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2016
07.27

金持ちの御曹司~想う気持ち~

濃紺のスラックスを履き、白いワイシャツの袖を途中までめくり上げたとんでもなくハンサムな男。それが俺、道明寺司だ。
左手首には品のいい腕時計をはめ、右手の指先で煙草を持ち、黄昏た表情で窓の外を眺める。
まるでどこかのコマーシャルにでも出て来そうな光景だろ?

そんな俺は禁断症状に苦しんでる。
欲求不満でムラムラしてる。
お預けくらって死んでしまいそうだ。

司は執務デスクで片肘をつくとパソコンの画面を眺めていた。
仕事に集中が出来ない。
目の前に並ぶ数字がまるで記号のようにしか見えねぇ。
他人の二手先を読まなきゃなんねぇってのにこの体たらくの状況には正直まいってる。
沈着冷静、鋭い刃のごとく切れる頭脳と呼ばれている俺の頭の中は何かの病に侵されているのかもしれない。

そうだ。
この1週間射精してない。
恐らくそのせいだろう。
たまりにたまった精液が脳に影響を与え始めているに違いない。
念の為に言っとくが俺にとって仕事は牧野と同じくらい大切だ。
仕事をきちんとこなしてるからこそ、牧野は俺のことを尊敬してくれる。
仕事は確かに大変だ。世界情勢の変化に機敏に対応することが経営者には求められる。
日々のストレスは相当なものだと思ってくれ。
そんな俺が発狂しないでいれるのは、牧野がいつも傍にいてくれるからで、あいつがいなきゃ俺はとっくに発狂してる。

だから仕事をきちんとこなすためには、牧野が必要だ。
幸い牧野はうちの会社で働いているから会おうと思えばいつでも会える。
と、いうわけで禁断症状が最高潮に達するまえにどうしてもあいつに会わなければならない。
俺がこんな体たらくな状況でいるのが許されるわけねぇ。
これはいわば社としての業務命令だ。

今の俺が求めているもの。
それは長時間におよぶ牧野との激しいセックスだ。

クソッ!

司はズボンの上からムスコをなだめた。
最近の俺はどうやら妄想ばかりが膨らむ毎日で、ムスコも膨らみっぱなしだ。
そんな日があまりにも長く続くと体に支障をきたす。
こんな切羽詰まった気分に追い込まれたのは、たまりにたまった欲求を吐き出すことが出来ないからだ。この状況をなんとなしないことには俺の体が持ちそうにない。

だいたい男って生き物はペニスの目的を達成するために行動していることが多い。
だからって俺の理性がムスコに乗っ取られたってことは一度もないはずだ。
こう見えても俺は紳士だ。いやがる牧野を襲ったことはないはずだ。

なんで右手を使わないかって聞きたいってのはよく分かってる。
それには理由がある。
俺は自分に罰を与えた。
俺がとった愚かな行為に対しての罰として自分で自分を解放することはしてない。
牧野が欲しくてたまらないのは今に始まったことじゃねぇけど、今の俺はどうすればいいのかそればかりだ。


まきの・・
ごめん。許してくれ・・
あんときの俺はどうかしていた。

理不尽な理由であいつを・・・

クソッ!

出来るなら自分で自分の頭を蹴り飛ばしてやりたいくらいだ。
罪の意識がある俺は、牧野が許してくれるまで右手は封印した。


司は受話器を取り上げると今ではすっかり覚えている内線番号を押した。

「海外事業本部牧野です」
明るい声が聞えた。
「まきの・・」
カチャリ。
クソッ!まあいい。
もう一度電話した。
「はい」
「ま、まきのか?」
カチャリ。
クソッ!!簡単にあきらめると思うなよ?
司は再び電話した。
「牧野。切るなよ?今度切ったらそこまで行くからな!」
「あ、あの牧野さんは席を外していますが・・」
男の声が司の耳に届いた。
「てめぇ誰だ!牧野はどこに行った!」
「お、おそらくお昼休みなので食事に出かけたのではないかと」
司は受話器を叩きつけると執務室を飛び出した。

1週間前にケンカをして以来話しをしてなかった。
ああ。俺が悪いんだ。俺の心が狭かったんだ。
分かっている。俺の行動があいつを傷つけたことは十分承知している。
まさかとは思うが、あいつ・・俺と別れるだなんてこと言わねぇよな?
この俺様が捨てられるなんてことがあるのか?
想像すらしたことがないが、あるかもしんねぇ・・・






司はつくしが研修に申し込み、1週間海外に行くことに反対した。
ほんの1週間の話しだというのに大反対をされ、つくしはかっとなって言葉を返してしまっていた。売り言葉に買い言葉で些細な口論となっていた。

だがどうしても行きたいと請われ、しぶしぶ認めたが自分に何の相談もなく決めたことに腹が立った。恐らく司に言えば止められるとわかっていたからだろう。
司の独占欲は尋常ではないからだ。司にしてもそれは自分でも分かっていることだが、原始的なところで求めてしまうのだからどうしようもなかった。
男が元来持っているはずの粗野な肉体的行為が現れてしまうのは、独占欲の強さの表れなのだろう。
その夜はいつもにはない激しさでつくしを抱いていた。



司が乳首に歯をたてて吸うと先端が尖った。
部屋に満ちている音は男女の喘ぐ声とどちらが立てているか分からない水音だ。
ピチャピチャと猫が皿からミルクを飲むような音を立てていたのは男の方だ。

「おまえ、なんで俺のいうことが聞けねぇんだ?」

研修に行ってもいいと言ったがそれでも聞いていた。
自分の所有している女が歯向かったことが気に食わないというのだろうか?
司はつくしを煽った。煽って何も考えることなんて出来なくさせてやると決めていた。
シルクのような肌触りを持つ女に虜になったのは彼が17歳の頃だ。
それ以来、彼女は彼の女だ。
好きで好きでたまらなかったあの頃、どうしても手に入れたくてたまらなかった女。
この世で彼女だけが傍にいればそれでいいと願い手に入れたいとしい女だ。

「・・やっ・・・はっ・・・だめっ・・」

「何がだめだって?おまえのここはだめなんで言ってねぇけど?」

司はつくしの蜜壺に指をつけ、人差し指と中指でVサインを作ると糸がひかれる様を見せつけた。

「こんなになってるのにだめなんか?」

彼女の存在は水や食べ物と同じで司にとっては欠かせない存在。
つくし無では生きていけないとわかっていた。そんなつくしが自分に何の相談もなく海外研修に参加することが何故だか許せなかった。

「うまそうだ・・」

粘液をまとった指先は生々しく光っている。
司は口に含んでみせるとゆっくりと引き出した。
まるで舌なめずりをしている様で、目つきは肉食獣が捕らえた獲物を喰い散らかそうとしているかのようだ。

「随分と困ったことしてくれたじゃねぇかよ?」

脅しとも取れるような言い方につくしは戸惑った。
困ったことと言われてもつくしは困っていないのだから、どう返事をしたらいいのか分からなかった。会社の研修で1週間ロンドンに行くことがそんなに不満だというのだろうか。道明寺という男が急に了見が狭い男に思えてしまっていた。

「誰がロンドン行きを許可したんだ?」

司の手はゆっくりとつくしの首筋を撫でた。首の動脈がぴくぴくとしている様が見て取れたが、指先の力加減が出来ているだろうかなど考える余裕はなかった。

「そいつ、どこのどいつだ?」

つくしの腿のあいだに自分の腿を押し入れると頭をかがめ、硬く尖った乳首を口に含んだ。
赤い実は舌と歯で転がされては息を吹きかけられ、より硬く尖っていた。
舌で先端の周りを舐め回すと、すすり泣く声が漏れていた。
まるで罰を与えるかのような責め苦。
つくしの体に触れる男の体は熱く、怒りの炎までをその身に纏っているかのようだ。

「ど、どうみょうじ・・」

肩に触れられ、潤んだ瞳で見つめ返されたとき、つくしが勝手に決めたことに対して許してやろうかという気も起きたが、何故ロンドン行きを自分に言わなかったんだというわだかまった思いが彼からいつもの優しさを奪ってしまっていた。

理性などとっくに無くしていた。

司はつくしの脚を肩にかけると大きな亀頭で貫いていた。





***





部屋の中でのかすかな音が司の耳に届いた。

「まき・・の・・?」

司はぱっと目を見開いた。

まだ明け方の早い時間につくしはベッドを抜け出すと素早く服を身に着けていた。
自分を呼ぶ声にぎょっとして司を振り返って見たが、ドアに向かって駆け出した。

「ま、まて、まきの・・」

司は慌てた。
何しろ裸の状態だ。このまま出て行くわけにはいかない。
彼は慌ててジーンズを掴んで履いた。

クソッ。

すっ裸でジーンズなんか履いたばかりにジッパーのギザギザした部分がムスコに食いこんでんじゃねぇかと心配になるが、今の俺はそれどころじゃねぇ!

「ま、まきの・・待て!」

司はどんなことをしてでもつくしを捕まえるつもりだ。

つくしは玄関ドアのところで振り返ると

「道明寺なんか大キライ!」と叫んで駆け出した。

つくしの放ったひと言にムスコはショックを受けたようにびくっとした。
司はつくしを追って部屋を飛び出したがその姿は既に見当たらなかった。

ちくしょう!

昔っからだけど、なんであいつはこんなに逃げ足が速いんだよ!
おまえは陸上選手か?オリンピックにでも出るつもりなのか?
おまえの100メートルの記録はオリンピック選手並なのか?
まさか日本人初の9秒台を狙ってるわけじゃねぇよな?

昨夜ことが終わったあと、つくしの口から聞かされたのはロンドン研修を受けることで司がイギリスでどんな仕事をしているのかが分かるかと思ったからだと聞かされた。

あいつ、まだロンドンには行ったことがなかったからな。
この前俺が出張した時も呼ばず仕舞いに終わってたよな。
司はその時点で自分がどれだけつくしの思いをわかってやれなかったのかと深く後悔していた。俺は大失敗をやらかした。それは疑う余地もない事実だ。



***




これが1週間前に二人の間に起きた事の顛末だ。

司は執務室を飛び出したが、つくしがどこに行くかだなんてことは分かっていた。
可能性があると言えばあの場所だ。昼休みに行くといえば決まっている。
エレベーターに乗っている間に考えたのは、これからなんと言ってあいつに詫びを入れようかということだ。磨き抜かれたロビーを走り抜けて行く俺を社の人間は驚いた様子で見ていたが、そんなことはこの際どうでもいいことだ。

あいつの定番の店。
社食もあるが、営業外回りのあいつがよく行くのは社の近くのそば屋だ。
暖簾をくぐり、ガラリと扉を開けて入ればうつむいてそばをすすっている女がひとり。
この際、周りがどう思おうと関係ない勢いで声をかけようかと思ったが、それじゃあ牧野が嫌がることはわかっていた。

「偶然ですね。海外事業本部の牧野さん」

その声に顔を上げた牧野。
二人の目があったがつくしはむっとした表情だ。

「道明寺支社長がこんなそば屋にお越しになるなんてどういう風の吹き回しでしょうか?」
「そばが食べたくなったんです。相席よろしいですか?」

相席もなにも周りの席はいくらでも空いているがそんなことは関係ない。
司は向かいの席に腰を下ろした。

「牧野さんは何を召し上がっているんですか?」
「見ての通りの天ぷらそばです」
見てわかんねぇから聞いてんだろうが!の言葉はグッと呑み込んだ。
「では、わたしもそれをいただきましょう」
「ここ、食券を買うんです」

にやりと笑う牧野。

なに自慢げな顔してんだよ?俺だって食券くれぇ買えるぞ!
そうは言っても司が券売機を使ったことは過去には無かったはずだ。
道明寺ホールディングスの支社長がそば屋の券売機の前で固まる姿はレアものだろうけど
後ろに連なる人の列につくしは仕方がなく立ち上がった。

「あのね、ここにお金を入れて。それからこれ、このボタンを押すの。そうするとお釣りと券が出て来るから、それを持ってテーブルに座るの」
てきぱきと指示をされ大人しく席に着くとすぐに天ぷらそばが出て来たのはさすがサラリーマン相手のそば屋だ。
「これ、やる」
と言ってエビの天ぷらを箸でつくしの器に移して来た。
司にしてみれば、エビの天ぷらにはほど遠い基準のものなのかもしれないが、つくしにしてみれば十分立派なエビだ。
「なあ、まきの・・」
と、小声で呟いたあとに悪かった。と言葉が聞えた。
まさか、このエビが和解のしるしだとでも言うのだろうか?
「エビが喰いたいならいくらでも食わしてやる」
「そうですか。さぞやロンドンにはエビが沢山いるんでしょうね?」
嫌味たっぷりに言われた司は当然だとばかりに頷いた。
「ロンドンだろうが、ニューヨークだろうがおまえが行きたいところで研修を受けたらいい。あの時は俺が・・」
さすがに周りの目が気になるのかつくしは口を挟んだ。
「あ、あの。支社長・・わたしは、道明寺支社長のお役に立てるなら・・どこでもいいんです」

つくしは暫く司の目をじっと見つめていた。
司はつくしの瞳の中に何かを探していた。怒りでもいい、哀しみでもいい、もちろん悦びに溢れた瞳に会いたいという思いはあるが、自分が犯してしまった罪のようなものを感じている司は、強い瞳に戸惑ってしまった。
いったい何を言われるのかと内心気が気ではなかった。まさか別れようだなんてことを言われるのかと思うと目の前のそばは邪魔でしかない。

「牧野、俺は・・」
つくしは司の言葉をさえぎった。
「道明寺・・・道明寺ホールディングスがロンドンでどんな仕事をしているのか勉強させて下さい」
つくしは頭を下げていた。









司にしてみれば、つくしの気持をわかってやれなかった自分が不甲斐ないという思いがしていた。愛する女が自分の仕事を理解しようとしているのに、変な感情が渦巻いてしまったことを反省していた。
道徳観念が人一倍強い女は仕事も真面目に考えてる。
もちろん恋愛も、結婚もそのはずだ。
だからこいつは俺とのことを考えてロンドンへ行くことにしたんだろ?
そうだよな・・
エビで鯛を釣るわけじゃねーけど、こんなエビで牧野が釣れるならエビなんかいくらでも食わしてやる。

「ま、まきの・・」
「道明寺・・支社長・・おそば、のびますよ?」
「あ?ああ。そうだな・・食わねぇとな・・」
「そうですよ?残したりしたらもったいないですからね?」
語尾がきつく感じられた。



あれから二人でたいして美味くもねぇそばを食べて社まで戻ることにした。
途中、司は聞いた。
「なあ、これから散歩にでもいかねぇか?」
「はぁ?なんで散歩?」
「いや、別に深い意味はねぇけどな」
「仕事よ、仕事!昼からも頑張って仕事するんだから」

笑いながらの言葉にどうやら自分のことを許してくれたらしいとわかったとき、司は正直ホッと胸をなで下ろしていた。
司はそのあと、つくしの口から語られた言葉に顔がにやけていた。

「ロンドンだけどね・・」
「もし道明寺も・・出張で行けるなら・・あの一緒に・・あっちの公園でも散歩しない?  ほら、イギリス人って散歩が好きだっていうし、朝のハイドパークとか散歩にうってつけなんでしょ?」

ロンドン市民の憩いの場の公園は、ニューヨークのセントラルパークと同様の巨大な都市型公園だ。確かにそこは朝の散歩にはうってつけだ。

と、いうことは、だ。
同じホテルの同じ部屋ってことだな?

司はすぐにスケジュールを組み直すことに決めた。
どんなことをしてでもつくしがロンドン研修に行く日に自分もロンドン入りすることを決意した。
西田に言って何がなんでもスケジュールを変えさせてやる。
これからの俺の行動は、あらゆる行為は、全てがロンドン行を達成させるために進められることになる。

司はつくしを抱きしめた。
この際この場所が公道でも構わなかった。
司は上を向いたつくしの唇にキスをした。
いいことを教えてやろうか?
このキスは俺たちの仲直りのキスだ。
反省すべきは俺の方だが、そんな俺を暖かく迎え入れてくれるのはやっぱり愛されてるってことだろ?



心地よく合わされた唇に、語る言葉は必要なかった。







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