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2017
07.23

金持ちの御曹司~恋のすべて~

日本の企業は年功序列と言われている。
それは、日本的経営の特徴と言われ、個人の能力や実績に関わらず、年齢や勤務年数のみで評価し、役職や賃金が上昇する。今でもそういった企業が多いのが日本の会社の実態。
英語でもNenko System と紹介されることもある年功序列制度。
だがうちは、道明寺HDは違う。うちの会社の本社はNY、アメリカだ。
だから年功序列なんて考え方はない。実力が物を言う会社だ。人種、性別、年齢なんて関係ない。

そんな会社は上司が自分より年下の時もある。
それに上司の言うことが正しい、絶対だといった考え方はしない。
けれど、ここは日本だ。たまには日本式でもいいと思う。
その方が今の俺にとっては都合がいいからだ。

ちなみに今、社内ではジョブローテーションを実施中だ。
うちの会社は、短縮してジョブローテと言うらしいが、これは人材研修のひとつだが、定期的に職場の移動や職務の変更を行い、それぞれの部署が、どんな仕事をしているか、またどんな人間がいるかを把握させ、将来会社を背負って立つ人材を育てることを目的としていた。
だがそれだけが目的ではない。それは、個人の持つ知識や情報を組織全体で共有し、有効活用することだ。

何しろ会社というものは、従業員共同体とも呼べる組織。その組織の成長と活性化をしていくことは重要だ。会社は風通しがいい方がいいに決まってるからな。それに社員の意見が上まで上がってこねぇような会社じゃ成長は見込めねぇだろ?

今回その研修に俺も参加したいと申し出た。
やはり支社長たる者、現場に立ち、社員がどんな仕事をしていて、どんな人間がいるかを詳しく知ることが必要だからだ。そんな俺が希望したのが、海外事業本部。
あいつ・・。西田の野郎。顔色ひとつ変えねぇで言いやがった。

『支社長は牧野様とご一緒に仕事をしたいのでしょうか?』

当然だろうが。牧野がいるからあの事業部の仕事を経験したいって言ったんだろうが。それ以外の部署なんて興味ねぇよ!間違っても経理部なんかに行かせるなよ?数字には強いが、何しろ端数ってのが面倒だ。100万以下は全て切り捨てろなんて言えるわけねぇしな・・・。
まあそんなことはどうでもいい。
今は牧野んとこの事業部へ行くことだけを考えていた。

あいつの上司、牧野によく似た苗字で牧田又蔵って言う男だが、牧野に送るはずのメールがその男のパソコンに届いたことがあった。
どんな内容かは言えねぇけど、「道明寺!いやらしい内容のメールを送ったんでしょう!」と言って牧田の所に走って戻った牧野。そのメールを見せてくれと直談判したが見せて貰えなかった。と、いうより、俺がシステム部の奴らに言って牧田又蔵宛に送ったメールは削除させたけどな。


とにかく、念願叶って今日一日海外事業本部長席に座ることになった俺。
一日海外事業本部長っていう一日警察署長みてぇな役職だがまあいい。
なにしろその席からの眺めは最高!!
ズラリと並んだデスクの、窓を背にした一番奥が俺の席。
そして俺の右斜め前が牧野の席。
牧野とこうして仕事をするなんて、まるで夢のような光景。
にやけるなって言う方が無理。

そこで発揮されるのが、日本的経営の特徴とも言える年功序列制度。
そして上司の言うことは、絶対服従だという言葉。
牧野の「上司」は俺だ。そうだ。まさに俺が直属の上司。
なんかいい響きだよな。上司って言葉。
だってそうだろ?上司って言葉の「上司」から「上」を取れば、残るのは「司」の一文字。
それってずばり俺のことだろ?
それに「上司」って言葉にはもうひとつ意味がある。
それは・・俺と牧野のラブライフについてだ。
寝るとき決まって上に乗っかるのは俺の方だから、「上司」ってのは、俺が上に乗ってるって体位を説明してるようで照れる。
だが牧野は「上司」って文字も意外と平気そうだが俺が気にし過ぎか?
牧野、本当にいいのか?俺が上に乗ってるって言ってるようなものだぞ?

とにかく、日本の会社組織的に言えば、上の者には絶対服従ってことなら、司に絶対服従ってことだろ?
「司に絶対服従・・」
なんかずげぇいい響き。
いつも牧野には逃げられてばかりだが、直属の上司の俺から逃げることなんて出来ねぇはずだ。
それに彼氏が上司ってものなかなかいいシュチュエーション。
いつも妄想の世界でしか味わえない色々が手を伸ばせば、すぐそこにあるってのは、満足度が高い。これから先もこの席で仕事をしたい思いがある。
いつも牧野の前では平身低頭になることもあるが、今日ばかりはそうはいかねぇからな。

なあ、そうだろ?牧野?


「牧野くん。これコピーを取ってくれないか」

「ど、道明寺・・ぶ、部長・・」

・・なんだよ。何言葉に詰まってんだよ。どもんじゃねぇよ・・。
いいか?道明寺ったら俺の名前でもあるが、会社の名前でもあるんだぞ!
そんなんで電話に出たとき、ちゃんと言えてんのか?

「なんだ?」

「大変申し訳ございません。1枚2枚のコピーならご自分でお願い致します」

・・・牧野。
おまえ、なんだよ自分の彼氏にその冷たい態度は!
いいか?俺はおまえの彼氏である以上に今は上司だ。
そんな上司の命令は絶対だろうが。
それにコピーの1枚や2枚じゃねぇんだよ。
そんな牧野の反抗的な態度のことも考え、前日西田に言って文書を配らせた。


「皆様、明日は道明寺支社長が海外事業本部の一日本部長となります。支社長は大変お忙し方ではございますが、現場の皆様の業務をぜひ知りたいと申しております。つきましては、皆様にお願いと注意点がございますので、こちらの文書をご一読いただきたいと思います」

それは、西田が支社長の俺を気遣って用意した文書と思わせているが、用意させたのは俺。
ただし、牧野に渡す文書にはちょっとした小細工がしてあった。

「牧野くん。大変申し訳ない。コピーといっても1枚や2枚じゃないんだ。海外プラント用の図面なんだが30部ほど頼みたい」

土木やインフラ、建設関連の図面は、大きすぎて普通のコピー機ではコピーできないものがある。
何故なら、図面のサイズがB0といった1030mm×1456mmといったサイズがあるからだ。それをコピーするとなると、このフロアに設置されたコピー機ではまず無理。
別室にあるコピー機でのコピーとなる。

そんなデカい図面、どうやって保存してるんだと思うかもしれねぇが、図面折りといった方法で、A4サイズに折り畳まれてるってんだから不思議だ。それもJIS規格(日本工業規格)で統一されてるらしいが、知らなかった。つまり俺にも知らねぇことがあるってことだ。
それに実務ってのは奥が深いってことを知り、いい勉強になった。

それはさておき、牧野にコピーを頼んだ。
この枚数と折り畳む手間を考えれば、仮にも直属の上司である俺に嫌とは言えないはずだ。
だってそうだろ?俺がそんなでけぇ図面コピーして、ちまちまと図面折りしてる絵が想像出来るか?出来るわけねぇだろうが。それにおまえ、そんなこと俺にやらせてるなんてことが知れたら周りのおまえを見る目が恐ろしいことになるんだろ?
何てったか忘れたけど、俺の親衛隊とかが騒ぐってことだろ?
けど、なんか知らねぇけど、怖えぇ顔して睨む牧野。
おまえ、まさかそれが無駄な業務だと思ってるんじゃねぇだろうな?
牧野、仕事を舐めるな。俺は仕事に対してはいつも真剣だ。


・・いや。

けどまあ・・実を言えばどうでもいい。
だってそろそろ何かの口実見つけて、牧野と二人っきりになりてぇじゃん。
それになんての?二人だけ別室に閉じこもって本物のオフィスラブ?っての経験してみてぇし。

「牧野くん。忙しいところ本当に申し訳ないが、お願い出来ないだろうか?」

警戒するように少し目を細め、眉間に寄った皺。
まるで俺の頭の中を読んでるみてぇな牧野の視線が痛い。
そんな牧野は西田が前日に配った紙を取り出し、俺について西田が書いたとされる、注意点とお願いを読み始めた。おい牧野。言っとくがそれは俺の取り扱い説明書じゃねぇぞ?
だがそこで気付いたようだ。

それは、「上司の指示に従うこと」の文言がいつの間にか「上」が取れ、「司の指示に従うこと」に変わっていることだ。つまり単なる上司ではなく、固有名詞で書かれた「司」ってところに意味がある。

牧野は目を凝らし、まじまじと文書を見つめているが、確かに文書を受け取ったとき「上司」となっていたはずだ。それならなぜ、「上」が書かれていないのか?そんなの簡単。時間が経てば消えるインクを使ってわざわざ「上」の一文字だけを書かせたからだ。

賢い牧野はそれに気づいたようだ。
すげぇ怖えぇ目つきで俺を睨んで来た。
けど、さすがに他の社員の手前、これ以上「上司」である男に従わないわけにはいかないと気づいたようだ。

「・・では、コピー室に行ってきます」

と、図面を抱え出て行った牧野。
おお、行って来い!
俺も後から行くからな!
ところで牧野。「待ってるわ」なんて目配せくれぇしてくれてもいいんじゃねぇの?
まあ会社で公私混同はしたくないっていう女がそんなことする訳ねーか。






司はつくしがいるコピー室へ向かった。
そこは、文字通り大型コピー機が置いてある部屋。
司がその部屋を訪れたことがあるはずもないのだが、そこは既に調べてあった。
コピー室とか資料室とか備品室とか、普段興味のない部屋だが、何故だかそそられるそういった部屋。なんとなく秘密の小部屋って感じがして、そこで恋人同士が人目を避け、愛を確かめ合ってるって気がするのは俺だけじゃねぇはずだ。

そしてついに、俺と牧野の本当のオフィスラブが実現する時が来た。

上司と部下の社内恋愛。


「道明寺部長!あたし、部長のことが好きなんです。奥様と別れてあたしと一緒になって下さい」
「牧野くん・・それは困るよ・・僕にはまだ小さい子供がいるんだ」
「ひどいわ!道明寺部長は、あたしのこと身体だけだったんですか?」
「違う・・そんなことはない。君のことは本気だ。だが子供が成人するまで待って欲しい」
「・・嘘つき・・部長はそう言っていつまでもあたしのことを本気で愛そうとはしないのね!いいわ・・それなら奥様にあたし達の関係を話すわ!」

おい!待て!
なんで俺が子持ちの部長なんだよ!!
これじゃ社内不倫じゃねぇかよ!!
消えろ、消えろ!こんな妄想は!!


司は気を取り直し、唾を呑み、コピー室の扉を開けた。


すると、そこにいたのは確かに牧野。
背が低く、小柄で可愛い牧野がコピー機の前で頭を下げ、機械を操作していた。
あのまま可愛らしい尻を掴み、スカートをたくし上げ、後ろからってのもそそられる光景。

今度こそ上司と部下の社内恋愛。

「・・まきの・・」
「ど、道明寺部長!?」

振り向いたつくしのすぐ前に立った司は、直ぐに彼女を後ろ向きに戻し、片手で彼女の腰を掴み、もう片方の手を尻に当てると、軽く揉んだ。そしてスカートの裾を掴み、たくし上げ、剥き出しになった下着をむしり取った。
すると剥き出しになったつくしの尻。だがしっかりと腰を掴まれた女は振り返ることは出来ず、前を向かされていた。

「な・・何を・・」
「何をって決まってるだろ?俺と愛し合うんだ」
「で、でもここで?ダメよ。誰か来るわ」
「心配するな。鍵を掛けた。誰も来やしねぇ」

背後から寄り添った司は、スラックスのジッパーを下ろし、つくしの身体を前屈みにさせ、指で尻を押し広げ、開かれた部分に肉棒をゆっくりと挿入した。
「ああっ!」
叫びと同時に硬直したつくしの身体。
司はつくしが快楽の声を上げるまで何度も抽出を繰り返し始めた。

「・・どうだ?・・気持ちいいか?・・なあ?・・声きかせろよ?ん?」
「やぁ・・やめて・・部長・・道明寺部長・・ダメ・・ああっ!」
背後から突き立てながら耳元で囁き、舌を挿し入れた途端、司を締め付けた胎内。
「ダメなもんか・・おまえのココはいいっていってるじゃねぇか」


・・・。
消えろ!!
こんな妄想も!!

それにしても、仕事とは全く無関係の目で見つめてしまうが、そんなことも今更だ。
それに、どうしても我慢出来なくなったんだからしょうがねぇだろうが。
充電切れなんだよ!
そんな俺の気配に気づいた牧野が振り返った。
そして目が合った。
けど、その目は笑ってねぇ。
怒ってる。
けど、ここで怯む訳にはいかねぇ。何しろ今日の俺はこいつの直属の上司。

「ちょっと、道明寺?いったいどう言うつもりなの?本当にこの図面が30部も要るの?」

本当は要らねぇ。

「何に必要なのよ?これ、もう随分と前に終わったプロジェクトの図面よ?それなのに_」

と、うるさく喋る口は塞いでやる。

「まきの・・司の指示に従うって書かれてんだろ?それなら俺の指示に従うのが当然だろうが・・それに俺が本当に必要なのは、おまえ」

司はつくしの首に手をまわして引き寄せると唇と唇を重ね合わせた。
すると、ついさっきまで、うるさかった唇が柔らかく溶け笑う形になった。
それはいつも司を甘く包み込んでくれる牧野つくしの身体そのもの。
司はつくしの身体を優しく持ち上げ、近くにある広い作業用デスクに座らせ、ゆっくりと押し倒した。すると司の首に回されていた手が、彼を求め引き寄せた。

これぞ恋人同士の社内恋愛ってヤツだろ?
無理矢理なんて味気のねぇことが出来るわけねーだろうが。

「まきの・・」

「どうみょうじ・・」

司はつくしに口づけをしようとした。
だがその瞬間、コピー室の扉が開く音がした。

「・・お取込み中大変申し訳ございません」

と、入口から掛かった西田の声に言語中枢が一時的に麻痺した俺と牧野。
だが回復が早かったのは牧野。

「ど、道明寺部長・・て、手伝って下さるのは嬉しいですが、もう少しきれいに折って頂かないと!」

「いてぇっ・・」

押し倒された姿勢からいきなり身体を起したつくしに頭突きされた形の司。
だが司も立ち直りは早かった。

「お、おう。そうだな・・こんなところに皺が寄ってちゃマズイよな?」

と、話の調子を合わせる俺と牧野。

コピー室での遊戯は実にあっけない幕切れで終わった。






B型は何よりも束縛を嫌うといわれるが、そんな男が一人の女には束縛されたがっていた。
それは、17歳で出会って以来、頭を離れない女。
いや。頭だけじゃない。心と身体からも離れない女。
そして今、その女にこき使われる俺。
牧野に図面折りってのを教えてもらってる。

「もう。道明寺、適当にしないできちんと折り目をつけて折らなきゃ駄目よ!」

それにしても、支社長自らが図面折りをする会社ってのも珍しいと思う。
だがこうして牧野と二人でする共同作業ってのも楽しいものだと思った。


そして妄想ではなく、リアルで西田に邪魔された俺。
あいつ、あまりにも俺の帰りが遅いもんだから、わざと様子を見に来たとしか思えねぇ。
西田の野郎、覚えてろ!
・・まあいい。
あの続きはマンションに帰ってからの楽しみってことだ。


司は隣に座り、小さな手で大きな図面を折り続けるつくしを見た。
すると、視線に気づいたつくしは手を止め、司の方を見た。
ひとりでに動いた司の手は、つくしの髪の毛をそっと撫でた。
そしてそっと唇を合わせた。
それは軽いキス。
あせりも、自己主張も、苛立ちも感じられないゆったりとした口づけ。
あからさまな欲求など感じない、二人の息が混ざり合う、愛情だけが込められた優しい行為。

なんか知らねぇが、こんなことでもすげぇ幸せって思える俺。
普段どんだけ煩悩にまみれているのかと深く反省した。

牧野と一緒にいれば、どんな時間でも楽しく感じられる。
たとえ、ここがコピー室で、デカいコピー機しかなくても、彼女といれば不確かな時間などない。彼女は運命が特別に用意してくれた大切な人。
二人の出会いは偶然ではなく必然。


どちらにしても、愛する女性が傍にいてくれる。

これ以上の望みはないし、これ以上の幸せはない。

彼女の陽気な声は、まるで魔法の声。

その声が司の心を癒し、その微笑みが彼の一日の疲れを取ってくれる。

司が愛する女性はただひとり。

世界中の誰よりも愛している人に、その思いを伝えることが彼の仕事。


牧野。早くこの仕事終わらせて帰っちまおうぜ。
今日は俺が上司だから、上になるのは俺なんだろうが、たまにはおまえが上になってヤラれるのもいい。

だから、今夜はおまえの熱い胎内に俺を包み込んで奪ってくれ。




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