2018
01.31

今日のこの日を 後編

「パパ!お誕生日おめでとう!」

「ああ。ありがとう彩。パパはお前がパパの誕生日を祝ってくれるのが一番嬉しいぞ」

司の顔に自然に笑みが浮かぶのは、家族の前だけだと言われ、特に子供たちの中で唯一の女の子である彩の前ではデレデレになる男は、手にしたワイングラスを目の高さに上げた。
そして家族だけで祝う誕生日の夕食のテーブルには、妻が腕に撚りをかけて作った料理が並んでいた。

それは、誕生日は定番となった赤飯から始まり、おろし大根とシソが乗った和風ハンバーグ。イワシのつみれ汁。肉じゃが。蓮根のはさみ揚げ。えのきのベーコン巻き。きんぴらごぼう。豚肉と小松菜の炒め物。卵焼き。そして甘さ控えめの紅茶のシフォンケーキが焼かれていた。
それらは、どれもごく普通の家庭料理。
だがそれこそが司にとっては食べたい料理だ。

特に外食が何日も続いた後で口にする卵焼きは、出汁と卵の分量が絶妙で、それが司にとっての「家庭の味」の原点と言える味となっていた。
そして高校時代、妻が作ってくれた弁当は、司にとっては見たこともない衝撃的なものばかりが入れられ「これ。食べれるのか?」と訊いたことがあった。
中でも特に衝撃的だったのは、イソギンチャクと呼んだえのきのベーコン巻き。
それはとても人間が食べるものとは思えなかった。だが彼女が作った弁当の味は、それから彼の味覚の中では別格となった。

だが子供たちはいつも思う。
毎日でもいいからお前の作った卵焼きが食べたいという父親は、よく飽きないものだと。
そして母親は、コレステロールの摂り過ぎになるのではと心配していた。
なにしろ両親は、そういったことを気にしなければならない年齢なのだから。





「ねえパパ。パパに誕生日のプレゼントがあるの。受け取ってくれる?」

食事が落ち着いた頃、彩は父親に言った。

「ああ、勿論だ。彩からのプレゼントは毎年楽しみだからな。それで今年は何を作ってくれたんだ?」

彩は去年まで中学生だったこともあり、小遣いは少なく、彼女の中ではパパへのプレゼントは手作りが定番だった。
そして「初恋はお父さん」と言った娘から毎年贈られるプレゼントを大切にしていた。

幼い頃はクレヨンで書かれたパパの似顔絵が定番。
それが毎年贈られ上達していく様子が嬉しかった。
だから額に入れ執務室の壁に飾った。
そして小学生になると、フェルトという柔らかい布で作られた動物のマスコットに代わり、パンダだというそれが執務室のデスクの上に飾られたが、パンダには見えなかった。
そして毎年贈られるマスコットが6つになると、ガラスケースに収められキャビネットに飾られた。

やがて中学生になると、手作りのクッキーといったお菓子に変わり、母親から作り方を教えてもらったクッキーは懐かし味がした。
そして去年は手編みの青いマフラーをプレゼントされた。だが、娘が編んだそれは、どちらかと言えば下手な部類に入る。だがたとえ編み目が揃っていなくても良かった。父親というのは、娘がくれたものならどんなものでも嬉しいもので、カシミアの黒のロングコートに喜んでそのマフラーを使っていた。
そして周囲に自慢して歩き、今年は何をプレゼントしてくれるのかを楽しみにしていた。

「じゃあこれからプレゼントを渡すから付いて来てくれる?ママも一緒よ!」

彩はそう言うと父親と母親を別の部屋へと連れて行った。
そして圭と蓮も一緒だ。
そこは、大画面で映画が見たいと言った子供たちの願いに整えた、最新の音響システムを備えた通称映画ルームという部屋。だが司がその部屋で映画を見たことはなく、殆どと言っていいほど足を踏み入れたことがなかった。

何しろ道明寺邸には、司が足を踏み入れたことがない部屋が幾つもあり、何のための部屋かという部屋が数多く存在していて、そんな部屋を妻が子供たちを探して走り回っていたことがあった。
それはどういう訳か子供たちは狭い所が好きで、鬼ごっこをして使われていない部屋のクローゼットの中に隠れ、そのまま寝入ってしまったことがあり、その時は誘拐されたのではないかと大騒ぎになった。

そんなことを懐かしく感じるようになったのは、彼自身が年を取ってきたこともあるのだろう。だが誕生日を迎えること。年を取ることが嫌だということはない。なぜなら、彼の傍にはいつも愛する人がいるからだ。
そして永遠という時の流れの中で、一度しか出会うことが出来ない人との出逢いが家族を生み出した。
だが人生というのは時として残酷で、司が彼女のことを忘れ17年という歳月が流れ、その間二人は別々の道を歩んだ。
けれども、時の流れは再び彼女を連れて来ると、こうして家族を持つことが出来た。
そして今では思い出は二人が再会してからの方が多く、離れていた時間を忘れさせてくれた。



「パパはここに座って。それからママもパパの隣に座って」

彩にそう言われた二人は、大画面に向かい合うように置かれたソファに腰を降ろした。

「じゃあこれから始めます。パパ。これはあたしとお兄ちゃんたちからのプレゼントなの。楽しんでね!」
「彩。明かり消してもいいのか?」
「うん。お兄ちゃんお願い」

その言葉に部屋の明かりが消され、暗くなった部屋の、巨大な画面に表れたのは、
『ある愛の歴史』のタイトル。
やがて映し出されたのは、彼らが住む道明寺邸のとある一室。
そこにいるのは、くるくるとした髪の背の高い少年と真っ黒な長い髪の少女。
その二人が睨み合っていた。











『バカにしないでよ!あたしを品物みたいに買おうっていうわけ!?あたしはお金で買える女じゃないわ!』

『貧乏人のくせに自分を何様だと思ってるんだ!俺は道明寺財閥の跡取り息子だ!金で買えないものは世の中にひとつもねぇんだ!』

『ふん!あたしは無印良女よ。そのへんの女と一緒にしないで!何でもお金で買えると思ってるなら大間違いよ!』

少女はそう言うと大きく音をたて扉を閉め出て行った。
そしてそれを見送る少年の姿があった。

そして次に映し出されたのは、英徳学園の中庭の風景。
そこにいるのは、先ほどの少年と少女。

『俺のどこが不服なんだよ!俺ほど完璧な男がこの世の中にいるっていうのか!?』

『あんたのその変な髪型がいや!それに偉そうに私服で練り歩くところがいや!その自意識過剰な性格も、その蛇みたいな目がいや!あんたなんて大嫌いっ!』

『なんだとぉ!この貧乏女が!』

『うるさい!あんたなんて大嫌いっ!』

そして少女は少年を置き去りにして走り去った。
それから暫く映し出される映像には、互いを激しく罵り合う少年と少女の姿があった。
それは、相手の顔が見えなくても敵意を抱く二人の姿。
性格、考え方、価値観がことごとく合わないと言われていた二人。
だが「好き」と「嫌い」は紙一重。
いつの頃からか、少年は彼女のことを愛おしいと感じ、彼女の長い黒髪に手を触れたい。
その唇にキスをしたいと思うようになった。
すると、少女も少年のことを好きだと思うようになり、ある日隣に立つ背の高い少年の顔を見上げたとき、彼の目には今まで見たことがない優しさがあった。そして大きな手がそっと彼女の髪に触れたとき、彼の顔に浮かんだ笑みに心が大きく揺れた。

やがて徐々に二人の距離が近づくと、二人は心を通じ合わせ互いを思いやるようになり、暫くすると、揃って歩く姿が目撃されるようになった。
だが次の場面では、夜を濡らす雨の中、傘もささずに見つめ合う二人の姿があった。
そして映像はそこで終わっていたが、あの時の少年が言葉に出来ない切なさといったものがあることを知ったのは、それから随分と後のことだった。






若い頃の司とつくしに顏も背格好もそっくりな蓮と彩が両親の高校時代を演じた映像。
制服を着た少女が、少年から逃げ回る姿が面白おかしく演じられ、さまざまな色と光りの間を駆け抜けていく姿があった。それはまさに若い頃の自分達の姿。短かった青春。
そしてそこにはかつての司と同じ少年の瞳があった。
それは好きな女を見つめる男の真摯な瞳。
それが彼女に向けられたとき、彼は彼女を一生愛すると誓った。
だが高校生の二人はまだ幼く、運命が彼らに残酷な面を残していることを知らなかった。

司が港で刺され、生死の境を彷徨い、彼女のことを忘れ17年の歳月が流れるということを。


だが少年時代の司の姿は、すぐに54歳の己の姿に重なった。
欲しいものを欲しいと言わなくても簡単に手に入れることが出来た男。
与えられることに慣れていた男が努力して掴んだのは、初恋の人の心。
そしてその人は今は男の隣にいて、彼の彼女に対する想いはあの当時と変わらず、今も彼女を心の底から愛していた。



子供たちは、父親が母親の肩に腕を回し引き寄せる姿を見た。
そして母親が父親の肩に頭を寄せた姿に、そっと部屋を後にすると、静に扉を閉めた。

「それにしても花沢のおじさんが言ってたけど、昔の父さんって相当酷い男だったんだよな。それに俺、父さんの役をやって初めて知ったけど、父さんってあの外見から確実にSだと思ったけど実はMだってこと。信じられねぇけど、どう考えても父さんMだよな?」

「蓮。お前、今頃気付いたのか?今の父さんの母さんに尽くす姿を見ろよ。どう考えてもMだろ?MもM。ドMってヤツだ。それに高校時代の母さんは嫌がってるように見えたけど、あれで案外楽しんでたはずだ。つまり、父さんをいいように弄んでたってこと」

圭は大学生で大人だ。
父親の一連の言動から、父親が母親には絶対服従に近い男だということをとっくの昔に気付いていた。

「それって裏を返せば母さんはツンデレな少女だったってことだろ?父さんそんな母さんを好きになったってことか・・なんかやっぱ信じられねぇよ。道明寺司って言えば、鋭いナイフのような頭脳を持つカリスマ経営者って言われてる男だぞ?絶対に笑わないって言われてるような男だぞ?そんな男がM?・・けど俺たちが生まれてるってことは母さんも受け入れたってことだよな・・」

「そういうことだ。それに今でもあの夫婦。あの頃と同じってことだ。まあ夫は妻がツンデレでもそれでいいんじゃねぇの?それが父さんの好みで、あの夫婦がそれで円満に過ごせるなら」

圭と蓮はあの夫婦と呼んだ自分達の両親が互いを思いやる姿を知っている。
そして朝から頬を赤く染めた母親の姿を目すれば、夫が妻にあらゆる努力を惜しんでいないことを知る。

「ねぇ蓮お兄ちゃん。MとかSとかって何?パパの洋服のサイズMじゃないわよ?」

「え?ああ・・。まあな・・。違うけどいいんだ。あの夫婦はあれで」


子供たちが父親にプレゼントしたのは夫婦の懐かしい思い出だ。
遥か遠い昔の少年と少女の出会い。その出会いは過酷な時もあった。哀しい後悔があったと訊く。そして閉ざされた父親の記憶の中にいたという母親。
だから若い頃の二人が一緒に写った写真は一枚もなく、恋だ愛だと囁く時間は少なかったと言われている。
だが二人は今、こうして自分たちの親としてここにいる。
二人が乗り越えてきた時間と共に。



街の灯が誰かを幸せにしているように、子供たちの幸せは両親がいつまでも健康で長生きしてくれること。
そして二人が喧嘩をしたとしても、すぐに仲直りをしてくれることを望んでいた。
だが彼らの両親のうち、瞬間湯沸かし器のように頭に血がのぼるのはいつも父親で、そんな父親は我儘を言って母親を困らせ17歳の少年のようになる男だ。そしてそんな少年のような父親に、「男っていつまでたっても子供なんだから」と笑う母親。
それが彼らの両親。そんな二人の顔には優しい微笑みが浮かんでいるはずだ。











「あいつら。いつの間にこんなモン作ったんだ?お前は知ってたのか?」

大画面の中で繰り広げられているのは、少女がひたすら逃げ回っている姿。
それを大きな男が必死で追いかけるが、少女は逃げ足が速くて捕まらない。

「うん。航から圭たちが司の誕生日に何をプレゼントしていいか悩んでるって聞いてたから。それに類から圭があたし達の高校時代の話を訊きたいって言ってるって連絡があったの」

つくしは類からの電話で、圭が両親の出会いをドラマ仕立てに再現して父親に見せるから、馴れ初めを教えて欲しいと言われ話をした。そして詳しいことは自分の母親に訊くように言ったと連絡を受けた。だから子供たちに自分達の出会いについて話しをした。そして父親そっくりな我が子のひとりである高校生の蓮が司を演じ、娘の彩がつくしを演じた。

「それに学園の中を走り回るんだって許可をもらったし、子供たちだけで雨の降る夜に外であんなことさせられないでしょ?それからあんな言葉。司とあたしの会話なんてあの子たちが知るはずがないじゃない?」

「ああ。それもそうだな。しかし高校生の頃の俺はあんな酷い男だったか?もう少しお前に優しかったはずだ」

「え~?よく言うわね?あの通りよ!あの通り!出会った頃なんて本当に酷かったんだからね?忘れたとは言わせないからね!ホント、相当酷かった!」

「フン・・。大昔のことなんてとっくに忘れた」

「もう!自分に都合の悪いことはすぐ忘れるんだから!」

だが司は忘れてはいない。
彼女とのことならどんなことでも覚えているし、何年経っても出会った時の煌めきが消えることはない。好きな人に手が触れたのがいつだったが覚えている。それに初めてキスをしたのはいつだったか。初めて結ばれたのは勿論のこと、彼女のことならどんなことも見逃すことがないようにしていた。

だが予期せぬ出来事で当時付き合っていた少女のことを忘れた。
だから二人の青春時代はたった1年。郷愁に浸るとすれば、たった1年の間に起きた出来事しかない。出会い、喧嘩をし、絶交をし、恋じゃない、好きじゃないと言われた雨の夜があった。失恋の痛みを経験したかくも懐かしき高校時代。

子供たちは、その頃の自分達の姿を映像として見せてくれたが、あの頃、何億、何十億、何百億、何千億と積まれようが、彼女を手放すなど考えられなかった。彼女を待つだけで愛しさを感じた時間があった。

「それから航は今忙しくて行けそうにないからごめんって」

「そうか・・。あいつももうすぐ子供が生まれるんだ。今は俺の誕生日なんかよりそっちの方が大切だからな」

航はアメリカで3本の指に入ると言われる資産家の娘と結婚し、まもなく初めての子供が生まれることもあり、心配でNYを離れることが出来ないと分かっていた。それに航にとって初めての子供ということは、司にとっての初孫であり、自分がお爺ちゃんになることがまだ信じられないが、家族が増える歓びは何物にも代えがたい歓びであり、孫の誕生が待ち遠しく早く孫に会いたいと願い、抱きたいと思っていた。

そんな司は怖いくらい幸せを感じていた。
だが人生を試されたこともあった。
挫けそうになったこともあった。
だがそれが人生だということを知ったのは、彼女が傍にいてくれたから。
もしそうでなければ、司の人生は彼女を忘れ冷たい鉄のレールの上を走るだけの人生だった。
だが今ここにあるのは、永遠に結ばれることを約束した二人の気持ちだ。

「・・つくし・・お前は俺が都合の悪いことは忘れるって言ったが、俺はお前のことで忘れたことなんてねぇ・・どんな些細なことでも覚えてる。死ぬまでずっと覚えてるはずだ。それに100まで生きても今日のこの日も絶対忘れねぇからな」

今日という日はもう二度と来ない。
だからその日を目一杯幸せに生きる。
そして人間は生きていく上でたったひとつのことが生きる支えになることを司は知っている。

たったひとつ。

ただひとりの人が__。


その人は彼にとって唯一無二の存在。
ただひとりの大切な人。
世の中を生きていく上で、ただひとりの人が傍にいればそれで充分。
だから、たったひとり。彼女がいてくれればそれだけで幸せ。
二人が辿り着いた場所がどこであろうと二人一緒なら強くなれる。
手の温もりはいつもそこにあり、探していたものは全てここにあり、本当の愛の形は家族と過ごす時間だと教えてくれた人。
そしてこれからも、二人の前に未来は永遠に続いているのだから、見つめ合えるその人と子供の成長を見守り、幾千もの夜を過ごし、日々の暮らしに移ろいを感じ生きて行く。

彼女がすべて。彼女がいるから生きていける。生かされている。
人生が二度でも三度でも、何度巡って来ても彼女と出会うはずだ。そして何度も巡って来る幸せな時間を共に過ごす。
その思いを心に噛みしめている男は、自分が生まれた日を共に過ごしてくれる人に巡り会えたことを心から神に感謝していた。

そして肩にもたれかかる妻の唇にキスをした。

いつもありがとう、つくし。心から愛してると囁いて。



< 完 > *今日のこの日を*

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今日のこの日、司坊ちゃんお誕生日おめでとうございます。
いつまでも魅力的ないい男でいて下さい。
そして幾つになってもつくしちゃんと末長くお幸せに!^^
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2018
01.30

今日のこの日を 中編

『美味しいを分け合いたい。お袋ならそう言うだろうな。あの人は食べものを美味しく食べることが出来ればそれでいい人だから。けど、親父は食べ物に対してお袋とは比べものにならないほど興味がない。それに親父の場合食事は生きる為に仕方なく食べてる人だから自分の妻が作る料理以外はどうでもいい。世間でどんなに美味いと言われている食べ物にも興味は示さない。だから食べ物は止めたほうがいい。
それにその日のお袋は親父の好きな卵焼きとか、えのきのベーコン巻きだとかを作るに決まってる。だからお前たちは食べ物以外の何か別のものを考えた方がいいぞ?』

NYの航はそう言って一番上の弟である圭からの電話に応えた。

「・・・じゃあ何にしたらいいんだよ。毎年考えるともう思いつかなくなるんだよ。ネタ切れだよ。兄さん何かアイデアくれよ?」

『そうだな・・・。親父の喜びそうなものか・・。だけど俺は親父と暮らした時間は短いからな。正直親父が何を喜ぶかってことは分からないんだ』

航は高校生になってから自分の父親が道明寺司だと知り、それから世田谷の邸で暮らしたが、その期間は短く高校を卒業すると大学はNY。そして卒業後は道明寺NY本社の仕事を始めたこともあり、父親と暮らしたのは2年間。だから父親の細かい好みは知らなかった。

『まあ、間違いなく言えるのは、親父が喜ぶっていったらお袋絡みのこと以外ないからな。お袋が喜べば自分も嬉しい。それが親父だ。親父の幸せの基準はお袋だからお袋が幸せならそれでいいって人だ』

圭は航の話に頷いた。
彼が知る家での道明寺司は、書斎で仕事をする時以外、いつも母親の姿を目で追っているからだ。
そして偉そうに何か言うが、後でこっそりそのことの言い訳をしていることも知っている。

そして圭が今よりも幼かった頃こんな話があった。
母親が銀座のデパートのバーゲンセールに行くと言えば、反対した父親。
だが顔を曇らせた母親を見た父親は態度を変え、お前がどうしても行きたいならと言い、それから俺も一緒に行くと言った。
だがあの道明寺司がリムジンにボディガードを引き連れて行くものだから、デパート側は厳戒態勢を取らざるを得なくなり、客は入口で入店を規制される状態が発生。
そんな店内は、客がおらずガラガラで開店休業状態。
そしてそんな状況に、

「これじゃあ人混みに揉まれて掘り出し物を探す楽しみがない」
と言った母親。

「それならデパートごと買ってやる。そこで掘り出しものを探せばいい。ただし人混みは駄目だ。女はいいが男がお前の身体に触れるかもしれねぇから」
と言う父親。

そして呆れる母親という構図があった。

圭はそんな会話をする中年夫婦を見ながら成長した。
つまり圭たちの父親は誰よりも何よりも妻が大切。
そしてつまりそれは、妻は子供たちよりも上の存在。
だから父親が母親のことを愛し過ぎておかしくなったのかと思ったことがあった。

それはある日父親が呟いた言葉だ。

「俺は妖精に見放された・・」

小さなその呟きに一体父親に何が起きたのかと思ったが、丁度その日母親は、亡くなった父方の祖父の法事で北陸へ泊りで行っていた。そんな状況の中、まさか父親の口から妖精というまったく似つかわしくない言葉が出るとは思いもしなかったが、寂しそうな背中に妖精は母親のことであり、聞き間違いではなかったのだと確信した。なぜなら、翌日、妖精に見放されたと言った父親は、母親が戻って来た途端、暗い淵の底から這い上がってきたターミネーターのような不死身の男になっていたからだ。
その瞬間、父親にとって母親はかわいい妖精で、父親は自分だけの妖精を守る不死身の男だったのだと確信した。

だがだからこそ、航の言った親父はお袋が幸せならそれが幸せ、という言葉が信じられるのだが、今では人工衛星すら持つ父親。もしかすると空の上から母親を見ているかもしれない。
いや。かもではない。
断定していいはずだ。
絶対にやっているはずだ。
確実にやっているはずだ。
何しろ自分達の父親は、あの道明寺司なのだから。
だからこそ、そんな父親の誕生日に何をプレゼントすれば喜ばれるのか悩んだ。
だが圭はようやく考えが纏まった。
そしてこれなら父親が喜んでくれることは間違いないという自信を持ち、弟と妹を部屋に呼んだ。


「ねえ。圭お兄ちゃん。それでパパの誕生日のプレゼント、決まったの?」
「ああ。決まった。けどそのプレゼントは彩の協力が必要だ。それに蓮も」
「俺も?」
「ああ。これは俺たち三人で父さんに贈るプレゼントだ。だから当然三人が力を合わせる必要がある。それにこれは今の俺たちじゃなきゃ出来ない贈り物だ」

圭はそう言って弟と妹と頭を寄せ合った。




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2018
01.29

今日のこの日を 前編

こちらのお話は『いつか晴れた日に』の道明寺ファミリーのお話です。
登場人物は『いつか晴れた日に 番外編2』に登場した子供たちと両親。
司の誕生日のひとコマです。
**********************************







「おい。父さんの誕生日だけど、プレゼント何にする?」
「・・そうだな。毎年のことだけど、父さんは何でも持ってるから困るんだよな」
「じゃあパパは何が一番喜ぶの?」
「そりゃあ母さんからのキスだろ?でもそれは母さんからのプレゼントであって俺たちからのプレゼントじゃないからな・・」
「だよな・・。でもさ、あの父さんが未だに母さんからのキスを強請るって、子供の俺の目から見ても異様だぞ?いいか。冷静に考えてみろ?クールで苦み走ったいい男と言われるあの道明寺司が、母さんの前ではデレデレだ。あんな顔世間に見せたらこの先の日本経済が危ぶまれるって言われるのは確実だ」
「それマジ?」
「・・・ああ。多分な・・・」







道明寺家には4人の子供がいる。
1番目の男の子は航(こう)と言い、男の子という呼び方をするには無理がある30代後半。
彼は道明寺HD、NY本社で副社長として働いている。
そして随分と年が離れてはいるが2番目の男の子の圭は大学3年生。
その下の蓮は高校3年生。
そして4人の子供たちの末っ子は、子供たちの中で唯一の女の子で高校1年の彩。
その4人の子供たちのうち、世田谷の邸の一室で頭を寄せ話しているのは、航を除く三人の兄妹たちだ。

航は年が離れていることもあるが、NYで生活していることもあり、彼らが頭を寄せ合う場所にいることはない。それに彼らが幼かった頃からすでにNYで暮らしていることもあり、兄というよりも叔父さんに近い存在だ。

そしてそんな航はまるで判を押したか、同じ鋳型から作られたとでも言うように父親とよく似ているが、2番目の圭も3番目の蓮も何故か皆父親によく似ていて、両親のどちらの遺伝子が強いのかを如実に表していた。

だが末の娘だけは、母親の特徴を受け継いでいるのは間違いなく、黒い大きな瞳と真っ直ぐな黒い髪は父親にとっては若い頃の妻の姿を見ているようで、懐かしさと娘愛おしさで目に入れても痛くないほどの可愛がりようだ。
つまり、娘に対しては過保護な父親ということだ。
そして、娘が産まれた時、絶対に嫁にはやらねぇと言い切った父親だった。

だが何故航と他の弟妹との間にそんなにも年の開きがあるのか。
それは、彼らの両親の間に起こった物語があるからだ。

彼らの両親がまだ高校生だった頃。母親は父親に自分のことを忘れ去られた事があった。
その年月は実に17年にも及び、その間、母親は身ごもっていた長男の航をひとりで産み育てた経緯がある。そして父親である男が彼女のことを思い出したとき、再び二人の恋は始まった。やがて結婚した二人の間には、ふたりの男の子とひとりの女の子が誕生した。
そして、二人の間に生まれた子供たちは、子供にはめっぽう甘い父親と、躾には厳しい母親に見守られすくすくと成長していた。

そんな彼らが毎年悩むのは、父親の誕生日のプレゼントだ。
何故なら父親である道明寺司は、この世の中で手に入らないものは無いと言われるほどの金持ちだからだ。
だがその言葉にいつも反論するのは母親だ。

『世の中にはお金では買えないものがあるのよ』

いつも子供たちにそういって教育をしてきた彼女は、貧しいと言われる家庭で育ったが、お金に大きな価値を置く人間ではなかった。
貧しければ貧しいなりに工夫をすることを学び、生活の知恵といったものを身に付けると言われ、彼らに与えられる小遣いは大財閥の子どもたちにしては少額であり、その中でやり繰りすることを学ばされた。

だがかつて父親は、金で母親の気を引こうとしたことがあったという。
しかしそんな父親に振り向きもしなかった母親は、それから自分を追いかけ回す父親から逃げ回っていたとういうのだから、何故そんな母親が自分達の父親と結婚したのかが未だに疑問として子供たちの頭の中にある。

それでも、今の父親と母親の姿を見れば、そんな話は嘘ではないかというほど仲が良い。
たとえば、父親が母親に向かって何か言っている姿を目撃する。
多分それは、子供たちに小遣いとして毎月決まった金額しか渡さないと決めていたはずだが、夫がその決まりを破ったことが発覚し、妻に咎められた時だ。

すると父親は、自分に都合のいい理由を並べるが、母親の眉間には皺が寄る。
そして父親は、そんな細かいことを言うなと不機嫌になる。
その態度に母親はすっと席を立って部屋から出て行く。そして暫く経っても母親が部屋に戻ってこなければ父親は探しに行くのだが、広い邸の中を探し回り名前を呼び、見つけると拘束し、俺の相手をしろ、傍にいろといった態度を取るのだが、そんな夫に妻である母親は呆れてはいるが、それでも夫の我儘にも付き合うのだから、夫婦のことは夫婦でなければ分からない、という世間の言葉は本当なのだと兄妹たちはいつも思っていた。


そして結論としていつも思うのは、自分達の父親と母親は仲が良いということだ。
そんな父親の誕生日が間もなく来る。
1月31日は、道明寺財閥当主であり道明寺HD社長である道明寺司の54歳の誕生日。
欲しいものは何でも手に入れることが出来る男の誕生日に今年は一体何をプレゼントすればいいのか。
三人の子供たちは考えたが思い浮かばず、NYにいる一番上の年の離れた兄に相談することにした。




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2017
12.25

追憶のクリスマス ~遅れてきたプロローグ~

クリスマスイブの10日前に目覚めた司。
簡単には利かなかった身体の自由。
それでもどうしてもクリスマスイブに二人に逢いたかった。
そしてその思いが司の身体に奇跡を起こした。


椿から息子がいると聞かされたとき、まさかといった思いと同時に湧き上がった歓びがあった。それは、何が起ころうと、誰に何かを言われようと、自分の意思を貫き通すことを決めた彼女が二人の間に出来た子供を産み育てることを決断したことだが、その決断は司にとっては嬉しいものだった。

だが、椿からの援助の申し出を断り、シングルマザーとして仕事と育児をこなす女の苦労は並大抵ではなかったはずだと思う。
しかし彼女は昔から苦労を苦労と思うことがなかった。そして苦しいといった素振りを見せたこともなかった。守ってもらわなきゃ幸せになれない女じゃないと言ったこともあったが、司には分っていた。それが健気な強がりであることを。

そして息子に駿(しゅん)という名前をつけた理由を教えられたが、どんな困難にも怯むことなく立ち向かう馬のようになって欲しいといった意味があると。
そして活発で活動的。行動力のある人間になって欲しいといった願いを込めたと訊かされたが、まさに活発な男の子はパパの存在を心から喜んでいた。




「ママ!パパが来たよ!パパはお船に乗って海の上にいたけど、来てくれたよ!きっとサンタさんのソリに乗せてもらったんだね!パパいいな~。サンタさんのソリに乗るなんて!いつか僕も乗りたいな」

幼児らしく頬を赤く染めた我が子の話は、サンタクロースの存在を信じているからだが、司がその存在を否定することは出来なかったし、もちろんそのつもりはない。

「ああ。駿も乗せてやる。今年のサンタは帰っちまったが、来年は必ず乗せてやる」

「ほんと?僕サンタさんに会いたいよ!だって今年はパパを連れてきてくれたんだもん。僕サンタさんにお礼を言わなきゃね。でもママはサンタさんはいい子でいて、早く寝る子のところにしか来てくれないって言うんだ。それじゃあ僕永遠にサンタさんに会えないよね?だから来年からは夜更かししてもいいよね?」

「駿ダメでしょ?子供は早く寝るって決まってるの。遅くまで起きてたら、サンタさん来てくれないわよ?それでもいいの?」

駿は母親からそう言われ、哀しそうな顔をした。
母は嘘を言ったことはなく、いつも正しいことしか言わなかったからだ。だから母の言うことは絶対だ。そして親子揃って真面目なのだから駿は母の言葉を疑うことはない。

「・・それは困るよ。だってサンタさんには来年もパパを連れて来てもらわなきゃならないもん・・・」

来年もパパを連れて来てもらわなきゃならない_

その言葉に司は胸の奥から突き上げるものを感じていた。
この年頃の子供は素直だ。そして正直だ。自分の思ったことをそのまま口にする。
今我が子が口にしたその言葉は、パパはまた海の上の生活に戻ってしまうと思っているようだ。

「・・駿。いいか。パパはもう船には乗らねぇし海の上に戻ることはもうねぇぞ。これからはずっとお前の傍にいてやる。それにな。心配するな。パパがサンタのプレゼントよりもっといいものをプレゼントしてやる」

そう言って司は息子の髪に手を差し入れ、くしゃりと掴んだ。癖のある髪の感触は自分の髪の毛と同じだが、見つめる瞳の輝きは母であるつくしのものだ。そしてその母親は司の言葉に鋭く反応を示した。

「ちょっと!な、なに言ってるのよ!子供の夢を壊すようなこと言わないでよ!クリスマスのプレゼントはサンタクロースが持って来ることに決まってるんだからね!勝手なこと言わないでよね?」

「あぁ?なんでサンタじゃなきゃなんねぇんだよ!今までだってお前がサンタやってたんだろうが。それに俺がサンタなんかに負けるわけねぇだろうが!それに子供にプレゼントをやるのはサンタじゃなくて父親の役目だろうが!」

だが司は親からクリスマスプレゼントといったものを贈られた記憶がない。
世間から見れば、裕福な家の子供で、当然のように沢山のプレゼントが贈られては来た。
だが心から欲しかったものが何かと言えば、物ではない。それにどんなに高価な物が贈られても、子供には不相応と言えるものばかりであり、心に響くような物はひとつもなく、サンタクロースという人物がプレゼントを配達してくれるリストからは漏れたのだと感じていた。
だから枕元にそっと置かれるプレゼントといった物はなく寂しい思いをした。司は、そんな思いもあり自分が経験したような子供に無関心な親になるつもりはない。

「ちょ・・子供の前でそんなこと言わないでよ!こ、子供には夢ってものがあるの。それを親のアンタが壊してどうするのよ!」

「・・パパ・・サンタさん・・本当はいないの?」

司は我が子のしょんぼりした声に慌てていた。
今まで寂しい思いをさせてきた我が子が悲しむ顔など見たくない。
それに父親である自分が傍にいなかったことを考えれば、息子をここまで育ててきた女の言葉に同調しなくてどうするのかといった思いが沸き上がった。

「いや。駿。サンタはいる。サンタクロースはいるぞ。だからパパはそのサンタのソリに乗せてもらって海の上を飛んでここまで来た。とにかくサンタはいる。いつも忙しい男だが確実にいる。絶対にいる。けど来年はサンタからソリを借りてやるからな。それにあの男はソリを沢山持ってるから心配するな?・・な、つくし?」

「えっ?う、うん」

司は話をつくしに振り、これ以上サンタクロースの件で話をするのは止めたとばかり部屋の片隅に置かれたプラスチックで出来た小さな緑の木に目を止めた。

「それにしてもチンケなツリーだな」

「ちょっと!今度はなによ!うちのツリーに文句つけるつもり?」

「ああ悪りぃ。つい本音が出ちまった。まあいい。それより行くぞ」

司は、本当はそんなことを言うためここに来たのではない。
離れ離れになっていた家族をひとつにするためここに来た。

「・・?行くってどこに行くのよ?」

「決まってるだろうが。うちだ。邸にはデカいクリスマスツリー飾ってある。それを駿に見せる」

司は我が子の存在を知り、大きなツリーを用意し、豪勢な料理と大きなクリスマスケーキも用意した。そしてクリスマスプレゼントも準備した。だが自分によく似た息子とその母親が真剣な顔で自分を見つめている姿に気付いた。

「あのね、あたしと駿はこれからケーキを食べて、ハンバーグを食べるの。だから_」

司は言葉に詰まった女の思いを理解した。
毎年親子二人。小さなツリーを前に、丸く白い小さなケーキと、手作りハンバーグを食べるのがこの家の大切な行事。これが年の瀬の息子の楽しみであり、この親子にとって小さな部屋の中で過ごすこのスタイルが彼らのクリスマスであることを。
そして願い事を叶えて欲しいとサンタクロースに祈り、翌朝になればパパがいることを願っていた我が子。だが叶えられることはなかったその願いの代わりに、枕元に置かれた母親からのプレゼントを開けていた我が子の姿が見え、司はその思いを受け止めた。

「・・ケーキもハンバーグも持って行けばいい・・それにお前が用意したプレゼントもだ。駿、支度しろ。ママのハンバーグを持って出掛けるぞ。勿論ケーキもだ。パパの家にはデカいツリーが飾ってある。それを見に行くぞ」









クリスマスキャンドルが揺らめく部屋は、赤や緑。銀や金の飾りが施され、中央にある大きなモミの木は本物だ。
そしてその木に飾られているのは、小さなプレゼントボックスや、靴下。雪の結晶や、赤と白のストライプの杖、金色に輝くベル。天使やキラキラと輝くボールといった色とりどりのオーナメント。
そしてキリスト誕生を告げたベツレヘムの星と呼ばれる煌めきは、高い木の頂上で輝きを放っていた。

そんなクリスマスツリーの根元に置かれたリボンが掛けられた沢山の箱は、我が子と愛しい人への贈り物。
本来なら毎年贈るはずだったが、逢えなかった6年という長い年月の思いを込めた贈り物の数々。たとえそれが贅沢だ。こんなに沢山勿体ないと言われようと、どのプレゼントにも思いが込められている。

「駿。あれは全部お前へのプレゼントだ。パパが今までお前に逢えなかった分だ」

駿は突然連れて来られた大きな邸と大勢の使用人の出迎えに戸惑っていたが、活発な子供らしさと、好奇心に満ちた眼差しで色とりどりの紙で包まれた箱に目を向けていた。

「わぁ~!パパ!本当にいいの?あれ全部僕が貰っていいの?こんなに沢山プレゼントを貰うなんて初めてだ!ありがとう、パパ!」

駿はそれまで握っていた司の手を離し、プレゼントの箱が詰まれたツリーの元へ走って行くと、床に座り込んだ。そして、リボンが掛けられた大きな箱の包み紙を剥がし始めた。

「駿!今日はまだイブよ?プレゼントを開けるのは明日でしょ?」

「別にいいじゃねぇか。今日だろうが明日だろうが。それに沢山あるんだ。少しくらい開けても構わねぇだろ?いいぞ、駿。沢山あるんだ。ちょっとくらい開けても構わねぇからな」

中から出てくるのは、5歳の男の子が喜びそうなもの。だがそれは司が見たことがないようなおもちゃが入っていた。もっと高価なものをと考えたが姉に言われたことを思い出していた。

『子供は値段なんか関係ないの。それよりも手にして遊べるおもちゃが一番いいの』

そう聞いた司は、それならと考えたが結局分からず邸の中で5歳児がいる使用人を集め、聞いていた。その結果選ばれたおもちゃの数々が用意されたが、その中に多少現実離れしたものがあったとしても、それは仕方がない話だ。何故なら司が幼い頃、貰ったプレゼントもそういったものだったのだから。

例えばそれが高級外車をそのまま小さくしたレーシングカートだとしてもいいではないかという気でいた。何しろ、息子がいると知り、行動を調べたが、車にいたく興味があることを知った。だから息子が好きだというものなら与えてやりたいと思うのが親だ。そして当然、邸の庭に走行コースも作らせたが安全面も考慮されている。
だがもし息子が鉄道を好きだというなら、どこかの鉄道会社を買収してもいい。
それに鉄道模型が走る部屋も作ってやるつもりだ。
たとえ親バカと言われようが一向に構わない。これから今まで出来なかったことをもっとするつもりでいるのだから親バカ上等といった思いだ。

そして、自分をそんな親バカにしてくれる女にも渡したいものがある。

「それからつくし・・お前にも6年分のプレゼントだ」

司が用意したプレゼンとは、オニキスのように曇のない漆黒の瞳に似合う宝石たち。
だが彼女が持つ人としての輝きには負けることは分かっている。そしてそんな宝石は要らないと断られることも分っている。しかしそれでも好きな女を美しい宝石で飾りたいといった思いを持つのが男だ。最上の女には、これ以上ないと言われる最上のものを贈りたい。

だが司が本当に渡したいプレゼントは、6年前のクリスマスイブに渡すつもりでいた指輪。
これまでずっと彼女の家にあったが、嵌められたことがないという指輪だ。
だから今夜その指輪を彼女の指に嵌めるつもりでいた。

「メリークリスマス。つくし。今まで哀しい思いをさせて悪かった。それから長い間ひとりにさせて悪かった。・・・それと、駿を産んでくたことに感謝する」

司は小さく頷いた女の左手を取り指輪を嵌めた。

「・・あたし、この指輪をアンタに嵌めてもらう日を待ってた。でもね、もしアンタが目を覚ましてまたあたしのことを忘れてたらどうしようと思った。あたしを忘れて駿のことなんてどうでもいいって思われたらどうしようって・・」

高校生の頃、司は彼女のことを忘れたことがある。
そして彼女に対し酷い言葉を吐いた。

「_んな訳ねぇだろ?俺が二度もお前のことを忘れるなんてこと許されるか?もしそんなことになるようなら俺は神を恨んでやる。それこそ、サンタのソリに乗って神のいる天まで飛んでって文句を言ってやる」

「バカ。サンタの存在なんて信じてないくせに何言ってるのよ」

「いや。俺は信じてる。駿が信じるものは俺も信じる。子供のいうことを信じてやれねぇ親は親じゃねぇだろ?」

親は何があっても子供のことを信じてやる。
世界でただ一人、無償の愛を与えることが出来るのは親だけなのだから。
今の司は息子の言うことならどんな望みでも叶えてやるし、信じてやることが出来る。

「・・でも突然親になって驚いたでしょ?」

「ああ。驚いたかって言われれば驚いたがすぐに驚きよりも嬉しさの方が上回った。それに俺にそっくりだってことにも驚いたが、我が子ってのは可愛いモンだってことに気付くに時間は掛からなかったな。けど性格はお前に似てるな?頑固そうだし、それに見ろよアレ」

そう言われ、ツリーの下でプレゼントが包まれた紙を丁寧に剥がす我が子の姿につくしは笑った。

「ああ、アレね?包装紙は再利用できるから丁寧に剥がすのよっていつも言ってるから」

勿体ないと言うのが口癖の女の教育は、ちゃんと我が子に伝えられているようだ。
だがそんな我が子の姿も愛おしいと感じる父親は、息子の母であるつくしを抱きしめた。
そしてただひと言言った。

「・・つくし。ありがとな」

「・・うん・・」

そう言って笑顔で流す涙は美しかった。












二人にはクリスマスツリーの下に置かれているプレゼントなどどうでもいい。
欲しかったのは、たった一人の人。
そして神が与えた宝物である男の子が司にとっては最高のプレゼント。

光が溢れる部屋の外は真っ白な雪が降り続いている。
それは冷たい雨ではなく、真っ白な雪。
そしてそれは、50年以上前のクリスマスイブに降った雪と同じ雪かもしれない。

いつだったか雪のように冷たい雨に打たれ、心が張り裂けそうな思いをしたことがあった。
だが、今降る雪は沢山の雪の結晶が作り出した柔らかな雪。
その雪は、街のざわめきを呑み込み、灰色の景色を真っ白に変える。
そして、今始まる二人の物語。
物語の始まりは遅れてきたが終わりが良ければそれでいい。
そう思う男は、今この瞬間の幸せを噛みしめながら、共に過ごせなかった時をどうやって取り戻そうかと考えていた。





*追憶のクリスマス ~遅れてきたプロローグ~*

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2017
12.24

追憶のクリスマス ~空からの手紙~ 後編

『雨は夜更け過ぎに雪へと変わる』

そんな歌がある。
だがクリスマスイブの夜、東京に雪が降ったのは、50年以上も前の話で降れば奇跡と呼ばれている。そして今年のクリスマスイブも雪は降ることはないはずだ。
つまり奇跡は起きないということだ。

そしてその歌の続きは_

『きっと君は来ない』

またいつか逢えるはずだと願う人間には辛い歌詞。
だがもし、今夜降る雨が雪に変われば奇跡が起きるはずだ。
だから毎年願う。この日に雨が降り雪へと変わりますようにと。
だがビロードのような空には星が瞬いているのだから落ちてくるものなど何もないはずだ。

息子が生まれてからずっと二人で生きてきた。
彼の姉である椿は世田谷の邸で暮らしましょうと言ったが、結婚していない女がそんなことは出来ないと断った。

彼の子供は椿にとって甥だが、父親である弟は目を覚ますことなく眠り続けており、認知されていない子供だ。もし、彼が永遠に覚めなければ誰が財閥の跡を継ぐのかといった問題が浮上するが、そのことに我が子を巻き込みたくはなかった。だからシングルマザーとして働きながら子育てをしている。

そして嗚咽を漏らしながら渡された指輪は、一度も嵌められたことはない。
いつか彼が目覚めて嵌めてくれることを願うからだ。
きっといつかまた逢えると、逢える日を願っている。








「ママ!雨だ!雨が降り始めたよ?サンタさん雨だけど来てくれるかな?大丈夫かな?」

「・・ん?」

つくしは窓の傍にいる息子の声に気のない返事をした。

「だから、ママ雨が降って来たよ・・あ、でも雪だ!雪だよ!」

「本当に?雨じゃないの?」

息子が窓の外を見て言った言葉は本当なのだろうか?
もしそうなら降る雨が雪へ変わることを願わずにはいられない。何故なら東京の街に50年振りに降る雪は奇跡を連れてくるはずだから。

「違うよ!本当に雪だよ。白くてふわふわしてる!ねえママ雪だってば!見に来てよ!」

「うん。わかった。わかったから。でも待って。ママ今手が離せないの」

二人だけのクリスマス。
彼によく似た我が子と過ごす日に奇跡が起こることを願う。
今までもずっとそうして来た。そしてこれから何年経とうが、ずっとそうするつもりでいる。

用意したケーキは、イチゴが乗った真っ白で小さな丸い形。
ハンバーグが大好きだという我が子のため焼く楕円形の上にはチーズが乗るが、その焼き具合を確かめ、ベランダに面した窓に張り付いている我が子の傍へ行った。

「どこ?本当に雪が降ってるの?雨じゃないの?」

「違うよ!本当に雪だから!」

我が子の言った言葉は正しかった。
降り出した雨が雪に変わったのだろう。
窓から見上げた空から降り始めたのは確かに雪だ。そして真っ白な雪の結晶は、ベランダの手すりに薄っすらとだが積り始めていた。

「ね。ママ、雪だよね?」

「うん。そうだね・・・。今年のクリスマスイブは雪になったね?」

イブに雪が降る。
50年以上降ったことがない東京のイブの夜。
あの日、どこかのビルの窓一面に大きなクリスマスツリーの形をした明かりが灯されていた。
あの日、二人は会う約束をしていたがその約束は・・・まだ果たされていない。
だがその約束を今夜果たして欲しいと願うことは、無理な願いだと分かっている。
それでも、もし奇跡が起こるなら今夜起きて欲しいと願う。
真っ白な部屋のなか、静にベッドへ横たわっている彼が目を覚ましてくれることを。

「・・・道明寺・・」

「・・ママ?どうしたのママ?」

つくしはたまらなくなった。
下から見上げる我が子が一瞬寂しそうな表情を浮かべたのを母は見逃さなかった。
そしてそんな表情をさせてしまった自分は母親失格だと感じていた。ひとりで育てると決めたとき、我が子の前では決して寂しい表情を見せないと決めたはずだ。

「うんうん。何でもないわよ。さあ、ハンバーグ食べなきゃね?今日もママのハンバーグは美味しく焼けたはずよ?」

「うん!早く食べようよ!」

5歳の男の子は母親の手を取り、窓の傍を離れた。
そのとき、玄関のチャイムが鳴る音がした。
だがこんな夜、誰がチャイムを鳴らすのかといった思いがある。
つくしの家は都心から離れた郊外にある賃貸マンションの2階だがオートロックではない。
頭を過ったのは宅配便かという思い。我が子を残し玄関に向かった。

「・・はい?どなたですか?」

扉の向うから返って来る声は聞こえない。

「あの?・・どなたですか?」

再び問いかけたがやはり返事はなかった。
仕方なく恐る恐るだが扉に近づき、そっと魚眼レンズに目を近づけた。
するとそこに見えたのは黒いコートを着た男の後姿。
大きな背中に広い肩幅。
その後ろ姿にはどこか見覚えがあった。だが少し痩せて見える。
そしてまさか。という思いがして自分自身に問いかける。

あの人なの、と。

もしそうなら椿から連絡があるはずだ。だがその後ろ姿は紛れもなくあの人のものだ。
間違えるはずがない。どんなに遠くにいてもあの人の姿なら見つけることが出来る。
つくしは、防犯のため用意してあるバットの位地を確かめ、大丈夫だと思い切って扉を開けた。
その瞬間男が振り向いたが、頭には薄っすらとだが白いものがあり、肩にも白い雪の結晶がついていた。
そしてその男の姿が視界いっぱいに広がった。

「・・・どうみょうじ?」

そこにいたのはずっと逢いたかった人。

「・・牧野・・」

名前を呼ばれたがつくしは言葉が出なかった。
そして目の前の男を見つめたまま動かなかった。
もしこれが幻なら、夢なら、彼の姿はすぐに消えてしまうからだ。
だがしっかりと確認したい思いを持っていた。

「・・・どうみょうじ・・・道明寺なの?」

口を開いたが声は哀しいのか嬉しいのか分からないほど震えていた。
少し痩せた身体に似合いのコート着た男は、顔色はよく、長い間眠りについていたとは思えない。そして自分の足で立っている。だからこれは夢でもなければ、幻でもない。現実だ。マンションの廊下に佇む男の姿だ。

「・・ああ。・・牧野・・俺だ。道明寺司だ」

信じられない思いがしていた。
1ヶ月前、病院を訪ねたとき彼は特別室で静かに眠っていた。
その姿は本当にただ寝ているだけで、少し痩せていたとしても、6年前と変わらない姿は今にも起き出して来そうだった。
だがつくしが年を取るように、彼も少しずつ年を重ねていく姿があったはずだ。そして今は真剣な顔をしてつくしを見つめていた。
だがそのときだった。パタパタと小さな足音がして玄関に現れたのは、息子の駿だ。

「ママ、この人誰?宅急便の人?・・・それとも、もしかしておじさんがサンタさん?でも赤い服も着てないし白いお鬚もないよね?でもプレゼント、持って来てくれたんだよね?僕ママにお願いしたんだ。パパに会いたいって!僕パパに会ったことがないんだけど、パパは外国に行く船に乗る船長さんなんだって!だから日本に帰って来ることが出来ないんだって!僕のパパはね、ずっと海の上で暮らしているんだ。・・だからクリスマスも帰って来ることが出来ないんだ。・・・でも今年は帰って来てくれそうな気がしてたんだ!ねえサンタさん、パパを連れてきてくれたんだよね?ねえ、パパはどこ?」

つくしは我が子がパパと言う男性の存在を意識し始めると話をした。
パパは、外国航路の船に乗っていて長い航海へ出ていると。
そしてその船は滅多に港に立ち寄ることはなく、1年のうちの殆どを海の上で過ごすのだと。丁度その頃、駿を連れ港の傍を通ったことがあるが、その時見た船はとてつもなく大きな船。
それを彼の会社に例えるとすれば、まさにその通りと言える大きさだ。だから息子には、パパはああいったお船の船長さんで大変なお仕事をしているの。だから帰ってくることが出来ないのと話をした。

まだ高校生だった頃、彼に言われたことがある。
『俺の夢は叶った。欲しかったものを手に入れることが出来た。それがお前だ』
今のつくしも同じことが言える。

いつも心の中で祈っていた願いは叶えられた。

クリスマスイブ。

やっと会えた。

東京の夜に降れば奇跡だという雪とともに_。










司は屈みこんで我が子と同じ目線の高さに視線を合わせ、癖のある髪に手を置いた。

一目でわかる我が子。
姉からあなたには5歳の息子がいると訊かされた時は驚いた。
そしてすぐにつくしちゃんに連絡をするからと言った姉を自らが会いに行くからいいと言って止めた。そしてあの時出来なかったことをすると言った。


父親は海の上で暮らしていると我が子に言った彼女。
それは的確な表現だと司は思った。

まさに司は大海原の底にいた。何も見えず何も感じず真っ暗な海の底に沈んでいた難破船の中にいたようなものだった。そしてその船は海中の景色に同化したように動くことはなかった。だが何かがその船を動かした。そして波間に揺蕩う小船のように船は浮上した。

すると長い間なんの反応も示さなかった身体が動き、意識が水面を漂い始めた。
そしてある日突然目が覚めたが、何故白い部屋に横たわっているのか分からなかった。
そして記憶は冬の夜、交差点で信号が変わるのを待っていたところで止っていたが、事故に遭ったことを思い出した。その日は生涯の相手に大切な話をしに行く途中だった。

そしてその事故がいつのことだと訊かれれば、ついこの前のことだと思う。だが目覚めた男に告げられたのは、その日から6年の歳月が流れているということ。そして季節はあの頃と同じ冬だということを告げられた。

そしてそれはクリスマスイブの10日前に起きた奇跡。
深い闇の中に沈んでいた彼に生きたいという意志が働いた。
彼女に会いたいという意志が。
そして今、司は彼女と我が子の前にいた。

今、司がすべきことは決まっている。
あの時出来なかったプロポーズの指輪を渡すことをする。だがその指輪は彼女の元にあると椿から聞かされた。言葉はなくても彼女はその指輪を受け取ってくれた。そして自分の子供を産み育てていた。今の司には天からの二つの大きな贈り物が目の前にある。

司は立ち上がり、大きな瞳で自分を見つめる女に言った。

「牧野、もう一度俺と始めてくれないか?あの日からもう一度。俺はお前じゃなきゃ駄目だってことは知ってるだろ?お前がいなきゃ駄目だってな」

司の記憶は6年前のあの日で止っている。
一度は駄目になりそうになった二人の絆を結び直そうとしたあの日の夜で。
だからあの日に彼女に言いたかった言葉を言った。

「・・牧野・・」

初めて互いの肌を寄せたとき、背中に回された指が震えたのを覚えている。
裸で互いの体温を感じ合い求め合った。
そしてあの日から何年経とうとも、変わることがない想いがある。
互いが互いでなければならないといった想い。
それでも一度は二人の間に見えない力が働いたことがあった。
けれど、その力に打ち勝つ努力をした。そしてその力に打ち勝った。

「・・牧野?」

神は乗り越えられない試練を与えない。
だが時を巻き戻すことは出来ない。
そして、二度と帰らない日があっても今はそれを語らなくていい。
今は過ぎてしまった過去を語る必要はない。
今が目の前にあればそれでいい。
二人がここにいることが生きている歓びであり、過去など必要ない。
今の二人には過去など無力だから。
だからその手をゆだねて欲しい。

「どうみょうじ・・」

司は泣いている女を見つめていた。
唇が、頤(おとがい)が震えていた。
だが泣かないで欲しい。
あの頃の愛しさは今も変わらないから。
哀しみよりも、6年の歳月よりも長いキスをすればいい。
心が求める人はただ一人。一瞬閉じられた瞼が開かれたとき流れた涙に“お願い”という言葉を聞いた。

「・・牧野・・」

司はしゃがみ、事情が呑み込めずキョトンとしている我が子を抱き立ち上り、女を優しく抱き寄せた。そして女が彼の背中に両手を回し、少し痩せてしまった体躯に必死でしがみついてくるのを感じた。

「・・道明寺・・・」

二人が今叶えようとしているのは、6年前成し遂げることが出来なかった想い。
そして今、互いの腕の中に永遠の愛を見つけていた。
それは、司にそっくりな我が子の存在だ。

「・・牧野。この子の名前は_」

司は姉から息子の名前を聞いている。それでも彼女の口から訊きたい思いでいたが、答えようとしていた母親の言葉を遮ったのは彼の腕に抱かれている男の子だ。

「僕、駿って言うんだ!5歳だよ!」

真っ直ぐな瞳で自分を抱いている男に嬉しそうに言った。
司は自分に似た幼子の精一杯の自己主張に胸を衝かれていた。初めて会う幼子だがどうしてこうも愛おしいのかと。

「そうか。駿か。いい名前だな。おじさんは司って言う名前だ。・・・駿のパパだ。やっと船を降りることが出来た」














クリスマスイブの夜、50年以上前に東京に降った雪が今年降った。
それは奇跡。
だからこそこんな夜には愛する人と一緒に過ごしたい。
そしてこの雪が誰の上に降ろうが、東京の景色を白く変えてくれるはずだ。

長い間たったひとつの愛だけを待っていた女に神が与えたのは、奇跡という贈り物。
そして長い眠りについていた男の元にも神は奇跡を持って現れた。
そんな男と女には、互いに言えなかった言葉と言い尽くせなかった言葉は沢山あるが、それをこれからの人生で告げていくつもりだ。






中谷宇吉郎という世界で初となる人工雪の制作に成功した物理学者が言った有名な言葉がある。それは『雪は天から送られた手紙である』という言葉。
雪の結晶は様々な形があるが、愛にも人それぞれに形がある。
二人がこれまで経験したことは二人の愛の形。
そんな二人の元に降る雪の結晶は果たしてどんな形なのか。
だが、どんな形をしていたとしても、それが二人の元へ送られてきた天からの手紙。
今日こうしてイブの夜、50年を超える時を経て東京に降る雪は、奇跡はきっと起きるからと神が知らせてくれた手紙。
その手紙が一人の男と一人の女に奇跡をもたらしてくれ、司は彼女から大切な贈り物を受け取った。
自分が命を分け与えた我が子という宝物を。


これからは、今夜降る雪のように真っ白なカンバスに家族3人の人生を描く。
そしてここに3人の心を包む夜があるように、これから始まる新たな人生は、男が一生包み守っていく。

あの頃の愛しさ以上に強く抱き、決して離さないと誓って。





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Happy Holidays! 明日はアフターストーリーです。

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