大人向けのお話です。
未成年者の方。またはそういったお話が苦手な方はお控え下さい。
なお、イメージが著しく壊れる恐れがありますので、笑って許して下さる方のみどうぞ。
****************************************
「ねえ・・もしかして道明寺支社長ってゲイなんじゃないの?」
「うそ!」
「だってさぁ、支社長って女の噂って全然聞かないでしょ?」
「うん・・確かにそれは言える。あれだけのイケメン支社長に女の影がないなんて信じられないけど、絶対に彼女がいるわよ!」
「そうよ!支社長ってアメリカ暮らしが長かったんだから、アメリカに彼女がいるんじゃない?」
「確かにねぇ・・それも考えられるんだけど、それにしても全然噂にならないじゃない?それって変じゃない?それにパーティ―で取引先のご令嬢とか、美人女優とか、モデルとか支社長の周りに集まっても全然興味なし。むしろ、そんな女が自分の周りにいることが汚らわしいって感じなのよ?」
「それはやっぱりアレよ?アメリカにいる彼女のことを愛しているから相手にしないだけでしょ?」
「そうかなぁ・・」
「そうよ!」
「でもさ、あたし変な妄想しちゃった。支社長のご友人で花沢物産の専務がいるじゃない?」
「え?もしかして花沢類さん?」
「そう!支社長と花沢さんって実は・・・だったりして!ほら、長年の男同士の友情がいつの間にか愛情に変わってた・・なんて!」
俺が?
女に興味がない?
司はたまたま耳にしたその話に頷く部分もあった。
ご令嬢とか、美人女優とかモデルとか一切興味がないのは話しの通りだ。そんな女が傍にいることが汚らわしといった意見は正しい。それに愛しい牧野と出会うまで、低俗で薄汚く、すぐに泣く女なんぞ反吐が出るほど嫌いだった。
けれど、その先の会話に眉をひそめた。
なんで俺がゲイなんだ?
それにどうして俺が類とそんな関係に陥る必要がある?
俺の頭にあるのは牧野と早く結婚したい思いだけだ。
おまえら仕事中に変な妄想すんじゃねぇよ!
仕事中は仕事に集中しろ!!
司は支社長室に戻り、革張りの椅子にドカッと腰を下ろし、イタリア製の高価な靴に包まれた両脚をデスクの上へ乗せた。
そして上体をそらし、胸の前で腕を組み、目を閉じた。
頭の中を過るのはつくしとの結婚式の場面。
白いドレスを着た牧野と白いタキシードに身を包んだ俺。
教会を埋め尽くす沢山の花。オルガニストが演奏する結婚行進曲。
ヴァージンロードを歩いて来る牧野。
・・あいつもうヴァージンじゃねぇけど、そんなの関係ねぇよな?
そうだ。今、頭の中にあるのは俺と牧野の結婚式だ。
そのためには、まずは女の前にひざまずいてプロポーズをするのが男の俺の役目。
OKを貰えばそれから彼女の指に指輪を嵌める。
そして立ち上ってキスをする。
これでプロポーズは完了する。
実は今までそれに近いことは何度もやってる。
けどアイツまだ仕事したいだなんて言いやがるから結婚出来ないでいる。
こうなりゃいっそのことあの女、クビにしてやろうか。
・・けど、そんなことしたら口利いてもらえなくなるから止めとく。
ところで逆に女が男の前にひざまずいてヤルことを知ってるか?
フェ・・・。
今それを口にすれば、間違いなくこの場の空気が乱れるから止めとく。
言っとくがフェラガモでもフェンディでもフェラーリでもない。
けど、なんでよく似た言葉はどれもイタリア語だ?
それにカタカナにしてみれば、どれもこれも同じ文字数だ。
ああそうか。語源はラテン語の『Fellare』(吸う)から来てるからか?
・・おい、待て。フェラーリは『Ferrari』って書くが、なんかスペルまで似てねーか?
これじゃあフェラーリ見るたび牧野が俺の前にひざまずいてヤッてるところを想像しちまう。
そしてその瞬間、30秒も経たないうちにカチカチになるアレ。
口に咥えられるとあまりの気持ちよさにうめき声が上がるが、執務室でヤル時には声が漏れねぇようにしねぇと西田に気付かれる。
・・けどアレは男が無力になる瞬間だ。
何しろ男の身体の中で一番デリケートな部分を咥えられてる。
ヤッてもらう時はある意味で命を預けるようなもんだ。
万が一のことがあって、もしその部分がどうにかなっちまって使い物にならなくなったら大変だ。万が一のことか?そりゃ色々あるだろうが。
歯を立てるのは構わねぇけど、喰いちぎられるなんてことになったら男としての役目が終っちまう・・。
まあ牧野がそんなことするはずねぇけど?
それにしても、あの行為は自尊心がくすぐられる。
なにしろどんなに強気の女でも男の前にひざまずけば、男を崇め立てる姿勢になることは間違いないからだ。
そう言えば一度フェラーリの中で牧野にヤッてもらったことがあったが、今思えばあれは夢みてぇなことだったな。
フェラーリの中でフェラ。
それも運転中に牧野にごっくんしてもらった。
あん時はハンドルさばきを誤れば崖からダイブすんじゃねぇかって感じだな。
まさに昇天させられるってのはアノことだ。
けどフェラーリでフェラされながら昇天。
そんなことになったら笑い話になんねぇ・・。
・・それにしても、アイツはいつになったら俺と結婚してくれるんだ?
「・・司。俺はおまえを牧野に渡さないよ」
「類!」
司が閉じていた目を開いたとき、デスクの前にいたのは類。
「・・おまえ、いつの間に来たんだ?」
司はデスクの上から両脚を下ろし、類を見た。
「いつの間にって、司は寝てたから気づかなかっただけだよ。・・ねえ司、今俺が言ったこと聞こえたよね?」
「・・俺を牧野に渡さないって・・いったいどういうことだ・・。まさかおまえまだ牧野のことが好きなのか?」
学生時代、一時つくしを巡って二人が火花を散らしたことがあった。
「まさか・・違うよ。俺が好きなのは司だよ・・気づいてたんだろ?俺の気持ち」
類は呟き、司を食い入るように見つめながら近づいた。
「・・いったい何の話だ・・」
「司。聞こえただろ?俺は初等部の頃から司が好きだった。自分がゲイだってことはもう随分と前から気付いてたけど、そんな俺は長い間自分を否定し続けた・・。だけど司が牧野と結婚するって決めたって聞いてもう自分を抑えることは止めた・・。だから司、一度だけでいいから俺のものになって」
類はひざまずき、司のスラックスのベルトを掴み、バックルを外し、ファスナーを一気に引き下ろし、ボクサーブリーフの上から股間を愛撫した。そして、心得た手つきでブリーフをずらし、まだ柔らかさの残るペニスを引き出し、しごき始めた。やがて硬さが感じられると、口に咥え喉の奥深くまで一気に差し込んだ。そこまでの行為はあっという間の出来事。司は、何が起きているのかと気づいた時には、類のペースで物事は運ばれていた。
「る、類っ!」
司の口からむせぶように名前を呼ばれ、類は唇の愛撫を繰り返し、睾丸を手のひらでこすり、
そして頂きを吸い、舌を根元に向かってゆっくりと滑らせた。
「・・類・・止めろ・・止めてくれ・・」
だが類は止めようとしない。
司の前で床に膝をつき、唇でしゃぶる男は根元までしっかりと咥え、離そうとはしない。
ズズッと音を立て吸い上げ、先端を咥え、歯を立てた。そして充血した亀頭を弄びながら手のひらは睾丸を揉んでいた。
「る・・類ッ・・」
類の舌と唇は敏感な箇所を的確に攻め、完璧なリズムで強く吸った。
吸い上げられる力が強くなればなるほど、司は経験したことがない境地に入った。
飽くことを知らない類は、一段と熱がこもったように貪り、離そうとはしない。
そして、上から下へ、下から上へと舌を這わせ、手と口は貪欲に司を貪った。
「・・クッ・・」
司は頭がくらくらすると、太腿の間に埋もれた類の頭を掴み、無造作に見えながら、実は念入りにスタイリングされた髪に指を絡めた。それは、幼い頃から知る友のサラサラとした髪。
その髪が下腹部を擦り、やがてチュパチュパと音を立て始めた。
「・・クソッ・・る・・い・・」
類が吸うたび司は悶絶を繰り返し、頭が痺れ、やがて目の焦点が合わなくなり、全身が緊張し、腰が椅子から浮き上がり前へと突き出した。そして頭をのけぞらせた瞬間、身体に戦慄が走った。
司はパッと目を開いたとき、ハアハアとした息遣いと共に己の身に何が起きたのか自問自答した。そして慌てて下半身に目を落した。
大丈夫だ。スーツは乱れることなく、スラックスのファスナーも閉められていた。
だが、嫌な汗が額を流れていた。
百歩譲って夢だとしても、見たくない夢だ。まさに悪夢としか言いようがない。
いつもなら牧野の夢のはずだ。なんで今日は類が出て来るんだよ!
それもなんであいつが俺を咥えてんだよ!
寿命が10年は縮んだ気がした。
司は罰当たりな言葉を吐き、デスクに片肘をつき、ガクッと項垂れた。
その姿勢はロダンの彫刻『考える人』が更に大きな苦悩を与えられ、打ちひしがれているように見えた。
そんな司に扉を開け入ってきた秘書の西田が声をかけた。
「支社長。お顔の色が悪いようですが、どうかされましたか?」
どうかされたのかと聞かれても、男に股の間を咥えられていたと言えるはずがない。
「いや・・なんでもねぇ・・ちょっと・・心の病だ」
そうだ。これは心が病んでいるに違いない。
何しろ牧野と1週間も会ってない。
そして司はショックを受けていた。
類にあんなことをされた夢を見てしまったことを。
「そうですか・・。それでは我社が後援する『心と身体の健康のためのセミナー』についてですが、ご参加されるということでよろしいですね?」
「・・西田。誰が心と身体が病んでるって?」
「はい。先ほどちょっと心の病だとおっしゃいましたので」
「・・・・西田。悪いが暫くひとりにしてくれ」
司は、もしかすると、己の日頃の行いがあんな夢を見させたのかと思った。
だが、ここ何年も品行方正と言われていた。ガキの頃のように誰かを貶めるようなことはしていないはずだ。
だが少し時間が経ち、夢の衝撃が収まると、西田を怨んだ。
クソッ。西田の野郎。なんで今日に限って途中で止めに来ねぇんだよ!
最後までイッちまったじゃねぇか!
類の顔は暫く見たくねぇ。
まあいい。
今日は牧野が海外出張から戻ってくる日だ。
類を忘れるくらい思いっきり抱いてやる。
ドイツの詩人ゲーテが言った『忍耐は美徳』って言葉があるが、今の俺に忍耐なんて言葉は関係ない。だいたい忍耐なんて言葉は高校時代、牧野を追いかけ回した時に使い果たした。
それに彼氏と彼女の間で忍耐なんて言葉不要だろうが。
ついでに言っとくが、自制とか我慢とかって言葉も不要だ。
いや。待てよ?俺は今でも耐えてるところがあるような気がする。
司はマンションまでたどり着くと、出張先から帰ってるはずのつくしを探した。
「・・牧野?」
とベッドルームの中にいたその姿は、バスタオルを1枚身体に巻いた状態。
シャワーを浴び、そのまんまベッドに倒れこんだとしか考えられねぇ。
その証拠にすっかりおなじみになった俺と同じ香りが鼻腔に広がった。
おい牧野。その恰好でベッドに横になるってことは、俺を誘ってるとしか言えねぇってこと分かってんのか?
そのとき、うーんと呻いて身体の向きを変えた牧野。
「・・・・・」
けど起きる気配全くなし。
起きてくんねぇかな・・
こんな時試されるのが、自制とか我慢とか、やっぱり忍耐。
けど、据え膳食わぬは男の恥って言葉もあるし、こいつが裸にバスタオル1枚なんて俺を待ってたってことだろ?
牧野?いいよな?いいんだよな?いいっていってくれ!
ま、別に言わなくてもいいよな?
司はスーツを脱ぎ捨て、シャツを脱ぎ、全てを脱ぎ捨てベッドに乗り上げつくしを上から見下ろした。
そのときぱっと開かれた大きな瞳。
「・・・あれ?・・どうみょうじ?帰ったんだ・・お疲れさま・・」
半分寝ぼけた様子の牧野。
「ああ。ただいま」
「・・?あれ?なんで道明寺ハダカ?」
「なんでっておまえが裸で寝てるからだろうが」
「え?」
「おまえ、裸で俺を待っててくれたんだろ?そうだよな。何しろ1週間もご無沙汰だ。寂しいかったんだろ?」
「え?ええ?ちょっと待って!」
「何が待ってだよ?ホントは俺が欲しかったんだろ?遠慮するな。俺の身体は全部おまえのものだ」
「え?ちょっと!ま、待って、今起きたばっかりで・・やあぁっ・・ん・・ぁっ・・」
妄想に頼ることない本物の行為は、ふたりの魂の間で行われる行為。
それは、優しさと思いやりと愛だけが感じられる時間。
そして彼女に対する思いを深める時間。
本当は寂しかったのは俺。
それに欲しかったのは俺。
おまえがいないせいで、変な白昼夢見ちまうし、やっぱおまえが傍にいないと夢見が悪い。
ひとりで寝るなんて選択肢は今の俺には考えられない。
それにおまえをひとりにすることも出来ればしたくない。
俺とおまえで抱き合って、溶け合って、いっそのことひとつになってしまいたい。
ひとつになれば、いつも一緒にいれるだろ?
司は、自分が堪能したばかりに消耗し、ぐったりと横たわるつくしの髪をクシャリと撫でた。
それは黒く艶やかで潤いを感じられる豊かな髪。
指に絡めるのはこの黒髪以外考えられない。
そして覆う物がない身体に上掛けを引き寄せ、
眠るつくしに最高に甘い微笑みを見せ、唇にそっとキスをした。
関連記事:優しく殺して

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「うそ!」
「だってさぁ、支社長って女の噂って全然聞かないでしょ?」
「うん・・確かにそれは言える。あれだけのイケメン支社長に女の影がないなんて信じられないけど、絶対に彼女がいるわよ!」
「そうよ!支社長ってアメリカ暮らしが長かったんだから、アメリカに彼女がいるんじゃない?」
「確かにねぇ・・それも考えられるんだけど、それにしても全然噂にならないじゃない?それって変じゃない?それにパーティ―で取引先のご令嬢とか、美人女優とか、モデルとか支社長の周りに集まっても全然興味なし。むしろ、そんな女が自分の周りにいることが汚らわしいって感じなのよ?」
「それはやっぱりアレよ?アメリカにいる彼女のことを愛しているから相手にしないだけでしょ?」
「そうかなぁ・・」
「そうよ!」
「でもさ、あたし変な妄想しちゃった。支社長のご友人で花沢物産の専務がいるじゃない?」
「え?もしかして花沢類さん?」
「そう!支社長と花沢さんって実は・・・だったりして!ほら、長年の男同士の友情がいつの間にか愛情に変わってた・・なんて!」
俺が?
女に興味がない?
司はたまたま耳にしたその話に頷く部分もあった。
ご令嬢とか、美人女優とかモデルとか一切興味がないのは話しの通りだ。そんな女が傍にいることが汚らわしといった意見は正しい。それに愛しい牧野と出会うまで、低俗で薄汚く、すぐに泣く女なんぞ反吐が出るほど嫌いだった。
けれど、その先の会話に眉をひそめた。
なんで俺がゲイなんだ?
それにどうして俺が類とそんな関係に陥る必要がある?
俺の頭にあるのは牧野と早く結婚したい思いだけだ。
おまえら仕事中に変な妄想すんじゃねぇよ!
仕事中は仕事に集中しろ!!
司は支社長室に戻り、革張りの椅子にドカッと腰を下ろし、イタリア製の高価な靴に包まれた両脚をデスクの上へ乗せた。
そして上体をそらし、胸の前で腕を組み、目を閉じた。
頭の中を過るのはつくしとの結婚式の場面。
白いドレスを着た牧野と白いタキシードに身を包んだ俺。
教会を埋め尽くす沢山の花。オルガニストが演奏する結婚行進曲。
ヴァージンロードを歩いて来る牧野。
・・あいつもうヴァージンじゃねぇけど、そんなの関係ねぇよな?
そうだ。今、頭の中にあるのは俺と牧野の結婚式だ。
そのためには、まずは女の前にひざまずいてプロポーズをするのが男の俺の役目。
OKを貰えばそれから彼女の指に指輪を嵌める。
そして立ち上ってキスをする。
これでプロポーズは完了する。
実は今までそれに近いことは何度もやってる。
けどアイツまだ仕事したいだなんて言いやがるから結婚出来ないでいる。
こうなりゃいっそのことあの女、クビにしてやろうか。
・・けど、そんなことしたら口利いてもらえなくなるから止めとく。
ところで逆に女が男の前にひざまずいてヤルことを知ってるか?
フェ・・・。
今それを口にすれば、間違いなくこの場の空気が乱れるから止めとく。
言っとくがフェラガモでもフェンディでもフェラーリでもない。
けど、なんでよく似た言葉はどれもイタリア語だ?
それにカタカナにしてみれば、どれもこれも同じ文字数だ。
ああそうか。語源はラテン語の『Fellare』(吸う)から来てるからか?
・・おい、待て。フェラーリは『Ferrari』って書くが、なんかスペルまで似てねーか?
これじゃあフェラーリ見るたび牧野が俺の前にひざまずいてヤッてるところを想像しちまう。
そしてその瞬間、30秒も経たないうちにカチカチになるアレ。
口に咥えられるとあまりの気持ちよさにうめき声が上がるが、執務室でヤル時には声が漏れねぇようにしねぇと西田に気付かれる。
・・けどアレは男が無力になる瞬間だ。
何しろ男の身体の中で一番デリケートな部分を咥えられてる。
ヤッてもらう時はある意味で命を預けるようなもんだ。
万が一のことがあって、もしその部分がどうにかなっちまって使い物にならなくなったら大変だ。万が一のことか?そりゃ色々あるだろうが。
歯を立てるのは構わねぇけど、喰いちぎられるなんてことになったら男としての役目が終っちまう・・。
まあ牧野がそんなことするはずねぇけど?
それにしても、あの行為は自尊心がくすぐられる。
なにしろどんなに強気の女でも男の前にひざまずけば、男を崇め立てる姿勢になることは間違いないからだ。
そう言えば一度フェラーリの中で牧野にヤッてもらったことがあったが、今思えばあれは夢みてぇなことだったな。
フェラーリの中でフェラ。
それも運転中に牧野にごっくんしてもらった。
あん時はハンドルさばきを誤れば崖からダイブすんじゃねぇかって感じだな。
まさに昇天させられるってのはアノことだ。
けどフェラーリでフェラされながら昇天。
そんなことになったら笑い話になんねぇ・・。
・・それにしても、アイツはいつになったら俺と結婚してくれるんだ?
「・・司。俺はおまえを牧野に渡さないよ」
「類!」
司が閉じていた目を開いたとき、デスクの前にいたのは類。
「・・おまえ、いつの間に来たんだ?」
司はデスクの上から両脚を下ろし、類を見た。
「いつの間にって、司は寝てたから気づかなかっただけだよ。・・ねえ司、今俺が言ったこと聞こえたよね?」
「・・俺を牧野に渡さないって・・いったいどういうことだ・・。まさかおまえまだ牧野のことが好きなのか?」
学生時代、一時つくしを巡って二人が火花を散らしたことがあった。
「まさか・・違うよ。俺が好きなのは司だよ・・気づいてたんだろ?俺の気持ち」
類は呟き、司を食い入るように見つめながら近づいた。
「・・いったい何の話だ・・」
「司。聞こえただろ?俺は初等部の頃から司が好きだった。自分がゲイだってことはもう随分と前から気付いてたけど、そんな俺は長い間自分を否定し続けた・・。だけど司が牧野と結婚するって決めたって聞いてもう自分を抑えることは止めた・・。だから司、一度だけでいいから俺のものになって」
類はひざまずき、司のスラックスのベルトを掴み、バックルを外し、ファスナーを一気に引き下ろし、ボクサーブリーフの上から股間を愛撫した。そして、心得た手つきでブリーフをずらし、まだ柔らかさの残るペニスを引き出し、しごき始めた。やがて硬さが感じられると、口に咥え喉の奥深くまで一気に差し込んだ。そこまでの行為はあっという間の出来事。司は、何が起きているのかと気づいた時には、類のペースで物事は運ばれていた。
「る、類っ!」
司の口からむせぶように名前を呼ばれ、類は唇の愛撫を繰り返し、睾丸を手のひらでこすり、
そして頂きを吸い、舌を根元に向かってゆっくりと滑らせた。
「・・類・・止めろ・・止めてくれ・・」
だが類は止めようとしない。
司の前で床に膝をつき、唇でしゃぶる男は根元までしっかりと咥え、離そうとはしない。
ズズッと音を立て吸い上げ、先端を咥え、歯を立てた。そして充血した亀頭を弄びながら手のひらは睾丸を揉んでいた。
「る・・類ッ・・」
類の舌と唇は敏感な箇所を的確に攻め、完璧なリズムで強く吸った。
吸い上げられる力が強くなればなるほど、司は経験したことがない境地に入った。
飽くことを知らない類は、一段と熱がこもったように貪り、離そうとはしない。
そして、上から下へ、下から上へと舌を這わせ、手と口は貪欲に司を貪った。
「・・クッ・・」
司は頭がくらくらすると、太腿の間に埋もれた類の頭を掴み、無造作に見えながら、実は念入りにスタイリングされた髪に指を絡めた。それは、幼い頃から知る友のサラサラとした髪。
その髪が下腹部を擦り、やがてチュパチュパと音を立て始めた。
「・・クソッ・・る・・い・・」
類が吸うたび司は悶絶を繰り返し、頭が痺れ、やがて目の焦点が合わなくなり、全身が緊張し、腰が椅子から浮き上がり前へと突き出した。そして頭をのけぞらせた瞬間、身体に戦慄が走った。
司はパッと目を開いたとき、ハアハアとした息遣いと共に己の身に何が起きたのか自問自答した。そして慌てて下半身に目を落した。
大丈夫だ。スーツは乱れることなく、スラックスのファスナーも閉められていた。
だが、嫌な汗が額を流れていた。
百歩譲って夢だとしても、見たくない夢だ。まさに悪夢としか言いようがない。
いつもなら牧野の夢のはずだ。なんで今日は類が出て来るんだよ!
それもなんであいつが俺を咥えてんだよ!
寿命が10年は縮んだ気がした。
司は罰当たりな言葉を吐き、デスクに片肘をつき、ガクッと項垂れた。
その姿勢はロダンの彫刻『考える人』が更に大きな苦悩を与えられ、打ちひしがれているように見えた。
そんな司に扉を開け入ってきた秘書の西田が声をかけた。
「支社長。お顔の色が悪いようですが、どうかされましたか?」
どうかされたのかと聞かれても、男に股の間を咥えられていたと言えるはずがない。
「いや・・なんでもねぇ・・ちょっと・・心の病だ」
そうだ。これは心が病んでいるに違いない。
何しろ牧野と1週間も会ってない。
そして司はショックを受けていた。
類にあんなことをされた夢を見てしまったことを。
「そうですか・・。それでは我社が後援する『心と身体の健康のためのセミナー』についてですが、ご参加されるということでよろしいですね?」
「・・西田。誰が心と身体が病んでるって?」
「はい。先ほどちょっと心の病だとおっしゃいましたので」
「・・・・西田。悪いが暫くひとりにしてくれ」
司は、もしかすると、己の日頃の行いがあんな夢を見させたのかと思った。
だが、ここ何年も品行方正と言われていた。ガキの頃のように誰かを貶めるようなことはしていないはずだ。
だが少し時間が経ち、夢の衝撃が収まると、西田を怨んだ。
クソッ。西田の野郎。なんで今日に限って途中で止めに来ねぇんだよ!
最後までイッちまったじゃねぇか!
類の顔は暫く見たくねぇ。
まあいい。
今日は牧野が海外出張から戻ってくる日だ。
類を忘れるくらい思いっきり抱いてやる。
ドイツの詩人ゲーテが言った『忍耐は美徳』って言葉があるが、今の俺に忍耐なんて言葉は関係ない。だいたい忍耐なんて言葉は高校時代、牧野を追いかけ回した時に使い果たした。
それに彼氏と彼女の間で忍耐なんて言葉不要だろうが。
ついでに言っとくが、自制とか我慢とかって言葉も不要だ。
いや。待てよ?俺は今でも耐えてるところがあるような気がする。
司はマンションまでたどり着くと、出張先から帰ってるはずのつくしを探した。
「・・牧野?」
とベッドルームの中にいたその姿は、バスタオルを1枚身体に巻いた状態。
シャワーを浴び、そのまんまベッドに倒れこんだとしか考えられねぇ。
その証拠にすっかりおなじみになった俺と同じ香りが鼻腔に広がった。
おい牧野。その恰好でベッドに横になるってことは、俺を誘ってるとしか言えねぇってこと分かってんのか?
そのとき、うーんと呻いて身体の向きを変えた牧野。
「・・・・・」
けど起きる気配全くなし。
起きてくんねぇかな・・
こんな時試されるのが、自制とか我慢とか、やっぱり忍耐。
けど、据え膳食わぬは男の恥って言葉もあるし、こいつが裸にバスタオル1枚なんて俺を待ってたってことだろ?
牧野?いいよな?いいんだよな?いいっていってくれ!
ま、別に言わなくてもいいよな?
司はスーツを脱ぎ捨て、シャツを脱ぎ、全てを脱ぎ捨てベッドに乗り上げつくしを上から見下ろした。
そのときぱっと開かれた大きな瞳。
「・・・あれ?・・どうみょうじ?帰ったんだ・・お疲れさま・・」
半分寝ぼけた様子の牧野。
「ああ。ただいま」
「・・?あれ?なんで道明寺ハダカ?」
「なんでっておまえが裸で寝てるからだろうが」
「え?」
「おまえ、裸で俺を待っててくれたんだろ?そうだよな。何しろ1週間もご無沙汰だ。寂しいかったんだろ?」
「え?ええ?ちょっと待って!」
「何が待ってだよ?ホントは俺が欲しかったんだろ?遠慮するな。俺の身体は全部おまえのものだ」
「え?ちょっと!ま、待って、今起きたばっかりで・・やあぁっ・・ん・・ぁっ・・」
妄想に頼ることない本物の行為は、ふたりの魂の間で行われる行為。
それは、優しさと思いやりと愛だけが感じられる時間。
そして彼女に対する思いを深める時間。
本当は寂しかったのは俺。
それに欲しかったのは俺。
おまえがいないせいで、変な白昼夢見ちまうし、やっぱおまえが傍にいないと夢見が悪い。
ひとりで寝るなんて選択肢は今の俺には考えられない。
それにおまえをひとりにすることも出来ればしたくない。
俺とおまえで抱き合って、溶け合って、いっそのことひとつになってしまいたい。
ひとつになれば、いつも一緒にいれるだろ?
司は、自分が堪能したばかりに消耗し、ぐったりと横たわるつくしの髪をクシャリと撫でた。
それは黒く艶やかで潤いを感じられる豊かな髪。
指に絡めるのはこの黒髪以外考えられない。
そして覆う物がない身体に上掛けを引き寄せ、
眠るつくしに最高に甘い微笑みを見せ、唇にそっとキスをした。
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