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2016
10.02

Night Of Masquerade 前編

大人向けのお話です。
未成年者の方、またはそのようなお話が苦手の方はお控え下さい。
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司はパーティーが嫌いだ。
それでも仕方なく参加したチャリティーパーティー。
そんな中、彼はバルコニーで静かに喫煙を楽しんでいた。
明かりのついたパーティー会場より、このままこの場所にいる方が気晴らしにはなるはずだ。背後にある宴会場からは、百人以上の人間がたわいもない話しに夢中になっている声が聞こえて来る。だが司は、目の前に広がる夜景をぼんやりと眺めているだけだ。
爽やかに晴れ渡った夜。大都会の華やかな灯が目に映っているはずだが、彼の前には暗く沈んだ街にしか見えなかった。


自分に足りないものを求めて、ただ暗闇を見つめていた。

いつもならパートナーとなる女が傍にいた。
だが最愛の女は彼の傍にはいない。

「司、仕方ないじゃない。つくしちゃんは出張なんだから。それから言っとくわ。心配しなくても誰もあんたになんか近づいてこないから。誰が怒り狂った男に声なんかかけてくるのよ?」

聞き慣れた声に司は振り返った。

姉である椿の言葉はもっともだろう。
躰中から怒りのオーラを放つ男は誰が見ても不機嫌だとわかる。イライラした猛獣が今にも暴れ出しそうで、たとえ猛獣が満足しそうな餌が手元にあったとしても口元へ運ぶことなど考えられない。近寄れば餌どころか腕まで食いちぎられそうだ。もし仮に声などかければ鋭い瞳で睨まれることはわかっている。出来る事ならその瞳に映りたいと思う人間は多い。だが今はどう見ても眉はきつく寄せられ、口元もきつく結ばれ不機嫌さが最高潮に達しているように見えた。そんな男だがこの会場にいるすべての人間は彼に注目していた。それはもちろん彼が道明寺司だからだ。

比類なきと言われるその美貌に纏うのは官能的な空気。
その雰囲気だけで周りの人間は彼に酔わされてしまう。そんな男の瞳は見つめた先のものを奥深くまで貫くような鋭さがある。男にしては勿体ないと思えるほどの長いまつ毛もその瞳を際立たせていた。
その眼差しはまさに、人を支配するような視線。一度囚われたら二度逃げることが出来なくなるはずだ。そして色気を漂わせるのは一文字に引き結ばれた薄い唇。その唇から漏れる声は耳にする者を惑わすバリトンヴォイスだ。

彼自身が生まれ持った優雅さというものもあるのだろうが、引き締まった躰も彼の魅力を一段と際立たせていた。

その躰に抱かれたいと思う女は多い。

だが彼が求めるのは世界にたったひとりだけ。


今夜のパーティーは主催者の意向を汲んで仮装パーティーの様相を呈していた。
何人かの参加者は派手な装いに仮面をつけている。
いい年をした大人が仮面をつけて談笑しているなんて光景は金輪際見たくはない。
もう二度と参加などするものか。そう心に決めた。
 
そんな中、椿はまさに彼女にうってつけのクレオパトラのような装いに豪華な仮面をつけている。だが司は仮装もしていなければ仮面もつけていない。
自分の顔を隠さなければならないような人生は歩んでない。ましてや仮面を被り、自分を偽り、他人をたぶらかすようなことは求めていない。

司はどこへ行っても注目を浴びる。自身、そのことを鬱陶しいと感じたこともあったが、いつの頃からかそのことを受け入れてしまえば、気持ちが楽になった。そう思うまでは時間がかかったが、今は自分の運命として受け入れていた。

人にはそれぞれ背負うべき責任というものがある。彼が背負うのは企業グループ数万人の従業員とその家族の生活。そしてその先にあるのは、そこに係る企業の人間とその家族がいる。司は彼の企業で働く人間の顔となる人物だ。故に自分の顔には責任がある。そう考えていた。


似たような装いで肩を寄せているグループは、司の方にちらちらと視線を向けているがまともに視線を合わそうとする者はいない。

そもそも姉に頼まれなければこんなパーティーなど参加しなかったはずだ。慈善活動だというのなら、金額の高い小切手を切っておけばいい話しだ。何もこんな見世物だらけの茶番劇につき合う必要などないはずだ。そんな時間があるならもっと有意義なことに時間を使いたい。

それにしても何を考えているんだ?この連中は。

実際にクレオパトラだけで何人いるというのか?絶世の美女はひとりで十分だ。
司にとっての絶世の美女とも呼べる女性は、大きな黒い瞳が美しい少し生意気な女だ。
だが、こんな日に限って傍にいない。


司は手にしていたグラスの中身を飲み干した。
どちらにしてもあと少しだけ留まることにしていたが、もういいか?
ひと言断りを入れて帰ることにした。


精巧な腕時計できっちり計った時間は30分。
手にしていたグラスをテーブルに置き、義務は果たしたとばかりに口を開いていた。

「姉ちゃん。わりぃけど俺は帰る」

「ちょっと!もう少しだけつき合いなさいよ。何もそんなに慌てて帰らなくてもいいじゃない。もう少ししたら_」


そのとき、司の目に飛び込んできたのはロイヤルブルーのドレスを着た女。
パーティー会場のアーチになった入り口からこちらを見つめる女がいた。司はその女と視線を合わせていた。柔らかな光沢を放つドレスはオフショルダーのロングドレス。髪はアップに結われ、胸元にはドレスと同じブルーの石が鮮やかな色を放っていた。

仮面のせいで鼻から上はまったく見えないが、口元は緩やかにカーブを描いていた。
途端、冬眠から目覚めた動物のように男の五感は動き出していた。

「ほら。司。帰らなくてよかったでしょ?たまには姉に言うことも聞くものよ?」

司は姉の声を背中に聞きながらすでに歩き出していた。
ヒョウを思わせるような、ゆったりとした揺るぎない足取り。
その足取りを緩めることなく、まっすぐに女の傍まで行くと真正面で立ち止まった。
二人の隙間はほんのわずかでしかなかった。女の顔は仮面のせいで鼻から上は見えなくても、黒い大きな瞳は司を見つめて笑っているように見えた。



「つくし・・」

最愛の女の名前を呼んだ。

「道明寺さん。はじめまして。どうしてあなたは仮面をつけてないのかしら?」

他人行儀のその呼び名。
一瞬怪訝な顔をしたが瞬時に理解した。
それはこのパーティーの趣旨とも言える見知らぬ他人を装うということ。
なるほど。そういうことか。仮面をつけて別人になりきっているってことか?
目の前の女を思いっきり抱きしめたかったが、女があくまでも他人を装いたいというならその提案に乗ることにした。

かりそめの一夜を過ごしたいということか?

いいだろう。今夜はどうせ仮装パーティーだ。
おまえが決めたステージで演じてやるよ。
おまえの求める男を。

司は微笑し、聞いた。

「俺たちはじめましてか?」

「ええ。あたしとあなたは今夜はじめて出会ったの」

あくまでも他人と言う態度。

「おまえの連れの男はどこにいるんだ?」

女は首を横に振った。

「いないわ。ひとりで来たの。道明寺さんこそ恋人は?あなたには素敵な恋人がいるって。いつもその人と一緒にいて離れないって聞いたけど、どうしたの?」

「彼女は今海外だ。だから俺は今夜も寂しくひとりで過ごすはめになった。だけど今夜ここで、おまえに出会えるなんて俺は運がいい」

「そんなこと、あなたの彼女が聞いたらどう思うかしらね?」

「心配しなくても大丈夫だ。俺とおまえのことは二人だけの秘密にしておいてやるよ」

「でももうバレてるかもしれないわよ?」

「別に俺はバレてもいい。何しろ俺たちの出会いは運命の出会いだからな。おまえは運命を信じるか?」

司が二人の間を埋めるように近づくと、女は司の腕に手をかけ顔を見上げた。

「ええ。運命は信じるわ」

すると次の瞬間、司は女の腰に手をまわし、ぐっと引き寄せた。

「お帰り。つくし」

小さな低い声でつくしの耳だけに囁いた。

「おまえが欲しい。今すぐに」

邪魔な仮面を取り去って愛し合おう。








まるで一本の糸で結ばれているような二人。
それは確かにあの頃結ばれた二人の絆。


分厚い絨毯が敷かれた廊下。
司の前を歩く女は、彼がついて来ているのを確かめるように振り返る。
その度にブルーのドレスの裾がふわりと舞っては流れるようなドレープを描いていく。
メープルの最上階にある司の部屋は二人にとっては思い出のある場所だ。
司がニューヨークにいた4年の間、寸暇を惜しんで帰国したおり、この部屋で会っていた。



小さな音を立ててドアが閉まった。
部屋の照明は落とされていたが、窓から月の明かりが差し込んでいた。




司の唇がつくしのうなじに触れた。
息をのむ女を後ろから優しく抱きしめていた。
いつもは実用的な靴しか履かない女だが、今日は違った。
だがヒールの靴を履いていても彼よりも20センチは背が低い女。
靴を脱げば、その差は25センチ。
そんな女に対し一秒ごとにつのる愛しい想い。
彼の黒い瞳はどうにもならない欲望で虚ろになっていた。

司がしたいことはひとつだけ。

愛する女を抱くこと_

「つくし・・」

「黙って・・つかさ・・」

かすれた甘い声が囁いた。


司を求めるのは出会った頃と同じ少女のはずだ。
だが、大人になった彼女はもう無垢な少女ではない。
解消されるべき男の欲望を知った女がそこにいた。

あたしのことは知らない女の人だと思って。

そんなことを言うつくし。
セックスの主導権を握ることが嬉しいのか?
微笑みを浮かべ、タキシードの上着に手を差しいれると肩から落としていく女。
カマーバンドが外されると、手を引かれベッドの端へと座らされた。

どこまでやるつもりか知らねぇが、お手並み拝見といこうじゃねぇか。

細い指先で丁度目線の高さにあるブラックタイを外すと、やがてその手はドレスシャツのボタンをひとつずつ外しはじめた。視線はボタンのひとつひとつに注がれている。
その手が司の肌をかすめ、呻き声が上がりそうになった。

その気になれば形勢逆転は可能だ。
だがそうしなかった。
今夜はこいつのステージだ。
肉食獣は獲物を仕留める前に弄ぶことをする。
哀れな獲物はそんなことも知らず、逃げ切れると思って草原を走り回る。
だがそんなことがいつまでも続くわけがない。いつかは捕まって喰われちまう。

おまえも最後には俺に喰われるんだ、つくし。

胸の内で渦巻くのは、単なる欲望ではなく愛しい思い。
印象的な黒い瞳の奥に見えたのは、情熱と欲望。
まだ触れてもいないのに、眼差しだけで感じられた。

欲しいという気持ちが止まらない。
いつも背中を引っかく小さな爪の跡が欲しい。
決して消えない爪あとが。
情熱的で強烈なセックスを感じたい。
スラックスのファスナーを突き破らんばかりに勃起した興奮の証。
睾丸は痛いほどに張りつめている。
支配欲と渇望が高まってどうしようもないほどだ。


今夜はこいつの好きにさせてやりたい。

だが視線の先にいる女はいったい誰だ?

司は息を飲んだ。
いつもは自らが積極的にすることがない行為を始めたのだ。

つくしは肌蹴た司の胸板に手をあてると、胸の頂きを指で撫でた。
唇を寄せ、含むと舌で弾いた。小さな手はゆっくりと、静かに、だが確実に司の腹部へと下ろされていく。

そして膝立ちになると、スラックスに包まれた欲望の塊に手を添えた。









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2016
10.03

Night Of Masquerade 後編

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