会社なら買収したいと考えます。それはお互いの為にはいい事ではないでしょうか? 仮にですがもし我社が買収を試みるのならその会社のためには利益になるのでは?」
「しかし、その会社が買収を望んでいないとしたら?」
「それは残念です。我社ほど資本がある会社の傘下に入るなら色々とメリットもあるはずだが?」
袖口の時計へと目を落とすと時間を気にする素振りをした。
「申し訳ないが、このあと妻と約束をしている事がありますので失礼をさせて頂きます。」
牧野の手を取りパーティーを後にした。

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メープルで一夜を明かした二人。
昨夜、シャワーから出て来た司は、何か考えているのか押し黙ったまま眠りについた。
朝起きた男はまだ身体が辛いのか、少し顔を歪めていた。
つくしはそんな司に何かしてあげられるはずだと思い、朝食はホテルのレストランから彼の食べやすいものをオーダーした。体調が優れない人間には丁度いいと思える消化の良い物を選んだつもりでいるが、食べてくれるだろうか?
暫くして寝室から出て来たのは既にパリッとしたスーツを着こなしたいつもの道明寺だ。
それでも、いつものどこか余裕のあるあの表情は見られなかった。
「ねえ、朝食を頼んでおいたから一緒に食べない?」
「いや、要らない」
「でも、せっかく頼んだんだからひと口くらい食べたら・・」
「悪いが今日はこれからブレックファーストミーティングがある」
司はデスクからタブレット端末を取り出かけようとしていた。
だが、ふとその手を止めつくしの方に視線を向けてきた。
「・・牧野、おまえ・・・」
言いかけた司だったがその先の言葉はなかった。
「副社長、そろそろお時間です。奥様、申し訳ございませんが司様のご予定が詰まっておりますので失礼致します」
秘書に声をかけられた男は、部屋を後にするため扉へ向かいながら、ためらった。
そして一瞬だが、つくしの方を振り返ると出て行った。
その様子を見ていたつくしの胸には妙な感じが残っていた。
***
司は牧野つくしの事を思い出した。
9年間もの間忘れていた女のことを。
何故このタイミングだったんだ?
ブレックファーストミーティングを終え、社に戻った。
「諸君、この後も会議が詰まっている」
司は居並ぶ重役達を一瞥すると買収計画のあるK社の資料を革張りのファイルへと収めた。企業買収後のやり方に文句を言う重役もいるが、それは無駄な時間を省く為の手段だ。
K社の中でも欲しいと思っている部門だけにそれぞれの専門分野の男達を派遣し、部門ごとの仕事内容について今後の方針とそれぞれの長所と短所を見極めさせる。当然不要な部門も出てくる。切り捨てる部署も出てくるということだ。だが今までの司の仕事に対しての批判はない。利益優先で動くならば、多少の揉め事があっても当然だ。トップは限られた時間でマルチタスクをこなさなければならない。いつまでもK社だけに関わっている訳にはいかない。
そんな司は牧野つくしのことを考えていた。
どうしたらいいんだ。
正直俺はどうしたらいいのか分からないでいる。
突然戻った俺と牧野との記憶。
会議室を後にして執務室へと踵を返す。
後ろから付き従う西田がこの後のスケジュールについての報告をしてくる。
「・・・副社長?」
「ああ、分かっている・・」
心なしか声が掠れてしまった。
「まだご体調が優れませんか?」
「いや。大丈夫だ。悪いが5分、時間をくれないか? それから水とアスピリンをくれ」
司は革張りのソファへと腰をおろしネクタイを緩める。
そして両腕を広げソファの背もたれへと腕を掛けつくしが眺めていた絵画へと目を向けた。
『色がきれいだね』そんな風に言っていた牧野。
そうだな、きれいな色だな。
俺も昔お前と出会ってから人生が色付き始めたんだったな。
お前と出会う前は色を無くして孤独だった俺がいた。
お前がいるから色とりどりの風景が見えるようだ。
司はアスピリンを流し込みネクタイを締め直すと次の会議へと向かうべく立ち上がった。

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昨夜、シャワーから出て来た司は、何か考えているのか押し黙ったまま眠りについた。
朝起きた男はまだ身体が辛いのか、少し顔を歪めていた。
つくしはそんな司に何かしてあげられるはずだと思い、朝食はホテルのレストランから彼の食べやすいものをオーダーした。体調が優れない人間には丁度いいと思える消化の良い物を選んだつもりでいるが、食べてくれるだろうか?
暫くして寝室から出て来たのは既にパリッとしたスーツを着こなしたいつもの道明寺だ。
それでも、いつものどこか余裕のあるあの表情は見られなかった。
「ねえ、朝食を頼んでおいたから一緒に食べない?」
「いや、要らない」
「でも、せっかく頼んだんだからひと口くらい食べたら・・」
「悪いが今日はこれからブレックファーストミーティングがある」
司はデスクからタブレット端末を取り出かけようとしていた。
だが、ふとその手を止めつくしの方に視線を向けてきた。
「・・牧野、おまえ・・・」
言いかけた司だったがその先の言葉はなかった。
「副社長、そろそろお時間です。奥様、申し訳ございませんが司様のご予定が詰まっておりますので失礼致します」
秘書に声をかけられた男は、部屋を後にするため扉へ向かいながら、ためらった。
そして一瞬だが、つくしの方を振り返ると出て行った。
その様子を見ていたつくしの胸には妙な感じが残っていた。
***
司は牧野つくしの事を思い出した。
9年間もの間忘れていた女のことを。
何故このタイミングだったんだ?
ブレックファーストミーティングを終え、社に戻った。
「諸君、この後も会議が詰まっている」
司は居並ぶ重役達を一瞥すると買収計画のあるK社の資料を革張りのファイルへと収めた。企業買収後のやり方に文句を言う重役もいるが、それは無駄な時間を省く為の手段だ。
K社の中でも欲しいと思っている部門だけにそれぞれの専門分野の男達を派遣し、部門ごとの仕事内容について今後の方針とそれぞれの長所と短所を見極めさせる。当然不要な部門も出てくる。切り捨てる部署も出てくるということだ。だが今までの司の仕事に対しての批判はない。利益優先で動くならば、多少の揉め事があっても当然だ。トップは限られた時間でマルチタスクをこなさなければならない。いつまでもK社だけに関わっている訳にはいかない。
そんな司は牧野つくしのことを考えていた。
どうしたらいいんだ。
正直俺はどうしたらいいのか分からないでいる。
突然戻った俺と牧野との記憶。
会議室を後にして執務室へと踵を返す。
後ろから付き従う西田がこの後のスケジュールについての報告をしてくる。
「・・・副社長?」
「ああ、分かっている・・」
心なしか声が掠れてしまった。
「まだご体調が優れませんか?」
「いや。大丈夫だ。悪いが5分、時間をくれないか? それから水とアスピリンをくれ」
司は革張りのソファへと腰をおろしネクタイを緩める。
そして両腕を広げソファの背もたれへと腕を掛けつくしが眺めていた絵画へと目を向けた。
『色がきれいだね』そんな風に言っていた牧野。
そうだな、きれいな色だな。
俺も昔お前と出会ってから人生が色付き始めたんだったな。
お前と出会う前は色を無くして孤独だった俺がいた。
お前がいるから色とりどりの風景が見えるようだ。
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今、何時だ?
薬に誘発された眠りのなか司は夢を見た。
その夢のなかに妻となった牧野の姿があった。
白い手が優しく差し伸べられ、身体を触っている夢。
あれは夢だったのか?
いや、そうじゃない。
ぎこちなく俺のシャツのボタンを外し、ズボンを脱がせようと四苦八苦していた。
そしてその夢には続きがあった。
延々と続く夢。
薄暗い世界をどこか向かって歩いていく少年の司。
周りには誰もおらず、たったひとり広い道を歩いていく。彼は誰もいないその世界に不安を覚え、誰かいないかと辺りを見回すが誰も見当たらない。
暫く行くと、前を歩くひとりの少女を見つける。司はその少女に振り向いてもらいたいと呼びかけるも振り向いてはもらえず、追いかけて行くも追いつけず、やがて少女は、はるか前方の暗闇の中へと消えた。その瞬間、司の身体が凍り付いたようになり動かなくなる。
そして司を呼ぶ声だけが聞えて来た。
・・・・どうみ・・・・
どう・・どうみょう・・・
・・どうみょうじ・・
どうみょうじ!
しっかりして、道明寺!
誰かが俺を呼んでいる。
誰かが俺の身体を揺さぶっている。
幾つかの言葉が頭の中を飛び交い思考が纏まらない。だが頭の中に響く声を無視するわけにはいかない。
「道明寺!大丈夫?しっかりして!夢、夢だから!」
夢?夢なのか?
「道明寺!!」
司はだんだんと覚醒してくるのが分かった。
目を覚ました先にいたのは妻となった女。
「何か・・・あったのか?」
司は一瞬どこにいるのか分からなかった。
つくしは安堵のため息と共に座り込んだ。
「うん、うなされてた」
「・・そうか」
「お水飲む?」
司は上体を起こすとヘッドボードへと身体を預けた。
「夢なんて見る事がないのに・・。薬のせいだな」
汗で湿った髪をかき上げた。
「気分はどう?」
つくしはペットボトルに入った水を司に手渡した。
「ああ、随分と楽になった。汗かいて気持ち悪りぃからシャワー浴びてくる」
***
牧野の指が額にかかった髪の毛を払いのけている気がする。
9年前、俺は牧野に恋をした。
一目惚れだと言ってもいい恋だった。
そしてそれから間もなく俺は暴漢に刺されて生死を彷徨い牧野の記憶だけを失ってしまった。それ以来、俺は失われていた記憶を取り戻すことがなく過ごしてきた。
あの頃意地っ張りだった俺と牧野がいた。
牧野、俺は・・・・
お前と俺の過ごした9年前のことを。
思い出した。

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薬に誘発された眠りのなか司は夢を見た。
その夢のなかに妻となった牧野の姿があった。
白い手が優しく差し伸べられ、身体を触っている夢。
あれは夢だったのか?
いや、そうじゃない。
ぎこちなく俺のシャツのボタンを外し、ズボンを脱がせようと四苦八苦していた。
そしてその夢には続きがあった。
延々と続く夢。
薄暗い世界をどこか向かって歩いていく少年の司。
周りには誰もおらず、たったひとり広い道を歩いていく。彼は誰もいないその世界に不安を覚え、誰かいないかと辺りを見回すが誰も見当たらない。
暫く行くと、前を歩くひとりの少女を見つける。司はその少女に振り向いてもらいたいと呼びかけるも振り向いてはもらえず、追いかけて行くも追いつけず、やがて少女は、はるか前方の暗闇の中へと消えた。その瞬間、司の身体が凍り付いたようになり動かなくなる。
そして司を呼ぶ声だけが聞えて来た。
・・・・どうみ・・・・
どう・・どうみょう・・・
・・どうみょうじ・・
どうみょうじ!
しっかりして、道明寺!
誰かが俺を呼んでいる。
誰かが俺の身体を揺さぶっている。
幾つかの言葉が頭の中を飛び交い思考が纏まらない。だが頭の中に響く声を無視するわけにはいかない。
「道明寺!大丈夫?しっかりして!夢、夢だから!」
夢?夢なのか?
「道明寺!!」
司はだんだんと覚醒してくるのが分かった。
目を覚ました先にいたのは妻となった女。
「何か・・・あったのか?」
司は一瞬どこにいるのか分からなかった。
つくしは安堵のため息と共に座り込んだ。
「うん、うなされてた」
「・・そうか」
「お水飲む?」
司は上体を起こすとヘッドボードへと身体を預けた。
「夢なんて見る事がないのに・・。薬のせいだな」
汗で湿った髪をかき上げた。
「気分はどう?」
つくしはペットボトルに入った水を司に手渡した。
「ああ、随分と楽になった。汗かいて気持ち悪りぃからシャワー浴びてくる」
***
牧野の指が額にかかった髪の毛を払いのけている気がする。
9年前、俺は牧野に恋をした。
一目惚れだと言ってもいい恋だった。
そしてそれから間もなく俺は暴漢に刺されて生死を彷徨い牧野の記憶だけを失ってしまった。それ以来、俺は失われていた記憶を取り戻すことがなく過ごしてきた。
あの頃意地っ張りだった俺と牧野がいた。
牧野、俺は・・・・
お前と俺の過ごした9年前のことを。
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